2018年を通じて経済の拡大が続き、ボラティリティが上昇したことを受けて、米国の景気拡大局面は当面持続する可能性が高いという見方よりも、景気サイクルは後期に入ったという見方が優勢になりました。しかしながら、米国株式(S&P500指数)が昨年9月のピークから12月のボトムにかけて19%下落するなど、年末にかけて相場が急落したことを受けて、拡大局面が終わりを迎えるのか、あるいはサイクル後期において大幅な調整が生じただけであって短期的な投資機会が浮上しているのかを、投資家は再考を余儀なくされました。

PIMCOでは、現在は景気サイクルの「後期」であって「終点」ではないとみていますが、これまでとは大きく異なるアプローチが求められています。過去10年間においては、当初から割安感が存在するなかで、中央銀行の政策支援、グローバリゼーションの進展、効率性の改善によって資産価格が押し上げられていたため、各資産クラスにおいてレバレッジを引き上げ、ロング・ポジションを最大化することが、一般的な投資方針でした。このうち多くの要因が反転したため、景気サイクル後期における特徴として、投資に際してはより選別的で慎重な姿勢が求められています。

「景気サイクル後期においては、主要諸国における経済成長の減速や金融政策支援の縮小などを踏まえると、ボラティリティが高まったのは予想通りの動きと言えるでしょう。」

PIMCOでは、昨年公表した「アセットアロケーション展望:安打の積み重ね」において、このような景気サイクル後期における変化について指摘し、ボラティリティの上昇や株式と債券の相関の不安定化といった付随するリスクをいくつか強調しました。これらのリスクが顕在化した結果、昨年は幅広い資産クラスにおいて売り圧力がかかり、株価(S&P500指数)は4.4%、コモディティ(ブルームバーグ・コモディティ指数)は11.3%、それぞれ下落し、債券(ブルームバーグ・バークレイズ米国総合指数)のリターンもフラットにとどまりました。しかし景気サイクル後期においては、主要諸国における経済成長の減速や金融政策支援の縮小などを踏まえると、ボラティリティが高まったのは予想通りの動きと言えるでしょう。実際、戦後の株式市場において、景気後退期よりもそれ以外の時期の方が、比較的軽微で短い期間で終了したとはいえ、下落局面は頻繁に発生していました(図表1)。

Asset Allocation Outlook Chart Jan 2019

さらに、景気後退入りのリスクは高まっているものの、PIMCOの分析によると、向こう1年間については世界経済はプラス成長を維持する公算が大きく、景気後退入りの確率が上昇するのはそれ以降になる見通しです。

各資産クラスの見通し

PIMCOでは全般に、現在は景気サイクルの「後期」であって「終点」ではないとみているため、投資を継続しつつ、幅広い資産クラスの中から信用力と流動性が相対的に高い商品を、思慮深く選別するべきだと考えています。現金相当(米国では現在の実質リターンはプラス)の残高を十分備えることによって、昨年第4四半期にも見受けられたように、ボラティリティの上昇に伴いバリュエーションがファンダメンタルズを反映しない水準まで下落した際に生じる、個別固有の投資機会を捉えることが可能になります。

