PIMCOの視点

2020年PIMCO投資サミットにおける四つの重要なポイント

地政学、金融政策、公開クレジット市場およびプライベート・クレジット市場における価値の発掘、戦略の
分散、アジアへの投資など、多くのテーマについて議論されました。

完全にバーチャルで開催された2020年PIMCO投資サミットでは、アジア太平洋全域からご参加いただいたお客様に、新型コロナ危機以後の世界の主要経済・金融市場に関する短期および長期の見通しについてPIMCOの知見をご提供できましたことを嬉しく思っております。本イベントでは、PIMCOの投資プロフェッショナルに加え、グローバル・アドバイザリー・ボード(GAB)のメンバーであるベン・バーナンキ氏とウン・コクソン氏が参加するパネル・ディスカッションが行われました。議論のテーマは、クレジット市場における価値の発掘から中央銀行の金融政策の投資への意味合いにまで及びました。PIMCOの考えは一貫しています。長期投資の成功は、様々な創造的破壊要因に備えると共に、ボラティリティの発生時に生じる好機を積極的に追い求めていくことによって可能だと考えています。

本稿では、幅広い議論の中から主要な四つのポイントをお伝えいたします。

1.回復の道のりは長く、険しい

世界経済は、近年で最も急激ながら最も期間の短い景気後退から回復を始めていますが、回復の道のりは長い上り坂となります。短期的には、ロックダウンの解除または緩和に伴い、経済活動は機械的に急反発するでしょう。しかしながら、主に四つの要因から回復には時間がかかる、との見方でパネリストの意見は一致しました。

  • 効果的なワクチンや治療法が利用可能になるまでは、ソーシャルディスタンスが引き続き推奨されます。そのため当面は、多くのセクターの活動が低水準にとどまる見込みです。
  • 経済活動の再開は、国や地域、セクターによってばらつきが予想されることから、サプライチェーンは寸断された状況が続くでしょう。
  • 労働と資本を、敗者から勝者のセクターに再配置するには時間がかかり、政府の政策によって阻害される可能性すらあります。結果として「ゾンビ」企業が温存され、経済全体の生産性の低下につながる可能性があります。
  • 企業や家計部門の過剰債務が、今後数年の消費支出や投資支出の足枷になるとみられます。

お客様からよく聞かれる質問の一つに、経済が現在のような状況にあるにもかかわらず、金融市場が堅調に推移しているように見えるのはなぜか、という点があります。

パネリストが指摘したのは、株式市場と実体経済は別物だと認識しておくことが重要だという点です。株式市場は大企業で構成されており、このうちテック企業や多国籍企業の業績は、パンデミックにもかかわらず引き続き堅調です。一方、中小企業、特にサービス・セクターは最も大きな打撃を受けていますが、世界の株式市場における存在感は大きくありません。加えて、現在の低金利環境にもかかわらず、市場は長期的な見方をとっています。新型コロナの短期的な影響にとどまらず、効果的なワクチンが導入される時期まで見据えています。

投資家は二つの重要な変動要因を注視すべきだとPIMCOは考えています。第一の要因は、新型コロナからの回復の道のりであり、どれだけ迅速に効果的なワクチンが開発されるか、あるいは感染の余波に屈するかです。第二の要因は財政政策です。米国の大統領選挙や議会選挙などの政治的要因に応じて、拡張される可能性もあれば縮小される可能性もあります。今後は、国ごとの財政政策のばらつきも見られると考えられます。

こうした不確実性が高い環境では、様々な潜在的な成果を考慮したポートフォリオを構築することが重要であるとパネリストは受け止めています。つまり、アップサイド・シナリオでは好機を生かし、ダウンサイド・シナリオではプロテクションを提供することです。その一例が、プライベート市場にあります。商業用不動産やスペシャリティ・ファイナンスなどの分野においては、企業が多大なストレスに直面する中、投資家は資本を機動的に展開して、よりリターンの高い魅力的な機会を確保できるとパネリストは指摘しました。保険リンク証券や絶対リターン戦略などのオルタナティブ投資は、ポートフォリオに魅力的な分散効果をもたらすことができます。

2.経済の傷跡が成長の重しとなり、インフレを抑制する可能性

PIMCOの最新の長期経済展望で述べたように、新型コロナ危機によって経済には長期にわたり傷跡が残る可能性があり、投資家はこの点を認識しておく必要があります。

まずは、失業の長期化です。しばらく職を離れた労働者が再び生産性を取り戻すには、時間がかかります。長期にわたる失業は通常、個人のスキルの低下、ひいては労働生産性の伸び悩みを意味します。経済の不確実性の高まりを受けて、事業投資が延期や縮小されることで、事態はさらに悪化する可能性があります。また、貿易戦争や地政学への対応ですでにグローバル・サプライチェーンは縮小されていますが、さらに寸断される可能性があります。より広い意味では、一部の政府が、公衆衛生上の懸念を口実に、貿易、旅行、移民をさらに制限する恐れがあります。こうした事態は、貿易や旅行に依存している企業、セクター、国に長期的な影響をもたらしかねません。

さらに、今回の危機後、債務水準が大幅に高止まりすると見込まれます。金融政策が非金融企業部門への資源配分に関与を強め、政府債務の返済コストを低く抑える必要があることから、中央銀行の独立性が損なわれる可能性があります。危機後も政府が拡張的な財政政策をとり続ける場合、金融政策の財政依存によって、インフレ率が現在市場が織り込んでいる水準を大幅に上回る可能性があります。パネリストは、短期的にインフレが上振れするリスクはほとんどないとみていますが、長期的には米物価連動国債(TIPS)、イールドカーブ戦略、不動産、コモディティのエクスポージャーなどを活用してインフレ上昇をヘッジすることは理に適っていると述べました。

