界金融危機以降、株式インデックスを対象とするパッシブ運用の成績が好調な年が続いています。そのパフォーマンスは長年にわたって好調であり、低コストながら強力なベータのリターンを過小評価することは容易ではありません。しかしながら、昨年の夏以降に株式のパフォーマンスが悪化した結果、多くの投資家は2009年から続いた高リターン・低ボラティリティの局面が終了したと確信するようになりました。

実際にPIMCOでは、株価の割安感が薄れたことや世界経済の成長鈍化見通しを受けて、今後のリターンは低下する可能性が高いと予想しています。このため投資家は、単に株式ベータのエクスポージャーをとるだけでは、リターンの目標を達成することは難しくなるでしょう。

低リターンの環境では、アルファの源泉を求める投資家の需要が強まるのですが、超過リターンを確保することは容易ではありませんでした。足元では、「バリュー」や「規模」などのファクター・バイアスの影響が、銘柄の選択技術がもたらす付加価値を凌駕していることが、伝統的なアクティブ運用者が苦戦を強いられる一因と考えられます。

ポートフォリオにおいて特定のファクターに重点を置くことに本質的な問題はありませんが、比較的コストの低い定量的手法には、既知のファクター・エクスポージャーが付随する場合があります。例として、スマート・ベータに代表される、ファクターに基づくシステマティックな(規則的な)株式戦略が挙げられます。これらの戦略は、パッシブ・ベータとアクティブ・アルファの中間に位置付けられ、機関投資家と個人投資家の両方に潜在的なバリューを提供しますが、場合によってはアクティブ運用者の選択方法と同様の手法を用いることによって、長期的に持続可能なスマート・ベータ戦略を選択することが重要です。

不安定な株式のアルファ
以前は、株式の超過リターンを捉えることが現在よりも容易でした。株式市場の効率性は比較的高かったものの、投資家には投資機会が存在していました。その後、専門的な資産運用会社の増加に伴い、株価が適正水準から明確に乖離するケースは減少し、超過リターンを獲得するためには体系的な運用プロセスが必要になりました。

また、個別銘柄の選択に軸足を置く場合でも、超過リターンが銘柄選択のみに由来することは稀であり、ファクター・リターンの影響を受けることも多いとPIMCOでは考えています。ファクター・リターンとは、ポートフォリオ・マネージャーの運用成績の中でシステマティックなファクター・バイアスに由来する部分を表し、意図的に獲得されるケースは多くはありません。別の見方をすると、一般に「アルファ」と呼ばれるリターンは、個別性に由来する部分とファクター・ティルト(特定のファクターに重点を置くこと)に由来する部分から構成されています(図表1)。

10年間のトラックレコードを有する大型株運用者の運用成績(図表2)を分析した結果、全体の85%近くには、統計的に有意であるとともに長期的な持続性のあるファクター・バイアスが存在していることがわかりました。

運用者を評価する際には、循環的に変動しやすいというファクター・リターンの特性を考慮することが重要です。「グロース」と「バリュー」、「大型株」と「小型株」、「高クオリティ」と「低クオリティ」というように、対となる戦略の運用成績は、対照的な形で変動する傾向があります。一例を挙げると、研究結果を見る限り、長期的には「バリュー」戦略からリターン・プレミアムが得られる一方で、短期的には「グロース」戦略がアウトパフォームする局面が頻繁に確認されます(図表3)。

この傾向は、運用成績が良好な運用者を選んだ直後にそのパフォーマンスが悪化しやすい、というジンクスの一因でもあります。その理由は、持続的なファクター・バイアスを伴う運用スタイルの流行は市場動向とともに移り変わるからであり、その結果、運用成績が悪化した運用者からは「私の運用スタイルの流行は終わった」という声が頻繁に聞かれます。

ファクター・バイアスがプラスに作用することも
ファクター・ティルトには持続する傾向がみられるため、多くの運用者は真の意味ではアクティブ運用を行っていないと論じることも可能でしょう。「クローゼット・インデックス(ブラックボックスのインデックス運用) 」の運用者とは異なり、ファクター・ティルトの大きい運用者のスタイルは非常にアクティブであり、アクティブ・シェアが高いという印象を受けるかもしれません。実際、ファクター・ティルトはプレミアムを生み出すため、非常に高い超過リターンが生まれることもあります(図表4)。

