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インカム志向の運用: 低利回りという困難な環境への対応

PIMCOが「ニュー・ニュートラル」と呼ぶ現在の長期的枠組みの中で、高水準のインカムを安定的に獲得することは、多くの投資家にとって容易ではありません。投資家は、インカム・ポートフォリオを構築する上で、インカムの安定性、インカムの成長性、元本の成長性といった主要な構成要素をバランスさせるべきでしょう。投資家は、マルチ・アセット・ポートフォリオをカスタマイズすることによって、投資リスクやボラティリティの許容度に応じた水準のインカムを安定的に獲得できると考えられます。

PIMCOが「ニュー・ニュートラル」と呼ぶ現在の長期的枠組みの中で、高水準のインカムを安定的に獲得することは、多くの投資家にとって容易ではありません。向こう3~5年間にわたり、中央銀行が金融危機前よりも大幅に低い水準に政策金利を維持せざるを得ない状況においては、世界各国の経済成長率は低水準に収斂していくとPIMCOでは予想しています。

ニュー・ニュートラルの環境下では、利回りが全般に低いため、銀行預金や国債などの信用力の高い伝統的なインカムの源泉だけでは、実際の支出のニーズを満たせない可能性があります。他方、高利回りの有価証券のみに資金を集中させれば、大きなダウンサイド・リスクや市場激変の影響を受けやすくなると考えられます。

ニュー・ニュートラルの環境に適したインカム・ポートフォリオの主要原則
PIMCOでは、運用するすべてのインカム戦略において、「分散」、「柔軟性」、「インフレ・ヘッジ」という3つの基本原則が長期的なポートフォリオ構築の柱になると考えています。

分散 資産クラスとリスク・ファクターを分散させることによって、インカムとリターンを改善させ、なおかつ相場の下落局面や金利の変動局面において、ポートフォリオの保護やボラティリティを全般的に抑制することも可能になります。また、個々の資産クラスの中でも、分散を図ることは同じように重要です。たとえば債券では、一部のインカム志向の投資家は高利回りセクター(ハイイールド債やエマージング市場債券など)のみに注目していますが、その結果、ポートフォリオの集中リスクが高まります。しかし、よりディフェンシブなセクター(先進国国債など)に資金を分散させることによって、ストレス時の下落リスクがある程度は抑制される可能性があります。また、株式では、高い配当利回りの株式や国内株式を過度に選好した場合、ポートフォリオは一部の限られたリスク・ファクターの影響を受けやすくなるかもしれません。

柔軟性 インカム戦略では、特定のベンチマークをアウトパフォームすることを目標にポートフォリオを運用するのではなく、リスク・パラメーターの範囲において、インカムの安定性、インカムの成長性、元本の成長性、あるいはこれらの組合せ、といった目標の達成に注力するべきです。グローバルな投資機会は急速に変化しています。柔軟なアプローチをとることによって、リスク特性に応じた資産クラスやセクターのアロケーションの調整が可能となり、その結果、魅力的な投資機会をターゲットとしたり、バリューが無くなった分野を回避することができるようになるでしょう。

インフレ・ヘッジ インフレは時間の経過とともに購買力を低下させるため、定年退職者やその他のインカム志向の投資家にとっては大きなリスクとなります。PIMCOでは、各国のインフレ率は長期的には中央銀行の目標に徐々に近づいて上昇していくと予想していますので、長期的なインカム・ポートフォリオでは、一定のインフレ・ヘッジ効果のある資産クラスを幅広く取り入れることを検討するべきと考えています。

バランスのとれたインカムの目標設定
さまざまタイプの投資家が、安定的で信頼性の高いインカムを追求しています。これらの投資家層は、人口構成上ベビーブーム世代の退職が増加して(確定給付型年金ではなく)確定拠出型年金への依存度が高まる中で、今後ますます拡大すると思われます。また、多くの基金や財団は、安定的な支出率の維持を図る上で、インカムの獲得を重要な投資目標としています。

しかしながら、あらゆる目標を全て満たすインカム投資手法というものは存在しません。インカム志向の投資家は、自らの投資目標、リスク選好度、将来的なニーズの変化を念頭に置くべきです。投資家の個別のニーズに応じて、インカムの安定性が優先される場合、あるいはインカムの成長性が優先される場合もあるでしょう。PIMCOでは、投資家が投資目標の検討やリスク許容度の評価をする上で、大きく3つの「インカムの特性」が存在すると考えています。インカム・ポートフォリオでは、この3つのいずれか1つのみを重視することも、3つをバランスさせることも可能です。

