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PIMCOインカム戦略アップデート:値動きの激しい市場で粘り強さを発揮

PIMCOでは、2019年も市場の高ボラティリティは続き、インカム戦略には投資機会が生まれると期待しています。

2018年終盤のボラティリティ上昇により、S&P500株価指数でみた米国株式市場は、ピークから20%近く下落し、一年を通して4.4%のマイナスとなりました。一方、高格付け債券は期待通り反転し、第4四半期上昇しました。PIMCOインカム戦略のポートフォリオ・マネージャーのダニエル・アイバシンとアルフレッド・ムラタが、当戦略のボラティリティへの対応と今年の見通しについてご説明します。

問:投資家のセンチメントが昨年第4四半期に変わった理由と、今後の見通しについて教えてください。

ダニエル・アイバシン:第4四半期の市場の動きは、特に米国以外の成長率低下に対する投資家の反応や、中央銀行の政策に対する懸念、および世界の政治に対する多大な不透明感などが影響を与えています。また、年末に向けて流動性の低下という、テクニカル要因も大きく影響しています。

ボラティリティを視野に入れておくことは重要です。この10年は、金融危機後の政策担当者によるボラティリティ抑制の10年と位置付けることができます。しかし、政治の不透明さと中央銀行のボラティリティ抑制姿勢の後退を主な理由とし、市場環境は変化し、今後大きく変わってゆくとPIMCOではみています。第4四半期のボラティリティ上昇は想定の範囲でしたが、そのような不安がいつ顕在化するかをはっきり予測することは非常に難しいものです。

投資家の観点からは、このような時には元本の保全が極めて重要です。そのため、全体的には守りを重視したポジションとし、市場ボラティリティを攻めの材料として活用する方針です。昨年の第4四半期を凌いだインカム戦略の結果はまずまずだと考えています。

問:2018年、米国債の利回りは非常に大きく変動しました。2.4%からスタートした10年物利回りは、ピークで3.2%まで上昇し、2.7%で年末を迎えました。今年はどのような利回りの動きを予想しますか。

アイバシン: PIMCOでは、利回りがある水準を超えると自動的に上昇するといった、テクニカル的な見方はとりません。高格付け国債利回りの長期の動きを示すグラフを見ると、相対的に一定のレンジ圏内で動く時期は決して特異な時期ではありません。現在も、長期にわたってレンジ圏内で動く時期にあると考えています。

その理由のひとつは、インフレの急激な上昇が見られないことです。また世界経済の成長率は低く、債務残高も高止まりしたままの状態です。次の景気後退期には債券利回りはさらに低くなることが予想されることから、これには憂慮しています。市場下落局面で金利に何が起きるのか、この第4四半期の高格付け債券価格の急騰に、その前兆を見ることができました。

しかし短期的には、国債やその他の高格付け債券市場は少々先走りする傾向があるとも考えています。向こう12ヵ月の間、金利は大きく上昇することはないとみていますが、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを続ける可能性はまだ十分にあるでしょう。高格付け債券の利回りが、今後数カ月の間少しずつ上昇しても不思議はなく、注意を要します。

問:第4四半期におけるインカム戦略の主なパフォーマンス要因は何ですか。

アルフレッド・ムラタ:昨年、インカム戦略における経済全体のトップダウンの見方と、ボトムアップのアイデアの組み合わせは上手く機能しました。年初には、当面経済成長は力強さを維持するものの、中期的にはスローダウンする可能性を懸念していました。そのため、インカム戦略ではクレジットリスクを減らしていましたが、第4四半期には攻めに転じ、魅力的な価格水準でクレジットのポジションを増やしています。しかし重要なことは、安全性の高い資産への投資部分を維持することで、元本の保全ができたことです。これらの安全資産は第4四半期の重要なパフォーマンス要因となりました。

全体的に見て、国債や政府機関系モーゲージ債(MBS)などの安全性の高い資産の保有は、通常経済環境が厳しい時のポートフォリオの抵抗力を強め、非政府機関系MBSなどの高利回りの資産の保有は、通常景気低迷期のインカムとリターン獲得に貢献してきました。

問:金利エクポージャーを示すデュレ―ションは、第4四半期どのように変化したのでしょう。また、現在、当戦略でのデュレ―ションをどう考えていますか。

ムラタ: ポートフォリオのデュレ―ション保有には主に2つの理由があります。潜在的なトータル・リターンの向上と、ダウンサイド・リスクへの備えです。これまでは、一般に金利が上昇すればデュレーションを増やし、反対に低下すると減らしてきました。

第4四半期、インカム戦略の(主として米国債による)デュレ―ションのポジションは、投資家の元本保全に寄与しました。相対的に名目金利、実質金利が共に高いため、他の先進国よりも米国を選好しています。また、オーストラリアのデュレ―ションのポジションも継続していますが、これは住宅市場の軟化を背景に、オーストラリア準備銀行(RBA)が当面利上げを行なう可能性が低いとみているためです。

