PIMCOの視点

2016年長期経済予測のインプリケーション:アジア太平洋地域の投資家の皆様へ

PIMCOの経済予測会議は長年の実績ある運用プロセスにおいて欠かせないものです。PIMCOでは、1年に3回、世界中の拠点から投資プロフェッショナルが集結して短期(向こう半年~1年間)の見通しを議論します(短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム))。ここでの議論は、ポートフォリオのポジション構築や日々の運用に反映されます。一方、長期的な現実を正しく評価することが短期のものに勝るとも劣らずに重要であることも、従来から強く認識しています。このため1年に1回、過去30年以上にわたり、長期(向こう3~5年間)の見通しを数日間にわたって議論する機会を設けています(長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム))。

PIMCOの2016年長期経済予測では、世界経済は向こう3~5年間は安定的であるもののその持続性には懸念が残る、と総括しました。5月のセキュラー・フォーラムでは、PIMCOの投資プロフェッショナル、グローバル・アドバイザリー・ボード、外部講演者の間で展開された議論を受けて、世界経済は景気後退リスクには直面していないものの、総需要を喚起して経済成長を加速させる現実的な手段は見当たらない、という結論に至りました。金融政策の限界的な効果は低下し続ける見通しで、財政政策がそれを補完する可能性は低いでしょう。その結果、ボラティリティは上昇し、投資家はこれまで以上にネガティブ、ポジティブ両方のショックにさらされるようになるでしょう。このため、将来にわたってリターンを確保するためには、繊細なアプローチが求められます。

セキュラー・フォーラムでは、グループ最高投資責任者(グループCIO)のダニエル・アイバシン、グローバル戦略アドバイザーのリチャード・クラリダ、グローバル債券担当最高投資責任者(CIO)のアンドリュー・ボールズが、全世界の投資家にとっての重要なインプリケーションとリスクを提示しました。

アジア太平洋地域の投資家にとっては、各地域特有の市場のダイナミクスと規制の変化を踏まえつつ、このPIMCOの見通しをそれぞれの状況に応じて捉えることができます。ここでは、アジア太平洋地域の投資家を3つのグループに分けた上で、安定的ながらも持続性に懸念が残る投資環境を乗り切る上でPIMCOが有益であると考えるテーマと投資戦略を、グループごとに検討します。

アジア太平洋地域の個人投資家
マイナス金利に直面している日本の退職者や、スーパーファンド(オーストラリアの個人年金口座)の残高を取り崩す段階に入ったオーストラリア人、第一世代の家族企業の経営からポートフォリオの分散を図るアジアの富裕層に至るまで、個人投資家は共通の課題を抱えています。すなわち、金利とリスク・プレミアムが低い反面ボラティリティが高い環境において、支出を支える安定的な収入を必要としています。

PIMCOでは、今年の長期的な投資テーマのなかでは、以下の4つが個人投資家と関連が深いと考えています。

 

  1. 元本の保全
  2. アルファの捻出
  3. 市場ベータよりもボトムアップ分析を優先
  4. 全世界を対象に分散を図る

 

金融政策の効果が一段と低減しているため、リターンは将来的に低下する見通しです。また、PIMCOの長期見通しでは、投資元本の損失や債務免除を被る可能性が高まるレフト・テール・シナリオを追加的に指摘しました。6月の「Brexit(英国の欧州連合脱退)」に関する国民投票のようなポピュリスト的なショックや、政治が膠着状態に陥るシナリオが代表的なものです。このような環境においては、元本の保全が最優先課題と言えるでしょう。最早、金融政策と相関する不安定なベータに依存する戦略での成功は期待できません。

なかでも、投資戦略において資産を取り崩す段階に入った投資家にとっては、これは望ましくない現実です。退職者にとっても、富裕層にとっても、パッシブ運用だけでは満足のいくリターンは得られない場合が多いでしょう。

それでは、個人投資家はどのように潜在的なリターンを押し上げることができるのでしょうか。

そのようなニーズに応えるには、アクティブ運用が適していると PIMCO では考えています。 PIMCOのインカムおよびクレジット戦略では、投資家に安定的なリターンを提供するために、全世界の投資対象の中からバリューの源泉を追求しています。グローバル・クレジット担当最高投資責任者(CIO)のマーク・キーセル率いるクレジット・ポートフォリオ・マネージャーのチームは、元本を確保しつつ勝ち組を選んでアルファを創出することに焦点を絞っています。また、グループCIOのアイバシン率いるインカム戦略チームは、注意深くリスク管理を行い、相対価値の最大を目指し、ボトムアップによる銘柄選択を組み合わせることによって、投資家のために安定的なインカムを獲得することに注力してきました。

PIMCOのインカム戦略とクレジット戦略は、ダウンサイド・リスクを限定しつつ相応の元本成長を図ることを目標として設計されているため、インカムを犠牲にすることなく元本の保全と成長を目指す個人投資家にとっての解決策になり得るでしょう。

