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クロスオーバー社債: ライジングスターを求めて

クロスオーバー社債は新しい資産クラスではありませんが、とりわけリスク調整後リターンに注目する投資家の間で、同市場を対象とする投資戦略の人気が高まっています。なぜならば、クロスオーバー社債には、投資適格社債並みのボラティリティでハイイールド債並みのリターンを生んできた長い実績があるからです。 また、クロスオーバー社債には米国債との相関が低いという特徴がありますが、これは米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを予想する多くの投資家が強く意識するポイントです。投資適格社債に限定したポートフォリオからも同様のリスク調整後リターンは得られていますが、米国債との相関はクロスオーバー社債の2倍以上となっています。

在の低金利環境下において利回りを追求する投資家の多くは、高リスク投資に二の足を踏んでいます。投資適格社債市場とハイイールド 債市場の間に位置するクロスオーバー社債が、この問題を解決してくれるかもしれません。

問: クロスオーバー社債とは何でしょうか。
答: クロスオーバー社債とは、大方の投資適格社債よりも利回りが高く、ハイイールド 債よりも概ね信 用リスクが 低い社債の 集合体 を 指します。また 、投資適格 社債市場とハ イイー ルド 債市場の両方の要素 を 含み 、両者 を 区分する重要な 一線を「クロス」することを意味します。社債市場において、投資適格階級の最下位(BBB+~BBB-)と投機的階級の最上位(BB+~BB-)の特徴を合わせたセグメントと言えるでしょう。

一般にクロスオーバー戦略とは、BBB格とBB格を単純に半分ずつ、または時価総額加重ベースで組み入れた戦略と考えられていますが、信用力が改善基調にあり投機的階級から投資適格階級に格上げされる可能性が高い銘柄(「ライジングスター」)をターゲットにするような戦略も存在します。概念的には、社債市場全体の中では小さなセグメントであるように思われますが、BBB格とBB格の合計残高は非常に堅調かつ着実に増加しており、BofAメリルリンチによると、現在では約3兆ドルに達し、発行体数は4,400を超えています(図表1)。

残高拡大の要因として、全般にBBB格とBB格の発行体による起債が増加し、足元では社債発行市場全体に占めるシェアが35%を超えていることが挙げられます(図表2)。金融危機以降、需要が底堅い中で発行額が堅調に増加したため、クロスオーバー社債は社債市場全体の残高の半分近くを占めるようになりました。また、BBB格とBB格の取引量は、投資適格社債市場またはハイイールド債市場、いずれか単独の市場での水準の約2倍に達しており、一般的に流動性に対する懸念がますます強まるなかで、このセグメントでは、流動性の高い大規模な案件が観察されています。

問: クロスオーバー社債の主な利点を教えてください。
答: クロスオーバー社債は新しい資産クラスではありませんが、とりわけリスク調整後リターンに注目する投資家の間で、同市場を対象とする投資戦略の人気が高まっています。なぜならば、クロスオーバー社債には、投資適格社債並みのボラティリティでハイイールド債並みのリターンを生んできた長い実績があるからです。1980年代後半以降、クロスオーバー社債は、ハイイールド債市場の3分の2程度のボラティリティで同市場と同様のパフォーマンスを残してきました。この間、クロスオーバー社債は、絶対値ベースでもリスク調整後ベースでも、投資適格社債をアウトパフォームしています(図表3)。

また、図表4で示したように、クロスオーバー社債には米国債との相関が低いという特徴がありますが、これは米連邦準備制度理事会 (FRB)の利上げを予想する多くの投資家が強く意識するポイントです。米国債との相関をそれぞれ比較すると、クロスオーバー社債はハイイールド債よりは高いものの、投資適格社債の半分未満の水準です。また、クロスオーバー社債のリスク調整後リターンは、投資適格社債を上回っています。

投資家は、BBB格またはBB格の単独のエクスポージャーからも良好なパフォーマンスを期待できますが、両者を合わせると、極めて広範な分散度の高い資産クラスとなります。ハイイールド債市場全体と投資適格社債市場全体では業種構成は大きく異なりますが、BBB格とBB格に限ってみると類似性が高いため、投資家は、市場情勢や相対価値に基づき、クロスオーバー社債市場の中で銘柄を入れ替えることが可能です。

