運用戦略

PIMCOダイナミック・マルチ・アセット戦略:機会とリスクをカバーする柔軟性

この戦略は、最大限に広く深くグローバル資産クラスを利用して、投資家のためにリスク管理と安定した運用を目指す戦略です。

PIMCOダイナミック・マルチ・アセット戦略のポートフォリオ・マネージャーのジェラルディン・サンドストロムが、金融市場を上手く乗り切るためのこの戦略の柔軟性を説明し、今後 試練も予想される景気サイクル終盤において、望ましい備えとポジションについての考えをご紹介します。

問:PIMCOダイナミック・マルチ・アセット戦略について、全体的なアプローチ方法を教えてください。

ジェラルディン・サンドストロム: この戦略は、市場の景気サイクル全体を通して魅力的なリスク調整後のリターンを提供することを目指し、株式、クレジット、金利、実物資産や通貨にダイナミックに投資する、グローバル・アセット・アロケーション戦略です。PIMCOの投資プロセスをベースに、ファンダメンタルズ、バリュエーションの評価、テクニカル分析による知見を加味して、系統だった機動的なアプローチ方法を取り入れています。当戦略はリスクに対し非対称的なアプローチを重視し、PIMCOのマクロ見通しや資産クラス間で相対的価値があるかどうかの判断を取り入れ、投資家への安定的なリターンの提供を目指しています。

現在の環境では、元来この戦略に備わっている柔軟性が最も重要な武器だと考えています。景気サイクルが終盤に向かうにつれて、理想的には最も良好な投資機会が見込める地域に注目しつつ、資産をクレジットから株式に振り向けることが通常望まれます。景気後退のリスクが高まっている景気サイクル終盤では、柔軟性が最も重要になってきます。サイクル終焉に向けては株式が最適な資産クラスと考えられますが、いったん景気後退に陥ると、株式に配分した資産は猛烈な勢いで棄損する可能性があります。ほぼ10年に及ぶ世界の景気拡大が最終ステージに達していると考えられる今、柔軟でダイナミックな資産配分のアプローチが非常に大切になっています。

問:PIMCOの経済見通しを教えてください。次期景気後退を視野に入れていますか。

サンドストロム:最近公表された長期経済見通し「急変に備えて」では、向こう3年から5年は世界金融危機以降私たちが目にしてきた世界と大きく異なる、とPIMCOが考える理由が説明 されています。これからはさまざまなリスクを上手く乗り切る必要があるでしょう。

たとえば、主な中央銀行が政策を正常化し、ボラティリティを何年も抑制してきた異例の政策手段から手を引くことで、市場のボラティリティは高くなる可能性があります。また、世界の主要国間の貿易の緊張は高まっています。経済活動はフル稼働に近く、インフレの急速な進展に驚かされる可能性も高く、中央銀行は一層積極的な対応を迫られるかもしれません。さらには、世界中で多くのポピュリズムや保護主義の台頭が、新たな急変をもたらすかもしれません。世界的に各国経済が同調且つ安定した成長を見せる中で、このような動きに弾みがついています。もし景気後退入りするようなことがあれば、ポピュリズムのセンチメントは一層過激になり、予測不能となるリスクがあります。

ただし、短期的には経済の見通しは穏やかで、トレンドを上回る世界的な同時成長と、主に米国において緩やかな金利の上昇が見込まれると考えていることは強調したいと思います。景気後退はまだすぐにはやってこないでしょう。おそらく米国の財政刺激政策の影響が薄れはじめる頃に景気後退が来るとすれば、それほど大きくはないにせよ、長期にわたってリスクを伴うものとなるでしょう。景気後退に対抗する財政政策や金融政策という武器は、まだ十分に威力を回復していません。

問:そのようなトップダウンの見通しと、世界各地からのボトムアップの投資アイデアの組み合わせが、現在どのようにマルチ・アセット・ポートフォリオの運用に活かされているのでしょう。

サンドストロム: いまは質の高い投資に目を向ける時です。 市場を海に例えれば、波は次第に高くなり、ボラティリティは上昇し、いずれは景気後退が来るでしょう。このような時には投資の質が大切です。一部の地域は他に比べ抵抗力のあるファンダメンタルズを備え、逆境にも強い状況にあります。たとえば米国は、欧州やエマージング諸国に比べ、より大きな政策手段の発動余地があります。他の地域や国に比べ、企業のバランスシートも良好という点も加味して、米国株式を重視しています。日本の株式の一部にも魅力的なものがあります。

また、マルチ・アセットのポートフォリオでは、米国のイールド カーブの中期ゾーンを中心に高格付けの国の金利への資産配 分も重要だと考えています。欧州金利は、欧州の投資家にとっ てはヘッジ後魅力の高い利回りを提供するものの、注意深い アプローチを必要とし、機会を選んでより機動的な対応を行っ ています。

クレジット投資については全般的に警戒を強め、エクスポー ジャーを大きく減らしてきました。非政府機関系モーゲージ債 などの厳選された証券化商品や高格付けのローンなどのポジ ションに集約しています。

