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不確実性は高まるのか- 債券のアロケーションに柔軟性を:PIMCOダイナミック・ボンド戦略

不確実な市場において、グローバルの様々な債券の投資機会をとらえる柔軟性の高い債券戦略の追求

利が上昇し、バリュエーションは割高となり、ボラティリティが再び高まりつつあるなか、変化する市場環境に柔軟に対応できる債券戦略に対する需要が高まっています。現在のような不確実な状況に直面した投資家の要請に応えるべく、PIMCOでは10年前に、ベンチマークにとらわれないダイナミック・ボンド戦略(旧アンコンストレインド・ボンド戦略)を設計しました。ダイナミック・ボンド戦略はPIMCOの債券戦略のうち最も柔軟な戦略で、グローバル債券市場全般におけるPIMCOの専門性を最大限に活かし、債券にとって厳しいシナリオでは守りの運用を行う一方で、市場が変動した際にはその変化によるメリットを確保するポジションをとれる運用を行います。以下のQ&Aでは、PIMCOの非伝統的戦略担当の最高投資責任者(CIO)であるマーク・サイドナーが、この特徴的な戦略の内容をご説明し、この戦略が、今なぜコア債券アロケーションを補完する貴重な戦略となり得るのかを解説します。

問:現在の市場環境に対応するために、投資家に必要な債券戦略とはどのようなものでしょうか。

マーク・サイドナー:市場は、ここ数年の中央銀行主導によるボラティリティが低い状態からボラティリティが高い局面へと移行しつつあり、投資家はこの変化に備える必要があると考えています。世界をリードする債券運用会社であるPIMCOがご提供するダイナミック・ボンド戦略は、グローバル債券全般で投資機会を発掘する柔軟なマルチセクター債券戦略です。金利上昇局面では伝統的なコア債券戦略よりも一層守りの性格を強めるなど、不確実な市場において重要なメリットを投資家に提供します。このため、この戦略はコア債券のエクスポージャーを補完し、投資家は金利リスクを分散できる可能性があります。重要な点は、ダイナミック・ボンド戦略が、ポートフォリオのリスクを分散すべく株式市場と債券市場両者との相関を低水準に抑えるよう設計され、コア債券戦略並みのボラティリティを維持しながらダウンサイドリスクの低減を目指す、厳格なリスク管理を行っている点です。

問:ダイナミック・ボンド戦略は、モーニングスターの非伝統的債券カテゴリーでベンチマークにとらわれない戦略に分類されています。運用担当者はこの幅広い戦略のガイドラインに対し、どのような投資アプローチを取っているのでしょうか。

サイドナー:ダイナミック・ボンド戦略では、2つの重要な柔軟性を持った投資アプローチを取っています。

1つめの柔軟性は、適切なデュレーションとスプレッド・リスクの目標レンジである「ホームベース」を、マクロ環境に合わせて決定する柔軟性です。本戦略の「ホームベース」とは、先行きを見据えた目標で、PIMCOの実績あるマクロ経済予測を元に様々な情報を取り入れた投資プロセスに基づき、将来の市場環境にあわせてデュレーションとスプレッド・リスクの適切な範囲を決定するものです。この目標は随時見直され、長期経済見通しに大きな変更があれば調整されます。このプロセスにより、ボラティリティをコア債券戦略並みに抑えつつ、そのリスク水準内でリターンの最大化を目指し、ポートフォリオの最適化を試みます。

2つめの柔軟性は、ホームベースの周辺で、グローバル債券市場全般の突発的な投資機会を戦術的にとらえる柔軟性です。グローバルのあらゆる債券の投資機会発掘を可能にすることで、世界の金利、クレジット、為替市場全般でエクスポージャーの分散を図りつつ、リスク・リターン特性がもっとも魅力的と考えられるセグメントに注力することができます。さらにダイナミック・ボンド戦略では、グローバルのすべての債券市場でロングポジションとショートポジションをとることが可能で、デュレーションの許容レンジ(‐3年から+8年)も大きいことから、ベンチマークの制約を受ける戦略よりも幅広い市場環境に対応することが可能です。本戦略のポジショニングはPIMCOのアクティブ運用の見方を反映しているため、市場がどの程度予測に従って動くかがパフォーマンスの主要なリスクとなります。

ダイナミック・ボンド戦略は、45年以上にわたるPIMCOの債券アクティブ運用の実績に基づいた戦略です。ポートフォリオ・マネジメント・チームが、グローバルな投資機会の中から見つけ出した構造的なトレードや戦術的な取引を用いて、投資価値を重視する高い専門性を活かし、さまざまなリスク・ファクターを十分に分散したポートフォリオを構築します。

問:現在どのようなポジションを取っているのでしょうか。

サイドナー:今年の環境下での「ホームベース」ポジションとしては、金利が上昇し、市場ボラティリティが高まるとの見通しから、デュレーション、スプレッド・リスクの両方について慎重な姿勢を維持しています。それに代わるものとして、レラティブ・バリューの機会とボトムアップによる銘柄選択、セクター選択を重視しています。

