PIMCOの視点

中国への投資:進化する投資機会

中国本土の人民元建て債券がエマージング市場債及びグローバル債券インデックスに採用されることで、当該債券への戦略的投資が加速するとPIMCOでは予想しています。

中国本土の人民元建て債が主要なグローバル債券インデックスに採用される見通しであること、市場アクセスが格段に向上していることを踏まえると、グローバル債券投資家が中国債の組み入れを増やすのは時間の問題だとPIMCOではみています。以下のインタビューでは、グローバル投資ポートフォリオにおいて人民元建て債が重要性を増していると考える理由や、世界各地のお客様がこの機会を捉えるうえでPIMCOがどのようなサービスをご提供できるのかを、キンバリー・スタフォード、正直知哉、ロバート・ミード、スティーブン・チャンがご説明します。

問:中国国内の人民元建て債券市場に対する投資家の関心が高まっているのはなぜですか。

キンバリー・スタフォード:中国の債券市場は約12兆米ドルで、米国、日本に次いで世界3位の規模があり、世界の債券市場の10%強を占めています。中国国外の米ドル建て債券市場や国内の人民元建て株式市場は以前から世界の投資家に門戸が開放されていましたが、国内の人民元建て債券市場はアクセスが乏しく、外国人投資家の保有率は3%~4%の相対的に低い水準にとどまっています。しかしながら、こうした状況は変わりつつあります。

国内の人民元建て債券市場、特に中国銀行間債券市場(CIBM)は、グローバル投資家がアクセスしやすくなっています。国内の人民元建て債がエマージング市場インデックスやグローバル債券インデックスに採用されることにより、同債への戦略的なアロケーションが増加するとみています。

昨年は、中国が債券市場のアクセスを向上させているとの認識に基づき、ブルームバーグ・バークレイズやシティグループが、いくつかのカスタムメイドのインデックスやサブ・インデックスに人民元建て債を採用しました。しかしながら、大半の投資家が注目しているのは、3つの主要インデックス――JPモルガンGBIーEMグローバル・ダイバーシファイド、FTSE(旧シティ)世界国債インデックス(WGBI)、ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックスへの採用です。PIMCOでは、今後1年から4年以内にこれらの主要インデックスに採用されることにより、人民元建て債券市場への資金流入額はパッシブ運用だけでも2,500億~3,000億ドル前後にのぼると予想しています。

PIMCOのグローバル・マクロ分析や長期的な投資機会において、中国は以前から重要な要素となっています。インデックス採用をめぐりモメンタムが高まる中、PIMCOではエマージングおよびグローバルの幅広いポートフォリオでこの投資機会へのアクセスをご提供するにあたり、リスクと影響を慎重に評価しています。

問:中国市場へのアクセスを求めるグローバル投資家には、どのような手段があるのでしょうか。

スタフォード:CIBMダイレクト(2016年導入)とボンド・コネクト(2017年導入)は比較的新しいプログラムで、外国人投資家が投資枠の割当制限や利益の本国還流(リパトリ)規制を受けることなく人民元建て債を購入することができます。PIMCOでは、これらの相対的な効率性やリスクを引き続き評価しており(下図をご参照ください)、ボンド・コネクトによるさらなる改善を予想しています。

PIMCOはグローバルな資産運用会社の中ではいち早く参入した一社として、2014年以降は適格外国機関投資家(QFⅡ)プログラムを、2017年以降はCIBMダイレクトを通して、中国国内の人民元建て債券市場に投資してきました。私共の経験からすると、多くのグローバル投資家にとって、現地に口座を開設し、人民元建て債券の決済代理人を選任することは、煩雑なプロセスになると考えられます。そのためPIMCOでは、インデックス採用前にできるだけ早く準備すべく、お客様とカストディアンと積極的に協議を進めています。

Investing in China: Evolving Opportunities

問:PIMCOでは中国のマクロ経済をどう評価しているのでしょうか。

ロバート・ミード:中国では、指導部の権力がここ数十年間で最も強化されたことを受けて、前向きな要素が数多く存在しています。全般に、行動力を伴う強力なリーダーシップの下で、トップダウンの方向から構造改革がさらに推進される可能性があります。すでに、一貫性のあるマクロ政策が、金融システムの統制力を強化するとともに、国有企業の活性化に寄与しています。ここ5年は、消費財・サービス主導型経済への転換を急速に進めてきましたが、この動きはさらに加速する可能性があります。また、米国から反発を受けているものの、研究開発の分野における集中的な投資と、工業、サービス、家計の各部門におけるテクノロジーの大規模な活用によって、生産性が向上することも考えられるでしょう。このように楽観的なシナリオのもとでは、生産性とアニマル・スピリットの急回復に伴い、6.5~7.0%の実質GDP成長率も可能でしょう。

年初来、北朝鮮情勢が意外な方向に展開したことに象徴されるように、米国と中国が貿易と地政学の分野で大規模な戦略的提携関係を構築することも考えられます。中国の指導部が長期的な観点から戦術的な譲歩を検討しうるのに対して、取引指向性の高いトランプ政権は短期的な選挙サイクルに拘束されています。

このような強気シナリオにおいては、海外からの投資と中央銀行によるアロケーションが増加する結果、準備通貨としての人民元の役割は強まり、通貨高が維持されるでしょう。

問:投資家はどのような主要リスクに注意すべきでしょうか。

ミード:強気シナリオが想定される一方で、中国は向こう数年間にいくつかのリスクに直面しています。

第1のリスクが高水準の債務残高です。習主席は「債務リスクの管理」を今年の最優先課題に掲げました。2008年の世界金融危機以降、中国では非金融部門の債務比率(残高の対GDP比)が120パーセント・ポイント跳ね上がって250%に達しました。企業の債務比率が対GDP比で130%に上昇する一方で、さまざまな直接債務、偶発債務から構成される地方政府の債務比率は50%を超えました。さらに、シャドーバンキングの膨張が、中国のシステミックな脆弱性を高めています。副総理の劉鶴氏や中央銀行総裁の易綱氏など、信頼できる専門家が任命されている点は、心強い材料です。その一方で、法的位置付けが不明瞭で透明性を欠く理財商品(LGFV)のデフォルトを許容しないというモラルハザードや、景気が循環的に下降局面に入った際に企業デフォルトが増加する可能性が高いことは、懸念材料です。

