注目の運用戦略

PIMCOインカム戦略アップデート:利回り上昇時の債券投資

金利上昇はインカム投資家にとって厳しい市場環境ですが、同時に利回りの向上ももたらしてくれます。

較的穏やかだったこれまでの数年とはうって変わり、今年は突然の利回り上昇という現実に債券投資家は直面しています。以下のQ&Aでは、PIMCOインカム戦略の運用チームで、グループ最高投資責任者であるダニエル・アイバシンとマネージング・ディレクターのアルフレッド・ムラタが、インカムを求める投資家への投資機会も含めた、最新の市場環境と戦略の見通しをご説明します。

問:今年は、高利回り債券にとっても信用力の高い債券にとっても厳しいスタートとなっています。債券の投資環境について教えてください。

ダニエル・アイバシン:債券投資家にとって、最近の大きな懸念事項は金利の上昇です。年初の米国10年債の利回りは2.5%をやや下回っていましたが、現在は3%を超えるような状態です。利回りが上昇すればもちろん価格は低下し、通常債券のリターンには重石となります。

第1四半期には、いくつか異例の事態が不確実性を拡大させました。まず、米国経済は景気拡大の最終局面にあり、多くの投資家はこの先どれほど景気拡大が続くのかを疑問視しています。次に、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融危機以来の緩和政策を徐々に縮小してきており、バランスシートを縮小させ、短期金利を引き上げています。そして最後に、米国で昨年末に可決された税制改革のパッケージと、それに続く政府支出法案が、米国経済にかなりの財政刺激効果を与えています。

景気サイクルのこれほど遅い局面での財政刺激は極めて稀で、FRBによる金融政策正常化の仕事をより困難なものにし、数ヵ月前に市場が予想していた以上に利上げせざるを得ないリスクが生じています。

問:インカム戦略は今年、信用力の高いコア債券や高利回り資産と比較しても健闘しています。パフォーマンスに貢献している要因とそうでない要因を教えてください。

アルフレッド・ムラタ:この戦略のポートフォリオは、大きく2つの部分に分けられています。利回りが比較的高い資産と安全性が高い資産です。今年は現在までのところ米国債が大きく売り込まれ、安全性の高い部分のパフォーマンスはマイナスのパフォーマンスとなっています。しかし一方の高利回り資産の部分はプラスのリターンとなっており、ポートフォリオ全体のリターン安定化に寄与していました。

今後は、ポートフォリオの利回りが上昇したことがプラスに働くと考えています。全般的には、依然として世界中で魅力的な投資の機会が見つかっています。したがって、この戦略の第一の投資目的である、安定的なインカムの提供と投資資産の成長を達成するのに十分な対応ができていると考えています。

問:金利の見通しとそのインカム戦略への影響を教えてください。

アイバシン:他の市場参加者と同様に、金利には慎重な見方をしています。FRBによる利上げは年内、さらには来年にかけても継続が見込まれるなかで、1年後の金利は今よりも高くなるでしょう。10年物の米国債の利回りは3.25%から3.5%まで上昇しているかもしれません。

しかし、他の市場参加者と違うのは、債券価格の軟化はこの景気サイクル固有のものと捉えている点です。長い目で見ると、急速なテクノロジーの変化や人口の高齢化、グローバル化などの長期的な動きにより、金利は一定の範囲内の動きに止まると考えています。

短期的には金利の動きについて慎重ですが、当戦略で金利のエクスポージャーを全て排除することは考えていません。米国債などの信用力の高い資産は、リスクが高まった時や景気後退などにより株式や高利回り債券の資産価値が低下した時には、安全資産として大きな価値があります。金利エクスポージャーを含めた資産の組み合わせが、全体的なボラティリティを減らすと考えています。

問:インカム戦略では、非政府機関系モーゲージ債が主要な高利回り資産となっています。このセクターを現在どのように見ていますか。

ムラタ:非政府機関系モーゲージ債はインカム戦略の高利回り資産の部分において、引き続き魅力的なセクターだとみています。このセクターは「曲がっても折れない」資産クラスだとみており、短期的に価格の振れ幅が大きくても、元本が消失することは稀だと思います。住宅価格が下落に向かったとしても、非政府機関系モーゲージ債の利回りは、デフォルトを考慮に入れた上でも、米国債の利回りを上回るものになるでしょう。

