PIMCOの視点

混乱と分散:クレジットのまだらな回復に対するボトムアップ・アプローチ

新型コロナのパンデミックにより、世界のクレジット市場は混乱していますが、ボトムアップ・アプローチにより2021年の投資機会を見い出すことができるとPIMCOでは考えています。

2020年のクレジット市場はジェットコースターのような荒れた展開となりました。新型コロナのパンデミックの発生当初は、リスク資産への投資意欲と流動性が低下し、世界経済が一時的に停止したことから、信用スプレッドは拡大しました。しかしながら、中央銀行と財政当局が迅速かつ大規模な刺激策を実施したことにより、急回復しました。

足元ではワクチン開発と接種が順調に進んでおり、投資家は短期的な景気の脆弱さは去ったと見ていますが、パンデミックによって長期的な創造的破壊要因が増幅されているため、銘柄選択とアルファの確保の重要性が増しています。

破壊的要因はいまだ健在

財政および金融支援策は、流動性を潤沢にし、広範なデフォルトを食い止めましたが、バランスシート上の過剰債務に伴うソルベンシー(支払い能力)の問題を解消するわけではありません。

パンデミックの発生当初、企業は自己防衛のため設備投資を削減し、流動性を高めることでフリーキャッシュフローを確保しました。しかしながら、最も打撃を受けた企業がパンデミック前の状態に戻るには、何年もかかる可能性があるとみられます。

図表1に示したとおり、パンデミックによる経済的影響は、セクターごとに大きなばらつきがあります。

図表1は、新型コロナによる経済的影響をセクター別に示したものです。エネルギー、小売、リース/ゲーム、航空セクターの打撃が特に大きい一方で、テクノロジー、ヘルスケア、公益事業、テレコムの影響は軽微にとどまっています。

一部のセクターはパンデミックの影響とは比較的無縁で、ヘルスケアやテクノロジーなど、需要の増加の恩恵を受けたセクターも存在します。逆に、旅行業界や娯楽業界の収益は大打撃を受け、倒産リスクが高まっています。

これらのセクターにはリスクが存在しますが、慎重な信用調査を実施すれば、固有の投資機会を発掘することも可能です。こうした環境では、様々なシナリオについて貸借対照表と損益計算書を分析することが非常に重要になります。また、債券保有者が適切なコベナンツ(財務制限事項)と担保の保護を受けられるような債券を構築することも重要です。パンデミックの影響を受けたセクターに投資する場合、ダウンサイド・リスクを軽減するため、堅固な担保とコベナンツを備えた安全な資本構造に注目することが重要であるとPIMCOでは考えています。

では、ここからどこに向かうのでしょうか。パンデミック後の世界で「平常」に戻るシナリオは、可能性としてはありえますが、消費者や企業行動の変化を排除することはできず、その規模と程度は甚だ不透明です。こうした変化によって勝者と敗者が生まれるとPIMCOではみています。ビジネスモデルの破壊に適応できる企業、防止できる企業は勝者になるでしょう。逆に、パンデミック後の世界で変化する人々の選好にうまく適応できない企業は、敗者になるでしょう。勝者と敗者を見分けるには、慎重な銘柄分析、シナリオ分析が必要です。

依然大きい信用スプレッドのばらつき

過去3四半期で信用スプレッドは大幅に縮小しましたが、それでもスプレッドのばらつきは大きく、PIMCOのようなアクティブ運用者には好機が生まれています。例えば、投資適格級の信用スプレッドは、長期平均よりも縮まっていますが、水面下では、原油価格の崩壊が信用スプレッドの大幅な拡大につながった2016年を彷彿とさせます。ワクチン開発はプラス材料ですが、信用スプレッドにはまだかなりの不確実性プレミアムが残っています。特に輸送、エネルギー、宿泊施設、娯楽などパンデミックの影響が大きいセグメントで顕著です。

図表2は、5年間の投資適格級のスプレッドのばらつきの推移を示した折れ線グラフです。ここ数ヵ月、信用スプレッドは全般に縮小していますが、依然としてばらつきは大きいままです。

ハイイールド市場も、パンデミック関連の活動制限に最も影響される発行体のスプレッドがパンデミック前の水準より大幅に拡大している点で似ています。ハイイールド市場では、投資適格級からハイイールドに格下げされた、いわゆるフォーリン・エンジェル債が大量に流入して以降、市場の構成が大きく変化しています。フォーリン・エンジェル債が加わることでBB格が増え、資本構造が拡大し、償還期限が延伸しました。CCC格市場が小さく、償還期限が短くなったのとは対照的です。

格下げとデフォルトはピークを迎えた可能性が高い

この1年は、格下げとデフォルトも増加しました。信用格付け機関は3月と4月に迅速に動きましたが、それ以降、ネガティブ・アウトルックとネガティブ・ウォッチの銘柄の割合は減っており、11月にはライジングスター(ハイイールドから投資適格級に格上げされた債券)がフォーリン・エンジェルを上回りました。

いくつか著名な小売企業の他、規模の小さいエネルギー企業のロングテール部分を含めてデフォルトはありましたが、これら企業のビジネスモデルは、新型コロナ以前から逆風にさらされていました。向こう1年、エネルギー・セクターの発行体がハイイールド市場のデフォルトの大半を占める可能性が高いものの、他のセクターも圧力にさらされるでしょう。

全体のデフォルト率では、欧州が米国よりも低くなる見通しです。欧州のハイイールド市場の方が米国よりも質が高く、エネルギー企業への集中度が大幅に低いことがその理由です。加えて、欧州では米国の連邦破産法11条に相当する破産プロセスがないことから、裁判による再編は戦略的再編ではなく、最後の手段になることも挙げられます。とはいえ市場では、デフォルト局面の終了と回復局面の始まりを示す指標が増えています。

