景気サイクル終盤において典型的な経済成長の不透明感と、ハト派的なFRBの対応の緊張感の間で、今後のエマージング市場は概して方向感に乏しく、時折高まるボラティリティが強者と弱者を鮮明に分けることになるでしょう。超過収益の可能性に注目すれば、この資産クラスには多くの投資機会があるとPIMCOでは考えています。

投資家にとっては、エマージング市場の3つの資産クラスすべてに投資機会があると考えています。

  • 外貨建てソブリン債が持つ、比較的高利回りと守りの性質という組み合わせは、ボラティリティが高まる景気サイクル終盤において魅力的であり、米国の金融引き締め政策終息の恩恵を受ける可能性があります。
  • エマージング社債の信用力向上には引き続き目を見張るものがあり、投資家のポートフォリオ分散の選択肢を広げてくれます。
  • 現地通貨建てエマージング債は2018年、ドル高によって大きな打撃を受けましたが、ドルの安定もしくは若干のドル安や中国のリフレ―ション、中央銀行の政策支援拡大の追い風を受けるでしょう。 現地通貨建てエマージング市場は、引き続き長期投資の対象としてPIMCOが選好する市場です。

エマージング市場全般に対して好意的である大きな理由は、リターン向上の可能性に加えて、ポートフォリオの分散手段としての魅力にあります。従って投資家は、エマージング市場を短期的なトレードの対象ではなく、キャリーの大きな長期の投資対象として考慮すべきだと考えています。

エマージング市場の概観

現在のエマージング市場、特に現地通貨建て市場のパフォーマンスにおいて最も重要なポイントは、世界経済の成長鈍化と米国の金利サイクルの成熟化により、ドル高が抑制される可能性が高い点です。

最近ハト派寄りに転じた米連邦準備制度理事会(FRB)は、近年の利上げサイクルのなかでも最も低い最終実質FFレートの水準となる見通しを示しています。エマージング市場にとって、ドル高とFF金利引き上げが終息すれば、逼迫する金融環境への懸念は後退します。

明らかなドル安への転換――例えばFRBが過去の引き締め策を方向転換し、米国経済成長減速を下支えするなど――がみられるのであれば、より積極的に外貨建てエマージング債から現地通貨建てエマージング債へのシフトの主張も可能かもしれません。しかし、米国経済の持続的な成長減速の証拠が見られない限り、ドル高反転と明言するには時期尚早だと考えています。

前向きな見方の一方で、リスクにも注目しています。中国の長年にわたる信用拡大ブーム後の債務停滞の可能性がその一つです。FRBが利上げサイクル終息のメッセージを発しつつあるなかで、中国は大幅な自国通貨安政策に訴えることなく、国内経済安定化に向けて柔軟な対応をとる努力をすべきでしょう。

市場ボラティリティと地政学的緊張の高まりもリスクです。そのためPIMCOでは、広範囲の主要ESG(環境、社会、ガバナンス)リスクを統合したボトムアップのクレジット評価を引き続き重視し、また信用力の高さと広範な市場との相関が低い固有の状況を優先して厳選したエマージング投資を行っていきます。量的緩和からの移行による流動性低下期において、エマージング市場への前向きな見通しもさることながら、まずはポジションの適正化をはかることが大切だと考えています。

外貨建てエマージング債:魅力的な利回り

2018年のエマージング通貨安(およびドル高)については既にさまざまな議論がありますが、PIMCOでは、多くの場合、エマージング諸国の変動通貨制は国家のバランスシートを守り、国際収支を支えていると考えています。

他のクレジット資産同様、FRBの利上げにより、エマージング諸国の外貨建て債務のスプレッドは昨年拡大しました。しかし、外貨建て債務は多くのエマージング経済では限定的で、債務構造の観点からの脆弱性は限られていました。今回の動きで、エマージング市場の経済成長と資産価格は、どちらも負の衝撃に対する回復速度は速いという、耐性の強さが新たに明らかになりました。

ブラジル、コロンビア、マレーシア、メキシコなどの新たな政府による多様な政策や、アルゼンチン、インドネシア、インド、ウクライナでの重要な選挙に関わる懸念に関連して、レラティブ・バリュー(相対的価値)の良好な投資機会が生じると見込まれます。主要なエマージング経済での大きな変化は予想していませんが、限界的で緩やかな改善(ブラジルなど)や悪化(メキシコなど)は見られるでしょう。2019年の最大の信用リスクは、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国(ザンビア、ガボン)、中央アメリカ(コスタリカ)、中近東(レバノン)など、比較的小規模な国で発生すると考えています。

