注目の運用戦略

ミヒル・ウォラー、PIMCOのグローバル・マルチ・アセット戦略について語る

金利およびインフレ率の上昇、適正または割高なバリュエーションの水準、足元の低い利回りといった要因を踏まえると、ほとんどの資産クラスのリターンが将来的に低下すると投資家は予想するべきでしょう。つまり、追い風は弱まりつつあります。それでも高いリターンを達成することは可能であるとPIMCOでは考えていますが、そのためには、投資家は運用対象を拡大し、より戦術的なアプローチを採用することが必要になるでしょう。本戦略は、現在の市場環境、そして今後予想される市場環境に適した、包括的なアセットアロケーション戦略として設計されています。

:金融危機以降、多くの投資家にとって、バイ・アンド・ホールド(満期保有を前提とした投資)のアプローチや静的なバランス型戦略が有効でした。現時点でなぜ方向転換する必要があるのでしょうか。
ウォラー:金融危機以降、世界中の中央銀行が金融政策や量的緩和による景気刺激策を次々と導入したことに伴い、多くの資産クラスのリターンは大きく上昇しました。この間、インフレ率や金利の低下がバリュエーションの上昇を下支えしてきました。

しかしながら、このような追い風は弱まりつつあり、その結果、静的なバイ・アンド・ホールド戦略のリターンは低下する可能性が高いとPIMCOではみています。米連邦準備制度理事会(FRB)やその他の中央銀行が金利の引き上げを模索し、インフレ率が上昇に向かう中で、金利の上昇、適正または割高なバリュエーションの水準、足元の低い利回りといった要因を踏まえると、ほとんどの資産クラスのリターンが将来的に低下すると投資家は予想するべきでしょう。また、最近では概ね落ち着いているボラティリティも、上昇する公算が大きいとみられます。

それでもまだ、高いリターンを達成することは可能であるとPIMCOでは考えていますが、そのためにはこれまでとは異なるポートフォリオ構築のアプローチが必要になります。特に重要な点として、投資家は投資対象を拡大し、より戦術的なアプローチを採用することが求められるでしょう。たとえば、さまざまな景気サイクルにおけるすべての主要な資産クラスの動きに注目すると、パフォーマンス最上位と最下位の資産クラスのリターン格差は平均45%*でした。これは大きな数字であり、戦術的なアプローチによって、リスクを回避しつつリターンを追求する余地が今後も大きいことを意味します。PIMCOでは、2015年7月付レポート「追い風なき環境下におけるアセットアロケーション」の中で指摘したように、伝統的な資産クラスの長期的なリターンが低下する見通しを踏まえて、リターンの源泉としてアクティブ運用の重要性がさらに高まると考えています。

問:PIMCOのグローバル・マルチ・アセット戦略の目指すところを教えてください。どのような活用方法が考えられるのでしょうか。
ウォラー:PIMCOのグローバル・マルチ・アセット戦略は、包括的なアセットアロケーション戦略として設計されています。目標は、「グローバル株式(60%)とグローバル債券(40%)(注1)」から構成されるベンチマーク(これは実質的に市場全体のポートフォリオ)を、同じようなリスク特性をもちながら、安定的に大きくアウトパフォームすることです。私たちは、ポートフォリオを非常に戦術的に運用しており、市場情勢の変化に合わせてアロケーションを素早く変えることもありますが、一方でリスクに対しても明確な備えを用意しています。本戦略の最終的な目標は、PIMCOが強く確信するマクロや相対価値に関連する投資アイデアを、1つのパッケージとしてお客様に提供することです。

グローバル・マルチ・アセット戦略は、既存のアセットアロケーションの中でもさまざまな形で利用できます。本戦略のポートフォリオは分散度が非常に高く、グローバルな性質が強いため、お客様のポートフォリオにおいてコア運用の役割を果たすことも考えられます。また、一部のお客様は、グローバルな戦術的アセットアロケーションという枠組みの主要な構成要素として活用していらっしゃいます。

私は、グローバル・マルチ・アセット戦略は特に現在の市場環境、そして今後予想される市場環境に適していると考えています。なぜなら、運用対象が幅広く、運用ガイドラインが柔軟なため、最も魅力的な投資機会を捉えることだけでなく、状況によってはリスク量を大幅に削減することも可能だからです。

