PIMCOの視点

ディフェンシブ セクターvs. 景気循環セクター:薄れつつある境界線

最近のセクター間の信用力変化により、債券投資家は極めて慎重な銘柄選択を行う必要があるでしょう。

クレジット投資家にとって、株式市場は企業の成長期待に関する重要な情報源であり、時には先行指標の役割も果たします。しかし、ディフェンシブなセクター(経済成長が緩やかな時には、伝統的に株式投資家にもクレジット投資家にも人気)では、信用力低下が目立っています。 同時に景気循環セクター(通常は高成長期に人気の高いセクター)では、信用力は好転しています。

そのためPIMCOでは、この景気サイクル後期において、債券投資家は各セクターや個別企業に対し、非常に慎重な選別姿勢で臨むことが必要だと考えています。

経済成長と収益増加に対する懸念拡大

この2年間、株式市場にはおしなべて収益拡大に対する追い風が吹いていました。しかし、最近の世界各国の製造業調査や企業の業績下方修正に見られるように、今年はこれまでよりも低成長で厳しい環境へ移行しつつあります(図表1参照)。PIMCOでは、来年にかけて世界のGDP成長率は鈍化するとみており、モデルによれば、今年の収益成長率は横ばいで、下振れリスクがやや大きいと予想しています。金融環境引締めによる影響の顕在化、昨年の米国の財政刺激政策の反動による対前年比の落ち込み、そして保護貿易主義など、すべて今年の懸念材料です。

ディフェンシブ セクターvs. 景気循環セクター:薄れつつある境界線

この低成長の環境が必ずしも市場のマイナスリターンを意味するものではありませんが、投資家は景気減速の長さと厳しさを推し量り、とりわけ景気後退到来に疑心暗鬼となるため、リターンは低下し、ボラティリティは高まる傾向があります。

投資家は、低成長の環境ではより積極的な運用と機動的なポジション取りが要求されます。図表2は、S&P500銘柄の企業の過去の収益上昇期と下降期における、セクター別の平均月次リターンを示したものです。今年は利益成長サイクルがピークを迎え、次第に減速するとみられます。これまでの歴史を振り返ると、景気循環セクターにはそれほど結果が見込めず、株式ポートフォリオの中心を、ボラティリティの低いディフェンシブ・セクターに傾ける方が、投資家には得策と言えそうです。

ディフェンシブ セクターvs. 景気循環セクター:薄れつつある境界線

今年も引き続き高ボラティティが予想され、守りを固める資産配分としては、流動性が比較的低くボラティリティの高い小型株よりも、一般的には質の高い大企業の銘柄が好まれるでしょう。しかし、ほとんどの株式投資家が期待価値の予想において収益成長率を重視し、債券保有者は、現在と将来のバランスシートの質に注目する傾向がありますが、この違いは今日重要な意味をもっています。というのも、最近ディフェンシブ・セクターの多くの企業が、M&Aや債務調達による株式買戻しなどにより、バランスシートをかつてよりも果敢に活用しているためです。

クレジット市場からの示唆

このような変化により、伝統的な株式投資ではディフェンシブに見える投資も、債券投資家にとっては、必ずしもそうとは言えません。実際に債券投資家にとって、ディフェンシブ・セクターの企業と景気循環セクターの企業の境目はどんどん曖昧になってきました。

クレジットの観点からみて興味深い例は、伝統的にディフェンシブなセクターが急速に変化を遂げた、非景気循環的な生活必需品セクターです。クレディ・スイスの調査によれば、このセクターでは2018年、額面ベースで他のどのセクターよりも大きくA-からBBBへの格下げが起こりました。M&Aの活発化がそれを主導しています。魅力的な期待リターンを提供しながら、M&A目的の起債増大は企業のレバレッジ比率も引き上げ、そのうち数社は格下げに追い込まれました。

また、生活必需品セクターなど消費者の嗜好と消費行動が変化しつつある他のディフェンシブな業界では、根本的な変化が起こりつつあります。この動きも同様に信用力低下につながり、図表3に見られるように、格上げ対格下げ比率が8対68と、非金融のセクターの中でも最下位に近い厳しいものとなりました。

ディフェンシブ セクターvs. 景気循環セクター:薄れつつある境界線

とはいえ、非景気循環的な生活必需品、ヘルスケア、電気通信などのディフェンシブ・セクターの多くの企業は懐も深く、経済が停滞またはゼロ成長のような時には、比較的有利な条件の資産売却によりレバレッジを抑える余力を持っています。反対に、自動車やエネルギーのようにより景気に左右される業界は、そのような時の手段は限られています。また、ディフェンシブ・セクターの企業は、比較的安定したフリーキャッシュフローを活用して債務を減らし、一般的に高額な配当を削減することもできます。

しかし、ディフェンシブ・セクターで信用力が低下する企業がある一方で、伝統的な景気循環セクターの企業ではファンダメンタルズが改善しているケースも見られます。そのうち、重要な例のひとつがエネルギーセクターです。J.P.モルガンのデータによれば、純レバレッジ倍率は、3.07倍から2.37倍(2017年と2018年の第3四半期の比較)に下がっています。 この1年、エネルギー関連のM&Aの大半は、債務ではなく株式で資金調達されたことは良く知られていますが、それだけではなく、M&Aの額が比較的少額で、数社の大手統合石油企業が期待以上に保守的な動きをしたことも一因です。こうしてエネルギーセクターの信用力が改善した結果、J.P.モルガンのデータによれば、格上げ対格下げ比率は64対4と、非金融のセクターの中では最も高いものでした。

最近の株式市場では、景気循環銘柄が非景気循環銘柄をアウトパフォームしていますが、図表4で見られるように、クレジット市場のパフォーマンスの違いは株式市場に比べてかなり小さくなっています。その理由のひとつが信用力の改善によるものです。

ディフェンシブ セクターvs. 景気循環セクター:薄れつつある境界線

また、昨年後半のリターンでもう一点注目されるのは、株式市場のリターンが大きく低調だった景気循環セクターの耐久消費財・アパレルが、クレジット市場ではそれほど大きなマイナスリタ―ンとはならなかった点です。PIMCOでは、(株式のパフォーマンスを見る限り)債券保有者にとっても、このセクターの発行体は今後必ずしも好ましいと考えていません。低い株式パフォーマンスが、単にまだクレジット市場に反映されていないだけかもしれないためです。反対にこれまで債務を増やしてきた飲料や電気通信セクターなどの企業は、収益のブレが少なく、バランスシートを積極的に守る体力があり、経済的ショックの影響を受けにくく、今後は債務削減に注力するでしょう。

クレジット投資家への示唆

最近のクレジットの質の変化により、ディフェンシブ・セクターと景気循環セクターの境目は、クレジット投資家にとってますます薄くなりつつあります。従って、個別企業の競合上の立ち位置と業界への参入障壁に注目しながら、厳格な調査と慎重なクレジットの銘柄選択が最も重要となります。

景気後退リスクが高まる中で、これまでの伝統的なディフェンシブ・セクターの企業と景気循環セクターの企業の括り分けは、クレジット市場では機能しなくなるでしょう。この一年、株式投資家にとっては広くディフェンシブな銘柄に対するエクスポージャーにまだ意味があるかもしれませんが、クレジット投資家には慎重な銘柄選択が必要不可欠です。

著者

Jelle Brons

グローバル社債チームのポートフォリオ・マネージャー

Lillian Lin

投資適格債担当 ポートフォリオ・マネージャー

Bill Smith

Portfolio Manager, Global Equities

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