但し、このセクターは縮小が続いています。2007年にはおよそ2兆ドルあった残高は、現在約5,000億ドルに減少しています。しかし一方で、新たな投資機会も見つかっています。最近、利払い再開住宅ローン(返済が数カ月滞った後に、再び返済が始まったローン)が同様の投資機会を提供してくれることがわかりました。住宅取得支援機関であるファニーメイやフレディマックを含めた、大手の利払い再開住宅ローンの売り手が、昨年そのような住宅ローンのオークションを始めました。PIMCOは大手運用会社の一社として、そのようなオークションに参加することが可能で、魅力的とみられる証券に投資し、それ以外は流通市場で売却することができます。

問:インカム戦略では、世界全体の「リスクオフ」の環境下での主要なヘッジのポジションとして、オーストラリアの金利ポジションをしばらく保有しています。これに対する現在の見方を教えてください。

ムラタ:オーストラリアの金利エクスポージャーは、インカム戦略の信用力の高い部分の戦略として、引き続き魅力的だと考えています。

もし中国の経済成長が低迷するようなことがあれば(そのような事態もありうると考えています)、商品価格は下落する可能性が高く、オーストラリア経済の成長も鈍化が予想され、金利も低下するでしょう。オーストラリアの金利エクスポージャーは、中国の経済成長鈍化と、それに伴って想定されるリスクオフの影響に対するヘッジです

問:他に注目している債券のセクターはありますか。たとえば、エマージング市場は依然として魅力的でしょうか。

アイバシン:私たちが理想とする投資対象は「曲がっても折れない」資産です。つまり、実物資産または担保による裏付けがあり、資本構造の中で上位に位置し、景気サイクルにおける現時点で根本的に健全な資産です。

そのような資産以外にも、当戦略の利回りやリターンを追加的に補う投資対象を種々探しています。一例をあげれば、金融セクターの厳選された一部の債券です。 銀行や保険会社や専門金融機関は自己資本を増やしていますし、金融危機以来厳しくなった規制に対し活動が以前よりも制限されていますが、これは債券保有者にとってはどちらも歓迎すべき変化です。またエマージング市場においても、分散投資の手段として興味深い投資機会を見つけ出しています。FRBが利上げを続ける限り、このセクターのボラティリティは高くなることが予想されますが、PIMCOではエマージング市場への投資は慎重で合理的なリスク分散の方法だと考えています。

景気サイクルのこの時点において、慎重に分散を進めることがとりわけ重要です。ポートフォリオの中の特定のセクターがアンダーパフォームすることで、インカム戦略の目的をリスクにさらすほどの高いエクスポージャーを持つことは望んでいません。

問:アジアや欧州、ラテンアメリカの投資家にとっては米ドルのヘッジコストが上昇しています。彼らのような投資家に対して、グローバルなインカム戦略と現地のインカム戦略に対するPIMCOの見方を教えてください。

アイバシン:米国のフラットなイールドカーブやその他ヘッジにかかるコストを考えると、そのような投資家が見慣れている通貨の利回りを期待してPIMCOのインカム戦略への投資を考えるには、やや厳しいものがあります。しかし、米国外の投資家でも、リスク分散や幅広い資産によって得られる投資機会を活用できるという利点を持つグローバルなインカム戦略を検討することは、賢明な対応であることは間違いないと考えています。

残念ですが、一部の海外の投資家にとって、従来通りの利回りを期待すれば、それなりに高いリスクを払わなければなりません。 多くの場合、そのようなリスクを取ることは心地良いものではありません。

為替ヘッジの問題に対する望ましい対応方法は、個別の国や投資家のニーズ、そしてインカム戦略を全体の投資ポートフォリオの中でどのような位置づけるのかによって異なります。そのような機関投資家の皆様には、PIMCOのソリューショングループが望ましい解決策をご提供できるかもしれません。

現在のヘッジ対策にはアップサイドも期待できる点があります。インカム戦略の運用においては、ヘッジを新たな信用力の高い資産を見つける機会とも捉えています。

問:インカム戦略の資産が増えるにつれて、どのようにポートフォリオを運用しているのかという質問をよく受けます。運用資産規模は投資に影響を与えますか。

アイバシン:インカム戦略の資産規模に関しては何も心配していません。もし将来のどこかで、資産規模の問題がその目標達成の妨げとなるようなことがあれば、当戦略への新規投資を一時休止するでしょう。

実際には投資家に対し、この資産規模を活かしたユニークな投資の付加価値のご提供に努めています。たとえば資産規模が大きなことで、利払い再開住宅ローンなど、小規模の運用会社や運用戦略では扱えないような種類の資産に投資することが可能になります。

