PIMCOの視点

アジア市場2021年見通し:景気回復に伴う魅力的な投資機会

世界経済が緩やかに回復するなかで、アジアのマクロ経済の状況については前向きに見ています。

PIMCOでは、最新の短期経済展望「現実的な楽観論」において述べた通り、2021年はワクチン接種の拡大と継続的な財政・金融政策の支援を背景に、世界の生産と需要は力強く反発すると予想しています。中国経済は既に危機前の水準を上回り、新年に入って力強い成長モメンタムを見せています。そのため、昨年平均2%を下回ったGDP成長率は、2021年は8%を上回る記録的な伸びとなると見ています。しかし、このような見通しに対する三つの主要リスクの一つは、年内に予想される中国の信用緩和から引き締めへの転換です。

また、インドとインドネシアについても、民間投資は引き続き縮小するものの公共投資と消費を支える政府の景気刺激策によって、年内の景気回復を予想しています。両国における不確定要素としては、新型コロナウイルス抑制と効果的なワクチン接種プログラムが挙げられます。

アジア太平洋地域では、最近結ばれた貿易協定により、今後数年にわたり経済統合が活性化され、より深まるでしょう。昨年終盤、中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの各国と、東南アジア諸国連合(ASEAN)10か国は、8年に及ぶ交渉ののち、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名しました。2022年に全面的な施行がなされれば、RCEPは世界最大の貿易圏となり、世界のGDPと貿易の約30%を占めることになります。これに加えて2020年末には、中国がEUと包括的投資協定(CAI)に大筋合意しました。EUは中国の二番目に大きな貿易相手であり、CAIによって代替エネルギー車や医療サービスなどの重要分野を含む、広範な市場へのアクセス(EUによる)が可能になります。

これらの貿易協定がすぐに経済的な効果をもたらすわけではありませんが、中期的にみれば、自由貿易や投資やグローバル化を包括する、世界で最も活力ある経済圏として、アジアの地位を確固たるものにするでしょう。また、それらは破壊的な地政学的緊張の緩和に寄与し、パンデミック後のアジアの景気回復を促進する効果も期待できます。

2021年アジアの潜在的な投資機会

  • 中国人民元と現地通貨金利のエクスポージャー
  • 中国のニューエコノミーと消費者セクター向けクレジット
  • ヘッジ無しインドネシア通貨建て債券
  • インド・ルピー(FXエクスポージャー)

中国:財政支援の継続による着実な回復

2021年の約8%と予想される中国経済の成長率の回復は、消費とサービス主導によるものとみられます(図表1参照)。インフラ投資と不動産投資は、政府による刺激策がフェードアウトすることから昨年比で減速するものの、製造業による投資は、企業業績と景況感回復に加え、政府による産業の高度化とサプライチェーンの現地化に対する支援によって、上昇すると予想しています。

図表1:消費と投資が中国の景気反転を牽引

昨年の中国の輸出は、主に個人用保護具(PPE)やテレワーク関連機器への強い需要によって市場シェアを拡大しました(図表2参照)。しかし、今年は世界の需要拡大がある程度下支えとはなるものの、世界全体の生産能力が回復し、ワクチンもより広く行き渡ることから、平均的な水準に戻るとみています。消費者物価指数(CPI)でみたインフレ率は、消費の回復や豚肉価格の正常化などを背景にコア・インフレ率も持ち直すことから、緩やかなものになるでしょう。

図表2:新型コロナウイルスが2020年の中国の輸出拡大に貢献

財政政策による支援は継続すると予想していますが、昨年よりもその水準は低下するとみています。金融環境については、昨年急上昇したクレジット成長率は鎮静化するでしょう。金利と預金準備率は変わらないとみていますが、中国人民銀行は、主要産業を支援し市場環境を調整するため、的を絞った緩和政策を採る可能性があります。また、住宅セクターを中心に加熱状態にある分野については、リスク緩和政策が再び強化されるでしょう。