バリュエーションの観点からは、2018年終盤の急落後、今年1月の反騰をうけて、外貨建てエマージング債は魅力的にみえます。世界の経済成長の停滞を背景とした脆弱性はあるものの、年内どこかで高格付けの湾岸協力理事会(GCC)が組み入れられることにより、加重平均で投資適格となるインデックスに対し、このリスクプレミアムは非常に魅力的に見えます。

投資家にとって、JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・グローバル(EMBIG)の6.1%という力強い利回りは際立っています。米国債と欧州やアジアの債券利回り格差拡大により、ヘッジコスト後で魅力的なリターンを提供するドル建て債券セクターの投資ユニバースは狭められてきました。現地通貨建てエマージング債の高いボラティリティを不安視する投資家にとっては、この資産クラスはエマージング債券のエクスポージャーをドル建てで取ることが可能です。

エマージング社債:改善傾向にも関わらずスプレッドは拡大

JPモルガンによれば、エマージング企業のネット・レバレッジは2012年以来最低で、エマージング社債の信用力は全般的に堅強で改善傾向にあります。JPモルガン・コーポレート・エマージング・マーケッツ・ボンド・インデックス(CEMBI)内のおよそ80%の発行体では売り上げが上昇し、2018年の収益は広範囲で拡大しました。また、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)利益率も平均的に上昇し、これは2018年の一層のレバレッジ縮小の実現を示唆するものと考えています。デフォルト率はエマージング・ハイイールド債の発行体で1.6%に、CEMBIインデックス全体では0.5%に低下しています。エマージング企業の程よい負債状況を考えると、今年もデフォルト率は低いレベルにとどまると予想しています。

2017年から2018年にかけての金融緩和時期を利用し、多くのエマージング企業が買い付け、繰り上げ償還、買戻しなどにより、クーポンレートの引き下げや満期の長期化、期近債務の削減などにより、債務ポジションを改善しました。実際に、エマージング社債のうち、ラテン・アメリカや欧州などのサブ・セグメントでは、昨年の正味資金調達はマイナスとなり、起債額がネットでプラスとなった国は高格付けのアジアや中近東に限定されています。起債額は2018年全体で23%低下し3,700億ドルとなり、今年もこれに劣らない低水準に止まると予想しています。

スプレッドの拡大と割安なバリュエーションが、これまで長い間見られなかったエマージング社債のパフォーマンスの最大の「バッファー」となるかもしれません。2018年2月に199ベーシスポイントと最も低かったCEMBIのスプレッドは、年末には345ベーシスポイントまで拡大しました。それにも関わらず、CEMBIのトータルリターンは-1.7%と、ほとんどの債券の資産クラスをアウトパフォームしています。これが、好利回り・好スプレッドで、デュレーションの短いこの投資適格インデックスの魅力を物語っていると考えています。

現地通貨建て投資:エマージング通貨か、それともエマージング債券か

PIMCOでは、エマージング諸国の多くで進展する国内変化は、現地通貨建て資産にはプラス材料だと考えています。そのうちの重要な変化として、経常収支の赤字が大きくないエマージング諸国において、為替レートに対する国内金利の連動性低下があげられます。昨年のパフォーマンスをみると、現地の金利と通貨の動きに明らかな乖離が見られました。

とはいえ、昨年の現地通貨建てエマージング債のリターンはマイナスとなっています。では、なぜこの変化が重要なのでしょうか。短期的な視点からは、エマージング通貨安の影響を受けにくくなった現地通貨建て債券のパフォーマンスは、今年ドルが安定的であれば力強いものになりうることを意味します。長期的により重要な点は、エマージング諸国の政策当事者が、国内成長を支えるために、反景気循環的な財政政策および金融政策が取れることです。これはソブリン債にとって、デフォルト・リスクが大幅に低下する可能性があるためです。

PIMCOは現地通貨建ての債券と通貨のどちらも選好していますが、それぞれ理由は異なります。エマージング通貨は、この1年、資産クラスのなかで最も高いボラティリティとなりましたが、PIMCOの分析では、エマージング通貨バスケットは依然として大幅に割安とみられます。さらに、これらの国々の実質金利の高さが、投資家にはプラスのキャリーをもたらし、予期せぬ事態に対しクッションの役割を果す可能性があります。