第2のリスクが、不動産市場の下落リスクです。2017年時点で家計の債務比率は53%と絶対水準として高いわけではありませんが、不動産価格と合わせて上昇していることには一定の注意が必要です。この10年間に、主要都市の不動産価格が300%上昇する中で、家計の債務残高は8,300億ドルから6兆3,000億ドルへと700%も増加しました。一方、都市部における可処分所得に対する家計の債務比率は、この10年間で0.6倍から1.4倍に上昇しています。このペースが長期にわたって持続した場合、不動産価格と家計の債務残高は警戒すべき水準に達する可能性があります。その一方で、足元では住宅在庫の水準が低いことと、厳格な規制には大きな緩和余地が存在することを、指摘しておきたいと思います。

第3のリスクが米中間の競争激化です。年初来、米中間で大規模な貿易戦争が勃発するリスクの台頭は、市場にとってサプライズとなりました。米中間で経済モデルは競合関係にあり、地政学的な利害関係は対立し、イデオロギーや政治システムは対極に位置しています。最近20年間のように、今後も両国間の相互依存が強まるとは想定できませんが、安定的な戦略的均衡点は依然として不透明であり、トランプ政権の政策の不安定さを踏まえると、戦略的な計算違いが生じるリスクは無視できません。

問:PIMCOは、先進国市場との比較で、中国国内の人民元建て債券市場をどのように評価しているのでしょうか。

正直知哉:中立金利―潜在成長率とインフレ目標の達成に必要な金利ーは、グローバル債券を評価する際の目安としてよく活用されています。2014年、PIMCOでは金利の長期的な枠組みとして、「ニュー・ニュートラル」という概念を提唱しました。この枠組みでは、金融危機後の中立政策金利は従来の水準よりかなり低いと考えます。米国の場合、実質中立金利を0%~1%、名目金利は2%~3%と予想しています。

低水準の均衡政策金利が世界の債券市場をつなぎとめる有益な指針になると、引き続き予想しています。各国の債券利回りはおおむねレンジ圏内で推移し、フォワードのイールドカーブに対する上振れリスクと下振れリスクはほぼ均衡しているとみています。

こうした「ニュー・ニュートラル」の枠組みは、中国の基礎的な分析の出発点として重要になると考えられます。ただし、中国の債券市場をみる場合、中立金利は、米国や他の先進国市場ほどはあてはまらない可能性があります。一般に、中立金利が債券の強力な評価基準になりえるのは、伝統的な政策レジームの中で中央銀行が独立した主体として機能し、政策金利がコントロールできる主要な変数である場合です。中国人民銀行の制度的な成り立ちや政策レジーム、金融抑圧に基づく経済モデル、こうしたモデルの長期的な解消を踏まえると、中国の場合にはあてはまらないかもしれません。

したがって投資家は、中国市場について代替的な評価の枠組みを確立する必要があります。これは、中国のさまざまな政策の定量的・定性的な評価を合わせた総合的なアプローチになります。

問:PIMCOのお客様にとって、最善の機会はどこにあるのでしょうか。

スティーブン・チャン:中国が新指導部のもとで一貫性ある改革を推進する過程で、中国国内の人民元建て債券市場の金融市場との統合が加速することが、グローバル投資家にとって興味深い動きの1つになるでしょう。

クレジット市場では、中国国内における人民元建て債券、国外における米ドル建て債券の発行がいずれも活発です。資本構成全般において新しいセクター、発行体、商品が加わるなど、投資のユニバースは引き続き拡大しています。中国の発行体が内外の市場において債券を発行する動きは、この先数年間も堅調に推移するとPIMCOでは予想しています。

PIMCOでは引き続き、中国のニューエコノミーを象徴する消費、テクノロジー、サービスの各セクターについて非常に前向きであり、向こう数年間にわたって、クレジット投資の機会を模索するため現地でのリサーチを拡大する方針です。

しかしながら、業種内のさまざまな動向や政策の影響を背景に、社債のパフォーマンスはセクター間で大きく異なると予想しています。中国政府が全体としての安定を保ちながら金融システムのデレバレッジを目指す中で、流動性は変動する可能性があります。企業のデフォルトは増加する公算が大きく、他方では、地方政府の資金調達ビークルおよび国有企業に対する暗黙の保証の効果は、徐々に薄れていく見通しです。こうした理由から、慎重な銘柄選択がきわめて重要になります。

このため、徹底的なマクロ分析と精緻なクレジット・リサーチを組み合わせることが肝要だと考えています。PIMCOでは引き続きアジア太平洋地域の投資チームの拡充に努めており、お客様に更にアルファを提供するために、拡大を続ける中国市場にさらなるリソースを投入することにコミットしています。

Investing in China: Evolving Opportunities

世界経済と中国の位置付けを形成する長期的なトレンドについての議論に関しては、PIMCOの「2018年長期経済見通し:急変に備えて」をご覧ください。

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著者

Kimberley Stafford

アジア・パシフィック地域統括責任者

Tomoya Masanao

アジア太平洋共同運用統括責任者

Robert Mead

アジア太平洋共同運用統括責任者

Stephen Chang

ポートフォリオ・マネージャー

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