全体としては、本戦略の実際のデュレーションは短めに、約1年から2年のプラスに維持しており、バリュエーションに応じてエクスポージャーを戦術的に調整しています。米国債ではイールドカーブの中期ゾーンでの最適なキャリーとロールダウン効果を重視し、政府機関系モーゲージ債(MBS)については、米国債よりも利回りが魅力的で、投資適格社債よりディフェンシブな性格であることから、徐々に組み入れを増やしています。米国でのインフレ率上昇を見込んで、バリュエーションが魅力的な米国米物価連動国債(TIPS:Treasury Inflation Protected Securities)と併せ、米国のデュレーションをロングに維持しています。一方、ショートポジションに関しては、バリュエーションのタイト化と政治リスクを勘案し、今年初めにイタリア国債のデュレーションのショートポジションを増やしました。このポジションは功を奏し、利益を確定のために組み入れを減らしてきました。また、日本の10年債についても、世界的な金利上昇に対する効果的なヘッジ手段としてショート・ポジションを維持しています。

現在のレラティブ・バリュー戦略は、金利がレンジ内にとどまる基本シナリオではプラスのキャリーとなり、さまざまな成長シナリオにおいては、プラスのリターンとなるポジショニングとなっています。世界的に景気が減速した場合、債券利回りは低下するとみられますが、諸外国に比べ米国債の低下余地が最も大きく、景気が加速した場合、米国に比べて、英国、ユーロ圏、日本の債券利回りが上昇する可能性が大きいとみています。

クレジット・リスクに関しては、クレジット全般のデュレーションを4年から5年前後に抑え、バリュエーションがはるかに魅力的だった2016年の8年~9年からは大きく低下しています。特に非政府機関系住宅モーゲージ債(MBS),厳選した投資適格債、エマージング市場の外国通貨建てソブリン債に注目しています。企業クレジットのバリュエーションは、足元のスプレッドの水準では魅力的とは言えず、エクスポージャーを減らしています。非政府機関系MBSの評価が高いのは、ファンダメンタルズ、バリュエーション、テクニカル面で程よくバランスが取れ、様々なマクロのシナリオに対して相対的に耐性が高いためです。ハイイールド債については、ディフェンシブな姿勢を取っており、ハイイールド・インデックスのデリバティブでポジションをヘッジしています。総じていえば、クレジット投資に関しては選別的な姿勢を維持し、特定のサブセクターやボトムアップによる銘柄選択を重視する戦略を取っています。

全体として、ダイナミック・ボンド戦略のポートフォリオの平均デュレーションは1.1年と、リスク予算の下限に近い水準で運用されており、収益確保に向けたリスク拡大に備えている状態です。現在のような環境においては、魅力ある投資戦略として本戦略をご提案できると考えています。

問:制約のない債券投資という広いカテゴリーの中で、ダイナミック・ボンド戦略は他の戦略とどこが違うのでしょうか。

サイドナー:主な違いは投資手法にあると考えています。競合する戦略はグローバル・マクロかクレジットのどちらかに偏る傾向がありますが、ダイナミック・ボンド戦略はよりバランスの取れた手法を取り、金利、クレジット、通貨、ボラティリティ市場全般にわたり構造的な投資機会と戦術的な投資機会の両方を活かすことを目指します。

ダイナミック・ボンド戦略は、クレジット・ベータをそれほど重視せず、アルファ創出の最善の機会に傾注することから、戦略的にクレジット・エクスポージャーを重視する競合戦略に比べて、(S&P500やMSCIワールドで代表される)株式市場との相関性が低くなっています。トップダウンの見方とボトムアップの見方の両方を取り込み、債券のリスク・要因全般でエクスポージャーを分散します。

このような手法にとって大切な点は、世界をリードする債券運用会社としてのPIMCOの地位です。本戦略には、PIMCOの実績ある投資プロセス、グローバルなリソース、経験豊富なポートフォリオ・マネジメント・チームが大きな役割を果たしています。250人のポートフォリオ・マネージャーと60人を超えるクレジット・リサーチ・アナリストを擁する業界随一の専門知識によって、幅広く深い経験が本戦略の日々の管理に活かされています。

そして最後に、ポートフォリオをダウンサイド・リスクから守る、PIMCOのリスク管理の実績が違いとしてあげられます。後ほど詳しく申し上げますが、ポートフォリオ・マネジメント・チームとリスク・マネージャーは「一心同体」となって、リターンを左右するリスク・ファクターを重視し、ポートフォリオ・リスクが十分分散されるよう取り組んでいます。

