式市場では、アクティブ運用のパフォーマンス低迷が数年続いた結果、投資資金のパッシブ運用への流れに象徴されるように、アクティブな銘柄選択の終焉を指摘する見方が広がっています。この傾向は債券市場でも同様に、手数料の低いパッシブ型ファンドの方が好成績を期待できると、多くの投資家やメディアは考えています。しかし債券は違います。米国市場では、過去1年、3年、5年、7年、10年間におけるアクティブ運用型の債券のミューチュアルファンドと上場投資信託(ETF)の半分以上が、手数料控除後でパッシブ運用のパフォーマンスの中央値を上回りましたi

クレジット市場の場合、パッシブ運用は明らかに最適な戦略ではなく、好機を逃しかねないとPIMCOでは考えています。さらに言えば、市場金利が低く将来のリターンも多くは期待できない足元の環境においては、相対的に高い手数料を帳消しにする運用ができれば、クレジットのアクティブ運用から生じ得るアルファは、投資リターン全体を大幅に押し上げる可能性があります。例えば、当初の運用利回りが将来のリターンのおおよその期待値だとすれば、足元の利回りが3%程度で推移するグローバルなクレジット市場において、アクティブ運用者が手数料控除後で1%のアルファを創出できれば、トータルリターンは33%も押し上げられることになります。この割合は、利回り水準が6%近くあり、リターン全体に占めるアルファの追加的な寄与度が小さかった10年前を大きく上回るものです。期待リターンの低下に伴い、アルファはかつてなく重要になっています。

社債インデックスの構造的欠陥
一般にインデックスには無視できない欠陥が存在し、インデックス運用を試みるパッシブ運用者は不利な状況にあるとPIMCOでは考えています。大方の社債インデックスでは、総発行残高を基準に構成比率が決定されています。社債発行残高の大きい企業ほどインデックスの構成比率が上昇するため、単純に言えば、パッシブ投資家は債務の大きな企業により大きな資金を提供することになります。負債の大きい企業に対して与信をやみくもに増やすことは、合理的なことでしょうか。

過去5年間、米国の投資適格社債市場では、テクノロジー、医薬品、ヘルスケア、食品・飲料などのセクターにおいて、発行残高の大きい企業が見受けられました。これは、同じ時期にブルームバーグ・バークレイズ米国投資適格社債インデックスをアンダーパフォームしたセクターと一致します。低調だった主な要因は、それらの企業のファンダメンタルズがクレジット・スプレッドと密接に連動していることでした。より具体的には、純有利子負債の企業価値に対する割合とクレジット・スプレッドとの間には相関がみられ、前者の上昇は後者の拡大に結び付いています(図表1)。

また、PIMCOでは、格付け基準が機械的なこともクレジット・インデックスの欠陥であると考えています。標準的なクレジット・インデックスでは、信用リスクの違いを反映するため、構成銘柄の格付けに厳格な基準を設けています。なかでも投資適格インデックスでは、格付けがBBB-/Baa3以上の債券のみを適格銘柄とするのが一般的です。このため、投機的階級に格下げされてハイイールド扱いとなった銘柄は、通常格下げされた月の月末にインデックスから除外されます。ベンチマークをトラッキングするパッシブ運用者は、他のパッシブ運用者と同じタイミングで除外銘柄の売却を余儀なくされることになります。それにより値下がりした「フォーリン・エンジェル」銘柄の価格は、後に回復することが多いため、投資の好機を逃すことになりかねません。格下げに至るまでと格下げ直後に発生した損失の少なくとも一部を、その後数カ月の間に取り戻せるケースも珍しくありません。その場合パッシブ運用者は、インデックス除外時の売却によって、そしてその後の潜在的利益の獲得機会を失うことによって、不利益を二度被ることになります。バークレイズが独自に行なった調査では、格下げされた銘柄を継続保有することにより、年率30ベーシスポイント程度のリターンが上乗せされる結果が報告されています(図表2)ii

さらに、パッシブ運用型のクレジット・ファンドでは、一般的なインデックスの一部分の、相対的に規模が大きいために負債も大きい企業のパフォーマンスをトラックするケースが頻繁に見受けられます。つまり、パッシブ運用を行うクレジット投資家の投資対象は、クレジット市場全体を正確に反映していない可能性があるということです。さらに、多くのパッシブ運用型のクレジット戦略において重視される相対的に規模の大きな債券は、規模の小さい債券をアンダーパフォームする傾向や、高いボラティリティを示す傾向が見られました。

独自のリサーチに基づく勝ち組の選別
債券市場の多様性と複雑性は、PIMCOのようなアクティブ運用者にアルファ獲得の機会を提供してくれます。このためPIMCOでは、独自のボトムアップ・リサーチに注力する大規模なリサーチ・チームを編成し、44,000以上の銘柄をカバーしています。株式は1社につき1つのティッカーに限定されるのに対し、債券の場合、通貨、償還日、資本構成上の位置付けなどが異なるため、文字通り一社で数百にも及ぶ銘柄が存在する場合もあります。このため、同一企業が発行する債券のリスクは多様であり、リターン特性が大きく異なることがあります。

PIMCOの投資戦略では、格上げの予想に注力しています。PIMCOでは、数年先までの見通しを立てることによって、発行体の財務諸表をモデル化します。また、高い参入障壁と価格決定力に支えられ、トレンドを上回る成長力を示し、経営陣が債券保有者の最善の利益のために行動する企業に投資する方針です。このような将来の予想に基づいた投資プロセスが、将来的に投資適格階級に格上げされるハイイールド社債を発掘する一助となっています。

