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今後の金融ボラティリティ

リスク資産の市場は債券市場が発する注意信号を無視していますが、それは正しいのでしょうか。

本稿は元々、2017年7月24日の「プロジェクト・シンジケート」に発表したものです。

債券投資家は火星人で、中央銀行家は金星人である――過去10年にわたる異例の金融緩和を縮小するというシグナルに対して債券市場が示したネガティブな反応は、そのように評されています。しかしながら、リスク資産の市場は、債券市場が発するこの注意信号を無視しています。リスク資産の市場は正しいのでしょうか。

ほとんどの先進国で、足元のインフレ率は低水準にとどまっています。しかしながら、これまでハト派的な姿勢を取ってきた米国や英国の中央銀行は、2008年の世界的金融危機の発生以降、推し進めてきた金融緩和策の巻き戻しに意欲を示しています。

インフレ・ターゲットを掲げる中央銀行は、インフレ期待が安定している時、インフレ率の変化は経済のスラック(緩み)の量の変化に起因すると想定しています。現在のように、失業率が景気循環の平均を大幅に下回り(米国も英国も数十年来の低水準にあり)、スラックが縮小している状況では、インフレ率はいずれ上昇すると考えられます。

金融危機によって生じた成長やインフレに対するマイナス要因を払拭すべく、中央銀行が維持してきた緩和的な金融政策は、過去に比べて既にかなり長期にわたっています。とはいえ中央銀行は、過去の資産バブルの経験から、過度な金融緩和をあまりに長期にわたって放置しておくと、次の景気循環では自然利子率と潜在成長率をさらに低下させ、落とし穴をどんどん深くしてしまうことになると認識しています。

こうした中で、リスク資産の市場の投資家がこれほど安閑としているのは正しいのでしょうか。差し当たって、確たる答えがあるわけではありません。しかしながら、過去の平穏期の記録を鑑みれば、クロス・アセット市場のボラティリティが低い時には、リスクを軽減するのが手堅い戦略であると言えます。

市場ボラティリティは低水準にあります。今回は違うのでしょうか。

金融市場および実体経済への過度なリスクテーク――金融政策による刺激を待ち望むような過度なリスクテーク――の兆候がより明確な場合、投資家が懸念すべき根拠は大きいと言えるでしょう。2000年のドットコム・バブルと2008年までの不動産バブルが典型ですが、資産価格が過度に強気化した時期には通常、異例の金融緩和策が取られていることから、中央銀行は現在、段階的かつ予想できる形で金融緩和を解除することによって、景気循環の長期化を図ろうとしています。

しかしながら、資産価格バブルには、今回だけは違うと市場や中央銀行に思い込ませるような、新たなイノベーションを伴っている場合もあります。金融危機以降に関していえば、資産価格のバリュエーションの上昇を正当化するもっともな理由として、R*と略される、貯蓄の「価格」(自然利子率)が世界的に低下していることが挙げられます。企業収益が潜在成長率(基礎的な成長率)の関数として増加する一方、資金調達コストが一段と低下したR*の関数であり続けるとすれば、株価収益率などの指標は過去に比べて構造的に高くなり、クレジット・スプレッドは全般にタイトになるはずです。

長期金利を標的とした中央銀行の政策

この議論は現時点では正しいように見えますが、投資家には懸念すべき理由が少なくとも2つあります。第1に、潜在成長率と自然利子率の差が資産のバリュエーションを押し上げているとすれば、その差の変化が資産のバリュエーションの変化につながると考えられます。かつての中央銀行は、伝統的な手段として短期金利を変更していましたが、今回も単純にそうするのであれば、さほど懸念する必要はありません。

しかしながら、現行のサイクルでは、中央銀行は間接的な手段――具体的には長期金利への依存を強めています。こうした手段の効果は、投資家の期待によって形成されるため、突然かつ極端にシフトしやすくなります。たとえば2013年、米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和プログラムの縮小開始を示唆したことをきっかけに、いわゆる「テーパー癇癪」が起こり、債券市場からマネーが逃げ出し、債券利回りは急上昇しました。

先行きが懸念される第2の理由は、高いバリュエーションが、必ずしも高いリターンやボラティリティ調整後のリターン向上を意味するわけではありません。潜在成長率と自然利子率の差がプラスであることは、資産バリュエーションの高さを正当化するとしても、潜在成長率が低下すれば、資産クラス全般のリターンは低下することになります。金利が自然利子率に向かって上昇するにつれて、金融状況はひきしまり、リスク資産のバリュエーションは低下するはずです。中央銀行はこうした引き締まりを段階的に実現したい意向ですが、非伝統的な金融政策の短い歴史を振り返ると、資産価格の見直しは突如として起こり、時に破壊的なほど極端になりうることがうかがえます。

市場が暴走する直前にみられる低水準のボラティリティ

では、なぜ投資家は、極端に低いボラティリティを利用して、ポートフォリオのリスクをヘッジしないのでしょうか。ボラティリティが低い時、常に市場が暴走するわけではありませんが、市場が暴走する時は必ず、直前までボラティリティが極端に低いものです。不均衡が極端になっている時こそ、ヘッジが必要です。

火星でも金星でもないこの地球上では、中央銀行と債券投資家には共通点があります。両者とも、現在の極端に低いボラティリティは持続することはできず、望ましくないと懸念しています。何といっても、債券、為替、株式のボラティリティがいずれも低い状況は、過去に3度しかありませんでした。世界的金融危機の直前、テーパー癇癪の直前の1カ月、そして2014年の夏です。

要約すると、ボラティリティがいずれ通常の水準に上昇するのは間違いありません。今日の投資家にとって教訓は明らかであり、リスク・エクスポージャーの規模の縮小が手堅い戦略だということです。

より詳しいPIMCOの長期見通しについては、「転換点」をご参照ください。

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著者

Gene Frieda

グローバル・ストラテジスト

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