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クレジット市場の孤島に投資機会を見出す

グローバルな金融政策のばらつきや米ドル高、コモディティ価格の下落、人口動態の変化、そして中国の景気減速は、レバレッジのかかったクレジット市場の近年の急拡大と相俟って、市場に大きなストレスを生み出しています。しかも、米連邦準備制度理事会(FRB)はまだ引き締めを始めてもいません。こういった背景を受けて、デフォルトやディストレスト・エクスチェンジ(財務難に伴う債務交換)が増加し、中には魅力的な投資機会が生まれるとPIMCOでは予想しています。オポチュニスティック・クレジットへの投資家は、変化するビジネス環境に対応する企業からの投資収益機会を窺っています。PIMCOの広範な運用基盤が、公募、私募案件を問わず、最も魅力的なリスク調整後リターンの追求に役立っています。

業クレジット市場は劇的な変化を遂げており、低格付け企業の債務は特にボラティリティが高くなってきています。急激なコモディティ価格の低下による事業環境の向かい風と、大掛かりな政策や規制による業界の変化が、負債比率の高い企業へのプレッシャーとなっています。この圧力は、効率性に劣る中堅企業市場(ミドルマーケット)では一貫して強いものになっているなか、足元では大企業を含めて多くの業界でも債務再編が進む可能性が高くなっています。

このインタビューでは、オポチュニスティック投資のポートフォリオ・マネージャーであるサイ・デワバクチュニと、PIMCOのオルタナティブ・クレジット戦略のシニア・プロダクト・マネジャーであるニール・ライナーが、オポチュニスティック債務におけるテーマおよびトレンド、当セクターにおけるPIMCOの投資アプローチに関して解説します。

Q:オポチュニスティック・クレジット投資の概要について教えて下さい。
デワバクチュニ:PIMCOでは、事業運営に課題を抱えている企業や、伝統的な手段による資金調達が困難な企業(多くの場合、非公開企業)などで、市場での債券の取引価格が額面を大きく下回っている企業を、オポチュニスティック・クレジット投資の対象と考えています。オポチュニスティック・クレジット投資には、通常以下のようなテーマ(一つまたは複数)があります。

  • 外的要因(経済的または規制上)、内的要因(経営陣の過信、非現実的な事業計画、一貫性の無いリーダーシップ)、またはその他何らかの特異な要因からの重圧や苦境
  • 業界内でのディスロケーション(孤立)、または「嫌われた」セクター
  • カスタマイズされた資金調達手法を必要とするような、企業形態の変更(通常は非公開案件)
  • 資本構成上、割安な負債

PIMCOでは、米国と欧州における公開および非公開企業をオポチュニスティック・クレジット投資の主な対象としています。企業規模の大小に関わらず投資機会を追求することは可能ですが、通常、負債残高が7億5000万ドル未満あるいはEBITDA(利払い、税金、および減価償却前の利益)が1億ドル未満であるような、ミドルマーケットの企業に焦点を当てることが多いといえます。ミドルマーケットの企業は、大企業に比べて経済的には脆弱ですが、財務の健全性を評価することがそれほど複雑ではなく、多くの場合投資家が影響を及ぼすことが可能な事業再編を比較的容易に行うことができます。PIMCOでは、投資企業のビジネスプランを支え、事業再編にも積極的に関与することにより、債券のダウンサイドを抑制するだけでなく、株式への転換といったオプションも含めた投資機会のストラクチャリングを追求します。

Q:なぜ今、オポチュニスティック・クレジット投資に妙味があるのでしょうか。
デワバクチュニ:様々な要因があります。大企業が低金利で資金調達できるようになったことでレバレッジが急速に拡大したことに加え、各業界における大きな変化(特定のセクターの設備過剰、急激な技術変化、積極的な規制)が市場のディスロケーションを加速させています。グローバルな金融政策のばらつきや米ドル高、コモディティ価格の下落、人口動態の変化、そして中国の景気減速は、レバレッジのかかったクレジット市場の近年の急拡大と相俟って、市場に大きなストレスを生み出しています。しかも、米連邦準備制度理事会(FRB)はまだ引き締めを始めてもいません。こういった背景を受けて、デフォルトやディストレスト・エクスチェンジ(財務難に伴う債務交換)が増加し、中には魅力的な投資機会が生まれるとPIMCOでは予想しています。