問:関連する質問ですが、特にボラティリティの上昇が見込まれる状況で、インカム戦略ではどのように流動性を管理しているのでしょう。

アイバシン:アクティブ運用会社の最も大切なもののひとつが、高度な流動性管理能力です。今日の市場は以前と比べて流動性が低下しています。というのも、金融危機以降の規制強化により、市場のセンチメントがシフトした場合の、銀行やブローカー・ディーラーによる流動性の提供が抑制されているためです。インカム戦略は非常に強固な流動性を維持することを目指していますが、現在のボラティリティの低い債券市場で、その柔軟性と引き換えに利回りをやや犠牲にしてきました。しかし、3か月後、6カ月後、あるいは3年後になるかもしれませんが、将来のどこかでボラティリティは再び上昇するでしょう。私たちのゴールは、その時インカム戦略がボラティリティに耐えられるだけでなく、攻めの運用に転換するため、蓄えてきた流動性を利用して投資家にさらに高い利回りを提供することです。

問:今後の基本シナリオ、極端なレフト・テールのシナリオとはどのようなものでしょう。そのようなシナリオのもとで、この戦略はどのようなパフォーマンスをみせるのでしょうか。

ムラタ:まず基本シナリオの見通しとしては、来年ボラティリティは上昇するとみていますが、それほど大きな上昇にはならないと考えています。米国債の利回りは上下に振れるものの、一年後の利回りは現在のものとそれほど大きくは違わないでしょう。社債やクレジットセクターについては、近くボラティリティの上昇を見込んでいますが、全体的には大きな動きとはならないでしょう。このシナリオでは、魅力的な利回りに加えて、ある程度の元本増加も目標としています。

レフト・テール・シナリオでは、リスク資産の急落の可能性を最も懸念しています。世界株式などのリスク資産が今後1年で大暴落すれば、当ポートフォリオの高利回り資産の部分も大きく下落するでしょう。信用リスクの分散と信用力の高い債券への資産配分が非常に重要となるのはこのためです。

アイバシン:短期的には、世界の経済成長は健全な状態が続くと考えています。しかし、景気の拡大は10年目に入り、FRBだけでなく恐らく他の中央銀行も緩和的な金融政策を方向転換しようとするなかで、予期せぬ負のサプライズとなり得る諸々の小さなリスクも散在しています。

これに対し将来の景気後退の影響を緩和するため、インカム戦略や他のPIMCOの戦略でも少しずつリスクを減らしてきました。キャッシュや高格付け債券を急速に増やしているわけではありません。過去の水準と比べバリュエーションが少々割高となり、リスクがじわじわと高まりつつあるため、警戒感をやや強めている状態です。

金利の上昇は債券のリターンにとって向かい風となるかもしれませんが、インカム戦略は高い柔軟性を持ち打たれ強く設計されています。地域間や市場間の分散も大きく、世界各地にいるポートフォリオ・マネージャーやクレジットアナリストによるPIMCOの最高の投資アイデアを取り入れています。

著者

Daniel J. Ivascyn

グループ最高投資責任者(グループ CIO)

Alfred T. Murata

モーゲージ・クレジットチームのポートフォリオ・マネージャー

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ご留意事項

過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。モーゲージ担保証券と資産担保証券は金利水準に対する感応度が高い場合があり、期限前償還リスクを伴い、また、発行体の信用力に対する市場の認識に応じてその価格は変動する可能性があります。また、一般的には政府または民間保証機関による何らかの保証が付されていますが、民間保証機関が債務を履行する保証はありません。高利回りで低格付けの証券はより高格付けの証券よりも高いリスクを伴います。また、それらへ投資しているポートフォリオは投資していないポートフォリオに比べてより高いクレジット・リスクと流動性リスクを伴う場合があります。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。デリバティブ商品とモーゲージ関連商品を利用することにより、コストが発生する可能性があり、さらに流動性リスク、金利リスク、市場リスク、信用リスク、経営リスク、そして最も有利な時点でポジションを清算できないリスクなどが発生する可能性もあります。デリバティブ商品への投資により、投資元本以上の損失を被る可能性もあります。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。

本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。 投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。

本資料には、本資料作成時点でのPIMCOの見解が含まれていますが、その見解は、予告なしに変更される場合があります。本資料は情報提供を目的として配布されるものであり、投資助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品の推奨を目的としたものではありません。本資料に記載されている情報は、信頼に足ると判断した情報源から得たものですが、その信頼性について保証するものではありません。