界経済のトレンドは引き続き、クレジット市場に特化した長期投資家に投資機会を提供しています。以下のインタビューでは、グローバル・クレジット担当最高投資責任者(CIO)であるマーク・キーセルが、米国のエネルギー革命、アジアにおける消費拡大、グローバルな銀行規制の影響、米国住宅市場の潜在的需要など、向こう3~5年間に有望であるとPIMCOが考えるテーマについてご説明します。5月に開催された年に1度の長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)では、世界中のPIMCOの投資プロフェッショナルが集結して、世界経済と金融市場についての長期見通しを議論しました。

問:PIMCOのグローバルなクレジット市場に関する長期見通しを教えてください。
マーク・キーセル:主要な中央銀行が金融緩和政策を継続し、民間セクターのファンダメンタルズが改善し、テクニカル要因が債券市場を下支えし続けていることを踏まえ、PIMCOではクレジット市場に対して前向きな長期見通しを維持しています。

米連邦準備制度理事会(FRB)が2015年後半にフェデラル・ファンド金利引き上げを含む金融政策の段階的な正常化を開始する可能性が高い一方で、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行、オーストラリア準備銀行(RBA)、中国人民銀行を始め、多くの主要中央銀行は、金融緩和をさらに進めるか、リフレ・バイアスを持ちつつ極めて緩和的なスタンスを維持することによって、民間セクターやクレジット市場を下支えする見通しです。また、米国では、財政政策が改善する結果、レフト・テール(ネガティブ)リスクが後退し、移民法改革や住宅ローンを中心とする民間セクター向け与信の拡大などのライト・テール(ポジティブ)リスクが増加することが考えられます。このほか、医療費の削減、法人税改革、インフラ投資の拡大が実現するかもしれません。

エマージング市場でも、ライト・テール・リスクがレフト・テール・リスクよりも優勢になる可能性があり、インフラ支出が増加するほか、官民パートナーシップの拡大や公共政策の改善が実現する見通しです。また、インドや中国を中心とする主要なエマージング市場国の中央銀行は、金融緩和を進め、透明性の高い企業寄りの政策にシフトしつつあり、このような動きは勢いを増す可能性があります。

民間セクターのファンダメンタルズも改善傾向にあり、消費見通しは、米国だけでなく欧州やアジアでも上向いています。また、グローバルに企業のバランスシートは非常に堅固な状態です。このほか、高齢化の進行や継続的な貯蓄・投資の不均衡を背景に、長期的にみると、テクニカル要因は引き続き債券市場を下支えしています。

向こう3~5年間に、市場金利は米金利が主導する形で上昇する可能性があるため、投資家はデュレーション・リスクに注意するべきでしょう。ただし、金利が上昇した場合、債券の発行が減少する一方で、保険会社や年金基金などの長期投資家の需要が高まることから、総じていえば、金利上昇はイールドカーブの長期ゾーンを中心に高格付けクレジットにとってプラス要因になるとPIMCOではみています。

問:長期見通しは地域ごとにどのように異なるのでしょうか。
キーセル:現在、米国の戦略では、カジノ、ホテル、航空、テーマパーク、自動車セクターのような景気循環型の消費者セクターを選好しています。また、住宅およびリフォーム、不動産所有権に対する保険、建材などの住宅関連セクターにも前向きです。実際、住宅はエネルギーやヘルスケアと同様に長期的に安定性の高いセクターです。

欧州では景気回復の兆しが見え始め、ECBの政策は株式や景気循環型セクターを強く後押ししています。また、PIMCOでは、銀行の資本性証券やユーロ安の恩恵を享受する輸出企業を選好しています。

中国では、金融緩和政策の恩恵を受けるセクターを選好しています。また、アジアの消費者セクターや、拡大する携帯電話関連のテクノロジー、データ、接続機器市場に参入するにあたり独自の強みを持つ企業には、長期的な魅力があるとみています。

日本では、円安が景気循環型セクターや輸出企業を下支えする一方で、銀行、金融セクターは日銀の大規模な量的緩和プログラムの恩恵を享受する見通しです。

問:PIMCOでは、規制強化の影響で銀行と証券会社のマーケット・メーカーとしての機能が低下したことを一因として、ボラティリティが再び高まる可能性があると主張してきました。クレジット市場にはどのような影響が見られるのでしょうか。
キーセル:PIMCOでは、FRBを先頭に中央銀行が長期的には政策を段階的に正常化し始めるという見通しを踏まえ、ポートフォリオにおいて十分なキャッシュを概ね確保してきました。この方針は不変であり、引き続き長期的なファンダメンタルズに注目していますが、ボラティリティの上昇によって投資機会が生じる可能性もあるとみています。

たとえば、欧州、米国、アジアの各地域では、規制当局が銀行システムの安全性を高めようとする結果、多くの銀行は与信を制限し、一部の銀行は融資に消極的になるなど、意図せざる結果を招いています。米国では、初めて住宅購入を検討する個人が住宅ローンを借りられず、銀行が買い戻しリスク(オリジネーターが住宅ローンの買い戻しを余儀なくされること)を懸念するといった形で、住宅市場に悪影響が及んでいます。しかしながら、PIMCOにとっては、リスクやレバレッジの削減を進める銀行の資本性証券といった投資機会も生じています。銀行の健全性が高まることは、債券保有者にとってはプラス材料です。

問:最も魅力が高い長期的な投資機会はどこにあるのでしょうか。
キーセル:PIMCOでは、米国のエネルギー革命はこの先10年間で最も重要な投資機会の1つであると考えています。世界の原油・ガス生産量に占める米国のシェアは、地理的な利点、水平掘削技術、水圧破砕の完了技術の発展を背景に、この先10年間に拡大する見通しです。米国では、発展した厚みのある油田サービス・セクター、優れたインフラおよび輸送能力、大規模かつ流動性の高い資本市場などとともに、法の支配や財産権の透明性が、エネルギー・セクターを始めとする多くの分野において有利に作用していることは確実です。