パッシブ戦略は一般に、時価総額加重型インデックスを模倣した運用手法と呼ばれます。これに対してスマート・ベータ戦略では、リターンのプレミアムを捉えつつ、時価総額の大きい銘柄に集中する結果として生じるボラティリティを引き下げる目的で、株式ポートフォリオの構成比率を決定する代替の方法が採用されています。このレポートでは、スマート・ベータを広義に捉え、シングル・ファクターからマルチ・ファクターまで、ファクター・エクスポージャーが静的なものから動的なものまで、幅広い戦略を対象に含めています。非常に重要な点として、これらの戦略では取り入れたファクター・エクスポージャーが開示されるため、関連するプレミアムの獲得を目指す方法として信頼性が高いと考えられます。

実際、これらの戦略の多くはシステマティックであり、ポートフォリオの構成比率の変化は比較的緩やかなため、運用に伴うコストは多くのアクティブ戦略よりも小さくなる傾向があります。興味深いことに、課税対象となる投資家にとっては、一部のスマート・ベータ戦略の取引回転率の低さが、高税率が課されることの多い短期のキャピタルゲインを最小限に抑える、というメリットが生じています。

このため、機関投資家も個人投資家も、アクティブ戦略とパッシブ戦略のいずれかを選ぶ場合、ファクター・ティルトが付随し、場合によって低いコストでアクティブ運用の一般的なメリットを提供するシステマティックなアプローチを検討するべきでしょう。

スマート・ベータがスマートである理由
アクティブ運用者を選択する際には、入念なデューディリジェンスと付加価値を生む手法についての深い理解が必要になります。資産運用業界では、リサーチ能力が高く、運用基準に一貫性があり、アクティブ・シェアが高く、銘柄選択に由来するリターン獲得の可能性を強調する運用者を選ぶべきであるという見方が一般的です。また、分析に際しては、運用者がファクター・ティルトを十分に認識しているかどうか、ファクター・ティルトがポートフォリオに存在する理由およびポートフォリオの運用成績にいずれは恩恵をもたらす理由を明確にできるかどうかを、理解するべきでしょう。

システマティックな株式ベータとスマート・ベータを適切に提供する運用者を選択する場合にも、同じように注意深い分析と定量的な評価が求められます。以下では、運用者を選択する際の指針となる適切な論点を例示します。

– 当該戦略がバックテストの結果に過度に依存していないか、評価対象となるようなトラックレコードは存在するのか。

– 運用者は当該戦略が成功する理由を直観的かつ合理的に説明できるのか、それともブラックボックス性が強いモデルが採用されているのか。

– 当該戦略は単純過ぎるために、一部業種への過度な集中や「バリュートラップ」に対するエクスポージャーの発生など、意図せざる結果を招く恐れはないだろうか。

– 当該戦略には、運用の規模やオペレーションに影響するような流動性や取引コストが考慮されているのか。

– モデルは静的であるのか、あるいは継続的なリサーチに基づく新たな知見を取り入れて変化するのか。

ファクターに基づく戦略は、ベンチマークを常にアウトパフォームするような特効薬ではありません。最も堅固な戦略でさえも、伝統的なインデックスをアンダーパフォームすることもあり、過去10年間にわたって「バリュー」が「グロース」をアンダーパフォームし続けた最近の例が示すように、その期間は比較的長期にわたる可能性もあります。ただし、とりわけ戦略に透明性がある場合には、アンダーパフォームする理由は説明可能であり、時間の経過とともにファクター・エクスポージャーがポートフォリオの運用成績に寄与することもあります。

PIMCOでは市場環境はこの先さらに困難になると考えていますが、投資家が採り得る選択肢は増えています。また、投資家は、入念なデューディリジェンスを通じて、伝統的な時価総額加重型の株式インデックスをアウトパフォームするという重要な目標を設定することもできるでしょう。

著者

Andrew Pyne

プロダクト・ストラテジスト

Markus Aakko

アカウント・マネージャー

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アクティブ・シェアとは、ポートフォリオにおける株式の保有比率をベンチマークと比較する指標です。アルファとは、リスク調整後の運用成績を計る指標であり、ポートフォリオのリスク調整後の運用成績のボラティリティ(価格変動リスク)とベンチマーク・インデックスを比較することによって求められます。つまり、ベンチマークに対する超過リターンがアルファを構成します。ベータとは、市場変動に対する価格の感応度を計る指標であり、マーケット・ベータは1と定義されます。スマート・ベータとは、伝統的な時価総額加重型インデックスよりも優れたリスク・リターンのトレードオフを実現するために設計されたベンチマークを意味します。