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PIMCOインカム戦略アップデート:景気減速中の忍耐強いアプローチ

世界経済が失速し、貿易や政治をめぐる不透明性が拡大するなかで、PIMCOインカム戦略は長期の視点に立ち、守りを重視したポジションを取っています。

界経済が失速し、貿易や政治をめぐる不透明性が拡大するなかで、PIMCOインカム戦略は長期の視点に立ち、守りを重視したポジションを取っています。リード・ポートフォリオ・マネージャーのダニエル・アイバシン、アルフレッド・ムラタ、ジョシュア・アンダーソンが、PIMCOインカム戦略の見通しと最近のパフォーマンスについてご説明します。

問:PIMCOの世界経済の見通しを教えてください。

ダニエル・アイバシン来年にかけて慎重な見方をしています。基本シナリオでは、世界経済の成長率は低下し、2%~2.5%程度になるとみています。さらに、来年前半の米国のGDP成長率が1%程度に低下することもありうると考えています。

従って、米国経済のみならず世界経済が景気後退に陥る可能性について、より大きく警戒する必要があると言えます。現在のところ、景気後退は回避できると考えていますが、景気が後退する確率は高まっており、向こう1年以内に発生する可能性は約30%あるとみています。これは、景気の影響を受けやすい市場での投資に関しては警戒を要するレベルです。

PIMCOの見通しにおいて、もう一つのテーマは不透明性です。5月の長期経済予測会議では、市場の攪乱要因に対する長期的な見通しを議論しましたが、この数週間のニュースをみると、とりわけ貿易と政治に関して、世界は既に重大なマクロ的不透明性の時代に入っていると考えられます。

市場が割安であれば、投資家はある程度は不透明性を無視することもできますが、現在のようにバリュエーションが最低でも適切レベル、多くは極めて割高であることを踏まえれば、透明性の欠如はボラティリティ上昇や信用力に敏感な資産のパフォーマンス低下につながります。

問:景気減速のなかでも、クレジット市場や株式市場は、今年押しなべてプラスのパフォーマンスとなっています。その理由をどう考えますか。

アイバシン:主な理由の一つは中央銀行が戻ってきたことです。必要とあれば積極的な緩和的措置も辞さない姿勢を見せています。米連邦準備制度理事会(FRB)は既に3回連続で利下げを実施していますが、今後は経済指標の内容次第で、重大な成長低下の兆候には積極的に対応するとみています。その他の中央銀行(欧州中央銀行、中国人民銀行、さらにエマージング市場の中央銀行も含めて)も、より緩和的な政策に傾いています。

政策関係者は、流動性の拡大と信用力の高い債券利回り低下で、うまくソフトランディングに誘導できると過度に安心しているように見えます。しかし、経済地盤の悪化は市場の想像よりも大きな可能性もあり、特に株式市場とクレジット市場において、脆弱性は高くなっています。

問:債券市場の低い利回りについてどう考えていますか。

アイバシン:現在最も重要だと考えている点は、金利リスクに対する見返りがこれほどまで低下したことはかつて無かったということです。例えば、ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックスの利回りは1.5%を下回っているにも関わらず、金利感応度を示すデュレーションは、約7年にまで延びています。同様に、ブルームバーグ・バークレイズ・米国総合インデックスも、今は2.25%をわずかに上回る利回りで、デュレーションは5.5年を越えています。

今日、利回りが非常に低くなっているため、投資家は金利上昇の場合の価格下落による著しいパフォーマンス低下リスクにさらされています。 従ってインカム戦略では、景気低下に伴う信用リスクやデフォルトリスクをヘッジするだけでなく、中期から長期ゾーンにかけて金利が上昇する、景気としてはより明るいシナリオ下の金利上昇リスクもヘッジしたいと考えています。

インカム戦略の第一の目的はインカムを提供すること(トータルリターンは第二の目的)であり、ベンチマークに左右されない運用です。長期的に投資家にとって最も望ましいと考えられる場合には、伝統的なインデックスとは有意に異なるポートフォリオを構築することも可能です。今日、多くの伝統的な債券指標が魅力に欠けるリスク特性を持っている点を考えると、この柔軟性は運用者にとっては恵まれたものと言えます。

問:インカム戦略の流動性についてどう考えていますか。

アイバシン: PIMCOのポートフォリオ管理のプロセスにおいて、流動性は非常に重要な理念です。PIMCOでは、流動性を2種類に分けています。最終投資家の日々のニーズに沿うことを目的とした守りの流動性と、他者が流動性に窮乏する場合、それを供給する戦略的なポジション確保を目的とした、積極的な流動性管理です

ボラティリティが上昇し、昨年末や2016年初頭のように、市場がダウンサイドに対して過剰に反応しがちな環境において、この戦略は長期的な成功の秘訣だと考えています。ポートフォリオのほぼすべての投資判断に関して柔軟性を維持しながら、魅力的な投資機会を見つけ出した時、投資家に代わって積極的に攻撃に転じることができるよう、忍耐強く守りの姿勢を保持しています。

問:インカム戦略は、今年これまでどのようなポジションをとり、前四半期にそれをどう変えたのでしょうか。

アルフレッド・ムラタ:債券のリターンは主に2つのリスク要因によって決まります。金利エクスポージャー(デュレーション)と信用リスクです。アイバシンが指摘したように、現在、インカム戦略のデュレーションは比較的短く、全体の金利エクスポージャーは特段大きなものではありません。しかし、リスク資産急落の可能性をヘッジするため、ある程度のデュレーションは確保したいと考えています。大半の金利エクスポージャーは、金利が比較的高い米国で取っています。

