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市場環境への耐性に注目: スコット・マザーが、PIMCOのトータル・リターン戦略について語ります

PIMCOでは、中央銀行が政策支援を削減する今は、守りを固める好機だと考えています。PIMCOトータル・リターン戦略は、コア債券戦略として、ディフェンシブで分散されたアプローチをとっています。

連邦準備制度理事会(FRB)が緩やかに金利を引き上げ、株式市場が史上最高値を更新するなかで、多くの投資家が債券への資産配分を見直しています。債券と株式どちらにおいても見通しが不透明な中で、米国コア戦略担当CIOスコット・マザーが、債券コア戦略の役割を説明し、30年にわたって様々に変化する環境を乗り越えてきたPIMCOトータル・リターン戦略についてご説明します。マザーは、グローバル・クレジット担当CIOのマーク・キーセルとリアル・リターンおよびアセットアロケーション担当のミヒル・ウォラーと共同で、トータル・リターン戦略を運用しています。

問:PIMCOトータル・リターン戦略を運用した過去3年間を振り返って、何が最も印象的だったでしょうか。

スコット・マザー:この3年間は象徴的な出来事にあふれたものでした。過去10年を振り返ると、世界的な金融危機が決定的なイベントでしたが、2014年からの3年もドラマチックな変化が見られました。

例えばちょうど3年前、当初1バレル=100ドルだった原油価格が下落し始め、最終的には半値まで急落しました。その急落後は1バレル=50ドル前後で推移していますが、世界の経済成長やインフレ、政策に大きな影響を与えています。その後すぐに、欧州中央銀行(ECB)や日本銀行を含む、世界最大級の中央銀行が、マイナス金利政策の導入に踏み切りました。一方FRBは、2015年に、ほぼ10年ぶりとなる利上げを開始し、その後3度の利上げを行ってきました。2016年の英国のEU離脱とドナルド・トランプ大統領の誕生は、ポピュリズムの台頭を予感させました。その間中国は、経済成長の速度を落としながらも(2014年の7.4%から直近の6.7%へ)、国内消費主導の経済成長モデルに舵を切り始めています。中国は、資本勘定の自由化にも注力してきましたが、その道のりは平坦ではありませんでした。

一方でほとんど変わっていないものもあります。FRBによる金利正常化の努力はみられるものの、欧州、日本、米国の中央銀行における、極端に緩和的な政策が特にここ数年は特徴的でした。世界中の低金利が、高い利回りを求める動きを加速させてきましたが、その点もそれほど変わっていません。驚くことに、米国10年債の利回りも、3年前とほぼ同じです。

しかし今後は、現在の状況が大きく変化する可能性があるとみています。緩和の手を少しずつ緩める中央銀行の政策に、世界経済と市場がどのように対処するかが、次の3年間を決めるでしょう。

問:この3年間、トータル・リターン戦略のパフォーマンスの原動力となったものは何ですか。

マザー:トータル・リターン戦略をけん引してきた要因を振り返るには、その背景を考えてみることが重要です。金融危機後のほとんどの期間は、世界的に中央銀行による前例を見ない政策による支援の時期だと言えます。しかし最近では、中央銀行が政策の正常化を目指し、あるいは政策効果が限界に達したことから、支援が後退しつつある様子を目にします。このようなシフトが進むなかで、ファンダメンタルズが改善し、政策で底上げされたバリュエーションの魅力は徐々に落ちてきました。この状況においては、トータル・リターン戦略でとっている、保守的で分散されたアプローチが有益であることが明らかになっています。イールドカーブ上でディフェンシブな姿勢を強調した金利戦略から、クレジットに対する一層の分散まで、幅広い戦略の組み合わせを実践しています。

つまるところ、PIMCOの(こうした個々の戦略をとるに到ったベースとなる)投資プロセスと、多才で層の厚い投資プロフェッショナルが、トータル・リターン戦略を支え、そしてそれを主導しているといえるでしょう。マークとミヒルと私は「新しい」チームであるとは言え、PIMCOに15年以上在籍し、PIMCOがトップダウンの見通しを立てる四半期ごとの経済予測会議(フォーラム)や、投資戦略を議論し策定する日々の投資委員会(インベストメント・コミッティー)など、PIMCOの投資プロセスの中で、トータル・リターン戦略に永年貢献してきました。このような継続性が、過去3年間の様々な環境下―市場の混乱や政治の混迷、資金流出まで―において、さらには30年前に当戦略を開始以来、投資家にとって市場環境への耐性のあるトータル・リターン戦略をつくりあげてきました。