インカムの安定性 定期的な支出、出費、その他の支払いのニーズを抱える投資家は、主要な投資目標として、着実で安定的なインカムを求めると考えられます。この場合、債券に重点的に配分することによって、安定的な利回りが確保できるでしょう。

インカムの成長性 インフレ上昇に対応するために実質的な購買力を維持する必要のある投資家にとっては、利回りの成長性が重要となるでしょう。配当の成長が見込まれる株式やインフレ関連資産へのアロケーションが、解決策になる可能性があります。

元本の成長性 時価の上昇が見込まれる投資は、将来的にインカムの重要な源泉になると考えられます。退職後の資金を何年も、あるいは何十年にもわたってあらかじめ蓄積している投資家がリターンの向上を目指す場合には、追加的なリスクが発生し得ることを認識した上で、この目標に注目するべきでしょう。

投資家は、自らのニーズやリスク許容度の変化に合わせて、3つの目標のバランスを調整するべきでしょう。たとえば、定年退職を控えた投資家にとっては、ポートフォリオの時価下落に対する許容度が低下するため、ボラティリティが低く、安定性の高いインカムを生むポートフォリオが必要になる可能性が高いと考えられます。

特定の目標とリスク・パラメーターを踏まえたインカム・ポートフォリオの設計
投資家は、債券や株式、その他のインカムを生む有価証券などから構成されるマルチ・アセット・ポートフォリオをカスタマイズすることによって、投資リスクやボラティリティの許容度を個別に設定しつつ、変わりゆく市場環境において特定の水準のインカムを安定的に獲得できると考えられます。このようにテーラーメイドなマルチ・アセット・ポートフォリオは、各資産クラスやセクターに内在するリスク・パラメーターを念頭においたうえで設計されるべきでしょう。

ここでは、特定のリスク・バジェットを前提にインカムの目標を達成するように投資戦略を組み合わせた、3つの仮想ポートフォリオをご説明します(図表で示したアロケーションは説明を目的とする仮定上の例であることにご留意ください。これらはPIMCOの商品や戦略を表すものではなく、特定の投資家の投資目標やリスク許容度を考慮に入れたものでもありません)。この3つの例では、コア債券(政府、政府機関、一般企業が発行する投資適格債券)、インカム志向の有価証券(コア債券よりも高いリスクで高水準のインカムを提供する債券や株式)、インフレ・ヘッジ商品(価格がインフレ率に連動した債券)、そしてディバーシファイド・クレジット債券(コア債券よりも高いリスクで高水準のインカムを目標とするグローバルな投資適格債、ハイイールド債、エマージング市場債券の組合せ)という4つのカテゴリーに資金を配分しています。

比較的保守的でリスクの低い戦略(図表1)では、安定的で持続可能なインカム収入と元本保全を目標としています。株式などのリスク資産へのアロケーションを抑え、コア債券やインフレ連動債へのアロケーションを比較的大きくすることによって、ボラティリティを比較的低い水準に抑制することを目標としています。

限定的にリスクをとる戦略的なアプローチ(図表2)では、リスク資産と高格付け債券へのアロケーションを分散させることによって、インカムと成長性をバランスさせることを目標としています。(相対的にリスクの低い)コア債券やインフレ連動債へのアロケーションを比較的小さくし、インカム志向の証券へのアロケーションを比較的大きくすることによって、より高水準のインカムと成長性を目指しています。全体的にボラティリティ・リスクを限定的にとることによって、リスク量は増えるものの、リターン上昇の余地を残しています。

最後に、成長志向性が比較的高いポートフォリオ(図表3)では、リターンを拡大させる可能性のある資産(株式と、投資適格債、ハイイールド債、エマージング市場債券からなるディバーシファイド・クレジット債券)を組み入れて、インカムの安定性と成長性の両方を目指しています。このポートフォリオでは、成長性という目標を念頭に、相対的にリスクの低いコア債券やインフレ連動債には資金を配分していません。言うまでもなく、投資家は、リターンの潜在性と引き換えに、比較的高いボラティリティとリスクを許容しなければなりません。

アクティブな運用プロセスが重要
多くの場合、投資家がマルチ・アセット戦略を自ら実行することは容易ではありません。幅広い資産クラスのバリューや各資産クラス内のバリューを分析し、投資機会が変化する中でアロケーションを変えるためには、大規模なリソースと専門性が必要です。

