ークレイズ・グローバル総合インデックスの構成銘柄のうち、日本国債とドイツ国債の75%以上を含む約12兆ドルの債券の利回りがマイナスとなっている現実は、利回りとインカムを強く求める投資家にとって厄介な状況と言えるでしょう(図表1)。7月の政策決定会合において、日銀は非伝統的な政策が限界に達しつつあることを認めたようにも見受けられますが、欧州中央銀行(ECB)も、そして最近ではイングランド銀行が、大規模な資産の買い入れや金利の抑制などの非伝統的な政策を継続しています。

国債金利がマイナスを含む低い水準に低下し、投資家は国外の市場にアロケーションを増やし、世界中のクレジット市場に投資資金が流入しています。このような動きは、債券に対する需要が供給を上回る状況を生み出し、テクニカル面からクレジット市場を下支えし続けています。

クレジット市場は年初から大きく上昇したものの、引き続きインカムを獲得する上で魅力的な金融市場の1つです。PIMCOでは、投資適格社債、一部の厳選されたハイイールド社債、バンクローン、エマージング債、非政府機関系モーゲージ担保証券への投資を通じて、クレジット市場から3~6%程度のリターンを追求することは可能だとみています。このようなリターンの水準であれば、クレジットは、国債に集中した投資の代替としてとりわけ魅力的であると言えるでしょう。年初来の国債利回りの低下を受けて、信用力の高いクレジットに対してテクニカルな需要が高まることも考えられます。また、ファンダメンタルズとバリュエーションも良好で、特に価格決定力が強く成長力があり、米国を中心に営業を展開する企業や、厳選された一部のエマージング企業に魅力があります。

ファンダメンタルズ 
クレジットのファンダメンタルズは基本的に景気動向に左右されます。主要先進国の中では、日本と欧州は辛うじてプラス成長を維持している状況ですが、米国はこの先1年間に実質GDP成長率は2%近くに上昇する可能性があります。その場合、インフレの水準(2%程度)を勘案すると、名目GDP成長率は4%近くに達するため、企業の破綻リスクは低水準にとどまる可能性が高いでしょう。 

たしかに、最近1年余りのクレジット市場では、とりわけコモディティ生産セクターにおいて、企業合併と買収(M&A)の増加や企業利益の減少を背景に財務レバレッジが上昇していますが、前向きに捉えるべき理由は存在します。たとえば米国の経済成長要因に注目すると、この先1年間にわたって、GDPの約70%を占める個人消費が堅調に推移し、経済活動全体も押し上げられる見通しです。最近1年間に米国の民間部門では250万人の雇用が創出され、個人の所得や資産が増えるとともに、与信の状況も改善しました。また、今後1年間の米国経済を考えると、経済の中での不均衡はほとんど見当たらず、緩和的な金融政策により景気と信用サイクルの拡大局面は今後も継続し、景気後退に陥る可能性は依然として低いとみられます。 

米国では、このように良好なファンダメンタルズが、銀行セクターの健全性、比較的低い借り入れ金利、相応に良好な消費見通しとの相乗効果によって、企業が生み出す財やサービスを消費する意欲や能力につながっていると言えるでしょう。 

テクニカル 
インカムを生む質の高い資産に対する需要が世界的に強いなかで、クレジット市場はそのようなインカムを提供することが可能です。国債よりはリスクが高いものの、高格付け社債のボラティリティは、一般に株式の3分の1程度であり、また、他のクレジット市場の投資機会と比べて、多額の投資が可能です。社債市場の残高は米国だけでも6兆ドルを超えており、今年度の発行額は1兆ドルを上回る見通しです。一方、世界全体の国債市場の規模は30兆ドル近いものの、平均利回りは0.6%程度と1%未満にとどまっています。 

マイナス利回りの債券残高が全世界で12兆ドルに達し、市場全体の利回りが低下したことを受けて、投資家は引き続き、低利回り、またはマイナス利回りのエクスポージャーを削減し、インカムの高い証券を追求すると考えています。投資適格クレジットは、投資適格未満のクレジットと比べて国債のリターンとの相関は引き続き高いため、アロケーションを増やすことにより株式リスクから分散を図る効果が期待されます。利回りの高さ、ポートフォリオの分散効果、投資規模を考慮すると、国債の代替として投資適格クレジットに対するアロケーションを増やす動きは、実際に今後も強まると予想しています。

バリュエーション 
インカムを生む質の高い資産に対する需要が世界的に強いにもかかわらず、足元のファンダメンタルズを考慮すれば、現在のクレジット・スプレッドは過去の平均的水準を依然として小幅ながら上回っています。これは、過去の平均的な収益率やスプレッドに満たない金融資産が多くを占めるなかで、特筆すべき状況です。現在のクレジット・スプレッドの水準は、今年初めに金融市場全体が大幅に下落した2月の水準ほどではないにしろ、比較的割安な状態が続いています(図表3)。年初来、残存5~10年の米国債利回りが80ベーシスポイント程度低下する一方で、BBB格社債のスプレッドは30ベーシスポイント程度の縮小にとどまっています。 