多くの家計でも、今回の危機から脱出する段階で個人債務が増加している可能性が高いでしょう。これにより、現金や債券など比較的リスクが低い形での予備的な貯蓄需要が高まる可能性があります。そうなれば、民間部門の貯蓄過剰がさらに増加し、長期的に実質金利がさらに抑えられる可能性があります。

3.創造的破壊が増幅される可能性を踏まえ、さらなるボラティリティに備える

市場がパンデミック・ショックによる長期的影響と政策対応に直面する中、投資家は創造的破壊とさらなるボラティリティに備える必要がある、との見方でパネリストの意見は一致しました。

今回のパンデミックをきっかけに、マクロ経済の四つの創造的破壊要因は、さらに顕著になる公算が高まっています。

  • 米国と地政学上の覇権を争う、高付加価値生産国および超大国としての中国の台頭は、新型コロナ危機からの早期かつ力強い回復と、戦略計画の重点強化によって加速される可能性があります。中国の台頭は、他国の生産者の犠牲を伴い、米国の海外での影響力低下を招く可能性があります。
  • ポピュリズムは、保護主義やナショナリズムと並んで、今回のパンデミックに伴う格差のさらなる拡大により過熱する恐れがあります。9月に開催された年に一度のPIMCO長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)では、世界中でポピュリズムはまだピークに達していないと結論づけられました。
  • 気候関連のリスクは、今年さらに明確かつ深刻になっています。気候変動は往々にして超長期的課題として語られますが、オーストラリアやカリフォルニアの壊滅的な火災、米国のハリケーン、アジアの台風など、日々のビジネスや生活にますます影響を及ぼすようになっています。こうした物理的なリスクとは別に、環境にやさしいグリーン経済への移行で気候変動を抑える取り組みは、それ自体に移行リスクを伴います。また企業は、負担の大きい規制、レポーティング要件、炭素税への対応を迫られるでしょう。これは企業セクターにおいて勝者と敗者を生み出すことになるため、クレジット・リスクとデフォルト・リスクの積極的な管理が求められることになります。
  • 新型コロナがテクノロジーとその導入を後押しし、実物からバーチャルへの移行が加速しています。パンデミックによってもたらされた労働や消費パターンの変化は、危機収束後もかなりの割合で継続する公算が高いでしょう。既存および新規のテクノロジー企業は、危機の間に短期的な収益が押し上げられたことで、今後はさらに大きな創造的破壊要因となるでしょう。デジタル化に伴う勝者と敗者をうまく峻別することが、長期的投資の成功の、もう一つの重要な源泉となるでしょう。

こうした創造的破壊要因によりボラティリティが高まり、今後、資産クラス全般のリターンが低下するとPIMCOは予想しています。そのため、リスク調整後の最適な投資機会を追求するには、忍耐強く、グローバルで柔軟なアプローチが求められます。リターンが低下する環境では、超過収益の確保がトータル・リターンにとって一段と重要になります。

4.アジアは投資家に魅力的な機会を提供

アジア、とりわけ中国は、欧米に比べてかなり迅速に景気が回復しています。こうした投資機会を捉えるべく、PIMCOではアジア全域を対象に、ハイ・イールドと投資適格債の両方でエクスポージャーを増やしています。すでにそれ以前から、アジア地域の投資機会と相対バリューの魅力向上を踏まえ、アジア・クレジットの組み入れを強化してきました。

投資家は概ねアジアのアンダーウエイトを継続しており、今後、同地域の持高が調整される余地が大きいことを示唆しています。もちろん、アジア域内で、かなりのばらつきが存在します。中国、韓国、日本、オーストラリアなどは新型コロナを比較的うまく管理していますが、インドやインドネシアは苦戦しています。クレジット市場の投資家は、各国の経済や格付けだけなく、パンデミックが個々の企業に及ぼす影響を注視していく必要があります。

パンデミックでみせた回復力と巨大な市場の潜在性を踏まえ、中国がパネルディスカッションの大きな焦点となりました。パネリストの見方では、特に中国国内の消費のテーマには説得力があり、来年、恩恵が大きいセクターとして、電子商取引、自動車、インフラ、公共事業、不動産の各セクターが挙げられています。

アジアのクレジット市場は現在、米国のクレジット市場に比べて大幅に上乗せされたスプレッドで取引されています。スプレッドの上乗せ幅は、投資適格債で約70ベーシス・ポイント、ハイ・イールド債で約230ベーシス・ポイントです。これは投資家に投資機会をもたらしますが、パンデミックの余波を乗り切るうえで、慎重かつ積極的な銘柄選択がカギを握ります。長期的には、アジアで力強い成長が見込まれることから、アジア企業の信用プロファイルが改善され、米国企業と比較したスプレッドの圧縮につながる、とも指摘されました。

新型コロナからの回復の道のりについての詳しい見解は、PIMCOの最新の長期経済予測「加速する創造的破壊」をご覧ください。

(11月4日発行)

著者

Kimberley Stafford

プロダクト戦略部門 グローバル統括責任者

Tomoya Masanao

ピムコジャパンリミテッドの日本における代表者兼アジア太平洋共同運用統括責任者

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