PIMCOでは、さまざまなインカムとリスクの水準をターゲットに、インカム戦略をアクティブに運用し、変わりゆく市場環境の中でインカムを追求するために、実績のある運用プロセスを活用しています。

ポートフォリオ構築は、PIMCOの経済予測会議を起点としたトップダウンのプロセスから始まります。年に1回開催される長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)では、PIMCOの世界中の投資プロフェッショナルが向こう3~5年間の重要なマクロ経済のテーマを議論し、これを補完する四半期ごとの短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)では、向こう半年~1年間のグローバルな景気サイクルの枠組みを議論します。各フォーラムの終了後、PIMCOの見通しは、インベストメント・コミッティーによって具体的な投資のテーマやリスク・ファクターの目標に落とし込まれます。

次に、ポートフォリオ・マネジメント・チームは、このようなトップダウンの枠組みの中で、(株式から債券まで)資本構成上の位置付けを問わず、世界中の幅広い資産クラスの中から、リスク調整後のインカムが最も高いと考える投資機会を模索します。その上で、リサーチ・チームは、ビジネス・モデル、バランスシート、透明性、キャッシュフローの創出能力、経営能力を始めとする幅広い指標を精査して、インカム獲得に寄与する最善のボトムアップの投資アイデアを追求します。

また、アクティブな運用プロセスにおいては、相対的なバリュエーションをみることも重要です。運用チームは、すでにバリューが価格に織り込まれたと考える分野を回避し、割安な銘柄に注目して、債券や株式市場の中から魅力的なサブ・セクターを探し出していきます。

さらに、リスク管理の一環として、また、アウトパフォームする可能性のある投資対象を評価する作業の一環として、発生確率でウェイト付けされた経済シナリオの範囲で、ポートフォリオのストレステストを実行します。

PIMCOでは、このように堅固できめ細かい運用プロセスを用いて、PIMCOの最善のアイデアを取り入れ、各資産クラスのサブ・セクターやグローバルなリスク・ファクターについて分散を図ったインカム・ポートフォリオを構築しています。その上で、市場の変動を投資機会として捉え、ボラティリティを適切にヘッジしながら、お客様の運用目標やリスク選好との整合性を担保しつつ、ポートフォリオをアクティブに運用しています。最終的には、インカム志向の投資家がリターンの分配目標を達成するとともに、元本の成長を可能にするような戦略を設計することを目指しています。

結論
多くの投資家は、ニュー・ニュートラルの長期的な投資環境において、国債のような伝統的な資産から高水準で安定的なインカム収入を獲得することは容易ではないと考えるでしょう。投資家がインカムを求めて投資対象を広げるにあたって、ベンチマークに対する制約を回避し、長期的なインフレ・ヘッジ機能を取り入れながら、確度の高い投資機会に注目する、分散性と柔軟性を備えたアプローチを採用することが、成功のカギとなるかもしれません。

投資家は、インカム・ポートフォリオを構築する上で、自らの目標やリスク許容度に応じて、インカムの安定性、インカムの成長性、元本の成長性といった主要な構成要素をバランスさせるべきでしょう。株式、債券、マルチ・アセット型商品のいずれに投資する場合でも、トップダウンとボトムアップのアプローチを組み合わせた堅固な運用プロセスに基づく戦略が、安定的なインカムと長期的なトータルリターンを目指す上で最適であるとPIMCOでは考えています。

著者

Paul W. Reisz

プロダクト・ストラテジスト

Tina Adatia

プロダクト・ストラテジスト

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ご留意事項

過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。債券市場への投資は市場、金利、発行者、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。政府が発行する物価連動債(ILB)は、元本価値がインフレ率に連動して定期的に調整される債券です。実質金利が上がった場合、物価連動債(ILB)の価値は減少します。高利回りで低格付けの証券はより高格付けの証券よりも高いリスクを伴います。また、それらへ投資しているポートフォリオは投資していないポートフォリオに比べてより高いクレジット・リスクと流動性リスクを伴う場合があります。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。

金融市場の動向に関する記述は現在の市場環境に基づくものであり、市場環境は変化します。本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。アセットアロケーションとは、様々な投資対象(株式や債券など)へ資金を配分するプロセスです。将来の運用成果または損失の回避を保証するものではありません。投資判断にあたっては、必要に応じて金融またはその他の専門家にご相談ください。

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