グローバル・クレジット展望

変化を乗り切る: 高格付けクレジット、専門金融会社、モーゲージ債への投資機会​

​​トランプ政権の誕生や米国以外の主要国における世論の変化が新しい投資機会とリスクを生み出すなど、グローバル経済は大きく変わりつつあります。金融市場では、レフト・テール(ネガティブ)リスクとライト・テール(ポジティブ)リスクがともに高まっています。新しい環境を適切に乗り切るためには、規律、胆力、卓越したリスク管理技術が必要になるでしょう。

国大統領選におけるトランプ氏の勝利は、グローバルな変化の流れの一部であり、まさに重要な節目に起こった出来事です。低金利と世界的な量的緩和の恩恵が次第に消滅するなど、先進国市場では金融政策の効果が失われつつあり、同時に、このような政策の限界や副作用を指摘する預金者や金融セクターの主要参加者は増加傾向にあります。ポピュリズムの台頭を一因として、緊縮財政に反対する声が強まっており、現在、金融政策から財政政策へ徐々にシフトする局面に来ています。

さらに、グローバリゼーションのメリットを疑問視する傾向が一段と強まるなかで、国内に軸足を置く国が増える可能性があり、その場合、とりわけ保護主義的な政策が実現すれば、貿易関係が急速に変化することも考えられます。また同時に、国際紛争が激化する懸念が台頭するなかで、軍事支出が拡大する可能性もあります。このほか、米国では、減税、規制緩和、インフラ投資の拡大など、ビジネスや経済成長を後押しする方向に政策が転換する見通しです。このように変化の気運が高まっていますが、ここでは、変化は市場にプラスにもマイナスにも作用しうることに留意する必要があります。

足元の動向には、レフト・テール・リスクとライト・テール・リスクの両方が内包されています。前者のシナリオでは、貿易制限や保護主義の台頭、反移民政策の導入、ドル高の進行、米中関係の悪化、地政学的対立の激化が懸念されます。後者のシナリオでは、財政支出の増加、減税、規制緩和を背景にグローバル経済の成長拡大が見込まれ、トランプ政権がビジネスや経済成長を後押しする政策を実行する結果、景況感の改善や「アニマル・スピリット」の台頭につながり、個人消費と企業支出が拡大する可能性があります。

このように、足元では、いずれの方向にも大きなリスクが存在しています。

ポートフォリオにおけるリスクの削減
米国経済が短期的な時間軸(6~12カ月)において直面する主なリスクはインフレの上昇です。景況感の改善や「アニマル・スピリット」の台頭を背景とする個人消費および企業支出の拡大が、賃金の増加や労働市場の逼迫につながる結果、インフレ率が上昇する展開が想定されます。また、財政政策の変化も物価を押し上げる可能性があります。トランプ氏が主張する減税政策は、消費者と企業の両方を下支えする公算が大きいものの、輸入価格の上昇につながることも考えられます。同時に、財政刺激策やインフラ投資の拡大を背景に、賃金が上昇する可能性もあります。留意すべきは、米国の景気拡大局面は8年目に突入し、労働市場が逼迫したタイミングにおいて拡張的な財政政策が導入されることで、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策判断を誤った場合には特に、米国経済が過熱するリスクが高まると言えるでしょう。

興味深いことに、株式市場とクレジット市場は、レフト・テールのネガティブ・シナリオの多くを材料視せず、概ねライト・テールのポジティブ・シナリオを織り込んでいるように見受けられます。市場の楽観姿 勢が強まるなかで、とりわけ大統領選後の株式、投資適格社債、ハイイールド債、バンクローン、エマージング社債のパフォーマンスが堅調だったことを受けて、PIMCOでは、クレジット市場全体についてリスクの削減を進めています。

PIMCOでは、クレジット市場には引き続き厳選された投資機会(主に高格付け社債、政府機関系モーゲージ債(MBS)、非政府機関系MBS)があるものの、投資家は手元資金を増やすとともに信用力を重視する姿勢を強めることが合理的であると考えています。レフト・テール・リスクは拡大しつつあり、トランプ政権の政策の下で米国経済が過熱する結果、2017年にFRBが予想よりも速いペースで利上げを進めるリスクが高まっています。端的に言うと、米国経済が向こう6~12カ月に景気後退に陥る確率がやや上昇する一方で、クレジッ ト市場の多くの分野ではバリュエーションの魅力が低下しています。世界の金融市場および経済の見通しの詳細については、2016年12月のCyclical Outlook「未知なる世界へ-2017年グローバル経済の3つのシナリオを想定」をご参照ください。

