資家のあいだでは、株式のマルチファクター投資がより一層の関心事となっており、多くのご質問が寄せられています。そこで、この分野の先駆者で、リサーチ・アフィリエイツ社の最高投資責任者(CIO)でありPIMCOのポートフォリオ・マネージャーを務めるクリストファー・ブライトマンに、マルチファクター投資の特徴、課題および様々なファクターのプレミアムがもたらす投資機会について話を聞きました。

問: 最近、株式のファクター投資に対する関心が急速に高まっています。どのファクター・プレミアムが最も堅固で、どのファクター・プレミアムがそうでないとみられるのでしょうか。
ブライトマン: このテーマについては相当な調査を行いました。その結果、将来、リターン・プレミアムをもたらすと確信できる持続可能なファクターをいくつか特定できた一方、そうでないものも判明しました。

バリュー・ファクターは長期にわたって、きわめて底堅いファクターであるとみています。株価純資産倍率、株価収益率、株価売上高倍率、EV/EBITDA倍率のいずれでみても、結果は同じになります。その企業のファンダメンタルズ対比で株価が割安である場合は、割高である場合に比べて、より高いリターンをもたらす傾向があります。(ウォーレン・バフェットの盟友である)チャーリー・マンガーの言葉を借りれば、およそ賢明な投資はバリュー投資であり、、バリュー投資にはプラスの超過リターンをもたらしてきた長い歴史があります。

これに対して、小型株やクオリティのファクターのプレミアムは、単独ではそれほど底堅いファクターであるとは言えません。また、モメンタムや非流動性のファクターの場合は、機会的な投資手法ではなく、きわめて慎重かつ時宜を得た投資手法でなければ、プレミアムは長期的にプラスにならないことが明らかになっています。

問: 調査ではバリュー投資にプレミアムが存在することが裏付けられているにもかかわらず、過去10年間、バ リュー戦略はグロース戦略をアン ダーパフォームしています。これはアノマリーなのでしょうか。もし、そうだとすると、それはなぜなのでしょうか。
ブライトマン: 異例であるのは確か です。しかしながら、アウトパフォームが続く時期もあればアンダーパフォームが続く時期もあるもので、バリュー投資についてはここ数年、アンダーパフォームの時期にあたっていたと言えるのではないでしょうか。実は、1990 年代前半の景気後退期と1990年代後半のITバブル期にはバリュー株が極端に割安になり、投資の好機でしたが、現状はそれらの環境に似てきているのです。そのため今後は、異例の安さになっているバリュー株のパフォー マンスが高まると予想しています。

問: 小型株セクターは従来、株式市場でも効率性の低いセクターの1つとみなされてきました。多くの落とし穴を避けながら、投資家がこの市場の非効率性を利用するにはどうすればいいのでしょうか。
ブライトマン: 売上高や資産といった、規模の指標で小さい企業が、大きい企業よりもリターンが高いことを示す証拠は一切ありません。しかしながら、時価総額の大きい企業は、株価が割高で、リターンが低いことが調査で示されています。それは資産が大きいとか、売上高が大きいとか、その他の基準によって大企業であることとは何の関係もありません。リターンの違いは、不自然に株価が押し上げられている中小企業が大型株指数に組み入れられる一方、一時的に株価が下がっている大企業が小型株指数に組み入られていることに起因し ます。株価の要素を取り除いてしま うと、小型株の超過リターンも取り除かれてしまいます。

しかしながら、中小企業の株価のプライシングは大企業のプライシングに比べてはるかに非効率なのは確かであり、ある種の情報の強みをもっていれば、その強みを生かすチャンスは大企業よりも中小企業の方が多くなると考えられます。こうした理由から、銘柄選択に長けた投資家が、大企業より中小企業の調査に時間をかけるのは理に適っています。そして、比較的単純なバリュー戦略を取るにしても、大企業よりも小企業の方がより高いリターンを得られる可能性があり ます。もちろん、規模の小さい企業に投資しようとする時、市場のインパクトや流動性、取引費用により注意を払う必要があります。

