初来、アジアの金融市場は大きく変動しています。以下のインタビューでは、PIMCOのアジア・パシフィック統括責任者のエリック・モゲロフが、最近の出来事の全体像を示した上で、向こう1年間の同地域における運用のトレンドをご説明します。

問: 2016年のアジア・パシフィック地域全体の環境を考えるにあたり、市場や投資家の選好は昨年1年間にどのように変化したと言えるのでしょうか。
モゲロフ:
 まずは、変化しなかったことに注目することが重要です。投資家は引き続き、債券および株式市場のリターンは今後も低い水準で推移すると予想しています。また、一部の例外を除いて、先進国市場がエマージング市場をアウトパフォームする状態が続いています。さらに、投資家はポートフォリオのボラティリティを抑制するため、引き続きインカム志向の戦略とソリューションを強く選好しています。

主要な変化としては、何よりもまず、各国の中央銀行が金融緩和政策を継続するなかで、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を引き上げました。第2に、原油価格が大幅に下落しました。第3に、年初来、世界の株式市場では、主に中国市場の影響によってボラティリティが上昇するとともに不透明感が広がった結果、価格が下落しています。PIMCOでは、グローバルおよび各地域の短期見通しにおいて指摘しているように、中央銀行は市場を沈静化させて安定を取り戻すために出来る限りのことを実行すると予想していますが、最近の市場のボラティリティは、その能力が弱まっている可能性を示唆しています。

このため、PIMCOでは、世界的に景気後退が差し迫っているとは想定していないものの、投資家は、マルチ・アセット・ソリューション、戦略的な債券投資、オルタナティブ投資などの一連の運用戦略を用いて、ポートフォリオのボラティリティの抑制をより積極的に試みると予想しています。また、一部では割安な投資機会が再び到来するとみています。

問: 現在の市場環境は、2016年の主要な投資のテーマとどのように結び付くのでしょうか。
モゲロフ:
 各地域やアセットアロケーションに関連する主要なテーマを考えるにあたり、以下の5つのトレンドを指摘したいと思います。

第1に、日本では、貯蓄資金をリスクの比較的高い資産に向かわせようとする政府の試みを、投資家は徐々に受け入れるようになっています。

第2に、中国では、国内市場のボラティリティが高水準で推移するなかで、投資家はグローバルなソリューションを模索しています。また、中国の規制当局は、グローバル投資家の資金を呼び込み、これをサポートすることに関して(一様にというわけではありませんが)概ね前向きです。

第3に、オーストラリアとニュージーランドでは、投資家は、退職年金制度改革を念頭に、退職後にインカムと元本の成長を提供し得るような退職年金の戦略的な運用ソリューションに対する注目を強めています。

第4に、アジア・パシフィック地域全体において、インカム志向の戦略、なかでもクレジット市場や銀行の資本性証券に投資するソリューションに対する強い関心が引き続き確認されています。

第5に、アジア・パシフィック地域の投資家のポートフォリオでは、クレジットに特化した戦略を中心に、オルタナティブ投資の重要性が引き続き高まっています。

問: まず、各地域の動向に関するはじめの3つのテーマを見てみましょう。第1に、日本では、貯蓄性商品からのシフトはどのように進んでいるのでしょうか。
モゲロフ:
 よく知られているように、アベノミクスの主な目的は、機関投資家ならびに個人投資家の資金を貯蓄から、より高リターンが期待される資産にシフトさせることにあります。結果的に、消費の増加を通じて経済が刺激されることを安倍政権は期待しています。

その結果、大量の日本国債の保有に限定されていた機関投資家の資金は、グローバルな債券、株式、マルチ・アセット戦略、さらにはオルタナティブ投資に対してもシフトしつつあります。なかでも、相対価値が魅力的なクレジットのバイ・アンド・ホールド戦略(満期保有を前提とした投資)が注目されており、PIMCOでは、これらの機関投資家の多くと戦略的なパートナーシップを構築し、ポートフォリオのリスク調整後リターンの改善を目標にカスタマイズされた運用のソリューションを提供しています。また、ボラティリティを抑制しつつ負債に対応した高利回り商品を模索する年金基金の間では、オルタナティブ投資に対する関心が高まっています。

一方、個人投資家を対象に、貯蓄を投資に振り向ける誘因として、新しいプログラムが導入されています。最長5年間にわたって年間100万円までの投資で得たキャピタルゲインを非課税とする「少額投資非課税制度(NISA)」と、上限の低い未成年者向けの類似プログラムである「ジュニアNISA」がその代表的なものです。PIMCO とPIMCOの日本における販売提携先は、個人投資家が規制上の優遇制度を活用して戦略的な投資機会を見出し、貯蓄を投資に振り向けるためのソリューションを開発しています。たとえば、現金が主体のポートフォリオから、リスクが低くデュレーションが比較的短い債券ポートフォリオにシフトすることによって、追加的なリスクを抑えた上でポートフォリオのリターンが大幅に改善することもあります。PIMCOの日本のポートフォリオ・マネジメント・チームは、日本人投資家(およびグローバル投資家)を対象に日本国債に投資する戦略を運用した確固たる実績を有しています。

