PIMCOの視点

ESGの実践:グローバルな金融機関の評価

預金者や借り手の信頼感が金融機関の評価に影響を与えることが多いため、特に銀行へ投資をする際は環境・社会・ガバナンス(ESG)要因の分析は特に重要となります。

境・社会・ガバナンス(ESG)リスクとダイナミックスを理解することは、堅固な投資プロセスの重要な一部です。ESG分析の実践の価値を明確に示した例が、グローバルな金融機関への投資です。

近年、銀行業界においてガバナンスの欠如や、社会的信頼を裏切る例が目立ったことから、同業界の評判が傷ついたと感じる投資家が少なくありません。しかしながら、将来を見据えたESGの観点から個々の銀行を評価するにあたっては、こうした過去の違反を過大視すべきでないとPIMCOは考えています。金融危機を乗り越えて業績が堅調な銀行や、経営陣やガバナンスのプロセスを一新した銀行については、特にそうだと言えるでしょう。規制の枠組みが大幅に強化され、リスク管理体制が向上したことは、大半の銀行における自己資本比率と流動性のバランスの向上、及び収益変動の抑制のいずれの観点からも銀行の信用力にとって大幅なプラス要因だと見ています。変化の多くは規制当局の指示によるものですが、大手行は新たなルールを完全に取り込み、多額を投じて企業文化を刷新し、従業員の行動規範を見直しています。

PIMCOによる金融セクターのESG要因分析手法

個々の銀行への投資を検討するにあたり、現在PIMCOでは、リスク管理と金融商品の安全性が目に見えて向上していることに加え、企業文化や行動指針が大幅に改善された金融機関を見極めるよう努めています。経営陣やガバナンスの評価が最も重要ですが、規制遵守の実績や訴訟の履歴だけではなく、引受基準にESG要因を取り入れているかも慎重に評価しています。PIMCOが実施するストレステストは、規制当局のストレステストの結果を補完するものであり、金融機関の社内のリスク管理体制を評価します。また、業績が低迷した場合に、株主に報いようとするのか、保全資本のバッファーを維持しようとするのか、といった経営陣の傾向も評価します。

PIMCOでは、各銀行の評価にあたり、下記の11の主要なESG要因について世界の同業他社との比較を行います。その際、各要因の水準と今後のトレンドを合わせて、ESGの総合スコアを作成します。金融セクターの場合、ガバナンスと社会に関連する要因が非常に重大なリスクになってきた経緯を踏まえて、これらの要因のウエイトを大きくしています。他方、例えばエネルギー・セクターについては、環境の要因のウエイトを大きくしています。

グローバル銀行間でのESG比較

PIMCOでは、世界の各地域の大手グローバル銀行について、ESG要因を評価しています。図表1は、ポートフォリオ・マネージャーが(個々の銀行のスコアが異なることは踏まえた上で)、主要な銀行システムにおけるESG関連の強みと弱みを俯瞰するためにまとめられた表です。米国を例に取ると、米連邦準備制度理事会(FRB)が強固で安定した規制の枠組みを作り、それに基づく包括的資本分析およびレビュー(CCAR)のストレステストが実施されることにより、米国の銀行のリスク管理と資本規律が強化されています。こうした事実は、リスク管理と会計に関する要因において米国の銀行を高く評価する根拠となっています。しかしながら、米国の銀行は全般に、企業文化 や行動規範を継続的に改善するには至っておらず、引き受け基準や金融商品の安全性へのESG要因の取り入れという点については、欧州の銀行に遅れを取っている例が多いのが現状です。

グローバル銀行にとって重要なESG要因

銀行のESG評価にあたり、PIMCOでは、以下の11の要因についてスコアを作成し、銀行セクターへの投資の影響度に応じてウエイトづけし、ESGの総合スコアを作成しています。

ガバナンス(グローバル銀行に対するPIMCOのESGスコアの60%)

  • 文化と行動規範は、銀行の社内文化と倫理的行動の将来の見通しを表します。訴訟上及び行政上の和解の件数や金額といった一定の定量的な指標の他、(例えば、顧客の利益を第一に考えているか、などの)市場での評判や、(非倫理的行為で顧客が損失を被った時、経営幹部が説明責任を果たしたか、といったその銀行に関する)最近の論争など、より将来を見通した指標を取り入れています。
  • リスクマネジメントは、経営陣のリスク選好と、そうしたリスクを、景気サイクルのなかで管理できる能力に対する評価を表します。短期的な利益目標と長期的なソルベンシーをどうバランスさせるのか、景気サイクルを通して貸出債権(ローン・ポートフォリオ)と損失率がどのように推移してきたのか、合併・買収(M&A)の意欲がどの程度あり、経営陣が実現可能な目標を定め、達成してきたのか、といった点を検討します。大手行が積極的なリスク選好意欲を持ちながら、堅固なリスク管理体制と企業文化を築くことは可能です。
  • 会計では、銀行の情報開示の「信頼性」を評価します。不良債権の認定を何年も遅らせたり、自己資本比率の引き上げや配当の増額を可能にするために、組織的にリスク資産を「最適化」する銀行や銀行システムについては回避します。個別の銀行と同じく、国によっても評価はばらつきます。例えば、規制がはるかに厳しく、情報開示が活発で信頼できる英国や米国に比べて、欧州周縁国は歴史的に会計の評価は低くなっています。
  • 取締役会の有効性では、取締役会のリーダーシップ、多様性、専門知識、パフォーマンスの悪い取締役を交代させた実績を評価します。マイナス評価になりうる要因としては、CEOと会長の兼務、進行中の当局への召喚、戦略目標の不一致等が挙げられます。
  • 人的資本では、幹部以外の従業員の質を評価します。幹部候補の人材をどれだけ集め、引き留めているのか、高度なトレーニングや昇進の機会を与えているか、といった点から判断します。