問: モメンタムのファクター・プレミアムの堅固さが目立っていますが、長期的にはプレミアムの確保が難しくなるように思えます。この点には同意されますか。
ブライトマン: はい。調査からも明白ですが、短期では株価にプラスの時系列相関が存在します。つまり、週間、月間、四半期単位の値動きを見た場合、それまで市場を上回って上昇していた企業の株価は、その後も市場を上回る上昇を続ける傾向があります。

もちろん、その裏返しで、より長期でみれば、マイナスの時系列相関、すなわち平均回帰が存在します。過去数年にわたり市場を上回って上昇した企業は、その後数年は市場以上に下落する可能性がやや高く、逆に市場以上に下落していた企業は、市場以上に上昇する傾向があるのです。

結果として、モメンタム戦略で手数料と取引費用を差し引いた後、実際にリターンを確保するのは必ずしも容易ではなく、単純ではありません。 これは、広く一般に手に入れることができるファクター・プレミアムというよりも、熟練したアクティブ・マネジャーが生み出すことができる、きわめて特殊で限られた機会なのではないかと考えられます。

問: 額面通りに考えれば、クオリティ・ ファクターの高い企業に投資することは理に適っています。とはいえ、調査 では、クオリティ・ファクターのリターン・プレミアムは堅固でないことが明らかにされています。この2つの点は、どう折り合いをつければいいのでしょうか。 また、それは投資の観点からどんな意味を持つのでしょうか。
ブライトマン: 最もクオリティの高い企業は、金融危機時の痛手がかなり小さくて済みましたが、その後、何度も危機を迎え、その度に質への逃避が起きました。言うまでもありませんが、こうしたことが重なった結果、投資家は先進諸国の緩和的な金融政策による影響、即ち金利水準の低下に対応せざるをえなくなりました。投資家は債券ポートフォリオでは十分な利回りが得られないため、債券の代替ともなるような質の高い株式を物色しているのです。そのため質の高い企業の株価が押し上げられ、従来のプライシングに比べ相当割高な水準になっています。

平均すると、必ずしも高収益企業が継続的に低収益企業より高いリターンを提供するわけではありませんが、今はまさにそのような時期であると言え ます。 ただし小型株の議論と同様、だからといって投資に際し、クオリティを無視すべきというわけではありません。

むしろその逆で、クオリティはきわめて重要な指標として理解すべきで、株価と評価との兼ね合いで考える必要があります。クオリティの様々な要素を考慮してバリュエーションの指標を調整すれば、強力なシグナルを備え、ノイズを大幅に抑えつつ、価格に敏感なバリュー戦略を実行することができます。これが、投資にクオリ ティ・ファクターを取り入れる賢明な方法だとみています。

問:異なるファクターを単純に混合したポートフォリオで、望ましい成果が生まれるでしょうか。
ブライトマン: 投資家は、ファクターの混合という概念に注意する必要があります。例 えば、バリューのみのポートフォリオとクオリティのみのポートフォリオを混合するとして、何が得られるでしょうか。ポートフォリオの半分は単に売られている銘柄になり、半分は単に割高な銘柄になる可能性があります。これは素晴らしい投資戦略とは言えま せん。私なら、クオリティが高く、株価が適正な企業、あるいは本当に割安だけれど相応のクオリティをもつ企業を見つけたいと思います。このような銘柄群はごく少数かもしれませんが、そこに本物の投資機会があると思います。

問:今後についてお聞きします。現時点で、ファクター投資の魅力的な機会はどこにあるとお考えですか。またそれを実行するにあたり考慮しておくべき最も重要なことは何でしょうか。
ブライトマン: 今は、バリュー戦略を始めるのに最も魅力的な好機と言えるでしょう。世界の優れた株式投資家の投資手法を検証すると、ディープ・バリュー投資の場合も、クオリティが非常に高い企業を選別して投資する場合も、最終的にはそれらの銘柄を魅力的な価格で買い付ける機会を探す、つまりクオリティに対して価格が割安な銘柄を探しているのです。愚直な株式投資家が陥りがちな過ちは、良い企業と良い株式の違いを十分認識しないことです。価格は常に重要なのです。

著者

Christopher Brightman

リサーチ・アフィリエイツ社の最高投資責任者

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