ランプ氏が米国大統領選に勝利して以来、市場では「リスク・オン」のセンチメントが概ね優勢に推移してきました。とはいえ、財政、金融政策の見通しは依然として極めて不透明であり、ボラティリティは高い状態が続いています。ポートフォリオ・マネージャーのダニエル・アイバシンとアルフレッド・ムラタが以下のQ&Aでご説明するように、PIMCOインカム戦略では「曲がっても折れない」アプローチを採用し、経済成長が予想を上振れもしくは下振れした場合でも、資産価値を安定させつつインカムを着実に獲得することを目指しています。

問: 米国の大統領選挙は市場と経済の見通しにどのように影響したのでしょうか。

アイバシン: 経済見通しは複雑であり、レフト・テール(ネガティブ)リスクとライト・テール(ポジティブ)リスクがともに高まっています。米国における大規模なインフラ投資や減税を始めとする経済成長志向の政策は、リスク資産を下支えする可能性があります。しかしその一方で、保護主義的な貿易政策の導入によって外交上のリスクが生じ、市場が急速に「リスク・オフ」に転じることも考えられます。また、2017年には、トランプ氏の勝利が浮き彫りにしたポピュリズムの台頭が、ボラティリティの上昇要因になる可能性があります。

さらにグローバル経済は、(1)先進国市場における金融政策から財政政策へのシフト、(2)生産性の悪化要因およびインフレの上昇要因となるグローバリゼーションから反グローバリゼーションへのシフト、(3)中国の為替政策の管理変動相場制または自由変動相場制へのシフトという、3つの困難なシフトに直面しています。

PIMCOでは、このような環境ではアクティブ戦略が適していると考えています。この先数カ月にわたって大きく変動すると予想される市場環境を乗り切る上で、潤沢な流動性とポートフォリオの柔軟性の維持などのリスク管理が重要になるでしょう。

問: ボラティリティの上昇を踏まえ、どのようにポートフォリオを構築しているのでしょうか。

ムラタ: PIMCOでは、資産価値を安定させつつインカムを着実に獲得する最善の方法は、ポートフォリオを2つの分野に大別することだと考えています。第1の分野は、経済成長が予想よりも堅調な場合に運 用成績が良好になると考えられる、高利回りの資産から構成されています。たとえば、インカム戦略のポー トフォリオでは、米国の住宅ローンを裏付けとする、政府保証の付かない非政府機関系モーゲージ債(MBS) のポジションが大きな比率を占めています。このポジションの利回りは魅力的であり、経済成長が鈍化した場合でも十分抵抗力を持っていると考えられます。

第2の分野は、経済成長が予想よりも低調な場合に運用成績が良好になると考えられる、信用力の高い資 産から構成されています。この分野では、オーストラリアの固定利付債を特に選好しています。中国の経済 成長が減速した場合、コモディティ価格は弱含み、オーストラリアの経済成長率と金利は低下すると予想しています。

問: コア資産として保有する非政府機関系MBSについて詳しく教えてください。

ムラタ: 非政府機関系MBSは米国の住宅ローンを裏付けとしますが、ファニーメイやフレディマックなどの政府機関による保証が付与されていないため、投資家は債務者の返済能力に依存する形となっています。このため、主に住宅価格と債務者の信用力がパフォーマンスに影響を及ぼします。

しかし市場では、10年以上にわたる債務者の返済実績が十分に評価されていない可能性があり、さらにインカム戦略ではこれらの債券を、額面を大幅に下回る価格(一般に額面1ドルあたり75~85セント程度)で購入してきました。当戦略では、住宅価格が年間3%程度上昇するという想定の下で、価格が額面1ドルあたり85~90セント程度に上昇したタイミングでの利益確定を目指しています。

また、たとえ住宅価格が下落した場合でも、米国債より高いプラスの利回りが期待できるとみています。ポートフォリオにおいて保有するMBSのエクスポージャーは、ほぼすべてが資本構成上で最上位のポジションです。資本構成上で上位のポジションを極力優先する方針は、「曲がっても折れない」戦略の基本理念であり、ボラティリティを抑制しつつ元本の毀損が確定してしまうリスクを低減することを目標にしています。

問: この1年間で金利のデュレーションを3年未満から3年強に長期化したことと、今後の金利見通しについてコメントをお願いします。

ムラタ: インカム戦略は、金利のデュレーションを0~8年の間で調整可能な柔軟性と、金利上昇が追い風になりうるグローバルな資産を投資対象とする柔軟性を備えています。2016年は、金利低下局面において、ポートフォリオの金利デュレーションを3年強から2.5年程度に短期化しました。最近では、金利の上昇を受けて、3年強へと戻しています。

問:PIMCOの全般的な金利見通しと、投資適格クレジットなどのスプレッド商品の見通しを教えてください。

アイバシン: 米国大統領選後の利回りの大幅な上昇を受けて、金利リスクについてはいくぶん積極的になっています。ムラタが述べたように、金利デュレーションを3年強に長期化しました。

もっとも、PIMCOの現在の金利見通しに対するポジションはややディフェンシブといえるでしょう。短期的 な不確実性が高いことに加えて、信用力の高い国債の利回りは依然長期な平均をやや下回っています

投資適格クレジットに関しては、国債投資と比較した場合、デフォルト・リスクを表すスプレッドの上乗せ幅を考慮することが重要です。たとえば年限10年程度の投資適格社債には相応の金利リスクも伴うため、足元ではリターンが低下傾向にあります。しかし、この先数年間については、米国を始めとする各国が景気後退に陥るリスクは依然として比較的低いとみているため、企業クレジットには総じて前向きです。ただし、発行額が減少傾向にあることから、極めて選別的な姿勢が重要になるでしょう。

問: 最後に、多くの投資家が注目するところですが、新政府による政策の変更はインフレの上昇要因になるのでしょうか。

ムラタ: インフレ上昇の可能性は確かに存在するものの、政策が明確に設定されたわけではなく、設定されたとしても容易に実行できない可能性があることを念頭に置く必要があります。大規模なインフラ投資が物価を押し上げる展開が想定される一方で、一部の貿易関連の政策が経済成長の減速やインフレの低下につながる可能性もあります。実際、少子化が進むなかで、少なくともグローバル・ベースでは債務残高が増大し、生産能力が余剰となった現状では、ディスインフレ圧力や、一部の市場ではデフレ・リスクすら解消されないとPIMCOではみています。当戦略ではデュレーションを柔軟に調整することにより、さまざまなインフレ・シナリオから投資家を保護することを目指しています。

著者

Daniel J. Ivascyn

グループ最高投資責任者(グループ CIO)

Alfred T. Murata

モーゲージ・クレジットチームのポートフォリオ・マネージャー

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