具体的には、シェール・エネルギーの伸びが著しい主要な地域では、パイプラインやマスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)がエネルギーの流通にとって不可欠であり、市場規模の拡大に投資する魅力的な機会が生まれています。また、米国経済では液化天然ガス(LNG)も大きな成長が見込まれる分野であり、探査・生産企業にも魅力的な投資機会が生じるとPIMCOでは予想しています。

PIMCOでは、最終的に、エネルギー価格が徐々に回復し、世界の天然ガス・原油の供給量に占める米国のシェアが拡大する結果、米国のエネルギー・セクターは長期的に市場をアウトパフォームするとみています。これらのエネルギー企業の多くは、米国経済全体の2倍のスピードで成長しており、このペースは持続可能であると考えています。

また、住宅在庫数が依然として過去20年間の最低水準に近く、繰延需要が大きいことを踏まえると、米国の住宅市場にも長期的に魅力の高い投資機会が生じています。米国国勢調査局によれば、米国では、18~34歳人口の3分の1近くが親と同居している状況ですが、世帯形成数は昨年以降に100万件を超え、また、労働市場は大幅に改善しています。昨年は、住宅を初めて購入する世代の中心を占める25~34歳の雇用が、80万件近くと過去15年間で最も大きく増加しています。

PIMCOでは、与信の状況が徐々に改善するにつれて、住宅需要が上向くと予想しています。家計が借り入れを増やす時期がようやく到来し、住宅ローンは過去7年間で初めて増加に転じようとしています。このほか、過去に差押え処分を受けた住宅保有者のうち500万人近くが、この先5年間に再び借り入れができるようになる見通しです。

問:反対に、投資を回避している分野を教えてください。
キーセル:PIMCOでは、参入障壁、価格決定力、長期的な成長性に欠けている金属・鉱業セクターを敬遠しています。

また、経営陣が資本構成上で債券保有者を最優先していない企業も敬遠しています。たとえば、アクティビストの株主は、多額の余裕資金を有するテクノロジー企業に対して、現金による利益還元を求める声を強めています。また、企業が社債発行により調達した資金を自社株買いや特別配当に充当する事例も見られます。

このほか、競争環境の厳しい企業、価格決定力の弱い企業、事業構成が悪化した場合に保有資産基盤が脆弱な企業を敬遠しています。なかでも、小売セクターは、回収率が低く、長期的に大きな課題を抱える代表的なセクターです。

問:このような長期見通しを踏まえ、クレジット運用チームの運用方針はこの先数年間に変化するのでしょうか。
キーセル:PIMCOのクレジット運用チームは、世界各拠点の60人以上のクレジット・アナリストと40人以上のポートフォリオ・マネージャーから構成され、従来通り長期的なテーマを重視しています。また、高い参入障壁、堅固な成長性、価格決定力、優れた保有資産、リスク対応力を有する企業や、法の支配、財産権、透明性の恩恵を受ける投資機会を模索しています。このような方針は、従来から運用の大きな成功要因であり、今後も引き続き維持していきます。

著者

Mark R. Kiesel

グローバル・クレジット担当最高投資責任者(CIO)

プロフィールを見る

Latest Insights

関連コンテンツ

ご留意事項

過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。本資料には、本資料作成時点での著者の見解が含まれていますが、これは必ずしもPIMCOグループの見解ではありません。著者の見解は、予告なしに変更される場合があります。本資料は情報提供を目的として配布されるものであり、投資助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品の推奨を目的としたものではありません。本資料に記載されている情報は、信頼に足ると判断した情報源から得たものですが、その信頼性について保証するものではありません。

債券市場への投資は市場、金利、発行者、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。コモディティは市場、政治、規制、自然などの条件により高まるリスクを伴い、全ての投資家に適しているとは限りません。マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLPs)への投資では、パートナーシップと呼ばれる事業体に対する統制権やその運営に影響する事項に関する議決権の行使に制限がある等、株式と異なるリスクがあります。MLPは米国で結成されたパートナーシップで特定の税リスクによって変動します。一般出資者、劣後出資者、ジェネラル・パートナー、マネージング・メンバーの間で利益相反がおきる可能性があります。MLPは、株式市場全般に影響を与えるマクロ経済等の要因、金利予想、MLPやエネルギー・セクターに対する投資家心理、特定の発行体の財務状況の変化、特定の発行体の経営不振等の影響を受けます。MLPの現金配当は保証されているものではなく、各事業体が十分なキャッシュフローを生み出す能力を持つかどうかによります。本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。

運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、デリバティブ取引等の価値、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況や信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動による影響も受けます。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、損失をこうむることがあります。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。弊社が行う金融商品取引業に関してお客様にご負担頂く手数料等には、弊社に対する報酬及び有価証券等の売買手数料や保管費用等の諸費用がありますが、それらの報酬及び諸費用の種類ごと及び合計の金額・上限額・計算方法は、投資戦略や運用の状況、期間、残高等により異なるため表示することができません。

PIMCOは、アリアンツ・アセット・マネジメント・オブ・アメリカ・エル・ピーの米国およびその他の国における商標または登録商標です。THE NEW NEUTRALおよびYOUR GLOBAL INVESTMENT AUTHORITYは、パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー・エルエルシーの米国およびその他の国における商標または登録商標です。

本資料の一部、もしくは全部を書面による許可なくして転載、引用することを禁じます。本資料の著作権はPIMCOに帰属します。 2015年

(注)PIMCOはパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー・エルエルシーを意味し、その関係会社を含むグループ総称として用いられることがあります。