社会(グローバル銀行に対するPIMCOのESGスコアの25%)

  • 金融システム上の重要性の評価では、金融システム上重要な大手(「大き過ぎて潰せない」)銀行を、自動的にマイナスと推定するわけではありません。金融危機後の規制環境において、大手銀行につい ては、規制による検査が厳格化され、資本基準や流動性基準が引き上げられています。また、破綻処理に際し、「ベイルイン(債権者に負担を負わせる方式)」が取られる場合ですら、債権者に対する保護が最大限に手厚くなっています。PIMCOのESG評価において、金融システム上の重要性の評価が問題になるのは、銀行の事業活動が負の外部性を生み出している場合に限られますが、米国やほとんどの欧州諸国はそうした状況にないと見ています。
  • フィナンシャル・インクルージョン(金融包摂)と、引受基準へのESG要因の組み入れでは、これまで金融サービスが十分に得られていなかったセグメントに対して、(多額の損失や規制による罰金のリスクにさらすことなく)安全かつ健全なやり方で、金融サービスを提供する企業姿勢を評価します。過去の違反行為は考慮しますが、PIMCOの評価は将来を見据えたものであり、貸出コミットメントの範囲と、関連するリスク管理の両方の評価を組み入れています。最優良顧客以外に狙いを定めた銀行については、銀行の収益性ばかりではなく、その銀行の金融商品が顧客にもたらすメリットを慎重に評価します。
  • 顧客のプライバシーとデータの安全性については、利用可能なレポートを公表している銀行が少ないことから、現時点では主観的な指標です。データの安全性への戦略的投資を公表し、データのセキュリティ侵害が報告されていない銀行についても、レポートが一般化するまでは、最高得点を付与することは差し控えます控えます。なお、セキュリティ侵害等の事態が起きた銀行の点数は低くなります。

環境(グローバル銀行に対するPIMCOのESGスコアの15%)

  • 持続的な貸出の影響は、単純に環境に負荷を与える産業に対する貸出比率を見るのではなく、より幅広い観点から評価します。石炭セクターに対する融資を削減しているか、再生エネルギーに対する融資 を拡大しているか、賛否両論のあるプロジェクトに関与しているか、といった点にも注目します。
  • 環境への影響とサステナビリティ計画の評価には、気候変動が貸出債権に及ぼすクレジット・リスクに関する議論が含まれます。最もスコアが高い銀行は、持続可能な目標を開示し、地球温暖化ガスの排出量の削減へのコミットメントを明確にしています。また、国連の持続可能な開発目標(SD Gs)への融資のマッピングに積極的な銀行も、高く評価されます。
  • グリーンボンドの発行では、「グリーンボンド」の発行に積極的な銀行を高く評価します。「グリーンボンド」とは、当該銀行自らまたは顧客の代理として、温暖化対策や環境対策のプロジェクトの資金にあてられる債券を指します。

ESG分析をポートフォリオマネジメントに統合

PIMCOのクレジット分析では、これまでESGの観点から1,700以上の発行体を評価しており、このうち金融機関を発行体とするものが400以上に上ります。ESGの評価は、アナリストの社内格付けや投資推奨の他、クレジットリサーチのコメントに明記されています。ポートフォリオ・マネージャーは、ESGに特化したポートフォリオだけではなく、PIMCOのすべてのポー トフォリオの投資を評価する際に、こうした分析を考慮しています。

ESGに関するアナリストの見解には、定性的な評価や運用成績に影響する可能性のある重要な要因についての理論的根拠が含まれています。幅広いポートフォリオでESG投資を取り入れるにあたり、こうしたアナリスト評価は時を追うごとに重要になっています。たとえば、ファンダメンタル・リスクが似通っている2社があり、同水準のスプレッドで取引されている場合、ゼネラリストのポートフォリオ・マネージャーは、ESGの相対評価に基づいて、投資先を切り替える可能性があります。図表2は、投資評価とESG評価に基づき、ポートフォリオ・マネージャーが潜在的な投資先を4つの象限に振り分ける方法を示 しています。投資の象限に入るのは、バリュエーションが魅力的で、ESG評価の高い発行体です。対話には、価格は割安ながら、ESG評価の低い発行体が入ります。引き下げには、ESG評価は高いものの、バリュエーションが魅力的でない発行体が、売り/回避には、バリュエーションが魅力的でなく、かつESG評価も低い発行体が入ります。

主要な結論:ESGの観点から魅力的なグローバル銀行が数多くあります。

PIMCOでは、銀行へのアクティブ投資の意思決定プロセス全般にESG分析を取り入れ、社債の長期的なパフォーマンスに影響を与える可能性のある、財務以外の重要な要因を詳細に検討することで、ポートフォリオに確実に利益がもたらされるよう努めています。

PIMCOの最新の分析は、金融危機以降、規制が大幅に強化され、リスク管理が向上したことを背景に、グローバルに事業を展開する大手商業銀行に対する高い評価を裏付けています。今後も引き続き大手銀行との対話を進め、持続可能な社会的融資プログラムの促進を図る方針であり、持続可能性に関するディスクロージャーの質を高めるよう働きかけていきます。

著者

C. Del Anderson

クレジット・アナリスト

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