PIMCOの視点

アジア市場の展望:2018年には何が待ち受けているのか

実質GDPの回復とインフレ率の緩やかな上昇を背景に、2018年のアジアの名目成長率は高まる見通しです。

マージング・アジアの債券市場は2017年ににわかに活気づき、新規発行が同地域に投資資金を呼び込みました。2018年は中国の景気減速が予想されるものの、新規発行は相変わらず旺盛で、インドとインドネシアを筆頭に、アジアには魅力的な投資機会があるとみています。

2017年のエマージング・アジアへの資金流入額は約1,030億ドルに達したとみられ、2016年の500億ドルから急増しました。債券投資が株式投資の2倍以上にのぼっています。特に投資資金を引きつけたのがアジアの社債です。グロスの発行額は約2,900億ドルにのぼり、2016年の新規発行額1,690億ドルを大幅に上回りました。JPモルガンの調査によれば、2018年も同様の活発な発行が予定されています。アジアの債券は引き続き堅調で、2017年のJPモルガン・アジア・クレジット・インデックス(JACI)は5.78%の上昇となり、2016年の5.81%から小幅低下したものの、高水準を維持しました。

実質GDPの回復とインフレ率の緩やかな上昇を背景に、2018年のアジアの名目成長率は高まる見通しです。

中国のコントロールされた減速

過去3カ月の中国の政治は、昨年10月の第19回全国共産党大会を受けた、習近平国家主席への権力集中を巡る展開となりました。2018年は、新指導部が成長よりもシステミック・リスクの管理とデレバレッジ(債務削減)の重視を継続することから、中国経済は慎重に管理された緩やかな減速が続くと予想しています。GDP成長率については、2017年の6.7%から、コンセンサス予想の6.25%をも下回る可能性もありうると見ています。

中国政府は金融政策や金融規制に対する厳格な姿勢を堅持し、影の銀行や不動産融資規制を強化する見通しです。コア・インフレ率の上昇と原油価格の上昇を背景に、インフレ率は2.5%に加速すると予想しています。そのため中国人民銀行は基準金利を引き上げ、引き締めを続けることになるとみられます。(コンセンサス予想は、2018年の利上げなし)

デュレーションは各種の指標では割安に見えるものの、以上のような理由から、中国の為替と金利については中立を維持します。中期的には、現地の投資家が外国資産への分散を進める長期的かつ構造的なトレンドの中で、中国への資金の純流入は厳しい状況が続くとみられます。これは今後、通貨が下落するリスクが高まることを意味します。

昨年10月、13年ぶりにソブリン債を発行したのに続き、国家発展改革員会(NDRC)は、中国の発行体がオフショアで債券を販売する承認プロセスを緩和しました。オンショア・レートが上昇する中、オンショアの発行体は、調達コストの安いオフショアの発行を選好するものと予想しています。こうした動きを踏まえると、米ドル建てのオフショア債に比べて、オンショア債は割安になるとみられます。

中国の景気減速は引き続き緩やかなものになる、というのが基本的な見方ですが、この見通しにはリスクがあります。先の共産党大会で新たに指名された政策立案者は経験が浅いため、誤った政策や判断ミスを犯す可能性があります。やや不透明な50兆人民元にのぼる影の銀行システムと、70兆人民元にのぼる債券市場において、流動性問題が発生する可能性は否定できません。地政学上の懸念、とりわけ北朝鮮情勢、米中間の緊張、トランプ米大統領の通商政策をめぐる不確実性は、いずれもアジア市場を攪乱する可能性があります。

インドネシア:当面は魅力的

インドネシアの信用力は力強く回復しています。ファンダメンタルズは引き続きコアの金利リスクと外貨ポジションの支援材料となりますが、PIMCOではより長期的なリスクを注視しています。

最近の現地調査を踏まえ、ファンダメンタルズは全般に良好な状況が続くと見ています。インドネシア銀行(中央銀行)は多額の外貨準備を積み上げており、経常赤字は持続可能な水準にまで縮小しています。対外債務のダイナミクスが安定し、財政を安定させるために必要な措置が取られていることを理由に、S&Pは昨年5月、インドネシア国債の格付けを投資適格級に引き上げました。

消費者物価指数(CPI)でみた総合インフレ率は8%から4%に減速し、現時点で中央銀行の目標レンジ内に収まっています。こうしたインフレ率低下の循環的な要因として、原油価格および食料価格の下落と、(実際のGDPが予想潜在成長率を下回る)マイナスの需給ギャップが挙げられます。GDP成長率は5.0%~5.5%で、2018年第2四半期の統一地方選挙を控え、ジョコ・ウィドド大統領が公約に掲げる6%を下回っています。