以下では、主要な資産クラスに関するPIMCOの見通しを要約します。後ほど、さらに詳細な見解をご紹介します。

  • 株式:2019年もボラティリティが投資家の投資意欲を阻害するとみるため、引き続き手元流動性に余裕を持ちつつ株式を小幅なアンダーウエイトとして、信用力の高いディフェンシブな銘柄を優先する方針です。小型株や米国以外の先進国株式よりも、大型株や米国株式を選好しています。
  • 金利:ポートフォリオにおいて債券は魅力的なリスク分散効果を発揮すると引き続き考えるものの、景気サイクルの後期を控えてリスクの低い債券を選好しています。英国、日本、一部の欧州諸国の金利リスクよりも、米国の金利リスクを選好しています。
  • クレジット:景気サイクルの最終段階に差し掛かったとの見方に基づき、向こう1年間は企業クレジットがアンダーパフォームすると予想しています。企業クレジットの中では、特にディフェンシブな非景気循環セクターにおいて、信用力の高い企業が発行する短期債を選好しています。これは、PIMCOの信用力と流動性に関するテーマとも整合がとれています。また、信用力の低いレバレッジド・ローンの組成が相次いでいることから、レバレッジローンを特に警戒しています。一方、企業クレジットの代替として、比較的安定的で信用力が高い非政府機関系モーゲージ債(MBS)を引き続き選好しています。このほか、リスク・リターン特性が魅力的だと思われる選別的な投資機会を追求するために、手元流動性を厚めに確保しています。
  • 実物資産:歴史的に景気サイクルの後期においては、実物資産のパフォーマンスは良好に推移する傾向があります。しかし最近では、このような傾向は不安定になりつつあります。もっとも、実物資産は(場合によって想定外の)インフレ上昇に対する効果的なヘッジ手段であり、ポートフォリオにおいて分散効果を発揮すると引き続き考えています。このため、米国の物価連動国債(TIPS)や中流のマスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)をはじめとする、割安感が高いと考える投資機会に小規模ながらアロケーションを確保しています。
  • 為替市場:現在、通貨に関しては明確な見解を持っていませんが、主要国以外の為替市場において有力なアルファ獲得の機会が浮上すると予想しています。現在、他の主要通貨対比で米ドルのポジションをおおむねニュートラルとしています。また、エマージング市場において個別固有の投資機会が浮上した場合には、これを追求する方針です。一方、人民元の下落圧力は解消されないと考えるため、対米ドルでのアジア通貨のショート・ポジションを維持しています。

短期見通しの基本シナリオ

PIMCOの基本シナリオでは、今年もグローバル経済の拡大局面は継続するものの、主要国経済は「同時に減速」する見通しです(詳細は直近のレポート「短期経済予測:世界経済の同時減速」を参照)。米国経済は昨年は突出して好調だったものの、金融環境の逼迫化と財政刺激策の縮小を背景に今後は減速するとみられ、実質GDP成長率は昨年の前年比3%近い水準から2.0~2.5%のレンジに低下する見通しです。

「PIMCOの基本シナリオでは、今年もインフレ圧力は抑制された状態が続く見通しです。しかしポートフォリオにおいては、景気サイクル後期にインフレが想定外に上昇するリスクを重視して、ヘッジ対象としています。」

引き続き、米国にインフレが復活するタイミング(あるいは、そもそも復活するのかどうか)が注目されています。最近の原油価格の下落はインフレの総合指数を下押しする見通しですが、賃金の伸びが加速しているにもかかわらず、コア指数は安定的に推移しています。PIMCOの基本シナリオでは、今年もインフレ圧力は抑制された状態が続く見通しです。しかしポートフォリオにおいては、景気サイクル後期にインフレが想定外に上昇するリスクを重視して、ヘッジ対象としています。

この他にも、不透明感の源泉は数多く存在します。米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利上げ停止を決定した場合、市場はどのように反応するでしょうか。米中間の対立は、単なる貿易論争よりも根が深いものでしょうか。この2点はいずれも、この先1年間にボラティリティをさらに上昇させる可能性があります。

PIMCOでは、景気拡大局面は今年も継続するとみているものの、引き続き険しい道のりが予想されるため、景気サイクル・モデルの精緻化に時間を費やしています(以下参照)。これによると、向こう2年間に景気後退入りするリスクは上昇しています。

景気サイクルのどのステージにあるのかを見極める

資産の保有者としては、米国経済が景気サイクルの後期にあるのか、あるいは終わりを迎えようとしているのかが悩ましい問題です。両者を区別することは極めて重要です。過去を振り返ると、金融資産は景気サイクルの各ステージにおいて大きく異なる動きを示してきました。一般的に、景気拡大局面の後期には株式が債券をアウトパフォームするのに対して、景気後退局面の初期には債券が株式をアウトパフォームします。

Asset Allocation Outlook Chart Jan 2019

また、タイミングを見極めることも重要です。景気後退の予想時期が早すぎると、遅すぎる場合と同じように経済的な不利益が生じる可能性があります。図表3では、景気後退局面に至る時期における株式投資のパフォーマンスを整理しました。

