PIMCOの視点

2015年のコモディティ市場の見通し:各セクターの供給動向に注目

​現在、原油価格が低水準にあることから、今後米国における生産の伸び率が低下する一方でグローバルな需要が小幅に拡大する結果、原油の需給は年末までに均衡に向かう可能性があるとみられます。PIMCOでは、2015年も引き続き過剰供給が天然ガス価格を押し下げると予想していますが、天然ガス市場は2016年にはある程度の均衡を回復する可能性があるでしょう。2015年は、原油価格の下落がトウモロコシ価格に波及し、それにより生産者が価格の高い穀物へシフトする可能性があり、穀物価格に下落圧力がかかるかもしれません。生産の伸びがピークに達した可能性が高いことから、2015年は金属価格が安定的に推移するとみています。

年、コモディティのリターンが低迷しています。長年にわたって大規模な投資が行われた結果、2007年には天然ガス、2011年には卑金属、2013年には穀物、最近では原油というように、供給が需要に追い付くセクターが増加し、供給の急増が価格の急落を招いています。
2008年の金融危機以降のグローバルな経済成長の鈍化や中国経済の減速が、コモディティのリターンを軒並み大きく押し下げたほか、供給が増加した度合いやタイミングが、価格下落の大きな要因となり、また、より重要な点として、商品によって異なるタイミングで価格が下落した要因になったとPIMCOでは考えています。向こう1~2年間は、供給の調整が進む速度によって、リターンが左右されるとみています。

2015年は全般に、グローバル経済が確実に成長しない限りコモディティ価格が大きく回復する可能性は低く、リターンは概ね横ばいで推移する見通しです。

原油価格は安定するか小幅に上昇する見通し
原油市場では、「アラブの春」やイラン向けの制裁の影響により、主要なコモディティ市場の中でも大規模な供給の増加に対して価格調整が最も遅れました。しかし調整のペースは急速であり、2014年後半には、グローバルな需要の低迷、石油輸出国機構(OPEC)以外での生産拡大、グローバルな価格調整役としてのサウジアラビアの姿勢の変化を背景に、原油価格は50%も下落しています(2014年12月付Viewpoint「OPEC総会の総括:米国のシェール・オイルに注目」を参照)。原油市場では現在、1日当たり100万バレル程度の過剰供給状態となっており、需給バランスを改善するためには、超過分を将来のために備蓄するとともに、今後の生産の伸びを抑えることが必要です。PIMCOでは、それが実現するタイミングは近いと考えており、向こう数カ月間に原油価格は安定するか小幅に上昇するとみています。

備蓄能力が不足する場合、原油価格はさらに下落する可能性もあります。もっとも、その場合でも、ブレント原油価格は1バレル=50ドル、カナダの原油価格は1バレル=30ドル台前半と製造原価に極めて近い水準まで下落しており、生産量を維持するために必要な設備投資の動きも低調であることから、下落は一時的なものになるとPIMCOではみています。また、直近で大幅な過剰供給状態だった2008~2009年とは異なり、足元では資本市場の機能が回復し、金利水準が低いため、備蓄施設の稼働率を最大化することが可能とみられます。

長期的には、グローバルな原油需要は1日当たり100万バレルに近いペースで毎年増え続けるとPIMCOでは予想しています。その需要の伸びに対応するためには、米国を中心とするOPEC以外での生産の拡大が必要となりますが、昨年のように1日当たり170万バレルに達する伸びである必要はありません。ノースダコタ州鉱物資源局の推計によると、現在の水準で安定的に生産するためには、各油田における原油価格を平均1バレル=55ドル(WTI価格で1バレル=65ドル程度に相当)に維持する必要があり、足元の価格は、ノースダコタ州だけでも生産の伸びが前年対比1日当たり25万バレル以上減少する見通しをすでに反映しています。また、ブレント原油の5年物の先物価格が1バレル=70ドルを辛うじて上回るなど、長期ゾーンの価格が金融危機の最中と同水準にあることから、大水深やカナダのオイルサンドを始めとする数多くのグローバルな原油プロジェクトにとって、先物価格は限界費用を下回っているとみています。

PIMCOでは、現在、原油価格が低水準にあることから、今後米国における生産の伸び率が低下する一方で原油価格の下落などの影響でグローバルな需要が小幅に拡大する結果、需給は年末までに均衡に向かう可能性があるとみています。また、投資が縮小に向かう傾向がはっきりする中で、市場は需給がひっ迫することを予想し、その結果、価格の下落圧力が緩和されると予想しています。

もっとも、相反する要因が存在するため、この見通しには大きな不確実性が伴います。一方では、近年、急増したシェール・エネルギーの生産資金を調達する目的で多額の社債が発行されたことを受けて、エネルギー・セクターはハイイールド市場における最大のセクターに成長したものの、市場が生産企業に対してより厳格な規律や高い調達コストを要求する中で資金は調達しづらくなり、米国における生産の伸びはさらに減速する可能性があります。また、他方では、採掘費用が頭打ちとなり、生産企業が効率化を図る中で、コストは減少に向かうとPIMCOでは予想しており、この改善幅が長期ゾーンの先物価格の落ち着き所を決定する上で重要な役割を果たすでしょう。

このような見通しは、厳しい時期はおおむね終わったという安心感を投資家に与える一方、原油の先物市場では、余剰な原油が備蓄される見通しを背景に、期近の限月(現物に近い限月)の価格が期先の限月よりも安いという右肩上がりの状態が続くとPIMCOでは予想しています。つまり、原油の先物のカーブには、価格が緩やかに上昇する見通しがすでに織り込まれているということです。

