注目の運用戦略

PIMCOインカム戦略アップデート:新たな10年における柔軟性と機会に焦点をあてる

より高い配当比率と引き換えに企業クレジット・リスクを増やす典型的なトレード・オフの手法ではなく、責任あるアプローチでインカム確保を目指しています。

2019年第4四半期は、貿易摩擦の緩和に伴い、投資環境も落ち着きました。この状況は続くのでしょうか。PIMCOのインカム戦略を統括するポートフォリオマネージャーのダン・アイバシン、アルフレッド・ムラタ、ジョシュ・アンダーソンが今後1年の見通しと戦略についてご説明します。

問:景気後退リスク、貿易摩擦、ブレグジット(英国のEU離脱)をめぐる不確実性が高まるなか、昨年の大半はグローバル経済の成長は鈍化しました。しかしながら第4四半期には、こうしたリスクが緩和され、市場のセンチメントが改善したようにみえます。2020年のPIMCOの見通しを教えてください。

アイバシン:2020年の見通しに関しておそらく最も重要な点は、世界の主要な地域のほとんどで、経済成長率が概ねプラスになるだろうと見ていることです。成長率は期待を小幅下回り、過去に比べても小幅低下するとみられます。ただ、景気後退のリスクはやや低下したとみており、着実な成長と相対的に低いインフレ率を予想しています。米国が諸外国をリードした昨年と異なり、今年の成長モメンタムの源泉は米国以外になるとみています。

それでもリスクはあります。アニマルスピリッツが旺盛な中、インフレ期待はきわめて低水準にありますが、インフレが予想を上回るリスクがいくらかあるとみています。また、PIMCOの長期経済予測とも一致しますが、政治的にかなりの不確実性が続くでしょう。今年は特に米国の大統領選の結果次第で、財政政策の方向、より広い意味では政治の方向が大きく変わる可能性があります。最後に、グローバル経済の成長は常に外的ショックを受ける可能性があります。現在は、新型コロナウイルスの感染拡大のリスクを注視しています。

現時点でのPIMCOの見方は、コンセンサスとさほど変わりません。すなわち、市場はレンジ内の取引となり、リターンは昨年より若干低下、リスクテークには概ね良好な環境だとみています。2019年初頭に主要な中央銀行が緩和方針に転じ、昨年、米連邦準備制度理事会(FRB)が3回の利下げを実施したことを踏まえると、これはさほど意外ではありません。しかしながら、市場で不確実性の一部が顕在化することを勘案し、依然として残る潜在的なテールリスクは意識しています。PIMCOでは、運用プロセスの一環として、投資家に優しくない経済環境に突入するとすれば、基本シナリオのどの部分が間違っているのかを時間をかけて検討します。

問:今年、グローバル経済の成長は減速するもののプラスを保つとのマクロ経済の見通しのもとで、インカム戦略はどのように位置づけられるのでしょうか。

ムラタ:PIMCOのインカム戦略では、ポートフォリオを2つの一般的な要素に分割する方針を取っています。1つは、経済成長が予想を上回った場合に良好なパフォーマンスとなる傾向のある、利回りの高いアセットでの運用。もう1つは、経済成長が予想より弱い場合に良好なパフォーマンスを示すと期待される、信用力の高いアセットでの運用です。

ポートフォリオの高利回り部分については、引き続き住宅ローンを裏付けとする債券である非政府系(政府保証または民間保証のない)住宅ローン担保証券(MBS)にバリューがあるとみています。このセクターでは、借り手のローン返済に伴いレバレッジの解消が続いており、企業がレバレッジ比率を高めている企業クレジット・セクターとは対照的です。

ポートフォリオの信用力の高い部分で、過去数ヶ月非常に魅力的だと判断した機会の1つは米国の政府系MBSです。これは同じく住宅ローンを裏付けとしながら、米政府または政府系の保証が付いている債券です。これらは魅力的な流動性プロファイルをもつ、信用力の高い証券です。2019年の米国の金利動向を踏まえると、同セクターは最近、大幅に価格が調整されており、魅力的な投資機会となっています。