Asset Allocation Outlook Chart Jan 2019

景気サイクル後期のリスクや景気後退入りのリスクは高まっていますが、景気後退の状況がいつも同じわけではなく、次の景気後退はこれまでの経験とは異なることも考えられます。かつては、賃金の上昇やインフレ圧力の存在に象徴されるように、景気の過熱が景気後退につながることもありました(1981年や1990年の事例)。また、高水準の信用の積み上がりや低水準の貯蓄に象徴されるように、金融の不均衡が景気後退の要因になることもありました(2001年や2008年の事例)。インフレや信用ギャップの状況を見る限り、現在の局面はいずれの事例とも異なるようです。インフレ率は依然として低く、民間の信用残高も平時を大幅に上回るほどの規模ではありません(図4参照)。

Asset Allocation Outlook Chart Jan 2019

このためPIMCOでは、景気サイクルと景気後退に関する予想モデルを注意深くモニタリングし、定期的に修正を加えています(モデルに関するコラムを参照)。PIMCOの標準的な定量モデルによると、米国経済が今後1年間に景気後退に陥る確率は30%程度に上昇しています。一方、オーダーメイドのモデルによると、現在はほぼ景気サイクルの中期にいるものの、向こう1~2年の間に景気サイクルの後期や場合によっては景気後退期にシフトする確率は30%を大きく上回ります。

このため、足踏み状態にある経済および金融の指標は将来の景気後退入りを示す先行指標ではあるものの、最終的に何がきっかけになるかを予想することは極めて困難です。可能性としては、財政の不均衡、貿易問題、地政学問題、あるいは市場が現時点で注目していないリスクが考えられます。将来のシナリオは多岐にわたるため、投資家は1つのシナリオだけにとらわれるべきではありません。むしろ、さまざまな環境においてアウトパフォームする可能性を秘め、景気下降局面において頑強性を発揮するポートフォリオを構築すべきでしょう。

マルチ・アセット・ポートフォリオにおける各資産クラスの見通し

グローバル株式:アンダーウエイト

2018年は企業利益の伸びが好調だった一方で、バリュエーションの大幅な悪化が目立ちました(図表5参照)。2019年はさらに厳しい環境となり、成長率は伸び悩む見通しです。PIMCOのマルチ・ファクター・マクロ・モデルによると、米国企業の利益の伸びは1桁前半の水準にとどまるとみられ、リスクはダウンサイドに偏っています(図表6参照)。金融情勢の逼迫化の影響が遅れて顕在化する可能性、財政刺激効果の縮小、保護貿易への傾斜は、いずれも懸念材料です。企業利益の伸び悩みは、米国に波及することによって世界的な傾向となりました。

Asset Allocation Outlook Chart Jan 2019

Asset Allocation Outlook Chart Jan 2019

企業利益の伸び悩みとボラティリティの上昇を受けて、株式のリスク調整後リターンは低下する見通しです。PIMCOでは株式を小幅なアンダーウエイトとし、辛抱強いスタンスが肝要だと考えています。

昨年、株価収益率は低下しましたが、長期平均に戻ったにすぎません(図表7参照)。政策引き締め時期には、市場参加者は将来の成長見通しを再考し、ボラティリティの低い資産の潜在的なリターンに魅力を見出すため、リスク・プレミアムが上昇することは珍しくありません。バリュエーションは昨年初めの高い水準から悪化したものの、企業利益の伸びのピークアウト懸念、資本コストの増加、現金や短期金融資産との競合、保護主義的な政策、景気サイクル終了に関する懸念の持続などを踏まえると、市場の動きは正当化できると考えています。

Asset Allocation Outlook Chart Jan 2019

引き続き質の高さを重視。年初来、PIMCOでは株式を小幅なアンダーウエイトとし、流動性と質の高いディフェンシブな銘柄を重視しています。引き続き、流動性が低くボラティリティが高い小型株よりも大型株を選好しています。米国の株式市場には、質の高さ、流動性の高さ、景気循環性の低さなどのPIMCOが選好する特徴を数多く備える銘柄が多数見受けられます。米国以外では、ここ数年間に株価収益率が着実に改善している日本株式を引き続き選好しています。

株式市場では、景気拡大局面の後期において、成長減速リスクの台頭、利ざやの縮小圧力の高まり、ボラティリティの上昇に対する備えとして、質の高い企業にシフトする傾向が見られます。景気拡大局面から景気後退局面への転換に際して、収益性が高く安定的な企業の優位性が強まり、魅力が増す傾向が見られます。

