注目の運用戦略

PIMCOインカム戦略アップデート:徐々に回復しつつある経済において長期的な利益を狙う

この戦略は、ダウンサイドリスクを管理しつつ魅力的な利回りの獲得機会を提供し、投資家が世界経済の継続的な回復の流れに乗るための手助けとなることを目指しています。

世界的な健康危機が世界中の経済や産業や社会を変えつつあり、投資家にリスクと不確実性を、そして同時に投資機会ももたらしています。PIMCOインカム戦略の運用を、アルフレッド・ムラタ、ジョシュア・アンダーソンとともに担当しているダニエル・アイバシンが、債券ストラテジストのエステバン・ブルバノとともに、同戦略の現状のポジショニングとPIMCOの経済と市場に対する見方をご説明します。

問:今のマクロ経済全体に対するPIMCOの見通しを教えてください。

ダニエル・アイバシン:基本的には警戒的な見通しを持っています。現在は極めて厳しい経済ショックの真っただ中にあり、平たんではない緩慢な回復を予想しています。成長率が2019年のレベルに達するまでには、何四半期も厳しい状況が続くでしょう。しかも、それは健康危機が今後も次第に終息していくことを前提としていますが、決してそれが確実なものとは言えません。各地域がそれぞれ徐々に規制を緩和するなかで、パンデミック(世界的大流行)がどのような足取りを辿るかをしっかりと見極めることが大切です。

このように不確実性の高い状況では、自らの見通しに対して謙虚になることが大切です。本来インカム戦略は、長期的に元本を確保し価値の上昇を目指す戦略であることから、投資機会の追求もさることながら、特にダウンサイドリスク管理については特に大きな注意を払っています。

問:今日の市場をどう捉えていますか。

アイバシン:3月の急落時に比べ、全体的には、市場とその機能は大幅に落ち着きを取り戻してきました。健康危機と経済的ロックダウンの状況改善に対してだけでなく、膨大な政策対応についても、市場は好感する動きをみせています。しかし、この回復の足元は覚束ないことに十分注意する必要があります。明らかなダウンサイドシナリオが想定できるからです。株式のパフォーマンスは悪化し、中央銀行の後押しがあるにも関わらず、クレジット市場は一層の流動性悪化に直面するかもしれません。

また、もう一つ重要な点としてあげられるのが、極端に低くなった高格付け債券の利回りで、一部の債券セクターでは、インフレ期待の低下をさらに上回る低下を見せています。向こう1年では、債券の利回りは概ねレンジ内の動きに止まると予想しており、国債で十分な利回りを得ることは困難になるでしょう。

明るい材料としては、グローバル市場の一部には引き続き価格の歪みが見られるなかで企業クレジットセクターなどの起債額が高止まりしていることがあげられ、それらのなかには興味深い投資機会も生まれつつあります。ここ数年と比べても非常に魅力的な利回りとみられる分野もあります。

問:現在の投資アイデアを詳しく確認する前に、インカム戦略の運用目標を改めて教えてもらえますか。

アイバシン:インカム戦略の第一の目標は、安定した分配をしっかりと提供し続けることです。また、長期的な元本の上昇を第二の目標にしています。インカムを重視する強固なポートフォリオを構築するため、世界中の投資機会を広く見極めます。

今日の環境では、PIMCOのトップダウンのマクロの見方に沿って、長期的な価値の発掘に注力しています。長期的にみて、耐性が強いか価値の上昇が見込めると考えられるものについては、ある程度のボラティリティは許容する方針です。しかし、たとえそれが利回りを犠牲にすることになっても、元本が永久に棄損する可能性の高い一部の市場については、回避する方針です。私たちはこれをインカム獲得のための「曲がっても折れない」アプローチと呼んでいます。

この運用哲学は、今後も続くとみられる世界の景気回復の過程で、投資家への魅力的な利回りと価格上昇の提供に役立つと信じています。たとえ(PIMCOの基本シナリオではないものの、明らかなリスクと考えられる)よりネガティブなマクロシナリオであっても、この哲学に基づいて運用すれば、安定的な利回りを生み出せると考えています。

問:現在のインカム戦略のポートフォリオにおいて、金利に関してはどのような投資スタンスでしょうか。

アイバシン:現在の高格付け債券の市場では、金利リスクに見合う価値は得られないでしょう。多くの先進国の10年物国債の利回りは、ほぼゼロかマイナスとなっています。そのため、金利リスクについては引き続き警戒しています。

とはいえ、高格付け債券は守りの性質を持ち、分散効果も期待できることから、インカム戦略において依然一定の役割が期待できると考えています。当戦略では、他の先進国よりも利回りの高い米国で、引き続きデュレーションの多くを確保したいと考えています。ポートフォリオの金利リスクヘッジのために、国債がマイナス利回りの国のひとつである日本のアンダーウエイトは継続します。

