PIMCOの視点

不透明な回復局面におけるパブリック(公開)・プライベート(非公開)クレジット市場での投資機会

バリュエーションは3月に達した過去最低の水準から回復していますが、市場価格に歪みが生じた結果、パブリックとプライベートのクレジット市場ではいずれも魅力的な投資機会が生じています。

新型コロナウイルスの感染拡大は世界の金融市場を揺るがし、クレジット市場の伝統的な流動性の源泉に打撃を与えました。また、クレジットのバリュエーションは、世界的な健康危機の発生当初の数週間における安値から上昇していますが、現在の市場には引き続き投資機会が存在しており、今後四半期に顕在化する可能性が高いでしょう。次のQ&Aでは、グローバル・クレジット担当最高投資責任者(CIO)のマーク・キーセルと企業スペシャル・シチュエーション責任者のジェイミー・ワインスタインが、グローバル・クレジットの見通しについて分析します。

問:わずか数カ月の間に多くの変化が生じましたが、足元では回復の軌道に乗っているようです。まずは全体像を概観しましょう。クレジット市場の現状をどのように評価していますか。

キーセル:間違いなく、前例のない時代が到来しています。第二次世界大戦以降で最も深刻な景気縮小局面に突入しています。米国では、最近では失業率こそ13%近くまで改善したものの、第2四半期のGDPは35~40%低下する可能性があります。

これは悪材料と言えるでしょう。

一方、好材料として、前例のない政策対応が行なわれています。米連邦準備制度理事会(FRB)は債券買い入れプログラムを含む2兆ドル近くの融資や流動性支援の措置を導入することによって、バランスシートを大幅に拡大しました。パンデミック危機が始まって以来、米議会は総額3兆ドル近くの歳出法案を成立させました。2008年の金融危機後と比べて、2倍以上の規模に相当します。

一方、新型コロナウイルスの感染者数の増加ペースは鈍化しており、各地域では経済活動が再開し始めています。企業、消費者とも慎重な姿勢を維持する結果、V字型ではなくU字型の回復になるとPIMCOでは予想しています。とはいえ、感染拡大の第二波が到来するリスクが引き続き残存していることには、留意が必要です。

問:クレジットのバリュエーションをどのように評価していますか。3月に達した過去最低の水準からは、どの程度回復したのでしょうか。

キーセル:3月末の時点ではクレジットスプレッドは非常に広がり、クレジット市場は非常に魅力的に映りました。デフォルト・リスクを踏まえると、スプレッドは過度に拡大しているとみていました。クレジットのバリュエーションは引き続き魅力的ですが、3月末の稀有な瞬間における魅力は失われています。

PIMCOでは、「持てる企業」と「持たざる企業」に分けた上で、主に前者に注目しています。「持てる企業」は危機時においてもフリー・キャッシュ・フローを創出しています。テクノロジー、防衛、ヘルスケア、医薬品、ケーブル、テレコム、携帯基地局、公益事業などの分野において投資機会を見出しています。反対に、エネルギー、自動車、小売り、化学などの、パンデミック危機の発生前から困難に直面していたセクターには、少しばかり慎重になっています。

問:クレジット市場の中で相対的に信用力の低い領域には、どのような投資機会が存在するのでしょうか。

ワインスタイン相対的に信用力の低いクレジット・セクターでは、世界金融危機後に好ましくない発行パターンが定着するようになりました。

投資適格クレジットの中では、BBB銘柄の起債が大幅に増加しました。非投資適格クレジットの中では、レバレッジド・ローンの残高が飛躍的に伸びています。実際、パンデミック危機発生に至るまでの数年間には、ほとんどのレバレッジド・ローンの新規組成案件において、CLO(ローン担保証券)による需要が半分強を占めていました。さらに、世界金融危機のタイミングにおいては800億ドル程度だったプライベート・クレジットの市場規模も、現在では1兆ドル近くまで膨れ上がりました。

その結果、市場価格には歪みが発生しました。資本市場へのアクセスが可能であった企業は、バランスシートの柔軟性が高い状態で、足元の環境を迎えることになりました。一方、パンデミック危機の発生前から大規模な負債を抱えていた企業は、柔軟性は限定的であり、深刻な制約が生じているため、最近ではレバレッジド・ローンやハイイールド債の新規組成・発行の動きは皆無に等しい状況です。

その結果、これらの企業を対象に、新規資金を投入する機会が生じる可能性があります。取引形態としては、交渉によって軸を構築した上でパブリック市場に持ち込む方法と、以前よりも競争環境が緩やかになったプライベート市場を利用する方法が考えられます。PIMCOでは、慎重な姿勢を保ちつつ、伝統的な流動性の源泉へのアクセスを絶たれた企業向けに資金を投入する構想を描いています。将来的には、魅力的なリターンの源泉となりうるでしょう。ただし、このようなプライベート案件が実を結ぶのは、今年後半から来年初頭にかけてになる公算が大きいでしょう。当面の間は、ハイイールド債全般に対して慎重な姿勢を維持しています。