問:インカム戦略のデュレーションのポジショニングについて教えてください。

ムラタ:投資ポートフォリオにデュレーションを抱える理由は2つあります。第1は、金利の低下が予想される場合の元本上昇の可能性です。金利デュレーションの積み増しは、長期金利が低下していた過去や2019年のある時点では有効な戦略でしたが、現在はそうではありません。現状で金利はきわめて低く、金利が上昇する潜在的なリスクがあります。ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックスの利回りは1.5%を切っており、デュレーションは7年以上です。このインデックスを追随する投資家は、金利が20~30ベーシスポイント上昇しただけで、1年保有してもリターンがマイナスになる可能性があります。

デュレーションを維持する第2の理由は、リスク資産の急落による打撃の緩和することにあります。そして、この点こそ、私共がインカム戦略にある程度の金利エクスポージャーを望む理由です。信用力の高い他の政府債市場に比べて相対的に利回りが高いことから、デュレーションは主に米国で取っています。

アイバシン:とはいえ、かなりのダウンサイド・リスクの緩和が必要だと考えているわけではありません。ポートフォリオの信用リスクは徐々に引き下げてきましたし、住宅関連セクターで取っているポジションの多くは、ここ数年で信用の質が向上しているためです。したがって、金利ポジショニングは、あくまでより広いポジショニングを反映したものだと言えます。つまり、信用リスクの引き下げ、株式ベータの引き下げ、景気が大幅に減速した場合の実質元本損失リスクの引き下げを重視しています。

問:景気後退の可能性を懸念しているのでしょうか。

アイバシン:2020年については全般に明るい見通しをもっていますが、2018年後半や2016年初めのように環境が悪化した場合、中央銀行は景気減速や市場の混乱に対処できる有効な手段を持ち合わせていないと考えます。

私共が重視しているのは、お客様である投資家にとって独自の価値提案ができるインカム・ポートフォリオの構築です。企業クレジットに大きく依存している多くの競合他社とは異なり、リスクを増やすことなく利回りが維持できる、耐性のある市場領域の発掘を目指しています。そうした機会を、消費セクター、住宅関連セクター、住宅ローン市場に見出しています。

問:住宅関連の投資を選好している理由を教えてください。

アンダーソン:米国の住宅危機の発生から12年以上が経過し、現在では住宅関連投資の多くでキャッシュフローが安定しています。しかし、信用格付けや利回りのスプレッドは、往々にしてこうした現状を反映していません。PIMCOでは、米国の住宅のファンダメンタルズが強いとみています。世帯形成が増加し、住宅供給は逼迫し、住宅ローン金利は低く、所得は増加しています。アルフレッド(ムラタ)が言及したセクターのレバレッジ解消も重要です。同時に住宅価格が上昇していることから、こうしたローンは全般に安定しており、同セクターのボラティリティの低下に寄与しています。MBSのエクスポージャーは、ここ数年、インカム戦略がボラティリティを低く抑えることができてきた要因の1つです。

直近では、政府系MBSが2019年第4四半期のパフォーマンスに大きく寄与し、年間を通して着実に組み入れを増やしました。第4四半期中、住宅ローンの期限前償還(借り換え)は減少し、利回りは引き続き魅力的です。

住宅ローン証券化商品の投資には時間を要し、高度な専門性が求められますが、PIMCOは長年にわたって開発してきました。こうした専門性が、競争上の最大の強みであり、インカム戦略の成功の重要な推進力であると考えています。

問:インカム戦略は、しばらくの間、企業クレジットに慎重な姿勢を取っています。現在の見解を聞かせてください。

アイバシン:クレジットに関しては慎重です。世界的に利回り追求の需要が旺盛なことから、今後数ヶ月、投資適格債、ハイイールド債ともスプレッドが縮小しても意外ではありません。しかしながら、引受基準の引き下げなどファンダメンタルズの悪化がみられることから、若干の潜在的リターンを犠牲にすることはやむを得ないと考えています。

