PIMCOの視点

フォーリン・エンジェル?クレジット市場のリスクと投資機会

急拡大するBBB格市場に注目が集まりすぎ、比較的小規模なA格市場のリスクが見過ごされていると考えています。

BBB格の割合が急拡大し、米国の社債市場はここ数年で大きく変化を遂げてきました。2018年1月の「PIMCOの視点」で述べた通り、失敗の余地はほとんどありません。現状はどうなっているのでしょう。BBB格市場の巨大化に多くの投資家が懸念を抱くことは当然と言えますが、PIMCOでは急拡大するBBB格市場に注目が集まりすぎ、比較的小規模のA格市場のリスクが見過ごされていると考えています。

このようなトレンドの下では、一般的なベータへのエスポージャーではなく、クレジット市場すべてにおける入念なクレジットリサーチやリスク評価、ならびにアクティブなポートフォリオ管理の重要性が高まります。PIMCOでは、社債セクター内やそれ以外にも有望な投資機会があるとみています。

クレジット市場の劣化とスプレッド拡大

米国クレジット市場全体で格付けの劣化は続いています。例えば、2018年には1,800憶ドルのA格社債がBBB格に格下げされました(クレディ・スイス)。

このようなA格からBBB格への格下げにより、同等満期の米国債に対するスプレッドは大幅に拡大しました。ガイドライン上の制約やリスク回避のために、相当割合の投資家が格下げされた債券を売却したことがその理由の一つです。また、スプレッドの割合で見ると、米国のBBB格の債券はA格のパフォーマンスを下回っています(図1参照)。具体的にこの1年で、BBB対Aのスプレッドの割合は1.58倍から1.87倍に広がりました。この数字の上昇は、BBB格債の平均価格がA格債の価格に比べ(対米国債との比較で)低下した、あるいは安くなったことを意味しています。

U.S. credit markets: BBB debt

BBB格債の供給量があまりに大きく、A格債が相対的に希少なため(また、信用力の違いからも)、BBB格債は常にA格債よりも大きなスプレッドで取引されるものだと考える市場関係者もいるでしょう。しかし、PIMCOは必ずしもこれには同意できません。レバレッジ再拡大リスクはBBB格企業よりもA格企業に多く見られる、というのがPIMCOの見解です。(これは、M&Aの実施など、帳簿上の純レバレッジが拡大する意思決定を発行体が行うリスクで、格付会社の懸念を高めることにつながる可能性を持っています。)レバレッジの再拡大はリスクが相対的に高いことに加え、レバレッジ再拡大によるM&AでA格からBBB格に格下げされた企業による、その後のレバレッジ縮小の実績はさほど芳しくないことも分かっています。PIMCOでは、これまでにくらべ、BBB格債よりもA格債のリスクの方が高まった可能性があると考えています。これは、スプレッドの割合の値とは正反対の見方です。

発行体による収益報告1のなかの資本管理に関する記述に関する、ゴールドマン・サックスの最近の調査1によると、多くの高格付けの投資適格(IG)企業が、(既存の財務の柔軟性やバランスシートの強さなど)債務調達の余力をM&A活動や株主への資金返済に充てようとしていますが、これは今後ますますレバレッジの再拡大が進行する可能性を示唆しています。

ネガティブな格付見通し

PIMCOではまた、格付会社が米国の数多くの非金融A格企業にネガティブな見通しを持っている( 出所:クレディ・スイス)点にも注目しています。

  • 非金融のA-/A/A+の格付けを持つ企業のうち、19%の企業が少なくとも1つの格付会社によってネガティブ・アウトルックとされています。しかし、ネガティブ・ウォッチ(見直し)となっている企業は1社もありません(「ネガティブ・ウォッチ」とは、発行体や銘柄が正式に格下げ方向で見直されている場合を指します)。
  • A-/A/A+かそれ以上の格付けを持つ非金融系企業のうち、20%の企業が少なくとも1つの格付会社によってネガティブ・アウトルックとされています。