グローバル債券:アンダーウエイト

景気サイクルの後期を迎えて、ポートフォリオを構築する際にリスクの低い債券の重要性がかつてなく高まっています、景気の減速傾向が一段と鮮明になった場合に、重要な分散効果が引き続き期待可能です。しかしながら、景気サイクルの後期においては、金融政策の引き締めと金融情勢の逼迫化を背景に、リスクの低い債券のリターンはマイナスになると一般に予想されています。このため、ポジション構築のタイミングが早すぎるにしても遅すぎるにしても、紙一重の判断になるでしょう。この点を踏まえて、全般に、国債に割高感のある国を引き続き小幅なアンダーウエイトとしています。

PIMCOでは、米国の金利リスクを選好しています。米国債は流動性が構造的に魅力的である数少ない国債であり、景気下降期には益出しの対象になり得ます。また、日本の金利リスクを引き続き最大のアンダーウエイトとしています。このほか、Brexitの大きなリスク・プレミアムが織り込まれたと考える英国債についても、アンダーウエイトとしています。

ポジションの構築に際しては、金利の絶対水準が歴史的に低いことと、米国政府が巨額の財政赤字を抱えていることを引き続き認識しています。FRBがバランスシートの縮小を進める環境において、財政赤字は供給の重しとなっています。PIMCOでは、米金利のイールドカーブがフラットである状況を踏まえ、足元の環境においてリスク・リターン特性の魅力が最も高いのは中期ゾーンであると考えています。景気の減速が深刻化した場合には、FRBによる緩和期待を背景にカーブのスティープ化が進みやすいため、中期ゾーンのリスク・リターン特性が最も魅力的になるでしょう。

欧州の金利リスクに関しては、おおむね戦術的な方針を採っています。欧州中央銀行(ECB)には政策対応の余地が限られているため、景気下降局面において債券保有によるヘッジ効果は期待薄と言えるでしょう。また、今後も難局が予想されるため、欧州周縁国のリスクには慎重であり、引き続きアンダーウエイトとしています。周縁国リスクの一部は、相応のキャリー収入が獲得できるドイツ国債の保有によってヘッジしています。

リスクの低い国債を選好するPIMCOの方針は、従来の景気サイクルほどではないにせよ、引き続き分散効果が享受できるという見方を裏付けとするものです。欧州やアジアの通貨を基準とするポートフォリオとの違いは、非常に重要です。実際、ヘッジコストは現景気サイクルにおいて最も高い水準に達したため、米国債を自国通貨建てにヘッジして保有しても、キャリー収入は確保できません。このため、インカムやキャリー収入を求める投資家は、信用リスクや為替リスクをある程度受け入れるなど、他の選択肢を追求する必要があります。とはいえ、ポートフォリオの構築に際しては、キャリー収入が得られないため金利のボラティリティに対する感応度が高まることを認識しつつ、米国の金利リスクを選好することを検討すべきでしょう。

グローバル・クレジット: アンダーウエイト

景気サイクルが一巡する過程で、企業クレジットは他の資産クラスをアンダーパフォームする傾向がありますが、現景気サイクルにおいては、その傾向は通常よりも鮮明であると考えています。低金利環境が長引くなかで、企業はレバレッジの引き上げと信用の拡大を進めてきました。社債の発行体企業は、エネルギー価格の変動、貿易・関税を巡る対立、減税効果の縮小、世界的な地政学関連のボラティリティなどの課題に直面しています。経済成長の減速に金利の上昇と与信基準の厳格化が重なった結果、回復期に発行されたBBB格の社債には格下げリスクが意識され、ハイイールド債にはディストレス化や債務不履行のリスクが高まっています。なかでも、与信基準が緩和され、この先数年間に借り換えのリスクに直面するレバレッジド・ローン市場について懸念してます。

企業クレジットの中では、とりわけ信用力の高い金融、ヘルスケア、公益などのディフェンシブな非景気循環セクターにおいて、高い流動性、安定的なキャリー収入、低水準のスプレッド変動リスクなどの強みを有する、信用力の高い企業が発行する短期債を選好しています。また、前述のように、Brexitに関連して銀行債の価格見直しが行われたことを受けて、資本基盤が非常に頑強な英国の金融セクターにも投資機会が見受けられます。また、価格の再評価が行われた一部のエネルギー銘柄にも割安感が存在します。

