貿易摩擦や減少傾向が続く需要などを背景に、エネルギー関連の債券や株式は2019年は市場全体のパフォーマンスを下回り、エネルギー関連の投資家にとって2019年は厳しい1年となりました。しかし、今年に入りエネルギー市場にも明るい兆しが見え始め、持続する高いボラティリティと価格差の拡大によって、アクティブ投資家には望ましい投資機会が生まれる可能性があります。

今回のQ&Aでは、ポートフォリオ・マネージャーのジョン・デヴァとグレッグ・シェアナウが、2020年のエネルギー市場の見通しと、地政学的な変化や環境・社会・ガバナンス(ESG)要因に対する関心の高まりなど、コモディティやエネルギー市場において投資家が注目すべきポイントについてご説明します。

問:2019年のエネルギー市場が振るわなかった要因と、それが2020年どのように変化するかについて説明してください。

答:2019年は米国株式市場が上げ相場になってから10年目の年でしたが、エネルギー銘柄は概して冴えない状況が続きました。昨年のエネルギー銘柄の大きなアンダーパフォーマンスは、さまざまな要因が複合的に影響していると考えています。米中貿易摩擦、予想を下回った世界の原油需要、天然ガス価格の低迷、ESGや政治問題などがすべて影響を与えています。さらに、原油価格が上昇したにも関わらず、このセクターの債券のデフォルト(債務不履行)は一昨年の約3倍にも達しました。

投資家のセンチメントは最悪の状態が続いていますが、今年は新たな明るい兆しがいくつかみられます。米国イールドカーブのスティープ化に見られるように、景気後退の発生リスクは減少し、世界的に購買担当者指数(PMI)は安定化し、OPECも世界の原油価格の押し上げ政策を維持しています。さらに重要な点は、米国の探査・生産(E&P)企業が、収益に見合った事業規模で営業効率を改善してフリーキャッシュフローの創出を全く放棄し、是が非でも生産量を増やすという従来の戦略を――ついにこの10年で初めて――放棄したことです。大きく冷え込んでいる投資家センチメントを踏まえ、PIMCOでは、強固なバランスシートを持ち、コモディティ価格がより長期にわたり低水準に留まる環境下でもプラスのフリーキャッシュフローを生み出すことができる、米国の買取・輸送を行う中流事業者および一部の厳選したE&P企業、ならびに総合石油メジャー(探鉱からマーケティングや小売りまで、バリューチェーンを幅広くカバーした最大手の公開企業)を選好しています。しかしながら、エネルギーセクターには業績の振るわない企業も数多くあるため、さまざまなサブセクターのなかで、株式や社債の価格は大きく変動し、有意な格差が発生すると予想しています。

問:エネルギーのバリューチェーンの中で、どの部分に最もアウトパフォームの期待が持てるでしょうか。

答:ベーカー・ヒューズ社によれば、2019年の米国の石油・天然ガスのリグ稼働数は、2018年から25%減少していますが、今年の石油、天然ガス、天然ガス液(NGL)の生産は、緩やかではあるものの、増加するとみています。安定したコモディティ価格と生産拡大の環境下では、バリューチェーンの中流に区分される北米のエネルギー企業がその恩恵を最も受ける位置にあると考えています。さらに、米国のシェールガス生産の成長が低下し、ESGへの関心が高まり政治リスクが上昇するなかで、業容も大きく地理的に分散し、強固なバランスシートによって、フリーキャッシュフローを生み出す能力の高い、伝統的な国際オペレーターや米国メジャーの魅力が増す可能性があります。

そして最後に指摘しておきたい点ですが、PIMCOでは、軟調なM&A市場や早々に訪れるE&P企業の社債や借入の満期の壁、非友好的な資本市場のなかで、厳しい経営状況にあるE&P企業の多くは、成熟したプラスのキャッシュフローを生み出す事業資産を、大幅な割引価格で売却せざるを得ない状況にあるとみています。エネルギー業界に関する幅広い知識を持つPIMCOのリソースと、実証済みの投資プロセス、企業経営陣と長年にわたって築いてきた関係から、潜在的なボラティリティ上昇に対し、PIMCOは十分な体制を整えており、最も魅力的な公募および私募の投資機会を見出すことが可能だと考えています。

問:今年の石油および天然ガス市場をどうみていますか。

答:石油・ガスの株式銘柄とは対照的に、昨年の原油価格は非常に底堅い動きで、12月のブレント原油の平均価格は前年比12%高となりました。自発的にせよ非自発的にせよ、OPEC加盟国による減産は、原油市場を下支えし、緩慢な世界の需要と急速に増えつつある米国の供給拡大の影響を相殺するには十分です。2020年の展望は、OPECプラス(OPEC加盟国とロシアを含む主要なOPEC非加盟の産油国)は、引き続き価格維持政策をとるとみられ、石油に対する需要の回復が期待されます。しかし、最も重要な変化となりうるものは、米国E&P企業への資本配分です。これは、PIMCOがこれまで原油市場最大の価格押し下げ要因と考えてきたもので、そこにようやく規律がもたらされる可能性があります。現在の価格水準でも増産は続くと考えていますが、この資本配分の変化は、最低でも原油価格の下値を支える効果が期待でき、十分な追い風となる可能性があります。

