運用戦略

PIMCOインカム戦略アップデート:グローバルな変化を投資機会へ

ポートフォリオ・マネージャーであるダニエル・アイバシンとアルフレッド・ムラタが、値動きがより一層激しくなる市場の影響や、予想される変化にインカム戦略がどのようなポジションを取っているかをご説明します。

治、貿易摩擦問題、金利の上昇がすべて、2018年前半の市場のボラティリティ上昇につながりました。以下のQ&Aでは、PIMCOインカム戦略の運用チームで、グループ最高投資責任者であるダニエル・アイバシンとマネージング・ディレクターのアルフレッド・ムラタが、値動きが一層激しい市場で、アップサイドの可能性とダウンサイドのリスクに対し、インカム戦略においてどのようにポジションを取っているかをご説明します。

問:PIMCOの最新の長期経済予測の「急変に備えて」では、根本的な変化と投資家に予想外の驚きをもたらす可能性を含む新たな時代を予測しています。この見通しがインカム戦略に与える影響について教えてください。

ダニエル・アイバシン:PIMCOでは、今後の5年間は金融危機後の10年間と大きく異なると考えています。

金融危機以降のマクロ経済環境を、PIMCOでは「ニューノーマル」、あるいは「ニュー・ニュートラル」――低成長で大きなディスインフレのプレッシャーと、比較的小さなボラティリティの時代――と捉えてきました。

現在、中央銀行は長年市場に施してきた緩和政策を転換しつつあり、影響力の主役は政治にとって代わられようとしています。たとえばポピュリズム政党は世界的に勢いを増しています。

株式投資家にも債券投資家にとっても、これはリターンの低下と、残念ながらボラティリティの上昇を意味すると考えています。この組み合わせは、投資にとって非常に厳しい投資環境となります。

PIMCOの長期経済見通しを指針に、インカム戦略では一層注意深くディフェンシブなアプローチで、市場の過剰反応の機会に備える態勢を維持しています。

問:インカム戦略ではどのようにしてよりディフェンシブなアプローチをとるのですか。

アイバシン:現在の環境でディフェンシブな体制を固めるために、ポートフォリオ内で流動性や分散を高めるなど、最大限に柔軟性を保つようにしています。

守りを固めるため、起債意欲が旺盛で引き受け基準のやや劣化してきた米国の社債など、ダウンサイドでは過剰に反応する傾向があるとみているセクターを避けて分散を進めています。また、世界で245名強のポートフォリオ・マネージャーのチーム力を利用し、広範囲な投資ユニバースで、数多く小さな投資機会の発掘に努めています。

市場のバリュエーションに大きな変化が見られない限り、ボラティリティ緩和のため、引き続き分散を活用する方針です。

問:これまで、および年初来でインカム戦略のポジションはどのように機能してきましたか。

アルフレッド・ムラタ:インカム戦略は、大きく2つの部分から成り立っています。一つは、予想を上回る経済成長時に高パフォーマンスが見込まれる、非政府機関系モーゲージ債(MBS)や社債などからなる高利回り資産です。もう一つは、経済成長が予想を下回った場合に高パフォーマンスが期待される、米国債など安全性の高い資産です。この組み合わせが、安定的なインカム提供という当戦略の第一目標達成の可能性を最大化すると考えています。これまでのところ、この方針は上手く機能し、ポートフォリオのボラティリティ低下に寄与してきました。

今年はこれまでのところ、金利上昇により債券にとっては全般的に厳しい環境で、ポートフォリオの安全資産の部分にはマイナス要因となっています。プラス面としては、MBSなど高利回り資産がパフォーマンスに貢献しています。

さらに、年初に比べてポートフォリオの利回りは向上しており、今後も引き続き値上がりの可能性を見込んでいます。

問:インカム戦略では金利上昇にどのように対応していますか。ボラティリティを抑えたい投資家にとって良い戦略と言えますか。

アイバシン:インカム戦略は金利上昇に対応できるツールを持っている戦略だと捉えられると考えています。大きな金利上昇時にはさすがに影響を受けますが、緩やかに金利が上昇している場合でも、インカム戦略のトータル・リターンはプラスを維持できるポジションだと考えています。今年もPIMCOインカム戦略は打たれ強く、6月までのリターンがマイナス1.6%となった、伝統的な広範囲の債券のベンチマークのブルームバーグ・バークレイズ米国総合やグローバル総合インデックスの対し、相対的に健闘しています。

当戦略は、全体的な金利リスクへのエクスポージャーであるデュレーションを、0から8年までシフトさせることが可能で、金利サイクル全体を通じてこの柔軟性を活かそうとしています。経済に対する短期的な見方が前向きなことを主な理由に、当戦略では現在金利に対して慎重なポジションをとっています。PIMCOでは、世界経済は成長を続け、短期的な景気後退のリスクは比較的低く、米準備制度理事会(FRB)は緩やかに利上げを続け、欧州中央銀行や日銀などの他の中央銀行も、2019年後半には金融緩和政策を転換し始めるとみています。

経済の停滞への備えとして、また、質の高い資産への逃避を招きうるその他の想定外のイベント(6月のイタリアでのユーロに懐疑的な政府の思わぬ勝利など)に対する備えとしても、信用力の高い債券の保有は継続します。インカム戦略は、様々な金利環境をうまく乗り越えるよう柔軟性を駆使し続け、戦略上のポジション構築には複数のシナリオを考慮に入れています。

