注目の運用戦略

PIMCOインカム戦略アップデート:ボラティリティを投資機会に変える

当戦略は世界の様々な債券セクターに分散投資することで、ボラティリティが急上昇した際にも守りの姿勢をとることができるようになっています。

この半年間の大きな山谷を経た後も、市場のボラティリティは高止まりしています。PIMCOインカム戦略のポートフォリオ・マネージャーのダニエル・アイバシン、アルフレッド・ムラタ、ジョシュア・アンダーソンが、長引く高いボラティリティに対する備えと、その機会を活かすためのポジショニングについてご説明します。

問:昨年終盤の急落から今年第1四半期の急回復へと、市場は波乱の2四半期を経てきました。この高いボラティリティの要因は何でしょう。

ダニエル・アイバシン: 昨年第4四半期の下落は、特に12月に世界の経済成長率の低下や中央銀行の政策に対する不安や警戒感、政治に対する一抹の不透明感が高まったことによると考えています。これらはすべて流動性が乏しくなるホリデーシーズンに発生しています。

今年第1四半期には株式、クレジット、高格付け債券などが非常に力強いパフォーマンスを回復しました。米連邦準備制度理事会(FRB)を筆頭に、中央銀行は金融引き締めサイクルが終わりに近づいているとのメッセージを発し-事実既に終了した可能性がありますが-、そのハト派的なスタンスに加えて、ほとんど兆候の見られないインフレ圧力と、減速しつつもプラスの経済成長が、市場の信頼感に拍車を掛けました。

インカム戦略は第4四半期を乗り切り、ここまでしっかりとパフォーマンスをあげていることを嬉しく思います。しかし全体的にポジションは守りを重視した姿勢を維持しておりーこれはぜひとも強調したい点ですがー、ボラティリティが高止まりしがちな景気サイクル後期において耐性の強さの維持に努めていきます。

問:成長が減速しているとのことですが、PIMCOの経済見通しを教えてください。

アイバシン: 市場からは景気後退の可能性も聞こえてきますが、PIMCOでは時期尚早だとみています。実際に我々の最新の見通しでは、世界経済の着実なプラス成長を見込んでおり、今年の世界の実質GDPの伸びは2.75%前後になるだろうと予想しています。米国の経済成長はおよそ2.25%、中国は最近陰りが見えるものの当局は安定的な成長を強く意識しており、6%前後の成長を見込んでいます。

もし米中間の貿易摩擦に決着がつき、その他の地域での安定化-ブレグジットの着地などーがみられれば、成長は加速し、年後半にはリスク資産の価格上昇も見込めるかもしれません。

問:FRBは今「辛抱強く」動きを止めていますが、年内の米国金利はどうなるとみていますか。

アイバシン: FRBは年内は動かないとみています。利上げと利下げのリスクはほぼ半々でしょう。これは全体的にはレンジ内の動きが続くことを意味すると考えています。PIMCOでは米国の中立金利(景気を刺激も抑制もしない金利)は、今日では以前よりも大きく低下していると長く主張してきました(ニュー・ニュートラルの概念の提唱)。FRBが昨年12月に利上げした時点で、金利はPIMCOが推計する中立金利に極めて近くなっています。

現在、イールドカーブは数カ月前よりもかなりフラットになっている点に注意する必要があります。米国では緩やかな逆イールドが見られ、これは過去に照らせば景気後退のリスクの高まりを示唆しています。しかし、向こう1年に景気後退が起こるリスクは高くないとみています。

実際、年後半に予想外に経済成長が高まれば、金利はさらに上昇傾向を辿ると考えています。従って、現在特に選好している5年から7年のゾーンで金利リスクを削減しつつあります。最近の債券市場の上昇は、ポートフォリオをイールドカーブ上の均等なエクスポージャーに近づける機会と捉え、金利リスクに対して全体的に守りのポジショニングを強めています。

問:前四半期の大きな市場の反転を受けて、そのほかにポジションを変えたものはありますか。

アルフレッド・ムラタ: 当戦略のポートフォリオでは、インカムを生み出し投資元本を守るというインカム戦略の目標達成のためのポジションを取るように努めています。ポートフォリオの構成においては、好景気時に高いパフォーマンスが期待できる非政府機関系モーゲージ債(MBS)のような利回りが比較的高い資産と、米国債や政府機関系MBSのように、景気の低迷時にパフォーマンスが期待できる比較的安全性の高い資産に分けて運用しています。

2016年から2017年にかけて、当戦略ではリスクを減らすため、高利回り資産への配分を削減してきました。リスク資産が大きく下落した昨年末までには、ポートフォリオはディフェンシブなポジションとなっており、そこから攻めに転じ、非政府機関系MBSのように価格が過度に低下し魅力度が増した資産を見つける態勢が整っていました。

その間、金利が上昇するなかでもデュレ―ションは伸ばしてきましたが、債券利回りが低下したため、それもプラスに働きました。企業クレジットなど利回りを重視した部分がマイナスの影響を受けても、金利リスクへのエクスポージャーがリスク資産下落の影響に対するクッションの役割を果たし、デュレ―ションのポジショニングは昨年末パフォーマンスに寄与しました。現在、金利リスクに対してはその時ほど楽観視はしていませんが、リスクオフの市場環境に対するヘッジとなることから、ある程度デュレ―ションのエクスポージャーは維持しています。