問: 次に中国ですが、最近のボラティリティ上昇を踏まえて、中国内外の投資家はどのように投資機会と向き合うべきでしょうか。
モゲロフ: 
中国に関しては、インバウンド(内向き)とアウトバウンド(外向き)の投資を区別することが重要です。アウトバウンド投資、すなわち中国人投資家による海外投資需要は、株式市場の激変と人民元の切り下げを受けて明確に強まっています。中国政府は、国内の資本基盤を保護するために、中国人投資家による海外投資に枠を設けるなど一定の措置を講じていますが、そのような制約は暫定的なものであり、中国の資本収支が開放されるのは仮定の問題ではなく時間の問題であるとPIMCOではみています。

これに対して、中国政府はインバウンド投資には概ね好意的であり、インバウンド投資の主要プログラムの1つである「適格外国機関投資家(QFII)」向けのプログラムを簡素化しました。なかでも、人民元の国際化を推進する目的で、政府系ファンド(SWF)と大手金融機関からの資金を重視しています。もっとも、このような資金フローは存在するものの、グローバル投資家は当面の間、中国の株式市場に回帰することについて慎重な姿勢を維持するとPIMCOでは予想しています。ただし、通貨のボラティリティには注意が必要ですが、グローバル投資家の中国の債券市場に対する関心は、同市場の自由化に伴い高まる可能性があります。

問: PIMCOでは、オーストラリアとニュージーランドにおける退職年金運用の増加にどのように対応しているのでしょうか。
モゲロフ: 
この2カ国、特にオーストラリアの退職年金市場は、世界でも最も速いペースで拡大していますが、両国の投資家は、多くの場合、株式と不動産に対するアロケーションが超過気味であることに注意するようになっています。両資産へのアロケーションをインカム、資本性証券、リキッド・オルタナティブなどに分散するソリューションに対して、投資家の関心が高まっています。これらの戦略によって、株式や不動産などのリスク・ファクターを抑制しつつ、元本の大幅な成長を期待することが可能です。また、重要な点として、退職者にとって明らかに優先順位の高いインカムを獲得する手段としても利用可能です。PIMCOでは、オーストラリアの債券市場やこれらの戦略に対する強みを生かして、向こう1年間、関連するソリューションをさらに提供する予定です。

問: アセットアロケーションのテーマという観点から、アジア地域におけるインカムへの注目について詳しく教えてください。
モゲロフ: 
高齢化社会の進行、市場ボラティリティの上昇、今後の期待リターンの低下という状況を踏まえ、インカムを持続的かつ安定的に提供し得る戦略には非常に強い需要が存在しています。なかでも、特にアジアはインカム・ソリューションの人気が強いところです。

PIMCOでは、2013年に米国モーニングスター社より最優秀債券マネージャー賞を受賞したグループ最高投資責任者(CIO)のダニエル・アイバシンが、経験豊富なポートフォリオ・マネージャーから構成されるチームのサポートを得て運用する、実績のある一連のインカム・ソリューションを提供しています。2016年も、高いリスク調整後リターンとともに安定的なインカムを生むというインカム戦略の潜在的なメリットが、投資家の需要を引き続き喚起すると予想しています。また、クレジット市場において「長期的な勝者」への投資を企図するクレジット戦略や、銀行債市場における裁定機会に着目する銀行の資本性証券戦略のような、高水準のインカムを生むその他の戦略に対する関心も高まると予想しています。

問: 2016年はオルタナティブ投資に対する関心がどのように変化するとPIMCOでは予想しているのでしょうか。
モゲロフ: 
リキッド・オルタナティブに投資する個人投資家から、ボラティリティの抑制を図ろうとする保険会社や流動性プレミアムの獲得を目指す大手機関投資家に至るまで、分散の効いたポートフォリオにおける、オルタナティブ投資の戦略的な意味合いが強まっています。2016年は、ディストレスト証券の市場残高が過去最高に達し、プライベート・キャピタルに対する企業の需要が強まり、オポチュニスティックな投資家に魅力的なバリュエーションを提供し得る強制的な売りのフローが続いていることから、投資家は特に非公開企業のクレジット市場におけるオルタナティブ投資に注目するとPIMCOでは考えています。

問: 市場で昨年生じた出来事の全体像をどのように把握しているのでしょうか。
モゲロフ: 
多くのアジアの投資家は、年初にポートフォリオのアロケーションを調整します。PIMCOでは、最近の市場情勢の影響を受けて長期的かつ戦略的なアロケーションを過度に変えるべきではないと考えています。同時に、割安な投資機会を捉える態勢を整えることを強くお勧めします。また、マクロ経済の知見を活かして定性的な観点から、そしてポートフォリオ分析機能を用いて定量的な観点から、市場動向の全体像を示すとともに、お客様のアセットアロケーションのお役に立てるよう心掛けています。

皆様にとって健康で順調な年になりますようお祈り申し上げます。

著者

Eric J. Mogelof

米国グローバル・ウェルス・マネジメントの統括責任者

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