また、世界の天然ガスの見通しは、一言で「暗い」と言わざるを得ません。供給が――米国の生産量の急拡大と、世界的な液化天然ガス(LNG)の供給増大により――需要の増加を大きく上回っています。当面は、このような状況が続くとみられ、価格の下押し圧力となるでしょう。しかし、原油市場と同様に、米国の生産企業は、価格低下から天然ガス向けの資本支出をさらに減らすことが予想されます。さらに、米国のLNG輸出増加による国内需要拡大、(カナダからの輸入減少、メキシコへの輸出拡大による)純輸出国へ転身、電力市場において石炭の代替としての需要増加により、米国の天然ガスの価格に限っては、暖冬の影響を考慮しても、その下値は限られているとみています。

問:エネルギー市場では、世界のマクロ経済と地政学的要因が大きく影響してきました。今年、投資家は何に注目すべきでしょうか。

答:この先、マクロ経済や政治や地政学上の懸念材料には事欠きません。マクロ問題では、貿易摩擦が経済活動を沈滞させ、原油需要を減退させてきましたが、世界の製造業や貿易が回復してきたことは歓迎すべき兆候です。しかし、大方の予想は、米国と中国の「第一段階」の貿易合意成立後の経済成長加速を既に織り込んでいます。

また、地政学的にも多くのホットスポットが見られます。直近の状況をみると何よりもまず、米国とイランの緊張の高まりがあげられます。米国とイランがある種のデタント(緊張緩和)に達するとの楽観的な見通しも時として見受けられますが、両国ともに相手国の要求に対して譲歩するとは考えにくく、その可能性は低いとみています。従って、イランの原油輸出に対するプレッシャーは継続し、原油価格を下支えするでしょう。さらに、米国による経済制裁の下で、価格急騰の潜在的なリスクとなる中東地域の原油輸出の混乱にも、見方によっては、イランは上手く対処しています。一方イラクでは、ここ数カ月で起きた国の指導者に対する不満と国外からの影響による政治的な変化により、エネルギー供給の安定性が脅かされる可能性が出てきました。さらに北アフリカでは――特に2大産油国であるアルジェリアとリビアにおいて――先行きの不透明感が近年になく大きな影を落としており、特にリビアでは二つの対立する政府による内戦状態に陥っています。不安定要素拡大の結果により生産量が減少すれば、その他のOPEC加盟産油国による減産体制を急激に緩める必要に迫られることになり、それによって価格の上昇は緩和できるかもしれませんが、少なくとも増えつつある米国の供給者へのシフトを促すことになるでしょう。

最後に、米国では今年大統領選に向けて政治がヒートアップする時期に突入しつつあり、エネルギーと環境問題がクローズアップされる可能性が高くなります。これらの問題に対する議論の高揚が、現実的な政治判断と法的権威を脅かす可能性もありますが、米国の増産を抑制するようなどのような動きも原油と天然ガスの価格を下支えする可能性があり、その恩恵を受ける企業とそうでない企業の間で、勝者と敗者の大きな違いが生まれるでしょう。

問:気候変動の影響と炭化水素資源開発に対する反対運動の高まりは、エネルギー投資家にどのような影響があるのでしょうか。

答:環境・社会・ガバナンス(ESG)要因は、コモディティ市場において、既に長い間重要な関心事でしたが、炭化水素の消費削減に対する政策策定においては、特に大きな影響を与えてきました。排出削減目標と燃料の効率性基準に関する政策は、コモディティ市場における価格と需給を大きく左右し、アクティブ投資家にとってはリスクであると同時に、投資機会ももたらしてくれました。ESG関連の要因とコモディティ市場は長い間深く絡み合ってきましたが、投資家の認知が高まったことで、多くの資本配分の議論の場で、ESGに対する懸念が議論の中心を占めるようになってきました。

環境に対する懸念から、将来の炭化水素需要に対する不安が生じ――また、石油ガス生産者の多くは資本を効率的に活用してきたとは言えず、低炭素経済に向けたビジネスモデルへの転換を十分に行ってこなかったとの認識もあり――公的資金も民間資金もエネルギーセクターを避けるようになってきました。しかしながら、ESGに対する関心の高まりは予想外の影響ももたらしており、非再生可能エネルギー資源、特に石油に対する過少投資がその一例です。世界経済がより持続可能な低炭素エネルギー主体の経済へ移行するまでは、これからの世界の経済活動を維持するうえで、石油は重要なエネルギーです。

考えてみると、石油ガス業界は非常に資本集約的で、生産を維持するだけでも大きな投資を必要とする産業であり、今後10年で期待される需要の増加を満たすには現在の生産維持だけでは不十分です。(たとえ次の10年で、世界経済が相対的に炭素排出量の低いエネルギー源への移行に向けて大きく前進を遂げたとしても、急成長するエマージング市場をはじめ、多くの地域の石油やガスに対する需要はその間も増加し続けるでしょう。)

2020年からこの先、予想される設備投資の減少が原油価格を全般的に下支えし、企業はバランスシート修復のための資産圧縮に注力することを迫られるため、魅力的な私募投資の機会が生じる可能性があります。さらに、政治的な論争が加熱するにつれて、石油ガス投資に対する規制強化の可能性も排除できず、コモディティ価格の上昇要因となる可能性があります。コモディティを主体としたポートフォリオの構築にあたっては、PIMCOは投資資金のスチュワードとして、市場のトレンドのモニタリングと予測に注目し、ボトムアップでエネルギーセクターと設備投資の、さらにはESG関連の要因についても、徹底した評価を行なわなければなりません。これらの要因はコモディティ市場の動きにますます大きな影響を与えつつあり、アクティブ運用において丹念に評価される必要があります。

著者

John M. Devir

ポートフォリオ・マネージャー

Greg E. Sharenow

リアル・アセット(実物資産)担当のポートフォリオ・マネージャー

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