もちろん、ワクチンの効果が期待を下回る弱気シナリオの場合、デフォルト・リスクは上昇します。また、直接的な財政支援を受けにくい中小企業、流動性と引き換えに行使できる担保権が限られる企業、さらには新型コロナ以前に長期的な逆風に直面していた企業については、デフォルト・リスクは高水準にとどまっています。

2021年の投資機会

約17兆ドルの債券の利回りがマイナス圏にある中、2021年も質の高いインカムの源泉に対する需要は底堅いと予想しています。世界的に金融政策の緩和が続くと予想しており、これがクレジット市場のさらなる支援材料になります。世界的に積極的な財政支援策は、ワクチンが広く普及するまでのクレジット市場の繋ぎ役となり、企業のファンダメンタルズの改善を後押しするとみられます。一部のバリュエーションは上昇余地がないとしても、こうした建設的な背景が、2021年のクレジット市場を強力に支えるはずです。PIMCOはアクティブ運用者として、まだらな回復のなかにボトムアップの投資機会を見い出すことを喜ばしく思っています。

足元では、公開クレジット市場にいくつかの重要な機会を見いだしています。

パンデミック後のリカバリー・トレード

公開クレジット市場の中では、経済活動再開の恩恵を受けられる企業を含め「リカバリー・トレード」の厳選した銘柄を選好しています。たとえば、航空、ホスピタリティ、REITなどです。こうした企業の多くは、ワクチン後の回復までの繋ぎとして十分な資本を調達しており、事業機能はパンデミック後の世界に合わせて最適化されています。ワクチン接種が世界的に拡大するにつれ、これらのセクターでは多くの企業の収益が伸び、バランスシートが回復し、債務削減が始まる可能性があります。しかしながら、長期的な圧力に直面しているセクターが、ワクチン接種の拡大と経済活動の再開により復活することは難しいでしょう。例えば、オンラインでのプレゼンスが限られている小売企業、自動運転に移行するなかで自動車メーカーの長期債、さらには再生エネルギーの成長と最近の環境・社会・ガバナンス(ESG)への懸念を踏まえ、従来のエネルギー企業については、引き続き慎重な見方をしています。

金融

金融セクターにも機会を見いだしています。2021年に力強い循環的な回復が見込まれること、米国ジョージア州の上院選の決戦投票で民主党が勝利したことがその理由です。こうした展開は財政支出を刺激する可能性があり、そうなれば資産の質の指標が安定し、純金利マージン(銀行の支払い利息と、利回り曲線のスティープ化で受け取る利息の差)が支えられるとみられます。大きな役割を果たした世界的金融危機時と違って、銀行は今回の危機の中心ではありませんが、解決の一翼を担うことができます。

PIMCOでは業界のリーダーを重視しており、利回りの高い優先証券に投資するために資本構造の下位に目を向ける方針です。欧州では、英国のEU離脱の不透明性が取り除かれ、利回り縮小が見込まれることから、英国の銀行を中心に劣後の銀行債(AT1)を選好しています。一般的なハイイールド債に比べて、バランスシートが堅固でバリュエーションが魅力的な、厳選された欧州大陸の銀行債も選好します。

住宅

さらに、今回のパンデミックが一戸建て住宅への住み替え、低金利、テレワークを促した結果、住宅需要が追い風を受けています。また、住宅改修への投資の増加を受けて、建材メーカーは価格を引き上げています。PIMCOでは、市場シェア・トップの建材メーカー、住宅用REIT、非政府系モーゲージ債が割安だと見ています。

厳選されたエマージング市場のソブリン債および社債

また、エマージング市場においても厳選された投資機会を見いだすことに注力しています。エマージング市場内ではバリュエーションのばらつきが大きいことから、レフトテール・イベントからは遠いと考えられる流動性の高いソブリン債および準ソブリン債を重視しています。アジアのクレジットも、先進国市場に比べて利回りが高く、力強い成長が見込めることから魅力的です。特に注目しているのは、テクノロジーや不動産、多角的金融、公益事業などのバリュエーションが魅力的な企業セクターです。中国の地方政府の資金調達ビークルについては引き続き警戒しています。

世界の公開クレジット市場での機会に加え、プライベート市場や流動性の低いクレジットについても価値を見いだしています。各国の中央銀行は市場のより伝統的な分野を支援する手段を活用してきましたが、こうした流動性はまだプライベート市場には入っていません。そのため、プライベート・クレジットのバリュエーションは依然として割安だとみています。今回のパンデミックは、民間貸出市場全般で、信用供与の条件を劇的に変化させました。安閑として借り手に優しかった構造は、不確実で貸し手に優しい条件に変わっています。さらに、規制が複雑なことから、民間の貸し手には資本ギャップを埋める投資機会が生まれています。注目すべき主な分野としては、住宅および消費関連クレジットの流通市場での投資機会の他、中小企業、航空、訴訟ファンド、その他の債権などが挙げられます。

現在の環境を踏まえて、投資収益機会を見いだすには、ファンダメンタルズの広範な調査能力が必要です。リソースが豊富で、公開から未公開まで多様な信用プラットフォームを揃え、広範で定量的な専門知識を有するアクティブ運用者を活用できる投資家が、最終的に恩恵を得られるとPIMCOでは考えています。


出所:ブルームバーグ・バークレイズ世界マイナス利回り債券指数、2021年1月20日現在。


(2021年1月22日発行)

著者

Mark R. Kiesel

グローバル・クレジット担当最高投資責任者(CIO)

Anna Dragesic

クレジット・プロダクト・マネジメント・チームの統括責任者

Mohit Mittal

ポートフォリオ・マネージャー

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