運用戦略

PIMCOインカム戦略アップデート:景気サイクル後期にある市場を乗り切る

景気サイクル後期において、インカム戦略はどのように守りと攻めのバランスを取っているのか。

気サイクル終盤におけるボラティリティの高まりと金利の上昇は、債券投資家にとっては投資機会でもあります。PIMCOインカム戦略のポートフォリオ・マネージャーでありグループ最高投資責任者ダニエル・アイバシンと、マネージング・ディレクターのアルフレッド・ムラタが、インカム戦略の中でどのように守りと攻めのバランスを取っているのかをご説明します。

問:2018年第3四半期にはまたボラティリティが上昇し、10月に入っても上昇は続いています。2018年年末に向けてどのようなマーケットを予想しますか。
ダニエル・アイバシン: インカム戦略の運用については長期的な見方を重視しています。日々の動きや、毎月の市場の動きにさえも捉われないよう心掛けています。長期的な見方を重視する投資哲学が、当戦略の運用開始以来、堅実なインカムと値上り利益を追求する運用目標を支えてきました。

5月のPIMCOの年次長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)で結論付けたように、金融危機後の10年が終わり、今後のボラティリティ上昇を見据えて、現在の市場環境の一歩先を見込んだポジションを取ってきました。このポジションは、第3四半期と10月のボラティリティの高まりを予測した適切なポジションだったと言えます。

年末に向けて、さまざまな政治に関する不確実性の要因が見られます。特に米国中間選挙後のねじれ議会、先日の選挙で誕生したポピュリストのブラジル大統領、イタリアと欧州連合(EU)との予算をめぐるやりとりを含む世界的に継続する政治的緊張の高まりが挙げられます。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進める中、市場はこのような不確実性を増幅する傾向が見られます。

従って、投資家は慎重を期して、ポートフォリオ全体のリスクを下げるような債券に注目すべき環境にあります。

問:当第3四半期、インカム戦略での大きなポジションの変化はみられますか。
アルフレッド・ムラタ:これまでと比べ、現在は相対的に信用力の高い資産と利回りの高い資産という2つの主要戦略分野のバランスがより取れています。信用力の高い資産は、経済成長が予想よりも低調な場合に高いパフォーマンスとなり、逆に利回りの高い資産は、経済成長が予想よりも堅調な場合に高いパフォーマンスをあげる資産です。2016年以来、利回りの高い資産の割合を減らしてきた結果、現在2つのバランスは均衡に近づいています。

ポートフォリオ全体では信用リスクを減らしてきましたが、通常ではない予想外のリスクから得られる投資機会の確保に努めています。世界各地で200人を超えるPIMCOのポートフォリオ・マネージャーの協力を得ながら、世界で100兆ドルの債券市場でそのような投資機会を見つけ出しています。

問:年初来のインカム戦略のパフォーマンスとその要因を教えてください。
アイバシン:債券市場では、通常金利リスクと信用リスクが主要なリターンの源泉です。2018年、金利は上昇し、クレジットスプレッドが拡大したため、この2つの要因が大きくマイナスに働きました。

しかしインカム戦略では、金利のデュレ―ションと信用リスクどちらに対しても保守的なポジションを取っていたため、最近の市場の荒い値動きの中でも債券市場全体に比べて堅調だったといえます。当戦略では金利リスクや企業の信用リスクといった伝統的なリスク要因に重きを置く代わりに、グローバルで運用することによる柔軟性や、ポートフォリオ・マネジメントチームが生み出す、モーゲージ・クレジット・セクターなど他の投資機会に注目した投資アイデアを活用してきました。

問:インカム戦略の分散について説明してください。それがパフォーマンスにどのような影響を与えているのでしょうか。
ムラタ:分散は、多くのリターンの源泉を抱えることにつながり、長年にわたってインカム戦略の成功に不可欠なものとなっています。分散と柔軟性により、ある年に特定の資産クラスのパフォーマンスが振るわなくても、当戦略の目的達成を目指すことができます。昨今のように不確実性が高い市場環境の中では特に分散と柔軟性は重要です。

分散には長期保有することで、魅力的な投資機会を追求できるというメリットもあります。たとえば、2013年や2014年に、当戦略はエマージング市場に投資しました。やや時期尚早でしたが、そのまま保有し続けたことで、最終的には利益を実現しました。

問:インカム戦略内の個々の債券セクターを詳しく見た場合、エマージング市場をどう捉え、投資家として何を期待しているのでしょうか。
アイバシン: インカム戦略のポートフォリオを作り上げていく段階で、世界中の投資機会に目を配っています。その際、ドル建てにせよ現地通貨建てにせよ、エマージング市場の債券もその中の一つです。PIMCOはここ数年、エマージング市場に追加的に多くの経営資源を投下し、このセクターに力をいれています。

しかし、低格付けのハイ・イールド社債セクターのように、エマージング市場は価格が乱高下する傾向があります。そのため、当戦略では全体的なポジションの規模は拡大せず、特に現地通貨建ての投資は限定的にしています。

