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債券市場―新たな局面へ?

世界の主要債券市場が新たな局面に移行したわけではないと考える4つの理由

各国の債券市場における価格調整が世界的な株価の暴落につながったことを受けて、新たな局面に移行するような気配が漂っています。市場も中央銀行もインフレを正確に予測できなかったことを考えれば、債券市場がどのタイミングでどのような局面に移行するのかについても、高い確度で予測できるとは限らないことを認識すべきでしょう。しかし、このような移行は長期的ではなく短期的なものになる可能性が高いと言えます。

2017年9月以降、10年物米国債の利回りは大きく変化しましたが、次の4つの理由から、世界の主要債券市場が新たな局面に移行しているわけではないと考えることができます。

第1に、米国の景気サイクルの成熟やインフレ環境の緩やかな正常化を考えると、市場価格に織り込まれた政策金利の見通しは合理的と言えます。米国の先物市場では、2020年1月までに概ね4回の利上げが織り込まれていますが、米連邦準備制度理事会(FRB)が「ドット分布(長期的な政策金利の見通し)」の公表を始めて以来、市場とFRBの見通しが一致するのは初めてのことです。

第2に、主要な中央銀行が金融危機後に非伝統的な金融政策を採用した結果、世界の債券市場の結び付きが一段と強まっています。たとえば、日本銀行と欧州中央銀行(ECB)は、当面は緩和的な金融政策にコミットする姿勢を強調しています。日本や欧州の市場参加者による外国債券購入の動きは、他の先進国の債券利回りの短期的な価格調整の強さを緩和する可能性があります。

第3に、これまでの量的緩和政策の影響が残っている点です。中央銀行の政策は、民間の市場参加者から金利やコンベクシティの多くを奪う結果になりました。中央銀行に大量に積み上がった債券は、これまでもそしてこれからも、ボラティリティの発生要因を抑える役割を果たすでしょう。

最後に、株式市場の調整は、米国における税制改革と世界経済の目覚ましい成長に伴う市場の熱狂に対する反動だと思われます。極端に割高な株価が修正された場合でも、債券利回りは短期的な景気回復に合わせて徐々に上昇する公算が大きく、むしろ無秩序な価格調整が生じる可能性(その結果、すでに成熟期に入った景気回復を阻害する可能性)は低下するでしょう。

債券市場を新たな局面に誘導するリスク

一方で、債券市場においてどのような変化が起きるのか、そもそもそれが発生するのかという点に関連して、3つの大きな不確実性の源泉が存在します。

米国の現代の景気サイクルは、何らかの金融政策のショックによって終了することが一般的だと言われていますが、今回のサイクルが異例なのは、金融政策のショックとインフレ・リスクに、財政政策が加わっている点です。米国の税制改革が財政赤字、経済成長、インフレに与える影響が極めて不透明なため、長期債利回りには現在よりも高いリスク・プレミアムが織り込まれるべきという見方も存在します。

さらに、ECBと日銀が金融政策の正常化を試みる際に、主要な債券市場の結び付きの強さがいずれ問題に発展することも考えられます。スイス中銀が価格目標政策からの脱却を試みた際に混乱が生じたように、日銀はイールドカーブ・コントロールを終了する際に大きな課題に直面する可能性があります。

最後に重要な点として、この1年間に米ドルは世界の通貨バスケットに対して10%下落しました。米ドル安は、米国の緩和的な金融情勢を米国外に輸出する効果をもたらしました。米国が先行して景気回復しているため、金利差が一貫して米ドルの上昇要因となってきたものの、米国内外の経済成長格差が縮小し始めるにつれて、米ドル安が段階的に進んでいます。

サイクル終盤での財政刺激策の影響により、再び米国が経済成長において優位性を確保した場合には、米ドルは回復する可能性があります。他の条件を一定とすれば、米ドル高は米国の金融引締め情勢を米国外に輸出する効果をもたらすでしょう。短期的な景気回復の勢いが強いため、対米ドルでの通貨安が生じる結果、欧州と日本では量的緩和からの脱却ペースが加速し、中国では再び資本流出に見舞われ(その結果、中国人民銀行はさらなる引き締めを余儀なくされるでしょう)、コモディティ価格には下落圧力がかかる(多くの新興国にとって交易条件がマイナスとなるショックを受ける)ことも考えられます。

以上の3つのリスクに共通することは、債券利回りの短期的な上昇が、長期的には低い債券利回り水準に収斂するという見方が裏付けられることです。ほとんどの先進諸国では、高齢化が進むとともに債務残高が高水準で推移しているため、この10年間に修正が進んだものの、世界のGDP成長率の金利に対する感応度は高い状態が続いています。

短期的な価格調整は、債券市場の新たな章の幕開けとはならない

これまでの議論において、世界経済の回復局面が成熟するなかで債券利回りが上昇し続けることはない、と主張しているわけではありません。また短期的な価格調整が、債券市場が新たな局面に移行するきっかけになるわけではありません。重要な問題はボラティリティが低い金利環境の持続性であり、これが持続した場合、短期的な利回り上昇と長期的な利回り低下の間のトレードオフは悪化するでしょう。

株式市場の調整は、長期にわたってボラティリティを人為的に抑制することの危険性を債券市場に教えてくれます。世界経済の足並みを揃えた回復が進むなかで、ボラティリティを上昇させることなく過剰な刺激策の縮小を目指す中央銀行の自己矛盾が試されることになるでしょう。

PIMCOの債券市場、株式市場、その他資産についての見方については、「 アセットアロケーション展望 安打の積み重ね」をご覧ください。

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ジーン・フリーダはPIMCOのロンドン・オフィスを拠点とするグローバル・ストラテジストで、PIMCOブログに定期的に寄稿しています。

著者

Gene Frieda

グローバル・ストラテジスト

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