PIMCOでは、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資に特化した運用体制を構築しました。以下では、米国コア戦略担当最高投資責任者(CIO)のスコット・マザーとPIMCOのESGの取り組みを共同統括するポートフォリオ・マネージャーのアレックス・ストラックが、ESG投資の哲学、プロセス、投資機会についてご説明します。

問: PIMCOのESG投資に対するアプローチについて説明してください。

マザー従来よりPIMCOでは、長期的成功を目指す運用プロセスにおいては常にESGの観点を反映させるべきであると考えてきました。これまで何十年にもわたり、広範なクレジット分析と、世界情勢および経済や投資家に与えるその影響をきめ細かく分析する長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)において、ESGの考え方を取り入れてきました。2011年には、国連責任投資原則(UN PRI)に署名することにより、ESG投資に対する取り組みを具体化させています。

その後、魅力的なリターンと社会と環境の改善を求める投資家が増えるなかで、この取り組みの延長線としてESG投資に特化した運用体制を立ち上げることになりました。この新戦略の根底には、ESG投資ではリターンを犠牲にせずに社会的使命の実現が可能であるという考え方が存在します。

問: PIMCOのESG戦略の主な特徴を教えてください。

ストラックPIMCOのESG戦略では、数十年間にわたってグローバル債券ポートフォリオの運用を支えてきた、堅固な投資プロセスとリソースを活用します。また、以下の3つの中核的なアプローチを取り入れています。

  • 除外(Exclude)――サステナビリティ(持続可能性)の原則とは本質的に相反する事業を営む発行体を除くこと。一部のビジネスモデルや業種は、長期的な社会的使命の実現という目的とは相容れないことがあります。
  • 評価(Evaluate)――ファンダメンタルズの観点に加えてESGの観点からすべての発行体を評価した上で、「最高水準」と判断した発行体を重視すること。健全なESGの考え方を取り入れ、社会的使命を実現する可能性が非常に高い発行体は、PIMCOのESGポートフォリオの投資対象になりやすいと言えるでしょう。
  • 対話(Engage)――発行体と協調的に対話を行い、社会に変化をもたらすためにESGへの取り組みに注力するよう促すこと。PIMCOでは、企業の過去の実績を評価するだけでは不十分であり、今後の可能性や方向性にも注目すべきと考えています。また、事業のサステナビリティを高めることに積極的な発行体に資金配分することによって、この観点で見劣りする企業を単に除外するよりも、大きな社会的使命を実現できると確信しています。

社会的使命を推進する際の透明性の重要性を踏まえ、ポートフォリオのESG指標と発行体との対話の取り組みの成果について、定期的に報告する予定です。

問: PIMCOがこのタイミングでESGの運用体制を立ち上げるのはなぜでしょうか。

マザーPIMCO では、1991年に社会的責任を重視したポートフォリオの運用に着手し、米国において特定の業種を除外したトータルリターン戦略を立ち上げて以来、サステナブル投資は進化を遂げています。投資家は要求水準を切り上げ、単に望ましくない分野を除外するだけではなく、前向きな社会的変化を求めるようになりました。

積極的なESG投資を推進するためには、発行体レベルでの精緻な分析に加えて、対話を通じて発行体の経営陣に影響を及ぼすことが不可欠です。発行体との対話は、株式投資では従来から行われてきたものの、債券投資では一般的な慣行ではありませんでした。PIMCOでは、債券保有者も対話を通じて同じように影響を及ぼすことが可能であると確信しています。この数年間、投資プロセスと運用チームの構築に注力した結果、業界トップクラスの対話重視型のESGの運用体制をお客様にご案内できるようになりました。

問: PIMCOではESG投資にどのようなリソースを活用したのでしょうか。

ストラックPIMCOのESGチームは、世界の各拠点の専門性の高い投資プロフェッショナルと、ESG投資専任のスペシャリストから構成されています。専任のスペシャリストは、リサーチ業務の取りまとめ、発行体との対話推進、投資家向け報告におけるESG関連情報の拡充に取り組んでいます。