問:健康危機の影響によって、ハイイールド企業が相次いで破綻する事態は想定されるのでしょうか。

キーセル:ワインスタインが言及したように、市場価格に大きな歪みが生じることは確実です。PIMCOでは、ハイイールド債のデフォルト率は一桁後半から、場合によっては二桁前半に達すると予想しています。結局のところ、労働市場次第と言えるでしょう。雇用が比較的早い段階で回復に向かえば、ハイイールド債のデフォルト率は一桁台にとどまる可能性があります。しかしながら、ワクチンの普及に時間がかかり、社会的隔離政策の長期化を余儀なくされる結果、デフォルト率がさらに上昇するリスクは常に存在します。

問:現在の市場環境に注目すると、10年以上前に発生した世界金融危機とはどのような違いが見受けられるのでしょうか。

キーセル:世界金融危機を振り返ると、住宅価格の下落が銀行システムに深刻な影響を与え、貸出基準の劇的な引き締めを生じさせたことが印象的でした。

二つの事例を比較してみましょう。最近5カ月間に米国の投資適格債市場では約1兆ドルの起債が確認されていますが、2008年下期の新規発行額は、半年間で1,000億ドルにも満たない水準でした。

重要なもう一つの違いは、FRBがこの2カ月間に資産の買い入れを通じてバランスシートを2兆ドル以上も膨らませる一方で、米議会は総額3兆ドル近い財政刺激法案を成立させている点です。今回の政策対応の規模とスピードは、2008年当時の政策対応を凌駕するものです。市場がより素早く反発した理由は、ここにあると考えています。

もっとも、今回の事例においても、起債市場と流通市場を区別して考える必要があります。量的緩和を中心とするFRBの政策対応の効果などによって、起債市場は大幅に改善しました。

その一方で、流通市場では流動性が乏しい状況にあります。わずか2ヵ月前には、市場の流動性は過去12年間で最悪の水準まで落ち込んでいました。その後改善していますが、ビッド・オファー・スプレッドは依然として大きい状態です。投資適格社債市場が昨年の夏や秋のように正常な状態にあると考える取引当事者は、皆無に等しいでしょう。

問:市場のあらゆる不確実性を踏まえ、信用力と地域の観点から選好する投資対象を教えてください。

キーセル:総じて言えば、PIMCOではエマージング市場よりも先進国市場を、ハイイールド債やバンクローンの組み入れよりも投資適格債の組み入れを一般に選好しています。米国市場は特に魅力的なようです。ここ6~7週間にわたって、投資適格の米国クレジットを中心に、世界中の投資資金が安定的に流入しています。

PIMCOでは、選別的に、公益事業、防衛、テレコム、ケーブル、携帯基地局、ヘルスケア、医薬品、テクノロジー関連の企業を選好しています。クレジットのファンダメンタルズが安定的であるか改善傾向にある企業や、感染拡大の第二波に対応可能な企業に投資したいと考えています。景気循環セクターやエネルギー・セクターには少しばかり慎重になっています。

問:現在、最善の投資機会はどこに存在するとみていますか。

ワインスタイン:PIMCOでは現在、CMBS(商業不動産担保証券)や高品質のABS(資産担保証券)などの、一部のストラクチャード商品の相対価値が特に高いとみています。また、プライベート・キャピタルを利用したソリューション案件が、実際に増え始めていると感じています。この分野では価格の再評価が必要なため、一部の案件が市場の新たな現実において魅力的な価格水準で実現するには、もう少し時間がかかる見通しですが、プライベート・クレジット市場では取引フローが確実に増加しています。

問:今後の景気回復局面において、何が重要になるでしょうか。

キーセル:最も重要なのは、どの程度の金融・財政政策措置が世界的に講じられるかでしょう。中央銀行による金融緩和政策と財政刺激政策の規模は、GDP対比で把握するべきと考えています。その場合、米国の政策対応は他の先進諸国と比べて大規模であり、また、エマージング諸国を大幅に上回っています。

また、PIMCOでは新型コロナウイルスの感染者数の増加率をモニタリングしています。社会的隔離政策が機能していることを確認する必要があります。長期的には、有効なワクチンが必要になることは言うまでもありません。

結局のところは、政策当局によるコミットメントの度合いと、財政・金融面での政策支援によって経済封鎖リスクが引き続き抑制可能かどうかに尽きるでしょう。

ワインスタイン:個人的には、企業利益の修正と利益見通しの水準が手掛かりになるとみています。これらは、投資家や金融業界の見通しを反映する適切な指標と言えます。当面の業績見通しの公表を完全に取り止める企業が、大半を占めています。業績見通しの公表がどの程度復活するのか、そこでどのような見通しが提示されるのかが、景気を占う重要な指標になる可能性があるでしょう。

市場のボラティリティと経済および投資家にとっての意味合いについての最新情報は、「新型コロナの市場関連レポート」のページをご覧ください。

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著者

Mark R. Kiesel

グローバル・クレジット担当最高投資責任者(CIO)

Jamie Weinstein

ポートフォリオマネージャー、スペシャル・シチュエーションズ戦略責任者

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本レポートにおいて、「COVID-19危機」とは市場インデックスが大幅に下落した2020年2~3月の期間を指します。COVID-19危機は現在進行形であり、前述の期間は、足元のパンデミック局面における市場の大幅な変動を浮き彫りにするために用いられています。COVID-19危機という表現は、現在の市場環境を反映していない可能性があります。

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