PIMCOの視点

PIMCOグローバル・アドバイザリー・ボード(GAB)香港サミット、5つの主要ポイント

地政学、金融政策、アジア投資など、多くのテーマについて議論されました。

先日のグローバル・アドバイザリー・ボード・サミットは、アジア太平洋地域から220名以上のお客様をお迎えし、香港で開催されました。PIMCOグローバル・アドバイザリー・ボード(GAB)は、米連邦準備制度理事会(FRB)元議長ベン・バーナンキ氏、ビジネスラウンドテーブル社CEOジョシュア・ボルテン氏、英国元首相ゴードン・ブラウン氏、シンガポール政府投資公社(GIC)元グループ最高投資責任者(CIO)ウン・コクソン氏、新アメリカ財団理事長アンマリ―・スローター氏、欧州中央銀行(ECB)元総裁ジャンークロード・トリシェ氏で構成されており、PIMCOの投資プロフェショナルと共に、地政学、金融政策、グローバル経済および資本市場の現状、今後のアジア投資、オルタナティブ戦略、さらには投資家への示唆など、幅広いテーマについて議論しました。

幅広い議論の中から、主要なポイントを5つお伝えします。

1)サイクル終盤はサイクル終焉にあらず。今は質へ逃避する時期ではない。

PIMCOの見方では景気サイクルは終盤に入っており、いくつか兆候が見られます。グローバル経済の成長はピークを迎えはじめ、経済成長率には地域格差が見られます。資産クラス間及びクラス内でリターンのばらつきが拡大しています。インフレ率は上昇しつつあり、多くの中央銀行が金融緩和政策の出口戦略に向けて動き出しています。しかしながら、サイクル終盤の環境は長期にわたって続く可能性があります。このため、サイクルが早期に終了するリスクを念頭に置く必要はあるものの、今は質へ逃避する時期であるとは考えていません。

これは、投資家にとってどのような意味をもつのでしょうか。債券に関していえば、現在の環境では、保守的でかつ柔軟であることを重視すべきと考えます。先進国では利回り曲線がスティープ化しており、PIMCOではデュレーションの小幅アンダーウェイトを継続する予定です。非政府系住宅ローン担保証券(MBS)およびより幅広い仕組み商品については、引き続き確信度の高いスプレッドのポジションであると見ています。政府系MBSについても、価格は妥当な水準であり、インカムを獲得する手段として有望だと考えています。企業クレジットについては全般に慎重に見ていますが、短期年限の「曲がっても折れない」クレジットのポジションを優先する方針です。

株式については、FRBによる金融政策の引き締め、インフレの上昇圧力、保護主義の高まりに象徴される景気サイクル後期の環境は、株価収益率の伸びを抑制する要因になると予想しています。PIMCOでは現段階では、相対的に景気循環性が低く、収益性の高い米国の株式市場を(また、日本の株式市場についてもある程度)重視しており、質の高い大型株を選好しています。一般に景気サイクルの最終局面のみならず、景気後退局面でも最も高いパフォーマンスにつながることから、「質の梯子」を昇ることが鍵となります。

オルタナティブ戦略は、ポートフォリオのリスクを分散するとともに、厳選されたニッチな投資機会へのアクセスという魅力的な機会を提供します。これは景気サイクルの後期においてきわめて重要です。プライベート・デッド市場は企業向け直接融資よりはるかに幅広い投資機会を有しており、住宅金融、商業金融、専門金融などプレーヤーが少なく魅力的な分野が存在します。運用規定が柔軟であるほど、こうした分野の投資機会を有効に活用することができます。オルタナティブ・リスクプレミアム戦略は、株式中心のアプローチを超えて、金利、為替、コモディティ、モーゲージの実績ある戦略を取り込んで進化してきたもので、投資成果の向上に役立ちます。

2)世界的なポピュリズムの風潮を踏まえ、不確実性の高まりに備える。

ブレグジット(英国のEU離脱)は世界的なポピュリズムの広がりの一環と捉えることができ、経済的不満、文化的な悲観論、政治への反発がその特徴です。ブレグジットやイタリアの現在の政治情勢に見られるポピュリズムの広がりは、保護主義による貿易の減少、投資減退による成長率の低下、さらには財政圧迫につながる恐れがある、との見方をパネリストは示しました。こうした状況は経済に直接的な影響を及ぼします。というのは、国を超えた協力が限られるため、政策立案者の危機対応が一段と難しくなるからです。

ここ数年、米国の政治は自国第一主義の傾向を強めてきました。これはポピュリズムの広がりを反映すると同時に、左派と右派への有権者の二極化が進んでいることを示しています。トランプ政権における外交政策の一貫したテーマは、ナショナリズムの容認です。トランプ政権は二国間さらには三国間取引を行う可能性がありますが、多国間協定や地域協定は重視していません。外交政策におけるこうした変化は、世界が不安定になり、不確実性が高まる状況を予想しておくべきであることを意味します。

3)米中貿易摩擦の容易な解消は期待できず。

パネリストからは、米政権が今後も中国への圧力を継続するとの予想と、金融市場はトランプ大統領の通商政策に関する信念を過小評価してきた、との見方が示されました。トランプ大統領の在任中は現在の緊張を伴いながら関税は残る、とパネリストは予想しています。実際、状況が悪化する可能性も有り、1月に第3弾の追加関税が課されるとの見方を示すパネリストもいましたが、その可能性は低いとするパネリストもいました。