一方、企業クレジットの代替として、金融危機前に組成された非政府機関系モーゲージ債(MBS)は信用力が高く、安定性も比較的高いため、満期保有ベースではスプレッドと潜在的なリターンが魅力的であると考えています。非政府機関系MBSは、金融危機の間も返済能力を維持した債務者向けのローンを裏付けとするものであり、現在では当該債務者の借入比率は低く、さらに低下傾向にあります(図表8)。PIMCOでは引き続き、住宅価格と米国の消費者の先行きについて前向きにみています。税引後の個人所得は増加傾向にあり、ローンの返済能力は依然として高く、市場の年齢構成も均衡がとれた状態です。この10年間で与信基準は厳格化され、住宅の担保価値も保守的に評価されるようになったため、次回の景気後退局面では、住宅セクターが再び震源地になるとは考えにくく、2008年を除く過去のあらゆる景気後退の事例においてそうだったように、住宅が「安全資産」として認識される可能性もあるでしょう。同じように、政府機関系モーゲージ債に関しても、厳格な与信基準が維持されていることに加えて、安定的なインカムを生むため、景気下降局面の初期段階では企業クレジットをアウトパフォームする傾向があります。

Asset Allocation Outlook Chart Jan 2019

グローバル実物資産:オーバーウエイト

景気サイクルの後期においては、財とサービスの供給が需要に追いつかないため、実物資産のパフォーマンスは良好に推移する傾向があります。しかし近年では、技術の進化(シェールオイル革命、ジャストインタイム型のサプライチェーン管理方法など)とグローバリゼーションの影響によって、そのような傾向は弱まっています。このためPIMCOでは、今年の基本シナリオとして、インフレ率は昨年の成長率並みにとどまるとみています。とはいえ、多くの投資家がインフレ上昇というテールリスク(発生確率は低い(確率分布の「テール」部分)ものの潜在的な影響が大きいリスクを意味します)とポートフォリオの分散化における実物資産の重要性を過小評価しているため、割安感があると考える資産を限定的にポートフォリオに取り入れています。

石油輸出国機構(OPEC)による最近の減産発表は、需給逼迫によってこれ以上シェールに市場シェアを奪われない範囲で(図表9はシェール生産が2018年に過去最高を更新したことを示しています)、原油価格を1バレル=60ドル台前半で下支えすることで、2016年のような極端に低い水準への下落を回避したいという思惑を反映するものです。OPECの行動は、原油生産量が過去数週間および過去数年間と比べて顕著に減少する結果につながるとみられます。PIMCOでは、原油価格は現在の水準で安定した後に上昇すると予想しています。

Asset Allocation Outlook Chart Jan 2019

金については引き続き長期資産とみています。ほかに、現在のバリュエーションでの米物価連動国債(TIPS)も長期資産として選好しています。現在、TIPSに織り込まれた10年のブレーク・イーブン・インフレ率は、年1.8%です。この水準は下限であり、向こう10年間にインフレがFRBの政策目標(個人消費支出(PCE)インフレ率で2%、消費者物価指数(CPI)で2.35%程度)に回帰することがあったとしても、TIPSはアウトパフォームする可能性が高いでしょう。

また、本レポートでは、バリュエーションが魅力的なMLPの見通しについて言及しました。

このほか、現在、金属と穀物の価格は比較的適正であるとみています。穀物の供給は総じて潤沢な状態が続いていますが、トウモロコシの在庫が減少傾向にあるほか、米国における春の育成期が近づくまでは、重要な市場情報は新たに供給されない見通しです。

通貨:中立

従来から、経済成長の格差が為替レート変動の主な要因の1つでした(図表10参照)。経済成長のサイクルが再び同期化し、主要国の経済が同時に減速するようになる過程で、米ドルには緩やかな下落圧力がかかる可能性が高いでしょう。しかしながら、現在は景気サイクル後期のボラティリティが高い環境にあるというPIMCOの見方に基づくと、米国経済が減速した場合、米国以外の国の経済がどの程度の頑強性を示すかは不透明です。このような観点から米ドルを他の主要国通貨対比で中立とし、ミスプライシングが拡大する機会をうかがっています。また、エマージング市場全体には個別固有のリスクが存在していますが、バリュエーションと利回りの水準に鑑み、引き続きエマージング通貨バスケットのポジションを小規模ながら保有しています。