リスクの軽減と負け組の回避
金利、クレジット、通貨などのあらゆるリスクをアクティブに管理する柔軟性は、アクティブ運用者が付加価値とリターンを獲得する能力を向上させます。たとえばPIMCOでは、(1)ポートフォリオ全体のデュレーションを短期化すること、(2)世界中で金利が横ばいか低下する見通しの市場に投資すること、(3)金利感応度が相対的に低いセクターに注力することによって、金利リスクを軽減することが可能です。一般的なパッシブ運用者は、これら3つの選択肢を採用することができないか、採用可能な場合でもインデックスの構成によって制約を受ける可能性があります。

クレジット市場のアクティブ運用においては、「何を買うのか」と同じように「何を買わないのか」が重要になります。1銘柄のデフォルトがポートフォリオのリターンを大きく損なう可能性があります。しかし、 一般的なパッシブ運用では、その性質上、デフォルトの恐れがある銘柄や過大評価された銘柄を売却したり回避したりすることはありません。一方、PIMCOのハイイールド・ポートフォリオでは、積極的にデフォルトを避けようとしています。

大規模でグローバルな運用チーム
広範な分野をカバーする大規模な運用チームを擁するアクティブ運用者は、幅広い業種、市場、地域にわたって優位に情報を収集することが可能です。PIMCOでは、大規模な運用チームを背景に、企業の経営陣に接触し、経営判断に影響を与え、投資家主導の案件を提案しています。

また、PIMCOのグローバルなリサーチ・チームとポートフォリオ・マネージメント・チームは、企業の実地調査を行い、さまざまな通貨の投資対象を幅広く検討しています。たとえばグローバル市場において、上乗せスプレッドを得るため、発行体の自国通貨以外の債券にも頻繁に投資しています。自国市場バイアスの影響で、企業が自国以外の通貨で発行した債券は、ヘッジコストを勘案した上でもなお割安な場合があります。典型的な例はイタリアの銀行グループのインテーザ・サンパオロが米ドル建てで発行した債券で、ユーロ建 て債券よりも割安なケースがしばしば確認されています(図表3)。PIMCOのようなアクティブ運用者は、信用リスクは同じでも割安な銘柄に投資することが可能ですが、投資対象の通貨に制約を受けるパッシブ運用者は、このような投資機会を逃すことになりかねません。

また、企業クレジット以外の分野においても大規模で信頼できる専門デスクを有していることも、企業を評価する際の強みになると考えています。一例として、ストレステストによる分析結果とコモディティ・デスクからの情報を総合的に検討することによって、低価格環境におけるエネルギー企業の財務状況について客観的な見通しが得られ、それが主要格付会社の現状の格付け対比での優劣を見極める重要な判断材料となりました。また、特に住宅ローン保証、不動産ファイナンス、銀行などのセクターにおいて企業のバランスシートを評価する際には、企業個別のファンダメンタルズ分析とPIMCOの詳細な住宅ローン・レベルの構造的分析を組み合わせてきました。このような分析によって、企業の社債発行残高に基づく投資判断よりも好成績を残すことが可能になると考えています。

パフォーマンス
市場で投資機会が生じるなかで、独自のリサーチ、リスク軽減手法、大規模でグローバルな運用チームなど、PIMCOは包括的にお客様に構造的なアルファを提供し、資本をダイナミックに配分する機能を備えています。そのような体制が、市場のサイクル全体において魅力的なリスク調整後のリターン追及という、PIMCOの大きな目標を実現することを可能にしています。

伝統的なクレジット関連資産の価格が適正水準に近づくなかで、今後はセクター間や企業間の相対価値がリターンを左右する見通しです。PIMCOでは、ボトムアップ分析に基づき、参入障壁が高く成長力のある業種や、経営陣が資本構成上で債券保有者を優先する企業のポジションを重視しています。具体的には、銀行・証券、景気循環消費財、建設資材や非政府機関系モーゲージ債を始めとする住宅関連の業種を選好しています。他方、金属・鉱業や小売りのように成長性の鈍化やレバレッジ拡大のリスクに直面する銘柄や、テク ノロジーなど経営陣が株主の利益を優先する可能性がある業種を敬遠しています。


iモーニングスター・ダイレクト2016年12月31日現在。債券の3つの大分類(中期債、ハイイールド債、短期債)のデータに基づく。最低1年以上のリターンの実績を持つ、米国のミュー チュアルファンドとETF(インスティテューショナル・シェア)に限定しています。潜在的な残存バイアスを回避するため、各サンプル期間スタート時に存在し、その後2016年12月31日 現在までに清算もしくは統合されたファンドとETFも含む。ハイイールド債と短期債のカテゴリーは、同様のパッシブ運用のカテゴリーが存在しないため、10年間のデータは存在し ません。本グラフは例示を目的とするものであり、PIMCOの商品あるいは戦略の過去または将来の運用成果を示すものではありません。 ii『Capturing Credit Spread Premium』Kwok Yuen Ng、 Bruce Phelps、2009年12月31日、バークレイズ・キャピタル
著者

Mark R. Kiesel

グローバル・クレジット担当最高投資責任者(CIO)

Anna Dragesic

欧州クレジット・プロダクト・マネジメント・チームの統括責任者

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