多くの投資家がより高いリターンを目指して、プライベート投資に注目していています。その背景には、プライベート・エクイティ、不動産、プライベート・クレジットに特化した運用戦略が、一般に伝統的資産対比で魅力的な流動性プレミアムを有するからです。 しかし、プライベート投資においては、いつでもキャピタルコールに対応できるよう、資金を準備しておかなければならない、という流動性管理の課題もあります。投下資金ではなく、コミットメントした資金も含めてリターンを勘案する場合、待機資金を保持することは望ましくなく、流動性プレミアムを損なう事にも繋がります。これを解決すべく、プライベート資産のキャピタルコールの傾向を元に、キャピタルコールの待機資金に関する運用ソリューションを考案いたしました。 伝統的アプローチ キャピタルコールの待機資金の管理手法においては大きく2種類あります。 1つ目は保守的な方法で、現金または国債において運用する方法です。この場合、コミットメントベースの資金に対する期待リターンは大きく低下し、“キャッシュ・ドラッグ(キャッシュ保有によるリターンの低下効果)”が発生します。キャッシュ・ドラッグの効果は看過できず、プライベート・エクイティの場合、目標IRRの1/3相当のリターン逸失に繋がる可能性があります。 2つ目は、より積極的な方法で、プライベート資産に類似した伝統的資産での同等物(PME、Public Market Equivalent)に、キャピタルコール待ちの資金を投資する方法です。伝統的なプライベート・エクイティであれば上場株式、プライベート・クレジットであればハイイールド社債などが該当します。この場合の問題点は、PME資産とプライベート資産が正相関の関係にある点です。つまり、上場株式が下落したり割安となる局面で、キャピタルコールがかかりやすい傾向にあり、その結果、PME資産の評価損を実現損とする必要があるだけではなく、欠損分の補填を要することです。 流動性に応じた階層化ソリューション PIMCOの考える待機資金の運用における適切なアプローチは前述の2種の中間です。その一例として、キャピタルコールの流動性ニーズに応じて階層化し、資産を超短期債券、短期債券、PME資産の3つに配分するアプローチを考察いたしました。 この流動性に応じた階層化ソリューションでは、プライベート資産のキャピタルコールの傾向や規模などを勘案し、適切なリスクテイクのバランスをとる必要がありますが、短期/超短期債券とPME資産を組み合わせることで、キャッシュ・ドラッグを緩和できる可能性を高められるものと考えています。 図表2は一例として、プライベート・デット資産に1万米ドルをコミットメントした場合に、コミットメントから5年経過後の階層化ソリューションを用いた場合の階層化アプローチの超過収益額と、想定しておくべき追加コミットメント額を比較したものです。階層化に当たっては、キャピタルコールの速度に応じて保守的なアプローチ(よりキャピタルコールが早く発生する想定)を用いることもでき、リスク性資産のみに投資する場合に比較して不足発生額を抑えながら、キャッシュ運用対比でキャッシュ・ドラッグを抑制できる可能性を示しています。当該ソリューションは、プライベート資産に投資を行う投資家の流動性管理において一考に値するアプローチであるとPIMCOでは考えています。 本分析の詳細については、担当アカウント・ マネージャーにお問い合わせください。 図表1および図表2のデータサンプルについては、”Cash for Calls: A Quantitative Approach to Managing Liquidity for Capital Calls”( PIMCO IN DEPTH, February 2022, 英語版)をご参照ください。なお本資料では、当該レポート内の図表を一部日本の投資家向けに修正、簡易化して掲載しています。
PIMCOの視点 オポチュニスティック・クレジット:信用力の低下と貸出状況の逼迫が魅力的なバリューの原動力に 金利が上昇し貸出状況が逼迫する環境において、大規模な流動性のギャップを埋めるための柔軟性の高い資金を有するオポチュニスティック・クレジット戦略のマネージャーにとっては、非常に魅力的な環境が醸成されています。