クレジット市場における厳選された投資機会
PIMCOでは、2016年当初にはクレジット・リスクを増やしたものの(2015年9月のGlobal Credit Perspectives「クレジット投資を支持する根拠」および2016年3月のGlobal Credit Perspectives「好機の到来」をご参照ください)、その後はクレジット・リスクおよび「スプレッド・リスク」の量を全般に削減しており、リスク・リターン特性が最適であると判断したセクターへのシフトを進めています。このシフトはそれほど大きなものではありませんが、市場見通しの潜在的な変化や不確実性に耐えうるクレジットセクターへのPIMCOの見方を反映したものとなっています。具体的には、グローバルなクレジット市場の中で以下の分野に投資機会を見出しています。

  • 高格付け社債
    ケーブルテレビ、テレコム、娯楽、航空、宿泊施設など、米国の消費者に関連する業種を選好しています。これらの業種は、堅調な消費動向、景況感の改善、減税見通しによって引き続き下支えされるとみられます。また、金利の小幅な上昇とイールドカーブのスティープ化に加え、複雑でコスト高の現行の規制がト ランプ政権下で緩和される可能性があることから、銀行・金融機関を引き続き選好しています。このほか、エネルギー・セクターでは、エネルギー価格の上昇や米国のシェールガス埋蔵地域における増産見通しを根拠に、エネルギー分野の中流に位置する、マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)・パイプラインのリスク・リターン特性が引き続き最も魅力的であると考えています。

  • 銀行の資本証券・専門金融会社(サブセクター)
    米国、英国、欧州の銀行の資本証券と専門金融会社に厳選された投資機会が存在するとみており、ボトムアップのクレジットリサーチによってファンダメンタルズが改善基調にある企業を物色しています。これらのセクターは、名目国内総生産(GDP)の緩やかな上昇、利益の伸び率の改善、株式時価総額の増加が追い風になるとみられます。足元では、銀行の資本証券のバリュエーションはハイイールド債と比べて割安になっています。また、規制緩和が特に専門金融会社にプラスに作用する見通しです。

  • 非政府機関系モーゲージ債(MBS)
    足元のリスク調整後スプレッドの水準と米国住宅市場の堅固さに鑑みると、非政府機関系モーゲージ債のリスク・リターン特性は依然として魅力的です。米国の住宅市場は、堅固な労働市場、家計のバランスシートのレバレッジ低下、需給関係の改善によって、引き続き下支えされています。

  • 政府機関系モーゲージ債(MBS)
    ここ数カ月間で、信用力の高い政府機関系モーゲージ債のバリュエーションは顕著に割安になっており、最近の金利上昇を受けて、単独でも米国債対比でも魅力が増しています。

環境の変化を乗り切る-リスクと投資機会
2017年は、投資家は、環境の変化を把握、分析する能力、そしてこれに適応する能力が、これまで以上に求められるようになるでしょう。変化に対応することによって収益を達成することは可能ですが、それには、規律、胆力、卓越したリスク管理技術、レフト・テール・リスクとライト・テール・リスクの適切な評価が必要となるでしょう。

2016年は、辛抱強く選別的な姿勢を維持し、ボトムアップ・リサーチを丹念に行い、主要なイベント(エネルギー価格の下落、英国の欧州連合離脱、トランプ氏の大統領選勝利)や関連する市場の混乱局面を積極的に捉えることが、投資における成功のカギとなりました。クレジット市場のパフォーマンスが堅固だったことに加えて、慎重なアクティブ運用が成功した年だったと言えるでしょう。

2017年も同じように、クレジット市場ではアクティブ運用が成功のカギを握るとみられます。PIMCOでは、左右両サイドのテール・リスクが高まると予想していますが、変化が投資機会につながることも考えられます。不確実性の高さや世界的な環境変化を踏まえると、市場の潜在的な混乱を投資機会とする上で、アクティブ運用は有力な手段であるといえるでしょう。

良い運用の1年となりますよう祈念しております。

著者

Mark R. Kiesel

グローバル・クレジット担当最高投資責任者(CIO)

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