アジア太平洋地域の機関投資家
銀行、政府系ファンド(SWF)、年金基金やスーパー・アニュエーション・ファンド、各種財団を始めとする大手の機関投資家にとっても、足元は同じように困難な環境です。伝統的なベータに依存して一桁後半や、まして二桁というリターンの目標を達成することは難しい一方で、レフト・テール・リスクとライト・テール・リスクはともに現実味を帯びています。

機関投資家に対する長期的なアドバイスは、以下の3点です。

 

  1. 全世界を対象に分散を図る
  2. ボラティリティ上昇局面で利益を追求
  3. 必要な局面では流動性を供給

 

資産クラスとリスクの両方について、分散を図るべきでしょう。リターンの源泉が分散されるべく設計されたマルチ・アセット型の戦略はこの先重要性が高まることが見込まれます。また、レフト・テール・シナリオでは投資リターンの相関が強まる傾向があるため、投資家はリスクの観点からも適切な分散を図るべきでしょう。PIMCOのアジア太平洋地域のソリューション・チームは、機関投資家と連携することによって、アセットアロケーションの解決策を提供することが可能です。

ボラティリティの上昇は投資機会に結び付く可能性があり、PIMCOでは、引き続きポートフォリオの構築を慎重に進めながらも、機動的に割安な資産を見つけ投資することに注力したいと考えています。戦術的かつ戦略的な資産配分を通じて、ボラティリティ上昇局面においても利益を得られるような投資機会を見出せるよう、投資家をサポートしたいと考えています。足元では、オルタナティブ戦略、インフレ連動型戦略、クレジット戦略などにこのような投資機会が存在すると考えられます。

流動性の供給に関しては、PIMCOではクレジット戦略と不動産オルタナティブ戦略などを通して、さまざまな経済環境に対応してきた実績があります。不動産市場や銀行のレバレッジ削減の動きに伴う構造上・規制上の投資機会、ミドルマーケット、さらには既に長い運用実績を有するグローバル・クレジットにおける機動的な相対価値戦略で、お客様のために流動性プレミアムを獲得し、ボラティリティを抑制しつつリターンを改善することにご協力できるでしょう。

アジア太平洋地域の保険会社
アジア太平洋地域の保険会社は、資本市場の状況変化や規制改革に伴い、困難な市場環境に直面しています。市場金利の低下を受けて、負債利回り以上の利回りを確保することが難しくなり、伝統的な保険会社のアセットアロケーションは成り立たなくなっています。さらに、市場金利がマイナスに転じた結果、アセットアロケーションの判断は一段と複雑になっています。たとえば日本では、国内株式の保有額が大きい生命保険会社は、マイナス金利の影響で円高と株安がさらに進むことになれば、保有株式の追加的な売却を余儀なくされることも考えられます。

一方、足元の市場環境が投資機会を生み出すケースもみられます。中国では、人民元安の影響で、国内の保険会社が海外投資枠を活用してバランスシートのリターンを改善する機会が生じています。また、中国に限らず、負債年限が長い多くの保険会社には、不動産、インフラ、その他のプライベートな資産への投資を通じてプレミアムを確保する機会が存在すると、PIMCOではみています。

以下の2つの長期的なテーマが、保険会社と関連が深いでしょう。

 

  1. マイナス利回りに対する備え
  2. 必要な局面では流動性を供給

 

マイナス利回りに関しては、多くの保険会社の負債のデュレーションは15年超と長く、イールドカーブ上この年限では名目金利はプラスを維持しているため、資産と負債のデュレーションのバランスが安定的であれば、負債管理の観点からはマイナス利回りの直接的な影響をそれほど受けないと考えられます。しかしながら、リターンの源泉が今後少なくなることが課題となるでしょう。

リターンの源泉を増やす必要があるとすれば、保険会社は、「サテライト・ポートフォリオ」のアプローチを通じて、特定の投資戦略をアクティブ運用者に委託することが有益かもしれません。サテライト・ポートフォリオで運用される戦略は、バンクキャピタル(銀行の資本性証券)戦略、クレジットのバイ・アンド・ホールド戦略、クレジットの絶対リターン戦略が考えられます。これらの戦略はいずれも、リターンを押し上げる可能性があります。

また、ソルベンシー規制を始めとする各種規制上の制限はあるものの、保険会社にとってオルタナティブ戦略が一段と有力な選択肢となるでしょう。それには2つ理由があり、第1には、保険会社の投資対象年限が長いため、オルタナティブ市場に流動性を供給することによってプレミアムを獲得する余地があること、第2には、オルタナティブ投資はポートフォリオの市場ボラティリティに対するリスクを減らす可能性があるからです。

今後の見通し
これらの投資戦略はいずれも、PIMCOの実績ある投資プロセス、充実した顧客サービス、ソート・リーダーシップを重視する姿勢の上に成り立っています。現在の不透明なマクロ経済環境を乗り切るために、引き続きアジア太平洋地域のお客様をご支援させていただきたいと考えています。

著者

Eric J. Mogelof

米国グローバル・ウェルス・マネジメントの統括責任者

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