この先、投資家にとって、原油価格は年の前半に上昇するという季節的な傾向がプラス材料になるでしょう。市場は全般に、このような季節性や、産油国の財政悪化やナイジェリアの大統領選挙といった生産を不安定にし得る価格上昇のきっかけを軽視しています。

天然ガス価格は今年も低迷する見通し
天然ガス市場では、今年も引き続き過剰供給が価格を押し下げる見通しです。例年よりも暖冬になれば、消費者の需要が減少する可能性があり、発電需要が以前のように下支え要因とはならずに価格が大きく下落する可能性があります。また、石炭からガスへのシフトが需給バランスの改善に寄与した2012年とは異なり、石炭発電の多くがすでに天然ガス発電に切り替えられているため、天然ガスの過剰供給を吸収する余地は小さくなっています。

より長期的な見通しは改善傾向にあります。シェール・オイルの生産に関連する天然ガスの生産見通しは、以前よりも大幅に後退しています。また、天然ガス液(NGL)の価格は過去15年間で最も低い水準まで下落したため、頁岩層からの原油採掘の副産物としてのNGLのメリットはほとんどなくなっています。とりわけ米国における生産の伸びが最終的に鈍化した場合には、産業需要の拡大、環境規制を背景とする石炭発電所のさらなる閉鎖、メキシコ向けの輸出拡大、年末に予定される米国初の液化天然ガス(LNG)の輸出工場の完成などによって、天然ガス市場は2016年にはある程度の均衡を回復する可能性があるでしょう。天然ガスのフォワードカーブには、価格の改善がすでに織り込まれていますが、2016年以降には価格のさらなる上昇余地があるとPIMCOではみています。

農産物には弱気バイアス
2014年は年間を通して弱含んだ農産物価格は、第4四半期には20%近く上昇したものの、同じ時期に原油価格が大幅に下落したため、ほとんど注目されませんでした。価格上昇の主な要因は、主要な穀物生産国のロシアのソブリン・リスクが高まったことであり、ロシアのソブリン・クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドと穀物価格の間には、クリミア情勢が不安定だった2014年の早い時期と同じように、高い相関関係が観察されています。もっとも、この関係は、トウモロコシ価格と原油価格がエタノールを介在して連動しているため、現在の原油価格の水準では維持できないとPIMCOではみています。最近の原油価格の下落によってエタノール価格が押し下げられたため、エタノールとトウモロコシの2015年末の先物価格の差は、エタノールの生産者にとって損益分岐点を下回っています。この水準が実現した場合、エタノールの生産が減少する結果、トウモロコシについても、需要は縮小し価格は下落するとみています。このため、現在の低い原油価格は、いずれはトウモロコシ価格の下落につながり、それにより生産者が価格の高い穀物にシフトする中でその他の穀物の価格にも全般に下落圧力がかかるとみています。

また、原油価格の下落によって穀物の生産コストも低下します。トウモロコシなどの穀物の変動生産コストの中では、燃料費が10%、肥料の費用が40%近くを占めます。足元の投入物価格を前提にすると、トウモロコシの1年先の先渡価格は限界生産費用を5%上回る可能性が高く、農家は相応の利ざやを確保することができます。干ばつによって価格が上振れする可能性は常にありますが、PIMCOでは、現在の長期気象予報モデルを基にその可能性は低いとみており、農産物セクター、中でも穀物に対して全般に弱気バイアスを持っています。

金属価格は安定化する見通し
PIMCOでは、金属を卑金属と貴金属というセクターに分類し、貴金属をグローバルな実質金利に合わせて水準が変動する通貨と同じように位置付けています。現在、金価格は米国の実質金利と概ね整合的ですが、実質金利が世界的に極めて低い状況において、米連邦準備制度理事会(FRB)は2015年に政策金利を引き上げ、米ドルはさらに上昇する公算が大きいため、金価格には下落リスクが残ります。 一方、中国において経済成長が減速し、直接投資主導型経済から消費主導型経済へのシフトが進んでいることが、卑金属の需要や市場センチメントにとって全般に強い向かい風となっています。また、原油価格の下落や、とりわけ変動相場制を採用するエマージング諸国の通貨対比での米ドルの上昇も、明確なマイナス要因です。

それにもかかわらず、2014年の産業用金属指数の下落幅はわずか6.5%にとどまり、年央に原油価格が大幅に下落し始めるまでは、年初の水準を上回っていました。このように価格が堅調だったことは、卑金属は全般に供給調整サイクルにおいてエネルギーに先行していることを示すものであるとPIMCOではみています。 2015年については、原油価格の下落を背景とする生産コストの減少と、米国経済の改善、および、経済活動の維持を目指す中国による潜在的なインフラ投資の拡大という、相反する要因が作用すると予想しています。また、生産の伸びがピークに達した可能性が高いことから、2015年は金属価格が安定的に推移するとみています。

総じて言えば2015年はコモディティに中立的
総じて言えば、原油価格の上昇を天然ガス、農産物、貴金属などの価格下落が相殺する形で、2015年はコモディティのリターンが極めて低い水準にとどまるとPIMCOでは考えています。最近数カ月間にコモディティ価格を押し下げてきたドル高と世界的な低インフレ傾向が、2015年も引き続きパフォーマンスのマイナス要因になる可能性が高いでしょう。とはいえ、インフレと逆相関を持つ株式と名目債から構成される広範なポートフォリオにおいて、コモディティには引き続き高い分散効果やインフレ・ヘッジの潜在的効果が期待されると引き続きみています。

著者

Nicholas J. Johnson

ポートフォリオ・マネージャー

Greg E. Sharenow

リアル・アセット(実物資産)担当のポートフォリオ・マネージャー

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ご留意事項

全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。コモディティは市場、政治、規制、自然などの条件により高まるリスクを伴い、すべての投資家に適しているとは限りません。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。