国債の利回りが低迷する中で、現在のバリュエーションでそれを上回る利回りを提供する、質の高いクレジットへの投資を検討する価値は十分にあるでしょう。向こう1年間3~6%という期待リターンは、年初来9~10%の実績には及ばないものの、特に株式を含むポートフォリオにおける分散効果を考慮すれば、この1桁台半ばのリターンが期待できる債券は依然として魅力的です。また、リスク許容度がさらに高い場合には、エマージング社債への投資によって5~7%程度のリターンも期待可能です。

最も魅力的な企業を発見する 

のように前向きな条件がそろうなかで、どのように投資対象企業を選択すればよいのでしょうか。PIMCOでは投資分析の一環として、世界中の50名を超えるクレジット・アナリストがクレジット・ポートフォリオ・マネージャーと共同で重要なテーマを検討します。たとえば、向こう1~3年間でどのセクターに成長トレンドの改善が見込まれるのか、どの企業が世界の消費市場のシェアを確保する可能性が高いのか、その中でどの企業が社債保有者の利益を重視する可能性が高いのか、どの企業が財とサービスの価格を引き上げることができるのか、といったポイントです。 

価格が上昇基調にある業種のトレンドをつかむことによって、投資において有益な知見が得られることがあります。一般に企業の資本構成を考慮して投資を検討する場合には企業財務の柔軟性を考慮する必要がありますが、価格決定力はその重要なポイントです。価格決定力のトレンドに格差が生じると、アクティブ運用の投資機会が生じます。成長セクターにおいて価格決定力があり、社債保有者の利益を重視する企業を選択する一方で、その他のセクターを積極的に回避することが、基本的な考え方と言えるでしょう。 

価格決定力を把握するには、食品とエネルギーを除く米国の消費者物価指数(CPI)の最近の動向に注目することが一つの方法です。CPIの動きには、PIMCOのセクター分析や企業分析と同様のトレンドが頻繁に確認されます。PIMCOでは、CPIに反映された足元の価格決定力のトレンドも参考にしながら、ヘルスケア・セクター、建材セクター、米国住宅市場に関連する堅固な需要が追い風となるセクターの企業を選好しています。 

たとえばヘルスケア・セクターでは、病院、一部厳選された製薬会社、医療機器メーカーに投資機会を見出しています。これらの企業は、特許や営業認可制度などによって競争からある程度守られていることに加えて、特に人口構成に起因する需要の変化がプラスに作用する医療業界において、市場シェアを維持しています。ヘルスケア・セクター関連の製品やサービスに対する価格が年々上昇していることは、意外なことではありません。これに対して、新車や中古車に代表されるように、他のセクターでは製品価格は値下がりしています。 

昨年からの価格変化を示した図表4からは以上のような傾向が確認でき、家賃関連セクターの建材や住宅などの企業も値上げに成功しています。

また、米国住宅市場に関連する企業や非政府機関系モーゲージにも投資機会が存在するほか、米国の経済成長がPIMCOの基本シナリオ通りとなれば、ケーブル、テレコム、カジノなどの消費者関連セクターの業績も改善するでしょう。このほか、年初来、世界中の銀行は厳しい環境に置かれているものの、米国、英国、そして一部の欧州の銀行債券は非常に魅力的です。 

さらに、良好なテクニカルやファンダメンタルズ改善の兆しに下支えされたエマージング市場にも投資機会が増えています。コモディティ価格が安定し、中国経済がハードランディングを回避し横ばいを維持するという見通しを踏まえると、ブラジル、メキシコ、ロシアなどでは足元の金融資産のバリュエーションは割安な印象です。また、コモディティ生産セクターでは多くの工業用金属企業については引き続き慎重にみていますが、パイプライン企業の現在のバリュエーションは魅力的です。ただし、年初からの上昇基調が続いているとはいえ、エマージング市場については、世界的なリスク回避の動きや個別の動向に対しては脆弱な側面もあります。 

要約すると、年初から上昇が続いたことを踏まえ、やや選別的な姿勢は強めるべきですが、PIMCOでは引き続き、クレジット市場には非常に多くの投資機会が存在するとみています。米国の社債スプレッドは2016年初めの水準こそ下回るものの、現在の利回りや潜在的なリターンの水準に鑑みると、利回りとインカムを追求する多くの投資家にとって魅力的な投資対象になるでしょう。

著者

Mark R. Kiesel

グローバル・クレジット担当最高投資責任者(CIO)

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