問: クロスオーバー社債投資と投資適格社債またはハイイールド債投資との違いを教えてください。
答: 社債投資に伴う最大のリスクは、信用リスク、すなわち発行体の不払い(デフォルト)に起因する元利金の損失リスクです。投資適格階級の最上位(AAA格)からBBB格に近づくにつれて利回りは徐々に上昇し、投機的階級のBB格から最下位(B格~C格)に近づくにつれて、信用リスクの増加を補うために、利回りはさらに大きく上昇します。一方、デフォルト率は、投機的階級の中で最下位の格付けに近づくにつれて、指数関数的に上昇します(図表5)。

たとえば、B格の社債からCCC格以下の社債にシフトした場合、デフォルト率が11%(1.2%から12.2%へ)上昇するのに対して、平均利回りは4.4%しか上昇しません。これに対して、投資適格階級の最下位(BBB格)から投機的階級の最上位(BB格)にシフトした場合、デフォルト率が0.2%未満しか上昇しないのに対して、利回りは1.6%上昇します。このように、信用リスクの差が無視できるほど小さいにもかかわらず、利回りの上昇幅が比較的大きいことは、投資適格階級から投機的階級にシフトすることに伴うプレミアムが魅力的であることを示しています。

ハイイールド債の保有を禁止する厳格な投資ガイドラインを有する機関投資家が多いため、このようなプレミアムは従来から高い水準で推移してきました。このため、投資適格社債の運用者の多くが投機的階級に格下げされた社債の売却を余儀なくされる結果、そのような制約のない投資家には魅力的な投資機会が生じます。これとは対照的に、高利回りの追求に注力するハイイールド債の運用者のほとんどが、利回りがBB格を明確に上回るB格にエクスポージャーを集中させています。しかしながら、図表6が示すように、ハイイールド債市場のリスク調整後リターンが最も高いのは、歴史的には最上位のBB格でした。

リスク調整後リターンは、年率のリターンを年率の標準偏差で除して求めます(図表6)。

次に、同じ期間における絶対リターンを比較すると、BB格が(2番目だった)10年と15年を除いて、他の格付けをアウトパフォームしていることがわかります(図表7)。運用者のほとんどが投資適格階級か投機的階級のいずれかに注目し、両市場の境目に注目する専門 ファンドが極めて少ないことからも、クロスオーバー社債に注目する投資家には良好な投資機会が生じる可能性があります。

問: アセットアロケーション全体の中で、クロスオーバー社債はどこに適合するのでしょうか。
答: クロスオーバー社債は、多くの投資家のアセットアロケーション全体において適合すると考えられます。また、ほとんどの債券のセクター、なかでも典型的なベンチマーク債券インデックスの大部 分を占める米国債とモーゲージ債(MBS)との相関が比較的低い傾向があります(図表8)。このためクロスオーバー社債は、高い分散効果を発揮し、リスク調整後リターンでもより高い利回り/収入を獲得する機会を生む可能性があります。

また、クロスオーバー社債は、一般に株式市場とも相関がかなり低いため、より広範なアセットアロケーションの中に取り入れる根拠としても十分です。またクロスオーバー社債を株式の代替とすることの長期的かつ戦略的な意味合いも強く、過去10年、15年、20年間において、クロスオーバー社債はS&P500株価指数の半分以下のリスクで、その80%以上のリターンを達成してきました(BofAメリルリンチ、S&P)。

FRBによる利上げが予想される中で、投資家の多くは、デュレーションのリスクと、金利上昇が自らの債券のアロケーションに与える影響について、懸念しています。また、利回りが依然として歴史的低水準にある環境下で、信用リスクを大きく増やすことなく利回りを改善する方法を模索しています。ハイイールド債は比較的満期が短いため、その他の債券よりもデュレーションが短い傾向があります。このため、クロスオーバー社債は、信用リスクこそわずかに高いものの国債金利との相関が低く、コア債券や純粋な投資適格ポートフォリオに対してデュレーションの短い代替選択肢になり得る、とPIMCOでは考えています。

最後にもう一点、クロスオーバー社債に投資する主要なインセンティブの1つが、従来から見られる魅力的なリターンとリスクの関係です。足元では、リスク1単位当たりのリターンの増加分(ボラティリティ1単位当たり年率1.33%程度のリターンの増加)が従来の水準と概ね同じ水準に戻っていることが確認できます(図表9)。