とはいえ、企業クレジットにも興味深い領域があります。第1に、私共では「曲がっても折れない」、つまり短期的には圧力にさらされる可能性があるものの、ダウンサイド・リスクを最小化する特性を持つ投資先を積極的に発掘しています。具体的には、資本構成の上位の債券、実物資産に裏付けられた債券、長期的なキャッシュフローの回復が見込める債券等です。

第2に、金融セクター、とりわけ銀行を引き続き選好しています。一般事業セクターに比べて価格のボラティリティは高い傾向がありますが、金融危機以降、全般に規制環境が厳格化された結果、銀行のファンダメンタルズは強くなっています。たとえば、英国の銀行のエクスポージャーは、ブレグジットに対する懸念が若干落ち着き、スプレッドが縮小したことを受け、昨年のパフォーマンスにプラスに寄与しました。

最後に、企業クレジットについては、私共がある程度コントロールでき、投資家にとって価値をもたらすことができる特殊な状況にも注目しています。大きなポジションを取るわけではありませんが、これによりリターンを押し上げられる可能性があります。

問:今後の10年、投資家はインカム戦略に何が期待できるでしょうか。

アイバシン:投資家の皆様には、これまでと変わらぬ哲学とアプローチをご期待いただけます。私共ではインカム戦略がもつ柔軟性を駆使して、最も強固なインカム重視のポートフォリオをご提供したいと考えています。

この目的に鑑み、ポートフォリオを特定のベンチマークに連動させることはしていません。アルフレット(ムラタ)が言及したように、一般的なベンチマークの一部はいまや、過去に比べてリスクが高く、リスク1単位あたりの期待リターンが大幅に低くなっています。

おそらく最も重要なのは、PIMCOのマクロ経済見通しと齟齬のない形でインカム戦略のポートフォリオを運用することでしょう。私共は現在、やや慎重になっています。そのため、高めの配当比率と引き換えに、企業リスク、株式ベータを高める典型的なトレードオフの手法を活用するのではなく、創意工夫してインカムを確保しようとしています。高いリターンを生み出すことを目指していますが、インカム戦略の主たる目標である元本の保全も実現したいと考えています。

資産運用ではチームワークが何より肝要です。PIMCOでは今後もリスク管理や分析チームをはじめポートフォリオ管理グループを総動員して、インカム戦略にとって最適なアイデアの発見に尽力して参ります。

著者

Daniel J. Ivascyn

PIMCOグループ最高投資責任者(グループ CIO)

Alfred T. Murata

モーゲージ・クレジットチームのポートフォリオ・マネージャー

Joshua Anderson

グローバルABSポートフォリオ・マネジメントチーム統括

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過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落します。低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。モーゲージ担保証券と資産担保証券は金利水準に対する感応度が高い場合があり、期限前償還リスクを伴い、また、発行体の信用力に対する市場の認識に応じてその価格は変動する可能性があります。また、一般的には政府または民間保証機関による何らかの保証が付されていますが、民間保証機関が債務を履行する保証はありません。ジニーメイ(GNMA 連邦政府抵当金庫)が発行する証券は、米国政府による元利金支払の保証が付いています。フレディマック(連邦住宅金融抵当金庫)及びファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)が発行する債券は、当該機関が期日通りの元利金支払いの保証をするものの、米国政府による保証ではありません。高利回りで低格付けの証券はより高格付けの証券よりも高いリスクを伴います。また、それらへ投資しているポートフォリオは投資していないポートフォリオに比べてより高いクレジット・リスクと流動性リスクを伴う場合があります。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。デリバティブ商品を利用することにより、コストが発生する可能性があり、また流動性リスク、金利リスク、市場リスク、信用リスク、経営リスク、そして最も有利な時点でポジションを清算できないリスクなどが発生する可能性もあります。デリバティブ商品への投資により、投資元本以上の損失を被る可能性もあります。

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