しかしPIMCOの考える投資機会は、単にディストレスト企業への投資にはとどまりません。金融危機後のグローバル経済においては、多くの中小企業の信用市場へのアクセスは限られたものとなり、流動性の低い非効率的な市場で、高いコストでの資金調達を余儀なくされてきました。これらの中小企業は多くの場合直接ハイブリッド証券(ワラント付社債など)を発行し、投資家にとって十分なリスクプレミアムを得られる投資機会を提供しています。PIMCOは、こうした企業の多くから、建設的なパートナーおよびソリューション・プロバイダーとして位置づけられており、投資案件の検討依頼を直接受ける機会が多いといえます。交渉時における関係当事者間の平等性が必要となるアームズ・レングス取引の際には、特約条項(コベナンツ)や取締役会への参加によりPIMCOの投資ポジションの保護に努めています。

今日のボラティリティの上昇と、レバレッジド・ファイナンス市場の規模の拡大は念頭に置いておく必要があります(ドイツ銀行によると、先進国におけるハイイールド市場と米国のバンクローン市場の合計は、2010年の約2.1兆ドルから2015年には3.2兆ドルに拡大)。また、ボルカー・ルールやドッド・フランク法、OCC(米通貨監督庁)ルールなど、銀行による高レバレッジ取引への資金提供を制限するような規制環境の変化は、レバレッジド・ファイナンス市場の流動性低下につながっており、流動性の低いあるいは私募の取引での投資機会を増加させています。

特にミドルマーケットには安定した投資機会が存在し、それが向こう数年間にわたって増加すると考えられます。現在では、天然資源価格(例えばエネルギー、金属、鉱業など)に直接左右される企業に対するストレスが高いのは明白です。しかし、それ以上に天然資源関連企業に供給を行っている企業間でのクレジット・ディスロケーションが見受けられています。また、航空宇宙および防衛産業、農業インフラ、基礎産業、および消費財のセクターにも投資機会が広がっていると考えています。

Q:オポチュニスティック・クレジットにはどのように投資するのですか。
デワバクチュニ:簡単に言うと、オポチュニスティック・クレジットの投資家は、ビジネス環境の変化に伴う調整、すなわち債務のリファイナンスや債務再編、カスタマイズした資金調達手段などからの収益機会を追求します。その性質ゆえに、ストレスあるいはディストレスト状態にある企業については、額面を大きく下回る価格で投資する機会を与えられることが多く、低いバリュエーションでの投資が可能となります。その後は、以下のような幾つかの異なったシナリオを辿ることが考えられます。

  • 業績回復シナリオ:ディストレスト状態にある企業の状況が根本的に改善し、額面がパーに回復するシナリオ。当シナリオでは、投下資本に対するまずまずのリターンが得られ、また、デュレーションに応じて魅力的な最終利回りを享受することが可能です。
  • 債務再編シナリオ:企業が自発的に、もしくは非自発的に債務再編を行うシナリオ。債務再編には通常、コスト、柔軟性、偶発債務の軽減および(債務再編に応じない)ホールドアウト債権者との調整といった事項の間でのトレードオフが発生します。それらは、再編の話し合いの場にも依りますが(法廷か、法廷外か)、企業にとってのメリットとして、支払利息の大幅な削減、不利な契約の再交渉、金融以外の債務の和解、非中核資産の売却およびその他の事業変化などが挙げられます。オポチュニスティック投資家は、投資対象がこうした再編を経ることによって、保有する証券の価格回復や新たな証券への転換を通じて、潜在的な利益を実現することができます。場合によっては、中身が著しく改善した企業の株式を割安な価格で手に入れ、潜在的なアップサイドを追求することも可能になります。このように債務再編によって投資家は、二度目の収益機会(いわゆる「ふた口目のりんご」)を得ることができる可能性があるのです。
  • 清算シナリオ:企業が債務不履行を起こし、その後清算される場合、企業の利害関係人には悪影響が及びますが、債権者としての立場で見ると、財産の回収分に対して優先的弁済権を持つ場合があります。この可能性を念頭に、多くのディストレスト投資家は、資本構成上のよりシニアな位置を確保し、魅力的な価格で株式のようなオプショナリティーを持とうと考えています。なお、再編以前の債券の直接利回りは、リスク緩和要因として機能します。

