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スタイル・ファクターの人気凋落:オルタナティブ・リスク・プレミア戦略のパフォーマンスを理解する

リターンの要因とそのばらつき、およびポートフォリオ内での役割を見定める

S&P500指数が20%近く急落した2018年10月~12月、オルタナティブ・リスク・プレミア(ARP)戦略と呼ばれる全てが、必ずしも同じ特性を持っているわけではないことが明らかになりました。例えば、SGマルチ・オルタナティブ・リスク・プレミア・インデックスを構成する新規資金を受け入れている10の大型ARPファンドのうち、パフォーマンスの最も良かったファンドは、最も悪かったファンドを10%以上も上回っています。同インデックスは、同期間に1.62%のマイナスリターンとなり、多くの投資家が期待した無相関のパフォーマンスには程遠い結果となりました。運用会社のラインアップを見直し、ARP戦略がポートフォリオの中で果たす役割を評価するうえで、投資家はパフォーマンスのばらつきの要因を見定めることが大切です。

ARP戦略への投資家は、以下の3つの問いに対する答えを求めていると、PIMCOでは考えています。

1. パフォーマンスの主要な要因は何か

2. パフォーマンスのばらつきの要因は何か

3. これらはポートフォリオの中でどのような意味を持つのか

パフォーマンスの要因

2018年、ほとんどの株式のスタイル・ファクターの人気は凋落し、バリューやクロスセクション・モメンタムはマイナスのパフォーマンスとなりました。クオリティや低ベータのファクターは、株式市場の下押し圧力が強い局面では比較的良好でしたが、特にバリュー・ファクターは、昨年まで何年もアンダーパフォーマンスが続いています。ファーマ・フレンチ・データライブラリーのデータによれば、ユージン・ファーマ教授とケネス・フレンチ教授によるHML(high minus low)方式でみた米国株式のバリュー・ファクターのパフォーマンスは、2018年11月までの1年間で8.7%のマイナス、海外株式の同ファクターのパフォーマンスはさらに低いものでした。当然のことながら、株式のスタイル・ファクターに集中して投資した運用会社のパフォーマンスは最も苦しい結果となりました。

パフォーマンスが振るわなかったもう一つの戦略は、時系列モメンタムへのエクスポージャー、すなわちトレンド・フォロー戦略です。それでも、比較的対応が迅速かつディフェンシブ志向のトレンド・フォロー戦略の運用会社は、株式ベータに明確な制約条件を設け、特に2018年末ごろの株式市場が反落した時期には、相対的にはかなり良好なパフォーマンスを上げています。

さらに、株と金利市場のボラティリティ・リスク・プレミア戦略のパフォーマンスも冴えない結果となりました。すべての運用会社がこれらの戦略を取り入れているわけではありませんが、組み入れた運用会社は、2018年2月のボラティリティの嵐(VIX-CBOEボラティリティ・インデックスが1日の過去最大の変動を記録)に巻き込まれました。 その後回復はしたものの、再びボラティリティが上昇したため、これらの戦略は2018年10月~12月には厳しい結果となっています。

2018年のARP戦略のパフォーマンスは確かに芳しくありませんでしたが、2018年特殊と捉えるのではなく、その状況と背景を理解することが重要です。ファーマ教授とフレンチ教授が最近の論文「Volatility Lessons」で指摘したとおり、オルタナティブ・リスク・プレミアムはこれまでの伝統的なリスク・プレミアムと何ら変わるものではなく、長期にわたって低迷することは十分にあり得ます。過去の結果をみても、5年間のリターンがマイナスとなることは決して珍しいとはいえません。(統計的には、5%の期待リターンで10%のボラティリティの場合、リタ―ンが正規分布に従うと仮定すれば、ほぼ3年に1度はマイナスリターンとなる計算になります。)

難しい一面もありますが、ARP戦略は投資家が長期運用という視点を持てば、有効な投資戦略になる可能性を具えています。例えば、特定のリスク・プレミアムや資産クラスに過度に集中したり、過剰なエクスポージャーをとる運用会社よりも、幅広く分散されたポートフォリオを運用する会社であれば、低いボラティリティと、安定的なリターンを提供できるかもしれません。