貿易摩擦よりもレバレッジ削減を主たる要因として中国経済が減速するなかで、アジアの経済成長は弱含んでいます。貿易戦争が停戦状態となった場合でも、経済成長の減速と信用逼迫の圧力を背景に、人民元の下落圧力は継続する公算が大きいでしょう。このため、ヘッジとして、対米ドルでのアジア通貨のショート・ポジションを据え置いています。

Asset Allocation Outlook Chart Jan 2019

各資産クラスの見通しに対するリスク

PIMCOでは基本シナリオとして、世界の経済成長率はトレンドを小幅に下回る水準へと低下する一方で、米国、欧州、日本においてはコアインフレ率が中央銀行の政策目標並みかそれ以下の水準にとどまると予想しています。向こう1年間に米国経済が景気後退に陥るとはみていませんが、景気のさらなる減速リスクが高まっていることには留意しています。また、近い将来にFRBが引き締めに転じることにより、市場に対する支援材料はまた1つ失われることになります。このため、各種のリスクに対して警戒するとともに、基本シナリオを積極的に見直し続けることが重要であると考えています。

PIMCOの景気サイクル・モデルでは、将来のシナリオや経済の方向性が幅広く示されるため、基本シナリオに対する上振れリスクと下振れリスクの両方を念頭に置いています。世界経済の短期的な上振れリスクとしては、年内はサイクル中期の環境が持続する結果、世界経済の勢いが強まる可能性があります。上振れシナリオにつながる要因としては、量的緩和政策の縮小に伴う世界的な生産性の改善、米国の中間選挙と年前半の世界的な政治イベント・ラッシュの終了に伴う政治的、経済的不確実性の後退、2018年に欧州諸国およびエマージング諸国の経済成長を抑制してきたマクロ経済要因の剥落、などが考えられます。なかでも、米中間の貿易戦争が休戦状態となる一方で、中国政府が有効な財政、金融刺激策を講じた場合には、中国の経済成長が再び上向く可能性があります。このシナリオにおいては、世界経済の成長率は今の景気サイクルのピークを更新し、インフレ率は上昇するとみられ、アセットアロケーションに重要な影響を与えるでしょう。その場合、PIMCOのポートフォリオでは、景気循環性の強いセクターや欧州やエマージング市場の諸国を中心にグローバル株式の保有比率を引き上げ、「リスクオン」のスタンスを強める一方で、各国の金利エクスポージャーを縮小する見通しです。

他方、米国経済が向こう1年間に景気後退に陥るという下振れリスクも無視できず、PIMCOの定量モデルではその確率を30%程度と試算しています。下振れリスクとしては、景気後退入りという明確な事象に加えて、自動車に対して関税が賦課されるリスクや、NAFTA2.0が米国議会において承認されないリスクなど、貿易戦争が新たな展開を迎えるリスクが考えられます。景気後退シナリオや景気の大幅な下降シナリオにおいては、ポートフォリオのアロケーションを大幅に調整し、株式とスプレッド商品に対するアンダーウエイトを強化する一方で、金利リスクをオーバーウエイトとする方針です。また、景気後退局面の初期において良好なパフォーマンスを示す傾向があるコモディティのポジションについても調整する方針ですが、ポジションの固定化が強まったため、コモディティのリスク調整後リターンは各資産クラスの中でも最低水準へと落ち込んでいます。

PIMCOでは、リスク要因が経済に与える影響や市場価格の歪みに起因する投資機会を見極めるための構造的な枠組みを据えるため、年間を通して定量的かつ動的な景気サイクル・モデルのモニタリングを続ける方針です。経済環境が景気サイクル後期の様相を呈するようになるなかで、さらに変動が大きくなると予想される2019年の市場環境において投資機会を捉えるために、アセットアロケーション・ポートフォリオでは柔軟性を保つとともに流動性を重視することが肝要であると考えています。

