米連邦準備理事会(FRB)が段階的に政策金利を引き上げ、株式市場が最高値を更新し続けるなか、多くの投資家が債券の資産配分を見直しています。本レポートでは、PIMCOの米国コア戦略担当最高投資責任者(CIO)のスコット・マザーが、債券、株式の両市場の先行きが不透明な中、コア債券運用が果たしうる役割及び、変化する環境を30年にわたって乗り越えてきたPIMCOのトータル・リターン戦略についてご説明します。マザーは、グローバル・クレジット担当CIOのマーク・キーセル、アセット・アロケーションおよびリアル・リターン担当CIOのミヒル・ウォラーと共同で、トータル・リターン戦略を運用しています。

問: 現在の投資家のポートフォリオで、コア債券への資産配分が果たす役割について教えてください。

スコット・マザー: 投資家にとって今は刺激的な時ですが、不透明感がきわめて強い時でもあります。わずか1年前に比べても、アップサイド、ダウンサイドの両面でリスクが大幅に高まっています。

米国ではゼロ金利に近い状態が約10年にわたって続いてきましたが、景気の力強さが増していることから、FRBは政策金利を引き上げ、超緩和策の縮小に乗り出しました。新たに誕生したトランプ政権は財政支出の拡大と税制改革を目指しており、これらはいずれも成長率を押し上げる可能性があります。しかしながら、ダウンサイドのリスクも存在します。政治の分極化、過去最高水準にある株価(ならびにリスク資産全般の高いバリュエーション)、地政学的緊張の高まり、予想外のインフレといったことが挙げられます。

不透明感がこれほど強い中で、幅広い投資ポートフォリオに安定性をもたらすものとして、コア債券への資産配分は安心材料を提供できる可能性があります。信用力の高い債券に分散投資を行うコア戦略は、元本を保全しながら、インカム(利回り)と元本成長の組み合わせによる魅力的なリターンの提供を目指しています。また足元で特に重要な分散化のメリットも提供します。投資家の株式への資産配分との分散により、ポートフォリオ全体のリターンを均すことが可能となります。

ダウンサイド・リスクの低限と投資家のポートフォリオの分散という特性は、市場サイクルが好調な局面でも不調な局面でも、一貫してコア債券戦略の強みとなってきましたし、今後もそうあり続けると見られます。

現在のようにきわめて不透明な環境では、コア債券への資産配分がかつてないほど重要になっていると考えています。

問: 過去30年にわたって、コア債券への資産配分の役割はどのように進化してきたのでしょうか。

マザー: コア債券への資産配分の役割は、債券市場そのものと共に進化してきました。PIMCOがトータル・リターン戦略の運用を開始したのは1987年で、今月30周年を迎えます。当時の債券市場は、100兆ドルにものぼる現在のグローバルな市場とはまったく違っていました。主な発行体 は政府や信用力の高い企業で、主な投資家は保険会社など長期債務の履行を重視する機関であり、こうした 状況が10年以上にわたって続きました。

米国のインフレ率と金利水準が1980年代の2桁台から低下すると、こうした状況は大きく変わりました。モーゲージ債、債券先物とオプション、資産担保証券、ハイイールド債、エマージング債が開発されるたびに、発行体の領域は拡大しました。そうしたなか、PIMCOは先陣を切って利回りのみならず、価格上昇も狙うことによって債券リターンの最大化を目指しました。PIMCOのトータル・リターン戦略は、個人のお客様も含め幅広い投資家に、こうした新しいアプローチをいち早くご提供した戦略の1つです。

以来、アクティブ・分散・中期運用型のこの戦略は、多くの投資家に債券に関わるメリットを提供することを目指してきました。その結果、多くの投資ポートフォリオで欠かすことのできないもの――すなわちコア債券への資産配分となったのです。

問: トータル・リターン戦略は、過去30年にわたって金利と市場の変化をどのように乗り越えてきたのでしょうか。

マザー: 30年前、モーニングスターの米国・中期債のカテゴリーでは、投資の選択肢は100本もありませんでした。現在では1,000本を越えていますが、トータル・リターン戦略ほど長く運用を続けているファンドは36本に過ぎません。市場環境が移り変わるなか、トータル・リターン戦略は長期にわたって概ね良好なパフォーマンスを提供してきたと言えるでしょう。