PIMCOのクレジット・アナリストはこれまで数十年間にわたって、基礎的な信用力指標の改善につながる経営判断を促すため、発行体との対話を進めてきました。現在では、ESG関連の運用体制の拡充を受けて、クレジット・アナリストはESGのスペシャリストと共同で、サステナブルな経営方針やコーポレート・シチズンシップ(企業市民活動)の推進を求めることができるようになりました。クレジット・アナリストは、「E(環境)」、「S(社会)」、「G(ガバナンス)」それぞれのスコアと総合的なスコアを算出します。全体のスコアにおける個別要素の比率は、各業種における重要性によって決定されます。たとえば、エネルギー関連企業の場合は「E(環境)」が、銀行の場合は「G(ガバナンス)」が大きな比重を占めます。

問:ポートフォリオでは、ESGの観点がどのように反映されているのでしょうか。

マザーPIMCOのESGチームは、すべての投資の選択肢に対してESGスコアを算出します。業種固有の環境、社会、ガバナンスの比率を基に、発行体の総合的なスコアと、トレンドおよび他企業と比較した場合の相対的な指標が決定されます。その上で、平均以上のESGスコアが付与された企業に積極的に働きかけることによってさらなる改善が可能かどうか、スコアが低い発行体に根本的な変化を求めることが可能かどうかなど、発行体ごとに対話の方針を決定します。さらに、ESGへの取り組みがその評価に基づいて最高水準にある発行体と、対話の有力候補となる発行体とを重視する形で、ポートフォリオを最適化します。

重要なことは、ESGの投資プロセスでは、PIMCOのすべてのポートフォリオを構築する場合と同じように厳格なアプローチを採用している点です。具体的には、ESGポートフォリオでも、その他のポートフォリオと同じマクロ経済のテーマ、市場見通し、ポートフォリオの基本方針(デュレーションや業種配分など)が反映されています。

問: PIMCOのESGポートフォリオでは、発行体とどのように対話を進める方針なのでしょうか。

ストラックPIMCOの対話方針は、株式投資家によるアクティビズムとは異なり、以下の3つを柱としています。

  • 財務担当者の立場で考える(企業が変化する余地を評価するため)
  • パートナーとして対話する(企業が結果を出そうとする意欲を引き出すため)
  • 債権者としての立場を守る(企業の前向きな取り組みを確実なものにするため)

PIMCOでは、具体的な目的を念頭に、発行体ごとに対話の戦略を構築しています。投資を行う前に、主要な対話の目的と行動の計画を設定し、協調姿勢、建設的な交流、目的の相互理解に念頭に置きながら、発行体と直接対話を進めています。これは、PIMCOのクレジット・アナリストが企業の経営陣に対してバランスシート管理の改善を促す際のアプローチと類似しており、これに追加する形で、事業においてESGの観点をより重視するよう求めています。

個々の発行体との対話は、その性質上、長期的なものであるため、時間の経過とともに方針を柔軟に修正しています。また、進捗状況を既定の基準に照らして評価した上で、投資家に報告しています。

問: PIMCOのESGに対するアプローチを差別化するものは何でしょうか。

マザー:PIMCOでは、次のような点でESG投資の分野に大きく貢献できると考えています。

  • プロセス――PIMCOの実績ある投資プロセスと最高水準のESGに基づく投資方針を組み合わせることによって、非常に堅固なアプローチを構築しました。
  • 規模――投資家が社会の前向きな変化を求める上では、規模が重要になります。債券市場の主要参加者であるPIMCOは、意義深く持続的な社会的変化を求める際の投資家のパートナーとしてふさわしいと考えています。
  • アクティブ運用のアプローチ――社会的使命を重視する投資においては、その性質上、アクティブなアプローチが求められます。ESG投資に成功するには、変化を促すために独創的なソリューションを実行しようとする姿勢が必要です。また、PIMCOが米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)、MSCI社、UN PRIと提携しているように、業界のリーダーと密接に連携を図ることも重要です。また、PIMCOは学会とも提携関係にあり、ケンブリッジ大学のサステナビリティ・リーダーシップ研究所が事務局を務めるインベストメント・リーダーズ・グループ(ILG)の会員となっています。
  • 運用体制――ESG投資では、大量のデータ分析が必要になります。PIMCOでは、1991年に初めて社会的責任を重視する投資戦略を立ち上げて以来、ESG関連の運用体制を大幅に拡充してきました。
  • 債券市場における専門性――債券投資に立脚したESGのアプローチでは、専門性の高いリソースが求められます。ESG関連のデータ提供会社や格付会社では、株式に基づく指標を採用する傾向がみられますが、債券ポートフォリオとは関連性が薄いものです。PIMCOでは、債券型の商品に特化したESGの最適化プロセスを構築するために、大規模な投資を行なってきました。