問:インカム戦略が相当な期間にわたって選好してきたセクターが政府系モーゲージ債(MBS)です。このセクターに対する、最新の見方を教えてください。

アイバシン:まず背景として、政府系MBSが米国政府による直接の保証か、米国政府関連機関による強固な間接的保証があり、非常に質の高い資産である点を指摘しておきたいと思います。(PIMCOが、そしてFRBも通常最も注目する)モーゲージ・パススルー証券の場合、高格付けで流動性も高い点が当セクターを選好する理由です。

FRBが積極的にこの市場をサポートしてきたため、政府系MBSは、3月中旬以降割高になってきました。PIMCOでは長期的な観点でバリュエーションを評価しますが、歴史的に見れば、今日の政府系MBSは平均か妥当な水準です。しかし、波乱の経済状況のなかで、期限前返済率が向こう数カ月は低下するとみており、政府系MBSは、守りのインカム獲得資産としての魅力を持ち続けると考えています。こ2,3カ月でMBSへのエクスポージャーを徐々に削減してきましたが、依然としてインカム戦略のポートフォリオの大きな割合を占めています。

問:インカム戦略は非政府系MBSのエクスポージャーも持っています。こちらについてのポジションと見方はいかがですか。

アイバシン:まず、政府系と非政府系MBSの違いを簡単におさらいしましょう。政府系MBSは、直接または間接的に米国政府または米国政府関連機関の保証が付いているため、投資家から見れば格付けは非常に高く、期限前返済が最も大きなリスクとなる資産です。一方非政府系MBSは、政府保証のない住宅ローンが担保となっているため、信用リスクが主要なリスクとなります。

PIMCOでは今日に至るまで、米国住宅市場のファンダメンタルズは概して良好で、安定した価値で推移していると考えています。また、世界金融危機後に施行された規制により、過剰な住宅供給は見られていません。

住宅市場のファンダメンタルズの良さに加え、インカム戦略が保有する大半の非政府系MBSは、長期間にわたる安定した住宅市場を経て「成熟した」証券です。すなわち、2008年以前に借入が行われたローンの集合を裏付けとする資産です。それらのローンの借り手のほとんどは、10年におよぶ経済成長の間に資産を保有しつづけてきた人々で、既に家の相当の持ち分を自分のものにしています。従って、当戦略の非政府系MBSのエクスポージャーは、長期的に強い耐性のファンダメンタルズを持っていると考えています。

非政府系MBSのなかには、返済順位の低いストラクチャーによるものなど、信用リスクやボラティリティの比較的高いセグメントもあります。ここにきて割安感が出始めてはいるものの、そのような高リスクセグメントへのエクスポージャーは極めて限定的です。

問:3月に企業クレジット市場でのスプレッドが拡大し、その後やや持ち直したものの、回復傾向はセクターごとにまちまちです。インカム戦略における企業クレジットに対する見方はいかがですか。

アイバシン:パンデミック以前は、クレジットに対するエクスポージャーは、全体的には限られたものでした。現在は、一部の企業クレジットのセグメントについて、警戒しつつもやや楽観的な見方をしています。このセクターのエクスポージャーを一気に拡大することは考えていませんが、常に「曲がっても折れない」投資機会に注目しながら、銘柄ベースで企業の信用リスクを適宜追加しています。インカム戦略では、最近ボラティリティが急上昇したものの、今は欧州や米国で回復の兆しが見られる金融セクターを最もオーバーウエイトしています。一方、エネルギーや接客サービスなど、よりリスクの高い企業クレジットに対するエクスポージャーは非常に限定的です。現在、少しずつ慎重に、大きくダメージを受けた企業クレジットにエクスポージャーを広げていますが、リスクに十分見合う魅力を持った分野に限定しています。

企業クレジット市場で厳選して使用するもう一つの投資アプローチは、満期曲線上のリスクテイクの位置の調整です。これまで、長期ゾーンのスプレッド縮小の可能性を利用すべきケースがありました。

企業クレジッ���をより大きな目でみると、パンデミック以前の、借り手が全体的に優位な市場(財務制限条項の緩和や投資家保護の低下など)から、投資家の優位性が高まった市場へ明確なシフトが起こっています。既に投資家保護が強化された、あるいはドキュメンテーションが厳格化された、または財務制限条項が強化された、あるいは有形資産担保付きの、比較的利回りの高い社債の起債が多く見られるようになっています。

とは言え、クレジット市場に対する過度に楽観的なコメントによる誤解は招きたくないと考えています。たとえ経済が現在の低迷期から素早く回復したとしても、多くの企業の倒産やリストラは避けられないでしょう。投資家として、企業クレジットに幅広くみられる投資機会を評価する際には、信用リスク管理を極めて慎重に考える必要があります。