こうしたパフォーマンスを実現するため、PIMCOではリスク管理を特に重視した、保守的で長期的な運用方針を取りながら、アクティブ戦略を実行しています。トータル・リターン戦略は信用力の高い債券に投資する戦略であり、競合する一部の戦略と違って、超過リターンの唯一の源泉としてクレジット・リスクに頼ることはしていません。1つのトレード・アイデアでホームランを狙うのではなく、多様な源泉にリターンを求めています。ポジショニングと個別銘柄の選定にあたっては、トップダウンのマクロ見通しにボトムアップのクレジット・リサーチと厳格な計量分析を組み合わせた、PIMCOの実績ある投資プロセスを活用しています。230人以上のポートフォリオ・マネジャーと50人のクレジット・アナリストから成るPIMCOのチームによる運用は、数十年にわたって磨き抜かれたプロセスであり、トータル・リターン戦略の底堅さを支えています。

トータル・リターン戦略の長期の運用成績をご覧いただけば、環境が変化するなか、とりわけ金利が上昇し、それに伴いボラティリティが上昇するなかでも、当戦略が強みを発揮した時期をいくつもご確認いただけます。トータル・リターン戦略の本質――投資家のポートフォリオの安定した支えとなる多様なアルファ戦略の追求――にこだわり続けることで、金利の方向やクレジット・スプレッドの如何にかかわらず、変化する市場環境を乗り切ることができてきたのです。それは、この戦略の将来に自信を持っている理由でもあります。

問: 金利や債券についてのPIMCOの見通しを教えてください。

マザー: 米国では、今年から来年にかけてFRBが段階的な利上げを続けると予想しています。また、世界的に景気が力強さを増すにつれ、米国以外の中央銀行も緩和的な金融政策の解除に乗り出すものと見られます。欧州中央銀行(ECB)は今年年末までには緩和解除に乗り出し、大規模な量的緩和(QE)策の縮小を発表する見通しです。また日銀は、これ以上の利下げを回避するため、既にイールドカーブ・ターゲティングへと政策の枠組みを転換しています。

こうした国や地域での金融緩和の縮小は、きわめて重要な動向です。全般的なボラティリティの低さが、過去5年あまりの市場の大きな特徴であり、中央銀行による未曾有の支援策を背景に、幅広いリスクテークが功を奏しました。FRBを先陣としてこの支援が打ち切られると、市場ボラティリティが上昇し、ファンダメンタルズへの注目が高まると予想されます。こうした環境で、我々アクティブ運用者は、投資家の皆様の元本保全と魅力的なリスク調整後リターンの確保を追求できると考えています。

問: 短期および中期的に、コア債券の投資機会はどこにあると見ていますか。

マザー: 低金利はすべての市場に影響を与えました。中央銀行の金融緩和策は、幅広く資産クラスのバリュエーションを下支えすることで、事実上、将来のリターンを先取りした格好です。そのため、リターンは、今後、低下することが見込まれます。投資家の目標リターンを達成するうえでは、アルファが特に重要になります。

では、追加のバリューをもたらす投資機会がどこにあると見ているのでしょうか。利回りの水準の低さを踏まえ、金利エクスポージャー全般をアンダーウエイトとしていますが、他の先進国、特に英国や日本に対して米国の金利エクスポージャーを選好しています。また利回り曲線の短期ゾーンと長期ゾーンは魅力に欠けることから、中期ゾーンを選好しています。

中期的にはインフレ圧力が高まる可能性があると見ており、(2016年後半のような)インフレ期待が債券利回りを押し上げる可能性をヘッジする手段として物価連動国債(TIPS)が魅力的だと考えています。

株価が最高値を更新する中、社債スプレッドは大幅に縮小しています。その結果、足元の景気は依然として底堅いものの、バリュエーションの観点では社債の魅力は薄れています。しかしながら特定のセクター、とりわけ財務体質が全般に堅固な金融セクターに投資機会を見い出しています。

社債スプレッドのリスクを分散するため、堅調な米国の住宅セクターのエクスポージャーを確保すべく、非政府機関系モーゲージ債を選好しています。住宅セクターが割安だと判断しているのは、住宅の潜在需要が大きいこと、住宅価格が年率で2%から3%(場合によってはそれ以上)上昇する可能性があることがその理由です。また、利回り獲得の多様化のひとつとして、政府機関系モーゲージ債も魅力的なクレジットの代替手段になると見ています。

最後に、ドル高、とりわけアジアのエマージング通貨バスケットに対するドル高を重要なテーマとして引き続き重視しています。

不透明感は強いものの、足元の債券市場で投資機会が不足しているわけではありません。こうした投資機会に的を絞ることにより、トータル・リターン戦略は、信用力の高い債券に分散投資を行うアクティブ運用で、今後も投資家の皆様の長期的な目標を達成するお手伝いができると考えています。

著者

Scott A. Mather

米国コア戦略担当最高投資責任者(CIO)

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