 

実際にA格企業は、素材産業を除くほぼすべての米国のクレジットセクターで、ネガティブ・アウトルック方がポジティブ・アウトルックよりも多くなっています(図2参照)。メディアとヘルスケアが、最も潜在的な格下げリスクにさらされています。BBB格企業では、エネルギーとパイプラインに多くポジティブ・アウトルックがみられる一方で、小売は苦戦していますが、A格よりも全体的にはバランスが取れています(図3参照)。

Most U.S. credit sectors have single-A debt on

Select U.S. BBB credit sectors have positive

A格社債に代わる有力候補

高格付け(AからAA)の利回りとリスク特性を持つ債券を望む投資家向けには、米国社債であれば、一般的に格上げと格下げのバランスが取れた金融セクター(銀行及びREIT)を選好しています。銀行については、世界金融危機前に比べ自己資本率は大きく改善し(自己資本比率は上昇し、安定性も増している)、現状改善した信用力を再び危険にさらすような規制緩和の可能性は低いとみられます。

社債以外では、A格社債に比べ格下げリスクが低く、良好なリスク・リターン特性を持つとみられる高格付けの米国課税地方債、政府機関系モーゲージ債(MBS)や証券化商品に魅力的な投資機会があるとPIMCOでは考えています。

高格付けの米国の証券化商品セクターの一例は商業不動産担保証券(CMBS)です。米国のCMBSには、通称「デューパーズ(dupers、一級品)」、あるいは「スパーデューパーズ(super-dupers、超一級品)」と呼ばれる、高レベルに信用補完された債券がありますが、これらの債券は、2005年から2008年にかけて発行された銘柄でも、資本構造上、上位に位置しているおかげで、金融危機の最中にも全く元本の棄損は見られませんでした。現在ブルームバーグでみると、これら「デューパーズ」は全てAAAの格付けで、5年から10年の加重平均残存期間(満期)で、オプション調整後スプレッドがLIBOR+65~90bpsで取引されています。

これらのシニア証券化債券は、十分競争力を持った水準で取引されており、A格社債の有力な投資代替と考えています(図4参照)。シニア証券化商品に戦術的な資産配分ができる柔軟性を備えた投資家にとって、シニアCMBSはA格社債と同様のスプレッド、ベータ、デュレ―ション、そしてコンベクシティを提供してくれる一方、優先性と信用補完により、社債よりも高い格付けで、将来の潜在的な固有の格下げリスクやデフォルトリスクを緩和してくれます。また、米国以外の厳選されたCMBSやMBSにも、魅力的なリスク調整後の投資機会がある点も注目に値します。

U.S. CMBS offers attractive spreads relative to

安定性と確度の高い投資アイデアを求めて

PIMCOでは、多様なクレジット市場は、アクティブ運用に極めて良好な確度高い投資機会をこれからも提供し続けてくれると考えています。ここ数年の急激な市場の拡大や過剰に集中したポジショニング、流動性への懸念を考慮すれば、市場下落時のダメージは大きいことが予想され、ポートフォリオのなかで過度に単純なクレジット市場に対するエクスポージャーをとるべきではないと考えます。変わりつつある幅広いクレジット市場のなかで、より魅力的な選択肢は数多くあります。トップダウンのマクロ経済の見方を背景とし、長年にわたる厳格なリサーチと考え抜かれた銘柄選択を重視してきたPIMCOの運用は、今日のクレジット市場を上手く乗り切れるよう、投資家の皆様のお役に立てると信じています。

 

1 ゴールドマン・サックス・クレジット・ノート:「IG takeaways from earnings : Shareholders and M&A remain in focus(投資適格企業の収益報告のポイント:株主とM&Aが引き続き焦点に)」(2019年2月21日)
著者

Jelle Brons

グローバル社債チームのポートフォリオ・マネージャー

Lillian Lin

投資適格債担当 ポートフォリオ・マネージャー

Bryan Tsu

ポートフォリオ・アナリスト

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