ダウンサイドリスクとしては、バイデン米国新大統領政権下での予期せぬ米中間の緊張再拡大や、マクロ政策の過剰な引き締めなどにより、予想を下回る経済成長や市場ボラティリティの上昇、あるいはその両方が起こる可能性もあります。新型コロナウイルス拡散を上手く封じ込めたことにより、中国国内の経済活動は比較的安定していますが、一部のサービスセクターでは、公衆衛生上の問題が引き続き足かせとなるでしょう。また、バイデン新大統領が、トランプ前大統領が進めた対立的な政策の一部を踏襲する可能性もあります。中国国内では、12月に開かれた年次の中央経済工作会議において、過剰な引き締めに対する市場の懸念を払拭するため、切れ目のない政策運営の方針が示されました。

2021年は中国の第14次五カ年計画(2021年-2025年)の最初の年で、安定した経済成長が予想されます。政府は引き続き質の高い成長とリスク緩和を重視すると予想しています。社会的セイフティネットの強化やサービスや商品へのアクセス推進などの需要サイドの改革により、中国の消費はさらなる伸びが期待されますが、それによって同時に、ハイテクで質が高く、環境にやさしい生産体制やインフラに向けた、新たな設備投資の機会も生まれるでしょう。中国が新たに掲げた意欲的な気候変動に関する目標(2060年までのカーボンニュートラル実現など)に向けて、政府がグリーン経済移行への政策支援を行うだけではなく、民間も資本を関連産業に投じるでしょう。風力・太陽光発電、電気自動車、エネルギー貯蔵システム、グリーンインフラ、環境関連の設備やサービスなど、中国の新エネルギーセクターには大きな可能性があります。

インドネシア:通貨と国債に十分な投資根拠

昨年、1998年のアジア金融危機以来、最も深刻な景気後退に陥ったインドネシア経済は、GDP成長率が−2%から+4.8%程度に回復すると予想しています。新型コロナウイルスによるパンデミックは観光産業と国内消費に大きな打撃を与えましたが、昨年後半にはコモディティ価格と輸出が急速な回復を見せました。政府による刺激政策が公共投資と消費を支え、鉱業と製造業の輸出も力強く反転しています。しかし、民間投資は委縮したままで、家計所得と内需は依然として低迷しています。

インドネシア中央銀行は、昨年パンデミック対策として政策金利を125ベーシスポイント引き下げ3.75%とし、また、国債発行を支えるために量的緩和(QE)プログラムをスタートし、国債の純発行額の40%を買い取っています。今年はさらに25~50ベーシスポイントの利下げを実施し、政策金利を3.25%~3.50%にすると予想しています。今年のインフレ率(CPI)は、中央銀行の3%前後の目標レンジを下回る2%程度にとどまるとみられ、経常収支のバランスも改善しつつあることから、中央銀行は、債券の発行と流通の両市場でQEを通じて長期債利回りを引き続き抑えながらも、さらなる利下げの余地を残しています。

一方、財政面は緊縮方向に舵を戻すでしょう。前例のないパンデミックによる経済ショックに対処するため、2020年~2022年の間、財政赤字幅の上限3%は一時的に棚上げされました。昨年の財政赤字は6.4%、今年は5.8%と予想されています。政策担当者は、達成困難が予想されるものの、赤字幅を2023年までに3%以下に縮小する目標を掲げています。

これらの見通しに対し、景気回復の妨げ、社会的安定を脅かすパンデミックの継続的な影響、年後半に予定されるワクチン普及プログラムの有効性といったマクロ経済上の主要なリスクが存在します。また、昨年景気刺激のための財政資金の配分が遅れた点に注意する必要があるものの、それにより、今年は追加的な財政支援拡大の余地が残っているとも考えられます。さらに、なんらかの世界的なショックにより為替、債券、株式市場が暴落すれば、協調的な金融と財政による一段の緩和余力は強く制限される可能性があります。