PIMCOでは、米国債利回りや、エネルギー・セクター、欧州のソブリン・クレジットなどの市場のボラティリティがここ最近上昇しているなかで、クロスオーバー社債への投資は戦略的にも戦術的にも魅力的である、とみています。

問: PIMCOはクロスオーバー社債をどのように運用しているのでしょうか。
答: あらゆる社債の中で、投資適格階級への格上げや投機的階級への格下げの影響を最も受けやすいのが、両階級のいずれとも距離が近いクロスオーバー社債です。このため、クロスオーバー社債の運用をアクティブに行うことと、ファンダメンタルズが改善傾向にあって投資適格階級に格上げされる可能性のある「ライジングスター」を見出しつつ、ファンダメンタルズが悪化傾向にある銘柄を回避するため、リソースを確保することが重要であると考えています。

PIMCOでは、2001年からクロスオーバー社債に特化したポートフォリオを運用してきました。また、長年にわたり、クロスオーバー社債はコア債券戦略の重要な一部を構成してきました。60人以上のクレジット・アナリストを擁するクレジット運用チームは、投資適格階級と投機的階級に分けて担当を割り振るのではなく、業種別に担当を割り振るという点で特徴的です。このような体制は、業種全体のテーマがそれぞれの発行体に与える影響をより的確に評価することを可能とし、投資適格階級と投機的階級にまたがる戦略を運用する上で、非常に重要であると考えています。

著者

Hozef Arif

クレジット担当ポートフォリオ・マネージャー

Michael Brownell

クレジット・プロダクト・ストラテジスト

ご留意事項

高利回りで低格付けの証券はより高格付けの証券よりも高いリスクを伴います。また、それらへ投資しているポートフォリオは投資していないポートフォリオに比べてより高いクレジット・リスクと流動性リスクを伴う場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行者、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。社債には、発行体が元利金の支払い不能に陥るリスクがあります。また社債の価格は金利感応度や発行体の信用力に対する市場の認識、市場の全般的な流動性といった要因の影響により、変動する可能性があります。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。特定の証券や種類の証券の信用格付により、ポートフォリオ全体の安定性や安全性が確保されるわけではありません。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。

各種インデックスや証券の相互間の相関やインフレ相関は、特定の期間のデータに基づくものです。こうした相関は将来的に、もしくは異なる期間においては大きく変化する可能性があり、その結果、ボラティリティの上昇を招く可能性があります。金融市場の動向に関する記述は現在の市場環境に基づくものであり、市場環境は変化します。本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。

BofAメリルリンチ米国ディバーシファイド・クロスオーバー社債インデックスは、米国の国内市場で発行された米ドル建てのBBB格およびBB格の公募社債のパフォーマンスを計測する目的で設計されています。「クロスオーバー」社債とは、一般に、投資適格社債の最下位とハイイールド債の最上位の格付けを有する社債を意味します。適格有価証券は、BBB1からBB3までの格付け(ムーディーズ・インベスターズ・サービス、フィッチ、S&Pの平均)を取得していなければなりません。適格社債発行体は、G10諸国、西欧諸国、または米国もしくは西欧諸国の領域に主たるリスク・エクスポージャーを有していなければなりません。BofAメリルリンチ・US・コーポレート・インデックスは、少なくとも満期までの残存期間が1年以上の米ドル建ての米国国内発行投資適格社債で構成されるインデックスで、発行残高が250万米ドル以上の債券が含まれます。BofAメリルリンチ・ハイ・イールド・キャッシュ・ペイ・インデックスは、米ドル建ての米国国内発行投資適格社債のインデックスです。BofAメリルリンチ米国債インデックスは、米国政府が直接発行する国債のパフォーマンスをトラックする、運用されていないインデックスです。S&P500指数は一般的に株式市場全体を反映すると考えられているインデックスです。この指数は、米国株式市場の大型株に重点をおいています。バークレイズ固定利付MBSインデックスは、ジニーメイ、ファニーメイ、フレディマックのすべての証券化された固定利付モーゲージ・プールから構成され、ジニーメイ傾斜返済モーゲージを含みます。バークレイズ米国債インデックスは、米国財務省の公共債務のパフォーマンスを計測するものです。運用されていないインデックスに直接投資することはできません。