減税や税制改革にかける、議会共和党のこれまでの努力には、めざましいものがあります。数週間のうちに下院で法案を成立させ、上院も今週後半、独自案の採択を見込んでいます。レーガン減税の成立時には、議会との協議に3年近くを要した事実を考えると、驚くべき早さです。

何かを成し遂げようとする時、政治は熱を帯びるものですが、投資家としては落とし穴に留意し、税制改革が遅れる可能性や、完全に頓挫しかねない可能性まで考慮しておくべきです。

賛成票の獲得に苦戦

最大の障害は、言うまでもなく、法案の可決に必要な50人の賛成票を上院で獲得することです。共和党は、法案を検討するにあたり財政調整措置を活用しているため、(本来の60票ではなく)50票あれば法案を可決させることができます。しかしながら現時点で、民主党上院48人のうち賛意を表明している議員はいません。共和党のミッチ・マコーネル上院多数党院内総務は、法案を通すために52人の共和党議員のうち50人、会派の96%の支持を獲得する必要があります。これはオバマケア廃止法案の時とおなじ構図ですが、この時は結局、失敗に終わっています。現時点で税制改革案に暫定的に反対ないし態度を保留している共和党上院議員は6人以上にのぼります。

反対の理由としては、様々な懸念が挙げられています。議会予算局は税制改革が実施された場合、今後10年で財政赤字が1兆4,000億ドル増えると「試算」していますが、財政赤字反対の強硬派は、2025年に期限が切れる個人減税の多くが延長される見通しを踏まえれば、法案の真のコストはさらに膨らむと危惧しています。オバマケアの土台である「個人加入義務」の撤廃を懸念する議員もいます。また一部の上院議員は、この法案が「メインストリート(産業界)」にとって十分でないことを懸念しています。これに関連して、法案の支持率の低さを懸念する声もあります。現時点の支持率は25%前後で、今世紀に成立した法案の中で最も低く、オバマケアや不良資産救済プログラム(TARP)すら下回っています。

こうした上院議員の懸念の一部を緩和することは可能でしょうが、(たとえば、個人の税率をさらに引き下げるなど)すべてに対処することはコストが高くなり過ぎるため、現実的ではありません。ここから、もう1つの落とし穴が浮き彫りになります。複雑な財政調整措置を利用することで、上院の法案に11年目以降に赤字が増える案を盛り込むことが難しく、それによってマコーネル上院多数党院内総務が潜在的な「反対票」を「賛成票」に変える手立てが制約されることになります。

こうした懸念が「反対」票に回り始め、税制法案が翌週にずれこむと、税制改革はたちまちもう一つの政治的難題――暫定予算が切れる12月8日までに財源を確保しなければ、政府機関が閉鎖するという問題に直面することになります。

2つの法案の調整:さらなるハードル

マコーネル上院多数党院内総務が立法のマエストロの評判にたがわぬ手腕を発揮して、上院で法案が成立したとしても、さらなる障害が立ちはだかります。上下両院の法案の相違点を解消する必要があるのです。2つの法案には類似点も数多くあるものの、いくつか主要な点で違いがあり、妥協案が再び両院で採決にかけられた時に最終的に否決される恐れがあります。

総じて政治的には税制改革法案の成立に向けて強い意志がみられますが、投資家は今後待ち受ける障害を念頭においておく必要があります。

リビー・キャントリル PIMCOの公共政策問題担当の責任者で、PIMCOブログ の定期的寄稿者。

(2017年11月28日)

著者

Libby Cantrill

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