PIMCOブログ

2018年米国政策見通し

投資家の最大の関心は、より成長志向の政策が議会で可決される機運が高まるのか、それとも米政界が機能不全に逆戻りしするのかということでしょう。

米政界は2017年の大半、散発的な動きに終始しましたが、トランプ政権と共和党が主導する議会は最終的に――大方の予想に反して――政権最大の公約の一つである抜本的な税制改革の実現にこぎ着けました。これは2018年の米国の実質GDPを0.2%~0.3%押し上げる効果があるとみられます。

2018年を迎え、投資家の最大の関心は、より成長志向の政策が議会で可決される機運が高まるのか、それとも米政界が機能不全に逆戻りしてしまうのか、ということでしょう。そこで本稿では、2018年の見通しについてPIMCOの見方をお伝えします。

インフラ整備

インフラ整備は2016年の大統領選の重要なテーマであり、議会民主党も強力に支持していますが、現時点では、年内に大きな牽引力になるとは見ていません。

仮にトランプ政権が、与野党が協議できる可能性が高かった2017年前半にインフラ整備に取り組んでいれば、この予想は違ったものになっていたでしょう。この1年の動向と、11月の中間選挙で民主党が勝利を目指すことを踏まえると、民主党に妥協するインセンティブがあるとは思えません。上院でインフラ整備法案の可決に必要な60票を確保できるかどうかは、民主党がカギを握っています。民主党は協議の前提条件として(トランプ政権が検討しているといわれる2,000億ドルを大幅に上回る)巨額パッケージを主張するとみられますが、これでは議会共和党の多数派に相手にされないでしょう。

社会保障改革

同様に、社会保障政策でも有意義な改革案が可決されるかどうかは疑問です。社会保障改革案は、財政調整法を活用して(上院で60票ではなく50票で)可決することが可能ですが、特に選挙を控えた年に、社会保障・給付をめぐる政策を改革する難しさを考えれば、票の確保は簡単ではないとみられます。

財政措置と債務上限

このところ与野党の連携は不足していますが、1月19日の暫定予算の失効をはじめ、次々と財政措置が必要となる中、妥協を迫られることになるとみられます。DACA(幼少期に入国した不法移民の強制退去処分を延期する措置)や、国防予算および非国防予算の増額などに関し、(1月か2月には)最終合意が図れるものと予想しています。実は、自然災害対策費に加え、こうした「裁量的」経費は、2017年の水準を大きく上回る可能性があり、これも実質GDP成長率を押し上げる要因になります。(PIMCOでは、実質GDP成長率の押し上げ効果を約0.2%と見ています)。

また民主・共和双方が、3月には引き上げを迫られる債務上限問題を解決する意向を持っているとみられます。予想より早く妥協が成立すれば、市場を混乱させかねない材料が解消されることになります。

その他の法案

その他の問題でも、議会で進展が見られる可能性があります。その1つが銀行規制緩和法案で、上院本会議での審議・採決に送付されていますが、これが可決されれば、中小金融機関の貸出拡大につながる可能性があります。また、対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する改革法案は、民主・共和両党の右派に受けが良い政策です。

通商政策

しかしながら、2018年の米政界で最も重要な動きは、議会の外で繰り広げられる可能性があります。通商政策に関して、選挙期間中、過激な主張を展開したトランプ大統領も、これまでのところ(TPPからの離脱を除いて)大きな政策転換はできていませんが、今後はより積極的な行動に出ると予想しています。議会抜きで政策を転換でき、大統領の政治基盤に受けが良いのが通商分野です。考えられる政策行動として、安全保障上の懸念を名目にアルミニウムと鉄鋼の輸入関税の引き上げ、中国の知的財産権侵害に関する301条調査をもとに中国製品に対し報復関税の適用、NAFTA(北米自由貿易協定)からの離脱、が挙げられます。NAFTAについては、1月下旬に予定されている第6回協議が不調に終われば、離脱する可能性が高まります。

世界のマクロ経済、政策、市場の動向と、投資家にとってのインプリケーションについてさらに詳しいPIMCOの見解は、2018年短期経済予測「成長のピークへ」をご覧ください。

「成長のピークへ」を読む

リビー・キャントリル PIMCOの公共政策問題担当の責任者で、PIMCOブログ の定期的寄稿者。

著者

Libby Cantrill

エグゼクティブ・オフィス

プロフィールを見る

Latest Insights

PIMCOの視点

国連の持続可能な開発目標:影響度によるパフォーマンスの測定

PIMCOのESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みの重要な目的の一つは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を対話に取り入れることです。PIMCOがESGへの取り組みを進めていく際、どこに重点を置き、どう説明責任を果たすのか、そして最終的には影響度合いを測る際の枠組みの一つになりうるからです。

関連コンテンツ