各資産クラスの見通し

以下に、グローバル経済および市場に対するPIMCOの見通しを踏まえた、アセットアロケーションの方針を整理します。

Asset Allocation Outlook - Overall Dial 
アンダーウエイト オーバーウエイト

ウエイト

全体のリスク

PIMCOでは、経済成長の全般的 な減速、金融政策支援の縮小、 ボラティリティの全般的な上昇 を踏まえ、全体のリスク量を ベンチマーク並みにとどめる 一方で、短期的な投資機会を捉 えるために手元流動性を確保し ています。

Asset Allocation Outlook - Equities Dial 
アンダーウエイト オーバーウエイト

ウエイト

米国

欧州

日本

エマージング市場

株式

2019年も引き続き、ボラティリティの上昇と企業利益 の伸び悩みが投資家の投資意欲に影響すると予想し ています。このため、株式を小幅なアンダーウエイトと して、流動性と信用力の高いディフェンシブな銘柄を 優先する方針です。小型株よりも大型株、欧州株式よ りも米国株式を選好しています。また、良好な業績、 レバレッジの低さ、日本銀行の政策支援に対する期 待を踏まえ、日本株式を小幅なオーバーウエイトとし ています。

Asset Allocation Outlook - Rates Dial 
アンダーウエイト オーバーウエイト

ウエイト

米国

欧州

日本

エマージング市場

金利

景気サイクルの終盤を控えて、信用力の高い債券を選 好しています。引き続き、ポートフォリオにおいて債券 は魅力的なリスク分散効果を発揮すると考えてい ます。その一方で、選別的にエクスポージャーを取得し ています。先進国市場では米国の金利が最も魅力的で あるとみています。米国以外では、英国債と日本国債 を割高とみているほか、欧州周縁国の債券価格は欧 州中央銀行(ECB)の継続的な政策支援なしに現状の水 準を維持できるかどうかは不透明だと考えています。

Asset Allocation Outlook - Credit Dial 
アンダーウエイト オーバーウエイト

ウエイト

証券化商品

投資適格

ハイイールド

エマージング市場

クレジット

景気サイクルが後期に差し掛かったとの見方に基づ き、向こう1年間は企業クレジットがアンダーパフォーム すると予想しています。企業クレジットの中では、特に ディフェンシブな非景気循環セクターにおいて、信用力 の高い企業が発行する短期債を選好しています。これ は、PIMCOの信用力と流動性に関するテーマとも整合 がとれています。また、信用力の低いレバレッジド・ ローンの組成が相次いでいることから、ハイイールド・ クレジットをアンダーウエイトとしています。一方、企業 クレジットの代替として、比較的安定的で信用力が高 い非政府機関系MBSを引き続き選好しています。この ほか、リスク・リターン特性が魅力的だと思われる選別 的な投資機会を追求するために、手元流動性を厚めに 確保しています。

Asset Allocation Outlook - Real Asset Dial 
アンダーウエイト オーバーウエイト

ウエイト

物価連動債

コモディティ

REIT

実物資産

歴史的に景気サイクルの後期においては、実物資産の パフォーマンスは良好に推移する傾向があります。 しかし最近では、このような傾向は不安定になりつつ あります。もっとも、実物資産はインフレ上昇に対する 効果的なテールリスクのヘッジ手段であり、ポートフォ リオにおいて分散効果を発揮すると引き続き考えてい ます。このため、TIPSや米国における生産拡大の恩恵 を享受するMLPをはじめとする、割安感が大きいと考 える投資機会に小規模ながらアロケーションを確保し ています。

Asset Allocation Outlook - Currency Dial 
アンダーウエイト オーバーウエイト

ウエイト

米ドル

ユーロ

日本円

エマージング通貨(アジア以外)

エマージング通貨(アジア)

通貨

現在、通貨に関しては明確な見解を持っていませんが、 主要国以外の為替市場において有力なアルファ獲得 の機会が浮上すると予想しています。現在、他の主要 通貨対比で米ドルのポジションをおおむねニュートラ ルとしています。また、エマージング市場において個 別固有の投資機会が浮上した場合には、これを追求 する方針です。一方、人民元の下落圧力は解消されな いと考えるため、対米ドルでのアジア通貨のショート・ ポジションを据え置いています。

投資家向け要約

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