ディストレスト企業への投資家は、企業の本質的価値を評価する為の分析的スキルに加えて、企業がどのように最適に資本増強される可能性があるかを理解し、また、契約書、破産、有価証券および会社法に関する確かな法律知識を持つ必要があります。収益の実現を狙った多くの競合する債権者グループやその他の当事者がいるため、資本構成におけるポジション確保は重要です。PIMCOでは、考え得る投資結果を幅広く把握するにあたり、詳細なシナリオ分析を行っています。

Q:主なリスクについて教えて下さい。
デワバクチュニ:PIMCOは、オポチュニスティック・クレジット投資でいくつかの主要なリスクをモニター、管理しています。

  • 信用リスクの管理では、債務再編の必要が生じた場合、下値からの価格回復の可能性について慎重な評価をすることが要求されます。
  • 流動性リスクの管理では、投資期間と借入期間を一致させることが必要となります。
  • 規制リスクは、債権者の権利や業界規制の変化(環境、ヘルスケアなど)、あるいは、金融機関が特定の資産を保有することを制限する資本市場での変化、などが含まれます。

更に、より幅広い意味では、中央銀行の大規模な緩和政策を背景とした過剰なリスクテイクや、リスクの高いプロジェクトに対する不均衡な資本配分、極端に高いレバレッジ比率などによって、企業が経済や市場のショックに対する脆弱さを増すような状況についてもモニターしています。

Q:私募のクレジット投資が、低い流動性と引き換えに、十分な潜在的収益機会を提供しているか否かを、どのようにして評価するのでしょうか。
ライナー:私募クレジットに対する適切な潜在的収益機会を評価するにあたって、PIMCOは4つの要素を確認します。すなわち、信用リスクプレミアム(比較可能な公募債に対する超過スプレッド)、非流動性プレミアム(期間に依存)、複雑性プレミアム(より複雑なビジネスモデルの場合、買い手や資金調達源が制限される可能性がある)、および構造的安全性(包括的な特約条項パッケージの潜在利益もしくは企業に対する直接的関与、またはその両方)です。これらの要素に対する見方に、現在のマーケット水準と、借手の基本的な業務や資本構成、流動性、イグジットのタイミングや難易度、等を考慮に入れます。

私募クレジット市場の一部の領域では、資本の供給過剰によって、価格が魅力の低い水準に押しやられています。例えば、未上場の直接貸付ファンドや、上場BDC(中堅企業や新興企業等の事業開発を金融面及び経営面からサポートする投資会社)および、CLO(ローン担保証券)などの全てが同様の借主に資金を出そうとしており、大量の資金をバックにしたそれらの投資主体からの資金により、未上場企業向け貸付金が本来持つプレミアムはほとんど無くなってしまいました。また、資本を提供しようとするマネージャー間の競争が過剰なリスクテイクを促し、それがミドルマーケット企業の持つ財務クッションを侵食していきました(そしてそれが、多くの場合、ディストレスト投資機会の供給源になっていきます)。PIMCOはこれらの領域を正しく見分け、回避していきます。

Q:ポートフォリオの広い枠組みの中で、オポチュニスティック・クレジット投資はどのような役割を果たすことができるのでしょうか。
ライナー:市場でも特異なこの分野の投資は、これまでのところ従来型の資本市場への投資をアウトパフォームする傾向にあります。更に重要なのは、広範な市場インデックスとの相関が低く、多くの従来型のリスク要因に対する分散の機会を提供してきた、ということです。ただし前述のとおり、オポチュニスティック・クレジット投資はそれ自身に固有のリスクがあることには注意する必要があります。金利の上昇は、通常景気が上向いているときなので、オポチュニスティック・クレジット投資のサポート材料となります。また、通常ディスカウントで購入し、一般的に直接利回りも高いことから、従来型の株式や債券と比べてバリュエーションは魅力的となります。最後に、クーポンによるキャッシュ収入が大きく、これが収益率を安定させ、リスクを軽減する手助けとなります。