現地通貨建てエマージング債に関しては、昨年、一般にインフレ抑制をこれまで目指してきた、比較的金利の低いエマージング諸国において特に、債券部分が通貨部分を大きくアウトパフォームしました。最近の原油価格低下が追い風となっているほか、ブラジルや南アフリカなど、主要エマージング経済での大きな産出ギャップが、今年も引き続きエマージング諸国の金利低下傾向が続くと予想される背景となっています。

現地通貨建てエマージング資産のボラティリティは続くとみられますが、長期の投資家にとっては、今年は当セクターへのエクスポージャー拡大の好機かもしれません。

分散のためのエマージング市場

分散効果は長くエマージング市場の大きなセールスポイントで、昨年、市場ボラティリティ上昇後は特にその重要性が注目されるようになりました。エマージング市場の分散効果の特性を検証するため、PIMCOでは4つの主要なグローバルリスク要因(原油価格、クレジット・株式市場、米ドル、金利・債券)に対する、エマージング市場の資産クラスのパフォーマンスを分析しました。

この分析によって、2つの点が明らかとなりました。1点目は、グローバルリスク要因に対する、エマージング市場の資産クラスのベータは低下傾向にあり、エマージング市場は以前にも増して独自固有の投資となりつつある点です。2点目は、現地通貨建てエマージング債が引き続き4大リスク要因の影響を最も受けにくい点で、これは近年、エマージング市場が進化してきた証左だとPIMCOでは考えています。

とはいえ、エマージング市場のボラティリティ低下を示す証拠はほとんどみられておらず、当資産クラスへの資産配分は引き続き長期的な視野に立つことが重要だと考えています。ただし、資産の配分を検討する投資家にとっては、最も難関な時期は既に過ぎ去ったと言えるでしょう。

著者

Yacov Arnopolin

エマージング・マーケット担当ポートフォリオ・マネージャー

Francesc Balcells

ポートフォリオ・マネージャー

Kofi Bentsi

エマージング市場社債ポートフォリオ担当のポートフォリオ・マネージャー

Pramol Dhawan

ポートフォリオ・マネージャ

Gene Frieda

グローバル・ストラテジスト

関連コンテンツ

ご留意事項

本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。

金融市場動向やポートフォリオ戦略に関する説明は現在の市場環境に基づくものであり、市場環境は変化します。本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。見通しおよび戦略は予告なしに変更される場合があります。

社会的責任投資は、定性的で主観的な性質上、PIMCOが活用する基準や行使する判断が、特定の投資家の見解や価値を反映することを保証するものではありません。責任ある行動についての情報は、自発的な発表や第三者による報告から得たものであり、正確性や完全性を欠いている可能性がありますが、PIMCOはこうした情報に基づいて、企業の責任ある行動へのコミットメントや執行を評価しています。社会的責任の規範は、地域によって異なります。社会的責任投資の投資戦略や手法の成功が保証されているわけではありません。過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。コモディティは市場、政治、規制、自然などの条件により高まるリスクを伴い、全ての投資家に適しているとは限りません。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。高利回りで低格付けの証券はより高格付けの証券よりも高いリスクを伴います。 また、それらへ投資しているポートフォリオは投資していないポートフォリオに比べてより高いクレジット・リスクと流動性リスクを伴う場合があります。為替レートは短期間に大きく変動する場合があり、ポートフォリオのリターンを減少させる可能性があります。

本資料には、本資料作成時点でのPIMCOの見解が含まれていますが、その見解は予告なしに変更される場合があります。本資料は情報提供を目的として配布されるものであり、投資助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品の推奨を目的としたものではありません。本資料に記載されている情報は、信頼に足ると判断した情報源から得たものですが、その信頼性について保証するものではありません。

ピムコジャパンリミテッドが提供する投資信託商品やサービスは、日本の居住者であり、かつ法律による制約のない方に対して提供するものであり、かかる商品やサービスが許可されていない国・地域の方に提供するものではありません。

運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、デリバティブ取引等の価値、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況や信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動による影響も受けます。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、損失をこうむることがあります。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。弊社が行う金融商品取引業に関してお客様にご負担頂く手数料等には、弊社に対する報酬及び有価証券等の売買手数料や保管費用等の諸費用がありますが、それらの報酬及び諸費用の種類ごと及び合計の金額・上限額・計算方法は、投資戦略や運用の状況、期間、残高等により異なるため表示することができません。