問:あなたが2014年1月に同戦略の運用責任者に着任して以来、グローバル・マルチ・アセット戦略のパフォーマンスは全般に好調に推移しています。リーダーシップを取るようになってから、何を変えたのでしょうか。
ウォラー:本戦略のこれまでのパフォーマンスには満足していますし、今後も好調を持続できると強く確信しています。 私が同戦略の運用責任者に着任して以来、いくつかの修正を行いましたが、これについて詳しく述べる前に、背景を手短に説明させて下さい。グローバル・マルチ・アセット戦略は、世界金融危機直後の2008年秋に立ち上げられました。残念ながら、2014年初頭までのパフォーマンスはPIMCOの要求水準に満たないものであり、なかでも2013年は本戦略にとって非常に厳しい年でした。

現在、グローバル・マルチ・アセット戦略の運用チームは全面的に刷新されました。私たちは、運用プロセスを発展させ、ポートフォリオ・アナリティクス・チームの関与を大幅に拡大しました。また、運用スタイルをお客様に完全に透明化するため、本戦略のベンチマークを変更しています。

このような変更は、うまく機能しているようです。戦略の名称は変わっておらず、過去のパフォーマンスに関するトラックレコードも引き継いでいますが、2014年1月以降のパフォーマンスは、私のチームとその戦術的な運用スタイルによるものです。お客様が本戦略への投資を検討する際には、これまでに導入した変更を反映したトラックレコードに注目していただき、世界最先端のアセットアロケーション戦略を提供することに対するPIMCOのコミットメントを認識して欲しいと願っています。

問:それでは、最近のパフォーマンスの主な要因を教えてください。
ウォラー:本戦略のパフォーマンスは、マクロ型やボトムアップ型を含む幅広い運用戦略を取り入れてきた結果です。マクロ型の中では、株式運用における地域および国の選択と米ドル・ロングのポジションがパフォーマンスの主な牽引役でした。また、PIMCOの層の厚いアナリスト・チームが提案するボトムアップの運用機会からも、アルファを加えることに成功しました。

各市場で高水準のリターンが発生する一方で、私たちの戦術的なポジション運用も重要な役割を果たしてきました。たとえば、2014年12月に開催されたPIMCOの短期経済予測会議では、欧州と日本の株式市場のバリュエーションが魅力的であり、両市場は大規模な量的緩和プログラムの恩恵を受ける、という2つの主要な結論が提示されました。この見通しが正しかったことに加え、そのほかの戦術的なポジション運用、なかでも最近のギリシャ情勢の混乱を前に通貨リスクをアクティブに管理してリスクを削減する、という判断もとりわけ効果的でした。

もう1つ、地域や国を正確に選択することだけでなく、投資ツールの選択も非常に重要であることを強調したいと思います。たとえば、私たちは昨年2014年に、オフショアの香港H株(注2)と比べて割安だったオンショアの上海A株(注3)に主に投資した結果、大きな成功を収めました。その後、2015年の年初には香港H株に割安感が大きくシフトしたため、エクスポージャーを香港H株市場に移しました。年初来、中国の株価指数はオンショア、オフショアとも下落していますが、最近の下落局面ではオンショアの上海A株の下落の方がはるかに深刻だったため、私たちが受けた影響は限定的でした。

問:チーム・メンバーが刷新されたとのことですが、主要メンバーの略歴を教えてください。
ウォラー:PIMCOにとって、アセットアロケーションは戦略的に優先順位が高く、これまでも重点的に体制を拡充してきました。私は常々、世界で最も優秀な運用者のチームを構成しようとしてきましたが、グローバル・マルチ・アセット戦略の運用チームもその例外ではありません。私が同戦略の運用責任者に着任して以来、3人のポートフォリオ・マネージャーが新たにチームに加わりましたが、いずれも素晴らしい運用実績を有しています。なかには、極めて定評の高いグローバルマクロのヘッジファンドからPIMCOに入社したメンバーもいます。

現在、本戦略において共同運用責任者を務めるジェラルディン・サンドストロムは、卓越した運用能力を誇り、最大手ヘッジファンドのブレバン・ハワードとムーア・キャピタルにおいて、幅広い資産クラスと資本構成全般を対象に、17年間の運用経験を有しています。エマージング市場におけるジェラルディンの幅広い運用実績によって、重要性の高い同市場におけるPIMCOの運用能力はさらに強化されています。また、ラウール・デブゴンもチームに加わりました。ラウールは、直近ではムーア・キャピタルにおいて、クロス・アセット戦略とレラティブ・バリュー戦略を担当していました。ラウールは、グローバルマクロとレラティブ・バリューの分野で17年の運用経験を有するベテランの運用者です。このほか、リアル・リターン運用チームに長く在籍し、過去10年間にわたって私と密接に仕事をしてきたニック・ジョンソンも、チームに加わりました。ニックは、実物資産とボトムアップの投資アイデアを提供することで同戦略に貢献しています。もっとも、パフォーマンスを向上するために、このような身近なメンバーだけに頼っているわけではありません。シニア・ポートフォリオ・マネージャーでマネージング・ディレクターのモフセン・ファハミーとロレンツォ・パガーニもまた、レラティブ・バリュー戦略に貢献しています。これまでの成功の大部分は、PIMCOの運用体制とグローバルなリソースを最大限に活用してきたことによります。