財政赤字の拡大によるソブリン格付け引き下げのリスクもありますが、インドネシア・ルピア、現地通貨建て国債、ドル建てのソブリン債には十分な投資根拠があります。インドネシアはその低い債務とレバレッジ水準から、パンデミック以前には安定的な投資適格の格付けを維持していました。ここ10数年間で政府の対GDP債務は、57%(2004年)から41%(2020年)まで低下しています。同様に、対外債務もGDPの55%から36%まで低下しました。インドネシア中央銀行の1,350億米ドルの公的外貨準備高は、インドネシア通貨と国債の強力なバッファーとなっています。ヘッジ無しインドネシア現地通貨建て債券は、同様の市場と比べて利回りも高く、中央銀行の下支えもあり、十分魅力的なインカム獲得の機会を提供してくれます。

インド:インフレ高騰で低い利下げ見通し

今年のインド経済は、昨年の-9.7%から8.5%程度に回復するとみています。政府は刺激政策によって消費と農業を支え、輸出と製造業も立ち直りつつあります。しかし、民間投資は(2020年第3四半期まで)5四半期連続で縮小し続けています。2022年までは、パンデミック以前の経済活動の水準には戻らないと予想しています。

CPIはコンセンサス(4.3%)より若干高くなるとみており、2021年は4~5%に上昇すると予想しています。需要と原油価格は低いものの、広範囲に及ぶサプライチェーンの崩壊と食糧価格高騰により、ヘッドライン・インフレ率とコア・インフレ率は、どちらも5%を上回る水準が続くでしょう。また、インド準備銀行は、当面の間金利を4%に据え置くとみています。パンデミック対応のために115ベーシスポイントの利下げを実施しましたが、高止まりするインフレ率、金融システムへの十分な流動性供給維持のためのQE活用重視、拡大する財政赤字の補填のために発行される国債の膨大な供給量消化の必要性から、インド準備銀行によるこれ以上の利下げ余地は限られています。コロナ対策パッケージにより、2021年財政年度(2021年3月に終了)の中央政府の財政赤字は、GDPの7.5%に達する記録的な数字になる見込みです(これは一般政府の財政赤字で、地方政府の赤字を含めるとGDPの12%)。景気は緩やかに回復しつつありますが、回復基調を維持するには一層の刺激政策が必要となるでしょう。中央政府の財政赤字は2022年財政年度にはやや低下し、GDPの6%になると予想しています。

主要なリスクは、コロナ感染封じ込め状況の不透明性と、年後半のワクチン普及プログラムの有効性です。また、金融システムと企業には依然としてレバレッジ削減のプレッシャーがあり、景気対策の資金が民間セクターまで十分には波及しない懸念もあります。さらに、格付け機関のムーディーズとフィッチは、政府債務の上昇、巨額の財政赤字、金融システム上のストレスなどの理由から、BBB-のインドのソブリン格付けの見通しをネガティブに変更しました。インドは外貨建てのソブリン債は発行していませんが、ソブリン格付けが投資適格から外れれば、準ソブリン債や社債クレジットへの影響は免れないでしょう。

通貨ルピーについては上昇の可能性もあり、投資機会があるとみています。輸入減少と原油価格低下により、インドの経常収支は今年、GDPの1.5%にあたる390億米ドルの水準となると予想され、2007年以来初めて黒字になるとみられます。力強い海外直接投資と株式市場への資金流入に伴い、昨年の国際収支の黒字はGDPの3%を超えました。インド準備銀行は引き続き外貨準備を積み上げ、インド・ルピーのこれまで以上の上昇を許容すると考えています。

ポートフォリオの注意深いポジショニングが重要

世界経済が緩やかに回復するなかで、PIMCOでは、アジアのマクロ経済の状況については積極的な見方をしています。確かに、市場は既にある程度の回復を織り込み、金融市場には新たなボラティリティ上昇の種も見られますが、発生する投資機会を着実に捉える準備を整えています。国別投資機会を特定し、バリュエーションが魅力的でデフォルト・リスクが極めて低いクレジットを慎重に選別することに注力する方針です。

2021年の世界経済に対するPIMCOの見通しと投資への意味合いに関する詳細については、短期経済展望「現実的な楽観論」をご覧ください。



(2021年1月27日発行)

著者

Stephen Chang

ポートフォリオ・マネージャー

Carol Liao

中国担当エコノミスト

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