信用リスクについては、既にかなり長期にわたって継続的に削減しています。現在、企業クレジットは債券で最もリスクの高いセクターだと考えています。発行額が多く、投資家は利回りを追求し、引き受け基準は悪化しています。そのためインカム戦略では今年、企業クレジットに代わりモーゲージ債に焦点を当てています。

問:モーゲージ債を選好する理由を教えてください。

ジョシュア・アンダーソン:バリュエーションと景気サイクル上における現在の位置を考慮すると、企業クレジットよりも、モーゲージ関連クレジットのオーバーウエイトは理に適っていると確信しています。

まず、社債が通常無担保であるのに対し、モーゲージ債は担保付き債券です。次に、モーゲージは債務者による返済や、住宅価格の上昇によってレバレッジが低下するのに対し、企業のレバレッジは一般的に高まっています。そして最後に、モーゲージ債(MBS)は、全米数千のローンをベースにしているのに対し、企業はそれぞれ固有のリスクを抱えているため、大きな価格低下を招く傾向があります。

社債に比べ、複数のモーゲージ債をまとめたプールの透明性は過小評価されているとPIMCOでは考えています。モーゲージ債のプールは一般的に大きく変化しません。住宅の所在地や、住宅ローンの支払い水準、基となる借り手の信用力も明らかです。これに対し、企業は絶えず変化しています。さまざまな理由で、いかなる状況においても、さらには経営陣の行動によっても、リスクは高まります。

次に景気下降期が来た際、社債市場がその影響を最も大きく受ける一方で、我々が保有するモーゲージ関連資産は耐性が強く、魅力的な利回りを提供してくれる可能性があると考えています。

問:特に米国の政府機関系MBSの保有を増やした理由を説明してください。

アンダーソン:政府機関系MBSのバリューションは、この10年*で最も割安となっています。金利低下により発行額が増加し、FRBは毎月バランスシートから約200億ドルの政府機関系MBSを売却しています。

これから冬にかけて、住宅販売の低下により米国のモーゲージ債の供給は一般的に低下するため、政府機関系MBSの価格は下支えされるでしょう。また、このような低金利がしばらく続けば、借り換えの動きも低下するとみています。そして最後に、かつて市場が大きく下落した時、投資適格社債のスプレッドは拡大しましたが、パススルーの政府機関系MBSのスプレッドは縮小傾向を示しています。

ムラタ:非政府機関系MBSについても引き続き選好しています。金融危機後の規制強化により、重大なデフォルトリスクを抱えたローンの設定は非常に困難となり、その結果発行額は低下しました。さらに、向こう2年にわたって住宅価格は年間約3%上昇を続けるとみており、その場合、非政府機関系MBSの利回りは、当社推定で約4%になると思われます。たとえ住宅価格がそれほど上昇しない場合でも、魅力的な損失調整後の利回り水準になると考えています。

非政府機関系MBSは、価格は上下するものの、さまざまな状況下において耐性が強い、いわゆる「曲がっても折れない」資産の一例です。

問:企業クレジットのなかでは、どのセクターが魅力的ですか。

アンダーソン:銀行セクターを選好しています。金融危機以降、銀行は非常に厳しい規制に耐え、今では自己資本の水準が過去数十年で最も高くなっており、バランスシート上の貸出しは以前よりもはるかに健全です。一般的に、金融危機以前に抱えていたような信用リスクは抱えていません。PIMCOでは、これらの要因を考え合せ、銀行債務は資本構成上はるかに安全になったと考えています。

問:インカム戦略のポートフォリオ上、他に選好する債券セクターはありますか。

アイバシン:信用ファンダメンタルズ上、魅力的なエマージング市場で厳選した債券と、高利回りのエマージング通貨に対するエクスポージャーにより、ポートフォリオの分散をはかっています。これらはすべてエマージング市場チームの推奨によるものです。

また最近では、物価連動債にも注目しています。短期的にはインフレに対する懸念は大きくありませんが、政治上の不透明感が極めて高く、財政赤字は拡大し、積極的な財政支出拡大が広く世界中で喧伝されているなか、「インフレは死んだ」との結論を出すには至っていません。これは、インカム志向のポートフォリオ特有のポジションですが、リフレ的な環境下ではプラスのリターンをもたらす可能性があり、企業クレジットよりも流動性ははるかに高いものです。

問:インカム戦略は、今年これまでインカムを提供し元本は上昇していますが、一般的な債券ベンチマークのパフォーマンスに対しては見劣りしています。インカム戦略のパフォーマンスに対する考えを教えてください。

アイバシン:債券のユニバースの多くがマイナス利回りとなっているなかで、安定的なインカムに依存する投資家は、望む以上のリスクをとらざるを得ないプレッシャーを感じています。世界は現在大きな動きの中にあり、利回りを追求すれば、一部の市場セグメントへのさらなる過剰投資を正当化する可能性があります。

そのためPIMCOでは、これまで以上に長期的な見方を重視し、柔軟性を維持しつつ、安定的ながらも責任ある配当を続けられるポートフォリオを構築しています。短期的に多少のトータルリターンは犠牲にしても、長期的には投資家がこの戦略に期待する耐性の強さを追求しています。忍耐を要するアプローチですが、それが強い守りから攻撃に転じる力になると考えています。まさにこれが、インカム戦略チームの考え方です。



1 2019年9月30日現在のPIMCOの分析による。
著者

Daniel J. Ivascyn

PIMCOグループ最高投資責任者(グループ CIO)

Alfred T. Murata

モーゲージ・クレジットチームのポートフォリオ・マネージャー

Joshua Anderson

グローバルABSポートフォリオ・マネジメントチーム統括

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