米中間の紛争には他に、先端技術競争や知的財産権の侵害をめぐる問題があります。これは迅速に、あるいは簡単に解決できる問題ではありません。この競争は今後激しさを増し、国家安全保障の行方を左右するとパネリストは見ています。米国は長期にわたり自国の技術的優位と機密技術を中国から守らねばならないとする懸念は、民主・共和両党で共有されています。どちらの政党が政権についても、この点は焦点であり続けるでしょう。

アジア経済は中国と密接に結びついているため、米中間の貿易摩擦の影響は地域全体に及ぶことになります。しかしながら、こうした摩擦は国際的なサプライチェーンの再編につながり、ベトナムやタイなどにとっては追い風になる可能性があります。

4)アジアのクレジット債券に注目。ただし、慎重な銘柄選択を重視。

PIMCOでは、中国の景気減速と米中間の貿易摩擦を背景に、2019年のアジア地域全般の経済成長については小幅減速を予想しています。アジアのエマージング諸国は、債務ダイナミクスの緩やかな改善と相対的に魅力的なバリュエーションを背景に、将来的には魅力的な投資機会を提供すると考えられますが、慎重な銘柄選択が重要です。

バリュエーションの観点では、アジアの投資適格級債(IG)市場とハイイールド市場はばらつきが大きくなっています。アジアのIG市場は米国市場と密接に連動していますが、ハイイールド市場はかなりフラットな米国市場に比べて大きな圧力にさらされています。そのため同セクターにバリューは見られるものの、ボラティリティが高まり、資金調達コストが上昇していることから、投資家は単にスプレッドが最も高いものやデュレーションが最も長いものを買うことのないよう慎重になる必要があります。パネリストは、中国の消費、テクノロジー、サービスの各セクターについて、慎重な銘柄選択の重要性を強調しつつ、前向きな見方を示しました。中国の消費の向上は長期的なテーマであり、生活必需品についてはこれが追い風になるとみられます。ただ、贅沢品など裁量的な支出は引き続き圧力にさらされるでしょう。クレジットのパフォーマンスはセクター間で大きくばらつき、中国政府が全体としての安定を保ちながら金融システムのデレバレッジを目指す中で、流動性は変動する可能性があります。

国別の選択では、インドネシアがインドに比べてマクロ経済の安定性が高いようにみえます。たとえば、株主資本利益率、不良債権比率、融資伸び率、自己資本比率といった銀行セクターの主要指標では、すべてインドネシアが上回っています。インドネシア国内では、米ドル建ての負債を抱え、確実なヘッジ戦略をもっていない発行体は避けるべきとの見方が示されました。

5)FRBは利上げ継続と予想。一方、欧州中央銀行(ECB)は2019年後半まで様子見の可能性。

米国のFRBは、概ね中立金利といえる2.75%~3.0%まで利上げを継続するとみられますが、2019年には利上げのペースを緩め、引き締めの効果を見極めると予想しています。FRBは雇用創出を重視するとみられますが、雇用が強すぎた場合、失業率を持続不可能な水準まで引き下げ、インフレや金融の安定性に悪影響を及ぼす可能性があります。

市場では、FRBがタカ派(インフレ重視)色を強めているとの見方があります。パネリストは、FRBの反応が大きく変化したとは見ていません。FRBは短期の予想経済成長率を2017年末時点の2.5%から、現在3.1%に引き上げています。一部のFRBメンバーがタカ派色を強めているのは、こうした状況の改善を受けたものであり、FRBの反応が変化したのではなく、短期見通しの変化によるものです。パネリストの見方ではFRBは過度にタカ派的なわけではなく、市場の反応は行き過ぎだと見ています。

欧州の景気は現在堅調で失業率は低下していますが、ソブリン危機の影響で景気サイクルは米国よりも早い段階にあります。来年は、欧州域内およびグローバル要因から、経済成長の減速を予想していますが、インフレ率は現在の水準以上に上昇すると楽観的に見ています。欧州中央銀行(ECB)は今年末までに資産の買い入れを終了するものの、当面は償還資金の再投資を継続すると予想しています。ECBは資産の買い入れ終了後、6カ月~12カ月は利上げを見送り、利上げに転じるのは早くても2019年10月と予想しています。

米国の景気が減速した場合もしくは景気後退入りした場合、欧州はその影響を免れないでしょう。マクロ政策面では、欧州に多額の経常黒字があることから政策余地がありますが、金融政策面では、金利が米国に比べて依然として低い水準にあることから、ECBの政策手段は乏しいといえます。

政治・経済の不確実性が高まる世界における投資に関する見解の詳細は、PIMCOの最新の短期経済見通し「成長続くも減速」をご覧ください。

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ご留意事項

過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。ソブリン証券は通常、発行体政府によって保証されています。米国政府機関の債務は米国政府からさまざまな形で支援を受けていますが、政府による全面的な保証は付与されないことが一般的です。こうした証券に投資するポートフォリオに対する保証はなく、ポートフォリオの価値は変動します。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。為替レートは短期間に大きく変動する場合があり、ポートフォリオのリターンを減少させる可能性があります。モーゲージ担保証券と資産担保証券は金利水準に対する感応度が高い場合があり、期限前償還リスクを伴い、また、発行体の信用力に対する市場の認識に応じてその価格は変動する可能性があります。また、一般的には政府または民間保証機関による何らかの保証が付されていますが、民間保証機関が債務を履行する保証はありません。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。コモディティは市場、政治、規制、自然などの条件により高まるリスクを伴い、全ての投資家に適しているとは限りません。社債には、発行体が元利金の支払い不能に陥るリスクがあります。また社債の価格は金利感応度や発行体の信用力に対する市場の認識、市場の全般的な流動性といった要因の影響により、変動する可能性があります。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。

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