問:グローバル・ベースの戦術的なアセットアロケーションは非常に広範なカテゴリーです。投資家は、他の選択肢と比較した場合、PIMCOのマルチ・アセット戦略をどのように位置付けるべきでしょうか。
ウォラー:本戦略には、PIMCOの差別化要因である3つの強みが反映されています。

1つ目は、前に述べたように、PIMCOの運用チームです。これほどの運用能力にアクセスするには、通常は最大手のマクロ・ヘッジファンドに投資することが必要になりますが、その場合、解約停止期間が設定され、運用手数料と成功報酬の両方の手数料体系となるケースが普通です。

2つ目は、PIMCOが、トップダウンのマクロ運用プロセスとボトムアップの卓越したリサーチ能力を組み合わせた、非常に数少ない資産運用会社の1つであることです。PIMCOのトップダウンの運用プロセスはよく知られており、40年を超えるトラックレコードがその有効性を証明しています。一方、260人を超えるポートフォリオ・マネージャーと約60人のリサーチ・アナリストがすべての資産クラスにおいてボトムアップの貴重な知見と投資アイデアを提供していることは、あまり知られていないかもしれません。PIMCOのトップダウンの運用プロセスが、主要なマクロ関連のカタリストや市場のターニングポイントを特定する作業をサポートし、その一方で、ボトムアップの専門性が、あらゆる資産クラスから最大限の運用成果をあげる際に役立っています。両者の組合せこそが、成功のカギを握ってきました。PIMCOのような運用体制と資産クラスの専門性を有する運用会社は、極めて少ないと考えています。

最後に、この先数年間にますます広がっていくと考えられるリターンの源泉を捉える上で、PIMCOの運用対象の多様性がプラスに作用してくると考えています。PIMCOでは、先進国市場とエマージング市場の株式、債券、実物資産、通貨など流動性が高い資産クラスのほか、マネージド・フューチャーズや合併裁定戦略のようなリスクプレミアムに着目するオルタナティブ戦略など、幅広く運用対象としています。また、運用商品も幅広く備えており、個別の有価証券のほか、PIMCOのミューチュアルファンドや、PIMCOまたは第三者の上場投資信託(ETF)を通じてエクスポージャーを取ることが可能なため、必要なものをピンポイントで特定し、正確に目標を捉えることができます。このような強みに加えて、世界中の拠点からグローバルな投資機会にアクセスできることが、多くの投資家がアクセスできないと思われる魅力的な運用機会を追求することを可能にしていると考えます。

これがPIMCOの主な差別化要因であり、この先の市場環境においての強みとなるでしょう。

*以下のインデックスの2000~2014年の暦年のリターンに基づく計算。シティグループ3カ月米財務省短期証券インデックス、バークレイズ・グローバル総合インデックス(米ドル・ヘッジ付き)、バークレイズ・ハイイールド債インデックス、ブルームバーグ・コモディティ・インデックス、バークレイズ米国物価連動国債インデックス、JPモルガン・エマージング市場債券インデックス、MSCIヨーロッパ・インデックス、S&P500株価指数、ダウジョーンズ米国セレクト・リート・インデックス、グローバル60/40=60%がMSCI全世界インデックス、40%がバークレイズ・グローバル総合インデックス(米ドル・ヘッジ付き)

(注1)MSCI全世界インデックス(60%)とバークレイズ・グローバル総合インデックス(米ドル・ヘッジ付き)(40%)の組合せを上回るトータルリターンを目標とする戦略

(注2)ハンセン中国企業株指数の現地通貨建てのトータルリターン

(注3)深セン総合指数の現地通貨建てのトータルリターン

著者

Mihir P. Worah

アセットアロケーションおよびリアル・リターン担当最高投資責任者(CIO)

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ご留意事項

全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行者、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。

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