オポチュニスティック・クレジット戦略は通常、投資家のポートフォリオの中で、債券投資、イベントドリブン投資、未公開株式投資、または投資家独自の分類上のオポチュニスティック投資あるいはディストレスト・クレジットのいずれかの枠に分類されます。

Q:オポチュニスティック・クレジット投資におけるPIMCOの強みを教えて下さい。
ライナー:PIMCOの広範な運用基盤が、公募、私募案件を問わず、最も魅力的なリスク調整後リターンの追求に役立っています。この体制によって、タイミングリスクを軽減し、魅力的な投資対象の発掘と評価を継続的に行うことが可能となっています。PIMCOは、突出したソーシング(投資対象の発掘)能力とマクロ環境に対する深い理解、幅広い業界リサーチ能力、そして債務再編における広範な経験を併せ持った、経験豊富な専門チームを擁しており、その更なる体制強化も図っています。

魅力的な投資対象の発掘は非常に重要ですが、有数のグローバル投資家としてPIMCOは、公募、私募を問わず、大量のディールに対し潤沢なアクセスを有しています。PIMCOの投資は広範であり、借主に対して幅広い資本構成上のソリューションを提供できることが、PIMCOの案件発掘に大変高い競争力をもたらしています。またPIMCOでは、不動産グループやコモディティ投資グループなど、社内の他のチームからの専門的な洞察を得ることができ、複雑な戦略の評価・検討も可能です。

ディストレスト・クレジット投資の基本は、ボトムアップで特異な投資機会を発掘していくものですが、トップダウンのテーマが個別案件発掘の手助けとなります。PIMCOは、地域、セクター、クレジット市場のトレンドおよびマクロ分析における業界のリーダーです。PIMCOの分析・運用能力と幅広いリレーションシップが、グローバルなリソースおよびマクロ見通しと結びつくことで、市場の非効率性を見つけ出し、多様な投資環境にわたって魅力的なリスク調整後収益を得るためのプラットフォームを提供できると考えています。

著者

Neal Reiner

プロダクト・マネージャー

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金利が上昇し貸出状況が逼迫する環境において、大規模な流動性のギャップを埋めるための柔軟性の高い資金を有するオポチュニスティック・クレジット戦略のマネージャーにとっては、非常に魅力的な環境が醸成されています。

ご留意事項

ディストレスト企業への投資は(債務と株式を含む)は投機的でありかつ、より高い信用、発行体、流動性のリスクを伴い、デフォルト時の債務弁済の義務に大きな不確実性を含みます。これらの企業はリストラクチャリングや倒産の過程にある場合があります。不良貸出債権と倒産企業への投資は、投機的かつ返済義務を履行できない高い不確実性含みます。債券市場への投資は市場、金利、発行者、信用、インフレなどに関するリスクを伴うことがあります。高利回りで低格付けの証券はより高格付けの証券よりも高いリスクを伴います。また、それらへ投資しているポートフォリオは投資していないポートフォリオに比べてより高いクレジット・リスクと流動性リスクを伴う場合があります。全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実態と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。また債券投資は、信用、金利、その他のリスクを伴うことがあります。本資料で示したPIMCOの戦略に沿った投資は常に実行可能である保証はなく、また実行できたとしても、必ず成功する保証はありません。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、かかるリスクが増大することがあります。本資料での戦略およびこの種類の投資に関する現在の規制環境は不確実なものであり、急速に変化しています。今後の展開次第では、本戦略もしくは投資(あるいは両方)に対して規制環境がマイナスとなる可能性があります。戦略の有効性は一定の投資形態に限定されます。全ての投資形態が全ての投資家に利用可能であるとは限りません。詳細はPIMCOの担当者へお問い合わせください。