問:ポートフォリオ全体の中で、ダイナミック・ボンド戦略をどのように位置づければよいのでしょうか。

サイドナー:ダイナミック・ボンド戦略は、コア債券ポートフォリオの補完を目指しています。低水準のボラティリティ、流動性の確保、株式との相関性の低さといったコア債券の長期的なメリットを保持しつつ、短期的には戦術的な柔軟性を確保します。この柔軟な戦略によりクレジット・リスクのエクスポージャーを削減できることから、株式市場に対し、クレジットに傾斜した債券戦略よりも一層高い分散効果を発揮できます(図表1を参照)。

Dynamic Bond Strategy has shown low correlations to equities and core bonds

問:本戦略の柔軟性がリスクを取り過ぎる結果にならないことは、どのように担保されるのでしょうか。   

サイドナー:PIMCOでは、ポートフォリオ・マネジメント・チームとリスク・マネジメント・チームが緊密に連携しています。それぞれの運用戦略に専任のリスク・マネジャーが配属されており、それによりポートフォリオ・マネジメントとリスク管理機能の真のパートナーシップを築きつつも、リスク・マネージャーがその役割を担うために必要な独立性は確保されています。 

厳格なリスク管理プロセスは、魅力的な長期的リスク調整後リターンを生み出す基盤であり、特にベンチマークの制約を受けない戦略には重要であると考えています。この点を考慮して、本戦略のポジショニング、ポートフォリオの組成、集中と流動性リスク、さらには今後の変化を見据えたストレス・テストの結果を常に検証し、議論しています。リスク・マネージャーは本戦略のプロセス全般に関与し、リスク・マネージャーが本戦略のリスク・プロファイルに与える影響を評価することなく、ポジショニングを大幅に変更することはできません。さらに、クレジット・リサーチ・アナリスト・チームが、本戦略の組み入れ銘柄すべてについて調査し、格付けを行います。 

また、ダイナミック・ボンド戦略のような「おまかせ型」の戦略を検討している投資家からすれば、ポートフォリオ・マネジメント・チームに必要な債券市場の経験とスキルが備わっていると確信できることが重要なことも認識しています。本戦略のシニア・ポートフォリオ・マネジメント・チームは、マネージング・ディレクターのモフセン・ファハミー、グループCIOのダン・アイバシン、そして私で構成され、グローバルな債券、クレジット、非伝統的資産運用の世界における、平均30年以上の運用経験と専門知識を活かしています。  

問:PIMCOはなぜ、戦略の名称を「ダイナミック・ボンド戦略」に変更したのでしょうか。

サイドナー:最近(従来のアンコンストレインド・ボンド戦略から)ダイナミック・ボンド戦略へと名称を変更しました。これは本戦略が、債券にとって難しいシナリオでは守りの運用を行う一方で、市場の変化にはそのメリットを確保するポジショニングを取る、機動的なソリューションの提供に継続的に尽力していく点を強調したものです。

本戦略が取り入れている柔軟性、すなわち、いかなるマクロ環境においても必要に応じて市場やポジションをダイナミックにシフトする能力を表現するには、「アンコンストレインド」よりも「ダイナミック」が相応しいと考えました。さらに、「アンコンストレインド」では、本戦略のリスク管理の厳格さを十分に伝えきれないとも考えました。ダイナミック・ボンド戦略は闇雲にフェンス越えのホームランを狙うわけではなく、コア債券並みのボラティリティの範囲内でリターンの最大化を目指す戦略です。

現在のような不確実な環境では、ダイナミック・ボンド戦略のような柔軟な債券戦略が、債券リスクを分散し、魅力的なリターンを確保するうえで有力な選択肢となるでしょう。

著者

Marc P. Seidner

非伝統的戦略担当の最高投資責任者(CIO)

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ご留意事項

過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。絶対収益ポートフォリオは株式市場が好調な場合でも追随するリターンとならない場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。政府が発行する物価連動債(ILB)は、元本価値がインフレ率に連動して定期的に調整される債券です。実質金利が上がった場合、物価連動債(ILB)の価値は減少します。インフレ連動国債(TIPS)は、米国政府が発行する物価連動債(ILB)です。モーゲージ担保証券と資産担保証券は金利水準に対する感応度が高い場合があり、期限前償還リスクを伴い、また、発行体の信用力に対する市場の認識に応じてその価格は変動する可能性があります。また、一般的には政府または民間保証機関による何らかの保証が付されていますが、民間保証機関が債務を履行する保証はありません。高利回りで低格付けの証券はより高格付けの証券よりも高いリスクを伴います。また、それらへ投資しているポートフォリオは投資していないポートフォリオに比べてより高いクレジット・リスクと流動性リスクを伴う場合があります。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。デリバティブ商品とモーゲージ関連商品を利用することにより、コストが発生する可能性があり、さらに流動性リスク、金利リスク、市場リスク、信用リスク、経営リスク、そして最も有利な時点でポジションを清算できないリスクなどが発生する可能性もあります。デリバティブ商品への投資により、投資元本以上の損失を被る可能性もあります。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。

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