問:インカム戦略では、高利回り資産のうち非政府機関系MBSが多くの割合を占めています。このセクターは依然として魅力的ですか。

ムラタ:はい、いくつかの理由で魅力的だと考えています。第一に、米国の住宅セクターの信用力のファンダメンタルズが非常に強い点が挙げられます。住宅所有者の自己保有部分(自己資本)は以前よりも高くなっています。他の条件を一定とすれば、債務者がより多くの自己資本を持っていれば、デフォルトの可能性は少なくなります。

また、非政府機関系MBSのもう一つの魅力は利回り特性の安定性です。インカム戦略にとっては、この利回りの獲得を追求することで、ダウンサイドリスクに対し健全なクッションの役割を果たしてくれます。たとえ住宅価格が低下しても、非政府機関系MBSには米国債よりも高い利回りが期待できます。

そして最後に、2007年の約2兆ドルから5,000億ドルにまで劇的に減少した発行額は、この1年で増えてきました。しかし市場では、住宅ローンの支払いを一時停止後、再び支払いを始めた借入人へのローンである「利払い再開」住宅ローンの出現など、住宅ローン・セクターでの新たな投資機会は増え続けています。現在、3,000億ドルの利払い再開ローンの残高があります。これらの住宅ローンの販売は大規模となるため、PIMCOの規模とリソースをこの市場で活かすことができます。

非政府機関系MBSはインカム戦略に大きな貢献をしてきました。特に今年に入ってからは、デュレーションとエマージング市場でのポジショニングによるパフォーマンスの不振を、当セクターが補いました。それ以外にも、世界の様々な市場に投資ができる柔軟性がプラスに貢献しました。グローバルな投資機会は当戦略にとって大きな強みです。

問:この戦略では、エマージング市場をどうみていますか。

アイバシン:エマージンング市場は分散のために重要だと考えています。安定したインカムを生むという目的を考えれば、ボラティリティが高まる可能性のあるエマージング市場の保有割合は大きくありません。

しかし、このセクターで大きなゆがみが生じれば、投資機会は生まれます。たとえば、2016年後半の米国の大統領選挙後、メキシコ資産のボラティリティは上昇しましたが、そこはひとつの買い場でした。そして今年もまたさまざまなエマージング経済で、魅力的な投資機会を提供する特異な状況が生まれています。 

問:今回のPIMCOの長期見通しの変化を踏まえて、当戦略では、他にどのような機会が考えられるでしょうか。 

アイバシン:企業のクレジットリスクについては全般的にリスク削減の方向ですが、PIMCOではクレジット・アナリスト全体のチーム力を活かして、投資機会を探しています。例えば金融危機後、金融セクターはリスク削減モードでしたが、これは債券投資家の立場からみれば好ましいものでした。昨今、投資適格社債市場では部分的にスプレッドが拡大しきたため、そこに一部資金を投入し始めました。

また、ハイイールドとバンクローン市場では、担保が十分にある返済順位の高い資産においても、時として投資機会が見つかる場合があります。PIMCOでは、このような資産を厳しい経済環境の中でもアウトパフォームする可能性の高い、「曲がっても折れない」資産と呼んでいます。

米国の住宅セクターは健全な状態が続くと考えているため、社債の中でも、住宅関連の銘柄に投資しています。

問:ボラティリティの高まりが予想される中で、アップサイドの可能性とダウンサイドのリスクのバランスをどのようにとっているのでしょう。 

アイバシン:PIMCOでは、高く安定したインカムと魅力的なトータル・リターンを提供する投資戦略の提供を目指し、これらの目標をできるだけ少ないボラティリティで達成したいと考えています。

リスクに見合う見返りが十分にあると判断したときには、インカム戦略においても積極的に追求及することを躊躇しません。一方バリュエーションが割高で、ファンダメンタルなリスクが積み上がっているような時は、守りの体制を固める時期で、現状はそのような時期と位置付けています。とは言え、アクティブな資産運用会社として守りの姿勢(柔軟性、流動性、分散)を備えていることは、機が到来すればすぐに攻めに転じられることを意味します。

ここ数カ月のより守り強くした運用アプローチは、運用哲学の変化ではないことをご理解いただきたいと思います。単に、現在の市場環境と投資機会に戦略を適合させているにすぎません。

問:金利上昇を懸念する債券投資家に一言お願いします。 

アイバシン:現在の市場の価格水準を見ると、金融市場はほとんどの先進国で利回りは上昇すると予想しています。PIMCOも、金利はいま一段高くなると考えていますが、向こう数年間に利回りの急激な上昇や、高インフレが発生する可能性が高いとは考えていません。既に今日利回りは、金利リスクへのエクスポージャーが、過去12ヵ月よりも魅力的に見えるほど上昇しています。

利回りの大きな上昇を懸念する投資家には、例えば、金利リスクのエクスポージャーを減らし――明確にマイナスのデュレ―ションにできる――柔軟性がより高い戦略で、金利上昇時でも利益を上げうる、非伝統的な債券のポートフォリオの検討をお勧めします。

しかし、緩やかな、金利に対して若干の弱気な見方であれば、今日のような金利上昇期の環境にも耐えられるよう設計されたインカム戦略への投資は妥当だといえるでしょう。

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著者

Daniel J. Ivascyn

グループ最高投資責任者(グループ CIO)

Alfred T. Murata

モーゲージ・クレジットチームのポートフォリオ・マネージャー

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