問: PIMCOでは投資判断に影響する社会的なバリューをどのように決定しているのでしょうか。

ストラックPIMCOのESGのアプローチの根底にある価値は、一企業としてのPIMCOの理念やポートフォリオ・マネジメント・チームの見解に基づくものではありません。むしろ、前述の除外、評価、対話という目標は、「国連グローバル・コンパクトの原則」、「国連のビジネスと人権に関する指導原則」、「国際労働条約」、「国連の持続可能な開発目標」など、グローバルに受け入れられているサステナビリティの基準を指針としています。

社会的使命を意識した投資には画一的なアプローチは存在しませんが、公募投資信託においては広範に受け入れられている国際基準を参照しながらも、個別の顧客ニーズを満たす堅固な運用体制が必要であると考えています。

問: PIMCOではESGの要素をどのように企業文化に取り入れてきたのでしょうか。

マザーPIMCOの日々の業務は、1つのイノベーションが新しいイノベーションを生み出すなど、常に改善を積み重ねる形で発展してきました。長年にわたって、すべての従業員を対象に、「無意識の偏見」の抑制を目的とする社内教育キャンペーンを実施してきました。また、外交および国際関係の専門家で、効率的なライフ・ワーク・バランスの最先端の提唱者であるアンマリー・スローター氏(グローバル・アドバイザリー・ボードのメンバー)などのソート・リーダーの知見も活かしています。

そして昨年第4四半期には、PIMCOのIDC(Inclusion, Diversity, and Culture)イニシアチブを率いる専任のポジションを新設しました。このイニシアチブの大きな目標は、認識の多様性とインクルーシブネスを高める企業文化を形成することにあり、それが結果的にビジネス向上につながると考えています。このイニシアチブは、従業員が(1)多様な人生経験を有する同僚の考え方をよりよく理解し、(2)チームワークの改善に資するスキルを発展させ、(3)生活と仕事のバランスを最適化することを可能にするような環境を育む企業文化の醸成をはかるものです。また、男女平等などの共通した目的達成のための取り組みにおいて、PIMCOファンデーションと密接に連携しています。

このほか、PIMCOのニューポートビーチ本社が米国グリーンビルディング協会からシルバーのLEED認証(環境や人に配慮したビルの認証プログラムで、Leadership in Energy & Environmental Designの略)を受けていることも、ESGへのコミットメントを示す好例と言えるでしょう。

問:最後に、投資家がESGの観点をポートフォリオ全体に取り入れる際に考慮すべき点を教えてください。

マザー株式、ベンチャーキャピタル、プロジェクトファイナンスの分野では、ESG関連の投資機会が数多く存在しますが、投資家は、債券のアロケーションを通じても、魅力的なリスク調整後のリターンを犠牲にせずに社会の環境の前向きな変化を促進させる機会が極めて大きいことに注目するべきでしょう。

ストラック債券市場には数千社に及ぶ発行体が存在し、それらの企業が全体として数十億人の生活に影響を与えています。発行体の大半は、エネルギーの効率利用からサプライチェーンの格差問題改善に至るまで、ESGに基づく経営方針を採用することによって恩恵を享受する可能性があります。債券投資を通じて経営方針に影響を与えることにより、投資家は、元本を保全しつつ魅力的なリターンを獲得する一方で、社会的使命を果たすことが可能であると考えています。

著者

Scott A. Mather

米国コア戦略担当最高投資責任者(CIO)

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