問:今年急回復したクレジット市場で、投資機会はどこにあると見ていますか。

ジョシュア・アンダーソン: 企業クレジットに対しては概して慎重な見方をしていますが、好機があれば投資します。例えば、シニア金融債はスプレッドが高く魅力的です。最近一部の金融機関が収益悪化を発表しましたが、多くの銀行は高い信用力を維持しており、スプレッド縮小の可能性があるとみています。

ボラティリティが極端に高まる特異な状況においては、本来の信用力に比べてはるかに高くなったスプレッド、もしくはリスクプレミアムのついた有名企業の債券を探します。また同じ企業の社債でも、流通市場よりも高いスプレッドで発行される新発債の「新規発行」リスクプレミアムの獲得を狙います。最後に、短期的には債務不履行(デフォルト)の可能性が極めて小さいとみられる満期の短いハイイールド債への投資も視野に入れています。

アイバシン:住宅関連のクレジットについても引き続き選好しています。住宅ローンを含む家計の債務はこの10年で低下してきており、2008年の金融危機以降、銀行に対する規制が厳しくなり、与信は主に信用力の最も高い貸出先に絞られてきています。この点は欧州においても同じです。

しかしアンダーソンが指摘したように、我々は一般的なクレジットに対するエクスポージャーについては以前よりも遥かに慎重になっています。高レバレッジのリスクや大量の起債には警戒すべきで、利回りは求めるものの、デフォルトの波に対する備えは必ずしも十分ではない投資家が多いように見えます。昨年の第4四半期には、どれほど企業クレジット市場のボラティリティが高まるのか、その予告編を見せられたような気がします。このセクターについてはディフェンシブな方針は維持し、もし年初からの勢いがこのまま続けば、今後数カ月にわたって、割高銘柄へのエクスポージャーを減らしていくことになるでしょう。

問:非政府機関系MBS以外で、インカム戦略の投資先として魅力的な証券化商品はありますか。

アンダーソン: 非政府機関系MBSの魅力には強い確信を持っていますが、それ以外にも証券化商品には投資機会が見込めます。現在、米国の利払い再開ローン、英国の優良住宅ローン、超優良学生ローンなどです。投資適格社債よりも魅力的な利回りの銘柄を物色中で、それらの資産はハイイールド債よりも流動性が高くリスクは小さいとみています。

これらの証券は、それらに内包される信用補完によって、最近の市場ボラティリティ上昇の波にも十分耐えられることが証明されました。とはいえ、証券化クレジットの需要はそれほど高くなく、第4四半期の下落幅もあまり大きくなかったこともあり、年初来他のクレジットセクターに比べて出遅れています。しかし全体的な相対価値を考えると、早晩スプレッドは縮小するとみています。

問:年初来及び過去半年間で、エマージング市場はインカム戦略に大きく貢献してきました。エマージング市場について全体の見通しと、現在のどこに投資価値が見られるのかについて教えてください。

アイバシン:エマージング市場は総じて当戦略の分散に有力なセクターです。ここ半年ほどはパフォーマンスが好調だったため、当セクターの一部についてはやや慎重な見方をとりつつあります。しかし、世界の中央銀行は金利を維持し、慎重ながらもやや楽観的なPIMCOの経済成長に対する見通しを考慮すると、エマージング市場へのエクスポージャーは企業クレジットのリスクをうまく分散する手段だと考えています。

ムラタ: PIMCOでは、個別の国や発行体、またはセクター全体が軟化した時点でエマージング市場のポジションを取るようにしています。例えば、以前にはボラティリティが高まった時期に、ブラジルやロシアのポジションを追加してきました。最近では、トルコやメキシコのボラティリティが高まっており、当戦略にとって好ましい投資機会だとみています。

問:力強いスタートを見せている今年、投資家は年内に市場と当戦略に何を期待すべきでしょうか。

アイバシン:PIMCOの世界経済に対する見方や中央銀行の政策姿勢を考慮すると、金利は年末に向けて上昇傾向を辿るでしょう。したがってインカム戦略では、金利リスクに対し、かつて無いほどディフェンシブなポジションをとっています。

ポートフォリオ内の一部ではある程度スプレッド縮小による価格上昇も見込まれ、引き続き安定的な分配を実現したいと考えています。数カ月前に比べ、現在利回りは大きく低下し、イールドカーブはフラット化、クレジット・スプレッドも小さくなっていることから、インカム獲得に大きく注力するつもりです。とはいえ、過度なインカムの追求は避けたいと思っています。私たちは当戦略の主な目標の一つである元本保全を、決しておろそかにするつもりはありません。

インカム戦略では、通常2~3年の投資スパンを考えていますが、この数年であげた実績について喜ばしく思っています。景気サイクルのこの段階で、できるだけボラティリティを抑えたリタ―ンの確保を目指しています。今年は何よりもまずその目標に向かって、当戦略の運用チーム全員で努力しています。

著者

Daniel J. Ivascyn

グループ最高投資責任者(グループ CIO)

Alfred T. Murata

モーゲージ・クレジットチームのポートフォリオ・マネージャー

Joshua Anderson

グローバルABSポートフォリオ・マネジメントチーム統括

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