PIMCOでは、市場のバリュエーションは割安にはほど遠いと見 ているため、どのような分野でも過剰なエクスポージャーは避 ける方針です。「黄信号」のシナリオとも呼べるかもしれません。 慎重な構えを維持しながらも、完全にリスクを排除している わけではありません。

問:2018年のこれまでの市場環境は複雑なものでした。この 戦略は今後どのように対応し、どのような備えをしているので しょうか。

サンドストロム:今年は多くの地域や資産クラスにおいて投資 家に厳しい年で、投資機会は非常に限られた状態です。世界の 債券市場の下落はわずかで、世界の株式市場も全体的に変化 は少なく、小さいながらも時にボラティリティが上昇するなか では、多くの投資価値を見出すことは困難です。

このような環境下でPIMCOダイナミック・マルチ・アセット戦略 は、ダウンサイドのリスク管理に焦点をあて、資金をダイナミッ クに配分し、景気サイクルの潮目を見据えた柔軟性を維持して います。市場とポートフォリオは荒波に揉まれている状態で すが、サイクルの終了と呼ぶにはまだ時期尚早と思われます。 機動力が鍵となるでしょう。次に来るものに対して予測し対応す る能力が必要とされています。世界経済の成長は続くでしょう。 テクニカル要因も改善する可能性があります。世界中の投資機 会を入念に吟味し、今日の荒波の中で割安感が現れた時には いつでも参入できるポイントを探っています。

一方でこの戦略は、PIMCOの予想よりも早く景気後退が到来し た場合であっても、おそらく株式をショートするなどして、状況 に応じた柔軟な対応が取れる態勢を維持しています。また、 カナダや米国において、イールドカーブの中期ゾーンからもう 一段リターン獲得を目指すこともできます。機動力が大切です。

問:米ドルは2017年に大きく低下しましたが、その後強さを 回復しています。これはポジションにどのような影響を与える のでしょう。

サンドストロム: ドルも他の通貨も注視しています。最近は為替 が資産クラスのリターンに大きな影響を与えかねません。世界 経済はますます相互依存を高め、多くの企業が海外で多くの収 益を上げています。一例をあげると、欧州では国内の経済成長 が堅調だったにも関わらず、欧州株式は今年第1四半期低調 でした。この大きな理由は、ユーロがドルに対して強くなったこ とです。また、ヘッジコスト勘案後のリターンに与える影響を考 えながら、市場間の金融政策の乖離具合にも大きな注意を払 わなければいけません。結局のところ、通貨は直接のリスクと投 資機会の対象であるとともに、他の資産へも間接的に影響をあ たえるものです。

問:ダイナミック・マルチ・アセット戦略には高い柔軟性がある ということですが、リスク管理の方法を教えてください。

サンドストロム: この戦略のアプローチを最も的確に表す言葉は 「負けないことが勝因の大半」です。この戦略の運営上、リスク マネジメントは不可欠です。安定的なリターンを目標とし、アッ プサイドとダウンサイドリスクに対し、大幅に非対称的なアプ ローチを取っています。

標準的なバリュー・アット・リスク(VaR)など、さまざまなリスク 管理手法を利用するほか、背後のリスク要因へのエクスポー ジャーや相関性の厳格な分析を行います。単にポートフォリオ が資産クラスや地域で分散されているだけの状態では、リスク 要因に対し十分に分散されていることにはなりません。これは PIMCOが長年にわたって分析・管理してきたものです。

また分析のみにとどまらず、実践することが重要です。仮に、 オプションやデリバティブを利用することでリスク・リターン特 性が改善すると考えれば、それを実践し、同時に当戦略全体の リスク特性を改善するため、ダウンサイドのバッファーも取り入 れます。

結局のところ、全体のリスクならびに個別のリスク要因へのエク スポージャーの量は、非常にダイナミックで変化しやすいもの です。バリュエーションが適度で、見通しの基本シナリオが穏当 な場合には、価格が割高で景気後退になる危険が高い時よりも、 多くのリスクを取ります。

問:現在この戦略が相対的な価値を重視している理由は、 リスクに対するそのような認識があるからですか。

サンドストロム: その通りです。中長期的な時間軸でみた今後 の雲行きが怪しいため、相対的な価値への依存を高め、全体的 なリスクを減らしてきました。先ほど述べたように、米国と日本 ではロングポジションを、欧州やエマージング市場ではほぼ中 立ですが、実際にショートポジションを取っているケースもあり ます。また、クレジットについても非常に慎重です。クレジットの 質が大きな判断材料となっています。

もちろん、リスクをさらに意識したポジションであれは 市場の ダウンサイドと同時にアップサイドの可能性に対してもエクス ポージャーを絞るべきでしょう。しかし、高い質への意識を維持 したままアップサイドを確保できる方法もあり、その一つが市 場のボラティリティによってもたらされる投資機会に注目するこ とです。たとえば、ボラティリティが急上昇したときには、ショー トポジションから収益をあげる方法として、もちろん一時的では ありますが、ダウンサイドに対しカバードプットを売るかもしれ ません。このアプローチを慎重に管理することで、全体的なパ フォーマンスを引き上げることが出来ます。

著者

Geraldine Sundstrom

アセットアロケーション戦略担当のポートフォリオ・マネージャー

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