パフォーマンスのばらつきの要因

PIMCOでは、リスク・プレミアムを狙う運用会社のパフォーマンスのばらつきには3つの要因があると考えています。

1.全般的な運用目標の設計:ARP戦略はマーケット・ニュートラルのロング・ショートポジションで構成されており、通常、伝統的なリスクファクターに対するエクスポージャーは低めに設計されています。しかし、戦略設計上の細部には、それなりに違いが現れる場合があります。例えば、ある戦略はヘッジファンドの代替として設計され、全体のシャープ・レシオ最大化を目指しています。一方、シャープ・レシオを多少抑えてでも、ポートフォリオの中の他戦略との分散効果に重きを置く戦略もあります。リスク・オフ圧力が強まった最近の市場では、後者のグループのパフォーマンスの方が良好でしたが、これは全体的な株式市場へのエクスポージャーを常時管理し、状況に応じてそれを減らす、もしくは完全に無くす対応をしたためです。

2.リスク・プレミアムの選択:運用会社の中には、主要な資産クラスすべてで、主要リスク・プレミアム(バリュー、キャリー、モメンタム)を得ようと、「マス目を埋め尽くす」運用をする会社もあります。一方で、マクロ経済的に明らかに合理的な存在理由と継続性があると考えられるリスク・プレミアムだけを追求し、戦略を絞る運用会社もあります。もちろん、どのリスク・プレミアムを選ぶかは、全体的な運用目標の設計が影響します。例えば、分散効果を重視する運用会社は、ボラティリティの売りや外国為替のキャリーなど、景気循環的な戦略へのエクスポージャーを抑制すると考えられます。

3.ポートフォリオの構築とリスクマネジメント:資産クラスとファクターのバランスを目指す運用会社もあります。また、「身近なところ」に留まる選択をし、自ら最も得意とする戦略に注力する運用会社もあります。あるいは、例えば株式のスタイル・ファクターに70%ものリスクを配す会社もあれば、リスクの半分をモメンタム戦略に充てる運用会社もあります。当然ながら、特定のファクターに集中したポートフォリオは、それらの投資スタイルの人気が下がれば、パフォーマンスはより大きく棄損することになるでしょう。

ポートフォリオへのインパクト

投資家がオルタナティブ・リスク・プレミア戦略への資産配分を評価する場合、以下の質問が重要だと考えています。

1. ARPへの資産配分はポートフォリオ内での意図した役割と整合性がとれているか。

ARP戦略を投資家のポートフォリオ内の役割と確実に一致させることで、最高の結果が得られる可能性が高まります。シャープ・レシオ最大化を狙う運用会社のARP戦略は、ヘッジファンドの補完として最も適しており、分散メリット最大化のARP戦略には、ポートフォリオのリスク緩和の役割を担わせることがふさわしいでしょう。

2. ARP戦略を評価する際の期間やその他の条件を適切に設定したか。

ARP戦略には、短期の投資ホライズンで安定的なプラスリターンを期待すべきではなく、長期の結果を見て評価すべきです。また、資本効率的なオーバーレイの形で組み入れているARPのエクポージャーの評価と、資本を専用に割当てたARP戦略に対する評価では、異なったアプローチが必要かもしれません。

3. ポートフォリオ内のARP戦略の組み合わせは適正か。

表面的には同じに見えても、運用会社によってARP戦略構築へのアプローチは大きく異なります。ARPの戦略同士が互いに補完的な役割を果たすポートフォリオ構築ができれば、より良好な結果が得られるでしょう。

PIMCOでは、投資家にとってARP戦略は、ポートフォリオ全体のリスク・リターン特性を改善してくれる、リターン獲得の一つの選択肢だと考えています。以上のような考察が、投資家の皆様にとって、目的に合致した最適な戦略選定と、景気サイクルを通じた投資の規律維持の一助となれば幸いです。

著者

Ashish Tiwari

アセット・アロケーション・プロダクト・ストラテジスト

Brad Guynn

シニア・バイス・プレジデント、アセットアロケーション・ストラテジスト

ご留意事項

全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。

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