単にパフォーマンスだけでなく、コア債券の投資家にとってPIMCOが重要だと考えている、元本保全と分散を重視する点で、トータル・リターン戦略は他の多くの競合相手と一線を画しています。ダウンサイドリスク緩和に役立つ可能性のある、広く分散されたポートフォリオを築き上げる能力は、投資家の皆様にベンチマークを上回るリターンと、良好なリスク調整後のリターン双方を提供するうえで、最も大切なものです。これが、これから先も、私たちがこの戦略に自信を持てる最大の理由です。

問:PIMCOの金利と経済の見通しを教えてください。

マザー:PIMCOでは、FRBは年内にもう一度、2018年には2度の利上げをするだろうと考えています。もしFRBの資産買取プログラムの巻き戻しが予想以上に金融環境に影響を与えた場合、利上げのペースは変わる可能性があります。しかし全体的には、FRBは緩やかな金利正常化の道を歩み続けるだろうと考えています。

また、欧州は、2018年のうちに量的緩和策の資産買取額を減らし、やがて停止するでしょう。カナダ銀行やイングランド銀行を含む様々な中央銀行が、緩和のスタンス修正の意思を示しています。日本銀行は、昨年量的緩和の限界を示唆し、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)に重点を移し、来年から再来年にかけて、イールドカーブの目標を徐々に緩めてゆく可能性があります。

この中央銀行による支援の後退が、市場において次第に重要な要素になりつつあります。この数年、低金利がほぼすべての資産クラスのパフォーマンスに影響を与えてきました。さらに、前例のない緩和策が、広く一般的に市場のボラティリティを低下させ、幅広いリスクテイクに対するリターンを提供してきました。その支援がなくなれば、市場のボラティリティは高まり、ファンダメンタルズがより注目される可能性が高くなります。

PIMCOはビジネスサイクルにも注目しています。世界経済は着実に成長していますが、米国の景気拡大は9年目に入り、労働市場のひっ迫は、職業の幅と産出高を低下させ、成長が鈍化する可能性が高くなります。来四半期には財政による何らかの刺激策が出る可能性はあるものの、予想される規模と経済に対する影響は、年初に比べ大きく低下しています。経済の潜在成長率を引き上げるような、真の経済成長を後押しするような改革は見込めないでしょう。

問:現在、コア債券戦略で魅力的な投資機会はどこにあるでしょう。

マザー:コア債券戦略は、元本保全の可能性が高く、株式との分散効果があり、リスク資産との相関が通常低いことから、投資家のポートフォリオの中で重要な位置を占めています。株式は史上最高値近くで推移し、リスク資産のバリュエーションが全般的に暴騰している現在のように不透明な環境下では、全体的なポートフォリオのリスクを下げ、守りを重視した戦略を検討する好機です。トータル・リターン戦略は、現在ややディフェンシブな方針をとっています。

コア債券戦略の運用には分散が一つの鍵と考え、一つや二つの個別企業やセクターに対する自らの見方に依存することなく、数多くのリターンの可能性を組み入れています。

米国債では、イールドカーブ上、短期と長期ゾーンより魅力に勝る、中期ゾーンに注目しています。PIMCOでは、FRBの金利正常化は、主にイールドカーブの短期ゾーンに影響を与えるものの、金利は当面レンジ内で推移するとみています。中央銀行による支援が後退し、低成長率で不透明性が高まりつつある中で、高格付けの国債へのエクスポージャーを持つことが大切だと考えます。

また、これまでの緩やかなインフレ傾向は2018年には消滅し、大方の予想よりもインフレ率は高まる可能性があるとみているため、米物価連動国債(TIPS)の保有は、引き続き価値があると考えています。

利回り向上の可能性を高めるには政府機関系MBSが魅力的で、クレジットリスクを高めることなく、追加的な利回りを提供してくれるでしょう。また、魅力的なファンダメンタルズと高い利回りの両者を備えた非政府機関系MBSなど、モーゲージ関連のクレジットにも妙味があると考えています。それらの債券の担保となる住宅ローンの借り手の多くは、LTV( Loan to Value)比率が低下し、デレバレッジが進行していることもあり、次第に信用力が高まっています。

社債はバリュエーションが高すぎると考え、選別を厳格化しています。金融セクターには、特に銀行のバランスシートが健全化してきたことから、依然魅力は残っています。

現在ほとんどのリスク資産が割高となり、中央銀行が政策による支援を引き揚げ始めていることから、今後はボラティリティは上昇すると考えています。しかし金利については、過去の水準に比べて低い状況が継続するでしょう。このような環境では、アクティブ運用で広く分散されたコア債券への資産配分が、多くの投資家が志向する、ポートフォリオの市場環境への耐性とアンカー(錨)の役割を提供できると考えています。

著者

Scott A. Mather

米国コア戦略担当最高投資責任者(CIO)

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