成長率が目標を下回り、インフレが抑えられている現状を踏まえ、インドネシア銀行はハト派(景気重視)の方針を維持するものと予想しています。第2四半期まで待てば、CPIが上昇し始めるかどうかを見極めることができますが、PIMCOの予想通りインフレ率が一段と低下した場合、中央銀行は第1四半期に利下げに踏み切る可能性があります。

しかしながら、さらに先を見通すと、今年上半期の統一地方選挙と2019年の大統領戦をめぐる不確実性に留意する必要があります。大衆迎合的な政策が推し進められると、金融政策が一段と緩和され、抜本的な税制改革が骨抜きになる恐れがあります。さらに、現時点で40%の外国人投資家比率は、需給面で引き続き懸念材料になります。また、原油価格の下落は、2017年/2018年の政府の財政見通しのリスクになります。

インド:投資機会は豊富だが、ボラティリティの上昇を予想

インドはここ数年、エマージング諸国の債券及び株式市場への資金流入で大きな恩恵を受けてきましたが、2017年は厳しい過渡期の1年となりました。ナレンダ・モディ政権は、高額紙幣の廃止や新たな財・サービス税の導入など、必要ながら苛烈な構造改革を断行しており、短期的な痛みが出ています。インド国民は2つの改革の進捗と実効性を疑問視しています。マインドの悪化により、民間設備投資は全般に失速しており、原油価格下落による交易条件の改善効果ははげ落ちつつあります。

しかしながら、PIMCOではインドは正しい方向に向かっていると見ており、格付け会社のムーディーズも同様の見方をしています。ムーディーズは昨年11月、経済構造改革の進展継続を理由に、インドの国債の格付けを1段階引き上げBaa2にしました。インド政府は銀行への資本注入を計画していますが、目標を適切に定め、厳格に実行するのであれば、信用サイクルを再活性化する助けになるとみられます。2018年の成長率は、7%を上回る水準に回復すると予想しています。ただしそれには、裾野の広い雇用創出が必要です。通貨は過去に比べてかなり安定しており、4%~5%のインフレ率は、新たな金融政策の枠組みの下で適切に抑えられているとみています。

海外投資家は今後もインドの高い成長率にひきつけられるとみられますが、債券市場の外国人投資家比率は許容される上限に近づいています。向こう1年、取引条件が不安定になることが予想され、投資家はポジションをより慎重に調整していくことになるでしょう。インドの社債は、アジアの同等の社債に比べて、引き続き相対的に割安だと見ています。(インフレ調整後)の高い金利と実現ボラティリティの低さも、インド・ルピーのロング・ポジションの支援材料になります。

韓国とフィリピンは要注意

投資適格級の韓国は、財政収支が健全で、債務全体に占める短期債務比率も足元で改善しています。しかしながら、朝鮮半島の地政学的緊張と高水準にある家計債務が懸念材料です。基本シナリオとして軍事衝突は想定していませんが、緊張状態が長期化すると見ており、韓国のデュレーションは引き続きアンダーウェイトとします。さらに、韓国の金利リスクのポジションが米ドルの金利リスクのポジションをアウトパフォームするとは見ていません。市場は、韓国銀行(中央銀行)が向こう12カ月に3回の利上げを実施するとの予想を織り込んでいるようです。PIMCOでは、もう少し緩やかな利上げを予想しており、通貨の上昇とコア・インフレ率の落ち着きを背景に、年内の利上げを1~2回と見込んでいます。

成長見通しの改善、高水準の対外的な流動性、サービス・セクターの継続的な拡大で、フィリピンは魅力的な投資先になっています。しかしながらバリュエーションは高く、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の政策の方向性が重大なリスクになると見ています。フィリピン中央銀行は、最近の通貨の変動(および突発的な下落)を予想ほど懸念していないようで、ネストール・エスペニリャ中央銀行総裁は10月に、「為替トレーダーはやるべきことをやるだろう」と述べています。

投資へのインプリケーション

2018年は中国経済が減速する可能性が高いものの、政府はそのペースをうまくコントロールするとみられ、アジアのエマージング諸国は引き続き魅力的な投資機会を提供すると予想しています。

グローバル経済とマクロ見通し、および投資家にとってのインプリケーションについてさらに詳しいPIMCOの見解は、2018年短期経済予測「成長のピークへ」をご覧ください。

「これ以上は望めない」を読む
著者

Robert Mead

アジア太平洋共同運用統括責任者

Tomoya Masanao

アジア太平洋共同運用統括責任者

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ご留意事項

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