エマージング市場は過剰反応しやすく、センチメントが大きく変化する傾向があるため、魅力ある投資機会も生まれやすいものです。最近の市場のボラティリティの高まりは、それ相当に強いパフォーマンスに結び付いています。

従ってインカム戦略では、逆張りを狙う姿勢を維持するうえでも、割合は小さくとも、エマージング市場への投資は意味があるものだと考えています。今後数年のうちには、このセクターはリターンに寄与すると予想しています。

問:スプレッドが過去最低水準、もしくはそれに近い水準にある現在の企業クレジットをどうみていますか。
ムラタ: 企業クレジットは割高なため、現在非常に慎重な姿勢を取っています。このセクターの大きな課題は、特にBBB格の発行が非常に多い点です。もし景気が反転すれば、そのような多くの債券が投資適格未満に格下げされる可能性があります。同様の理由で、レバレッジド・ローンも警戒しているセクターです。

また最近は、高い利回りを得るために、より多くのリスクを取る投資家が見られます。個人投資家は、銀行預金の利回りがまだ十分に高くないため退職後に向けて利回りの高い債券を志向しています。また機関投資家は、プライベート・エクイティ戦略やヘッジファンドへの投資志向を強めている傾向が見られます。

従って全般的に今は、企業クレジットについては一層慎重であるべきで、チャンスが来た時に積極的に攻めの運用ができるよう流動性をある程度持っておくべきだと考えています。

問:現在のバリュエーションと景気サイクルを考慮すると、企業クレジット市場にどのような投資機会がみられますか。
アイバシン: ムラタが触れたように、バリュエーションが割高でボラティリティも上昇するなか、他の高利回りセクターに比べ、企業クレジットのウエイトを大きく引き下げています。この点が他の競合する戦略とPIMCOのインカム戦略との恐らく最も大きな違いだと思います。

とはいえ、投資機会も発見しています。PIMCOではここ数年、世界各地でクレジットリサーチ・チームを大きく拡充しましたが、まず彼らの手でボトムアップの投資機会を見出すための信用分析をしっかり行っています。それに加えて、インカム戦略チーム全員で、規模に関わらず抵抗力の強い性質をもった資産、「曲がっても折れない」資産を見つけ出すことを目標の一つとして掲げています。十分に強固な資産または資産を十分に持つ発行体や、元本損失リスクが少ないとみられる資本構成上の上位にある投資を志向しています。このように曲がっても折れない資産は、たとえば景気後退局面のような環境が著しく悪化した状況でも堅実なパフォーマンスを提供してくれるでしょう。

これがインカム戦略最大の特徴であり、そのような資産の一部がここ数年、リターンに貢献してきました。

問:モーゲージ債を含む証券化商品のセクターでは、何に注目していますか。
アイバシン: 住宅関連の投資は引き続き選好しています。既存の保有証券の部分返済は大きく膨らみましたが、今年このセクターへの配分は拡大することが出来ました。

その理由の一つが、新しい投資対象の発掘を積極的に行った点です。たとえば、PIMCOは住宅ローンや商業用不動産ローンを新規に貸付ける業務に参入しました。PIMCOの多くの投資戦略のなかで、モーゲージ市場のほぼあらゆる側面に積極的に関与してきました。このセクターに対して築き上げてきた知識や密な関係を活かし、ここ数年では、米国、英国、ヨーロッパの一部で非常に魅力ある住宅関連の担保発掘ができるようになりました。

その過程のなかで、市場センチメントが変化すれば信用力が劣り、ダウンサイドリスクとなると考えられる一部のモーゲージ市場は回避してきました。

投資対象の発掘においてはインカム戦略の運用規模を活用し、投資家にとって非常に魅力的な投資価値を生む機会を提供できると考えています。PIMCOの投資対象を発掘する力が、インカム戦略のリスク調整後ベースで力強いパフォーマンスを達成する潜在力につながっていると考えています。

問:インカム戦略の投資家にとって、来年はどのような年になるでしょう。
アイバシン: 今後を考えると、2019年の世界の経済成長は全般的にはプラスではあるものの、成長率は鈍化する見通しです。またインフレ率は比較的落ち着つくとみていますが、ほとんどの先進国経済が景気サイクル終盤にあることから、上振れも見られる可能性があります。しかし、主要な中央銀行は全般的にインフレを上手くコントロールするでしょう。

投資家とって、このような状況は金利が長期的に予想の範囲内での動きに留まることを意味しています。米国をはじめとして、金利は市場最低水準から既に相当上昇しています。金利上昇は短期的には痛みを伴うものの、インカムを引き上げ、長期的には高いリターンを生む可能性があり、債券投資家にとっては望ましいものです。

ボラティリティが上昇する可能性もありますが、インカム戦略のように柔軟性の高いアプローチにとって、ボラティリティの上昇は投資機会でもあります。柔軟性や耐性が向上し、クレジット市場で世界的に守りの姿勢を強めているため、来年以降インカム戦略は一層際立った地位を確立すると確信しています。

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著者

Daniel J. Ivascyn

グループ最高投資責任者(グループ CIO)

Alfred T. Murata

モーゲージ・クレジットチームのポートフォリオ・マネージャー

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