日本と英国の金利についてはより慎重な見方をしており、デュレ―ションはマイナスとしています。日本の金利は既に非常に低く、債券価格の一層の値上がりの可能性は低い一方で、金利正常化の可能性は高いと考えています。英国では、英国のEU離脱(Brexit)に関する不透明感がボラティリティを高めていますが、Brexitは必ずしも英国金利の大きな低下にはつながらず、逆にスムーズな移行シナリオでは金利が大きく上昇する可能性もあることから、デュレ―ションのマイナス幅を拡大しました。

問:投資適格債とハイイールド債のスプレッドは、第4四半期の市場下落時に、それまでの歴史的な低水準から大きく上昇しました。今は投資機会と考えていますか。

アイバシン:スプレッドの拡大により、企業クレジットは歴史的にも適正な水準に戻りました。当戦略でも、一部の市場では積極的に投資を行っています。全体的な企業クレジットへのエクスポージャーに関しては、少なくとも短期的には前向きなスタンスに変更しています。

金融セクターに注目し、高まったボラティリティのタイミングを捉えてポジションを拡大しています。多くの金融機関の資本の水準は、これまで10年超の期間で、現在ピークかほぼそれに近い水準となっています。現状、当戦略では英国の銀行を選好しています。Brexitが極端に悪化したシナリオになったとしても、多くの銀行のデフォルト・リスクにはほとんど影響はないと考えられるためです。

とはいえ、全体的には企業クレジット市場に対し注意深く銘柄選択をする姿勢を保ちつつ、高い流動性の維持に努めています。投資適格債、ハイイールド債、バンクローン市場全体で発行額が急増し、投資家保護の要件が悪化していることから、長期的に企業クレジットには警戒感を持って臨んでいます。

一部では確かにエクスポージャーを増やしていますが、長期的には全般に慎重姿勢を維持しています。

問:インカム戦略でその他の魅力的なセクターはどこでしょう。

アイバシン: 引き続き住宅関連の投資は選好しています。魅力的な利回りに加え、さらに重要な点として、第4四半期のように経済環境が悪化した場合、こうしたポジションは企業クレジット・オルタナティブよりも一層強い抵抗力を持っていると考えられるためです。

最近、住宅価格が上昇し住宅関連の活動が停滞し始めるなかで、市場では米国の住宅に関する見方に混乱が見られます。PIMCOでは、住宅価格対家賃比率、価格対収入比率、その他の長期の価格評価方法でみた住宅取得能力の観点から、米国の住宅価格は十分妥当な水準だと考えています。不動産価値に対する債務比率が低く、所有者持ち分の上昇、低失業率と賃金の力強い上昇を考えると、住宅セクターは非常に抵抗力のあるセクタ―だと考えています。このセクターに対するエクスポ―ジャーは維持するのみならず、昨年はむしろ拡大しました。

それ以外には、インカム戦略における分散の観点から、エマージング市場を選好しています。インカム戦略では、リスクヘッジとして安全性の高い資産の部分に目が向きがちですが、利回りの高い分野でも、耐性が強く、分散のためのポジションを持つことも同様に重要です。第4四半期にプラスのパフォーマンスとなった一部のポジションを含め、昨年後半のエマージング市場の一般的なパフォーマンスを見ると、たとえ「質への逃避」を誘引するようなイベントが起こっても、魅力的なトータル・リターンが期待できるセクターに狙いを定めた投資には、ポートフォリオのボラティリティを抑える効果があることがわかります。

問:インカム戦略の投資家にとって、この1年はどのような年になるでしょう。

ムラタ:PIMCOでは、当面市場はボラティリティが高い状況が続くとみています。手元資金を残しながら、安全性の高い資産と、利回りの高い資産にバランスよく投資するインカム戦略は、市場の歪みを巧みに捉えるのに適しています。

また、昨年来の金利上昇と昨今のクレジット市場の下落により、債券の利回りは全体的に上昇しており、これは投資家にとって今後のプラス要因と言えます。

アイバシン: 債券のアクティブ運用会社として、厳しい市場環境の中でも卓越した実績を目指し、昨年の第4四半期のように投資家にポートフォリオの底堅さを提供することに注力することは非常に大切です。特に企業クレジットとエマージング市場では、長い期間にわたってボラティリティが非常に高い状態が続いています。このような市場は、相対価値や狙いを絞った運用にとって、この数年のどの時点よりも好ましい環境にあると考えます。2019年、インカム戦略チームはそのような投資機会を捉えることを非常に楽しみにしています。

著者

Daniel J. Ivascyn

グループ最高投資責任者(グループ CIO)

Alfred T. Murata

モーゲージ・クレジットチームのポートフォリオ・マネージャー

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