問:エマージング市場に対する見方とポジションを教えてください。

アイバシン:現在は世界的な健康危機に直面していて、大きなリスクがあります。エマージング市場の国々には、先進国ほどの政治的な力や能力は期待できません。しかし、短期的にはリスクがあるものの、長期的には魅力的な投資機会も見られます。インカム戦略ではエマージング市場については全般的に中立的で、大きな戦略の変更は考えていません。エマージング市場の中では、防御的で比較的安定した、高格付けの国債や準ソブリン債に注目しています。

問:以上を総括して、インカム戦略の全般的な見通しを教えてください。

アイバシン:今年前半は不確実性とボラティリティがインカム戦略を襲ったものの、この戦略のポートフォリオは打たれ強く、効果的な分散と柔軟性を備え、今日、世界中で生まれる投資機会をじっくりと狙える準備はできていると考えています。このポートフォリオには、景気が回復するにしたがって値上がりが期待できる多くのセグメントがあります。例えば、かなり積極的にトレードを行ってきた企業クレジット市場にはさらなる安定化が期待できるほか、モーゲージ関連の市場も期待できます。

私たちは安定した分配の提供を目指して、アクティブにインカム戦略の運用を行っています。現在目指しているのは、今後も継続する世界経済回復と正常化がもたらす利益を確保することで、ネガティブな結果を招く可能性のあるリスクに過度にさらされない運用を心掛けています。

不透明な市場環境における最新のPIMCOの見通しはこちらをご覧ください。

著者

Daniel J. Ivascyn

PIMCOグループ最高投資責任者(グループ CIO)

Esteban Burbano

債券ストラテジスト

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ご留意事項

過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落します。低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。社債には、発行体が元利金の支払い不能に陥るリスクがあります。また社債の価格は金利感応度や発行体の信用力に対する市場の認識、市場の全般的な流動性といった要因の影響により、変動する可能性があります。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。高利回りで低格付けの証券はより高格付けの証券よりも高いリスクを伴います。また、それらへ投資しているポートフォリオは投資していないポートフォリオに比べてより高いクレジット・リスクと流動性リスクを伴う場合があります。モーゲージ担保証券と資産担保証券は金利水準に対する感応度が高い場合があり、期限前償還リスクを伴い、また、発行体の信用力に対する市場の認識に応じてその価格は変動する可能性があります。また、一般的には政府または民間保証機関による何らかの保証が付されていますが、民間保証機関が債務を履行する保証はありません。ジニーメイ(GNMA 連邦政府抵当金庫)が発行する米国政府系モーゲージ債は、米国政府による元利金支払の保証付き債券です。フレディマック(連邦住宅金融抵当金庫)及びファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)が発行する債券は当該機関が期日通りの元利金支払いの保証をするものの、米国政府による保証はありません。ソブリン債は一般的には中央政府によって発行され、保証されています。米国政府機関の債務は米国政府からさまざまな形で支援を受けていますが、政府による全面的な保証は付与されないことが一般的です。こうした証券に投資するポートフォリオに対する保証はなく、ポートフォリオの価値は変動します。デリバティブ商品とモーゲージ関連商品を利用することにより、コストが発生する可能性があり、さらに流動性リスク、金利リスク、市場リスク、信用リスク、経営リスク、そして最も有利な時点でポジションを清算できないリスクなどが発生する可能性もあります。デリバティブ商品への投資により、投資元本以上の損失を被る可能性もあります。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。

特定の証券や種類の証券の信用格付により、ポートフォリオ全体の安定性や安全性が確保されるわけではありません。当戦略では安定的な分配の維持に努めますが、分配率は、市場の予想リターンと実際のリターンの変化、市場金利の変動、ポートフォリオのパフォーマンスなどを含む、数多くの要因の影響を受けます。市場環境の変化またはその他の要因が、ポートフォリオの分配率の変化につながらない保証はなく、分配率が将来にわたって維持できる保証もありません。

例えば、低金利時あるいは金利低下の局面では、多くの要因により、分配可能なインカムや配当水準は低下するかもしれません。具体的には、運用前の資産(追加資金や債券などの満期、売却、期限前償還などによる資金)を、新たに一層利回りの低い投資手段に振り向けざるを得ないかもしれません。 また、金利低下時には、ポートフォリオに含まれる(クーポン・レートが変わる変動利付債など)一部の投資銘柄からの支払いも減少し、それらはポートフォリオの分配可能なインカムや配当水準の低下につながるでしょう。

新型コロナウイルスにより、その治療方法の開発や政府の対応、その他経済要因の進展状況など、クレジット市場や世界の経済活動に長期的に及ぼす影響が不透明な状況が続いています。本資料の見通しは記載された日時点のもので、最新の市場の動きを反映していない可能性があります。

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