P IMCOでは5月8~10日に、米国カルフォルニア州ニューポートビーチで36回目の年次長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)を開催します。例年通り、向こう3~5年間に世界の経済や金融政策、財政政策、金融市場に影響を与える主な長期的テーマに焦点を当てて議論します。PIMCOの独自の見解を導きだし、それを磨き上げるために、一流のゲスト・スピーカーを招待するとともに、ビジネススクールを卒業したばかりの新入社員からも斬新な意見を取り入れ、世界中の拠点から集結した投資プロフェッショナルとグローバル・アドバイザリー・ボードによる活発な議論が展開される予定です。

これまでのセキュラー・フォーラム同様、今年も世界経済および経済政策の方向性に関する基本シナリオを形成するとともに、基本シナリオとは大きく異なるレフト・テール(ネガティブ)シナリオとライト・テール(ポジティブ)シナリオを徹底的に分析し、フォーラム終了後には、PIMCOのインベストメント・コミッティーがフォーラムの結論を吟味し、それを踏まえ投資への影響等についてご報告いたします。今回のフォーラムでも、現在の長期見通しの再確認、あるいはその修正、そして前回のフォーラム以降の事象を踏まえた長期見通し刷新、の3つの選択肢が存在します。PIMCOでは、セキュラーフォーラムでその長期的トレンドに注目することで、世界の金融市場の波を上手く進むための羅針盤や、構想、概念を構築することができ、日々変動する市場も、見通しが正しければPIMCOの長期的なトレンドに収斂していくことを、長年にわたって体験してきました。

昨年5月のフォーラムでは、世界経済の見通しは一見して安定的であるものの、世界中で経済成長、インフレ、金融市場の安定の持続性については懸念が強まっている、という結論に至りました(図表1および2016年6月付Secular Outlook「長期経済予測:安定的だがその持続性には懸念」をご参照ください)。

世界経済は辛うじて失速速度を上回る程度での成長は続けるでしょうが、昨年のセキュラー・フォーラムの時点では、さらなる景気拡大という基本シナリオを描く根拠となるような、明らかに見込みある生産性向上の源泉や有機的な需要は見当たりませんでした。また中央銀行は、ニュー・ノーマルの状況下で、金融危機前より大幅に低いニュー・ニュートラルな水準に政策金利を設定していますが、金融政策手段が枯渇する傾向や、欧州と日本ではマイナス金利政策および際限ない量的緩和プログラムの効果が逓減する、もしくは逆効果となる傾向が一段と鮮明になっていました。市場が中立的なフェデラルファンド(FF)金利として4%という水準を意識していた2014年5月のフォーラムで、PIMCOはニュー・ニュートラルというテーマを掲げましたが、昨年のこの時期までには十二分に織り込まれ、米連邦準備制度理事会(FRB)自身も予想の前提としていることを確認しました(図表2)。

また昨年のセキュラー・フォーラムでは、過剰債務、資本収支の自由化、ダーティー・フロート(管理された変動為替相場制)への移行など、中国が直面する数多くの課題について議論するとともに、米国、英国、欧州においてポピュリスト的で偏狭な政治勢力が台頭するなかで、世界経済にとっての長期的なリスクを指摘しました。確率分布にはレフト・テールとともにライト・テールが存在し、世界経済が予想以上に改善することも考えられました。しかし、PIMCOの長期的な見通しは、世界経済の安定に対するリスクが高まるなか、投資家は、高水準で広がり続ける不確実性と、経済成長見通しや企業および消費者の景況感が低調な状況において、金融政策手段が枯渇するシナリオに見合ったリターンを早めに確保すべきという結論となりました。

そこから早くも1年が過ぎ、2016年5月以降、英国のEU離脱(Brexit)や米国大統領選、そしてこの2つのブラック・スワン的な事象に対する市場の前向きな反応など、数多くの事象が起きました。このため今回のフォーラムでは、米国あるいは世界の経済および市場が、一部で指摘されるようなニュー・パラダイムに移行するのか、それとも主導国なき「Gゼロ」の世界において、世界的な貿易戦争に至るリスクが現実味を帯びているのか、ゲスト・スピーカーとともに掘り下げて議論する必要が生じています。2016年12月付Cyclical Outlook「未知なる世界へ――2017年グローバル経済の3つのシナリオを想定」においてPIMCOのヨアヒム・フェルズとアンドリュー・ボールズが指摘したように、昨年5月に議論した「安定的だがその持続性には懸念」が残るマクロ環境は、おそらくPIMCOの想定より早期に到来しました。金融政策手段の枯渇(日本銀行による量的緩和の停止、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和の縮小)、ポピュリズムの台頭(トランプ政権誕生、Brexit)、一部の国(イタリア、フランス)では「リデノミネーション(通貨単位の変更)・リスク」を伴う債務の増大という、長期的な時間軸において想定していた3つのリスクは、いずれも顕在化しています。

しかしながら、これらは全体像の一部に過ぎず、最も意外性の少ないものとさえ言えるかもしれません。昨夏以降、世界のマクロ経済指標(特に景況感指標)が予想以上に上振れしたことを受けて(図表3)、株価とエマージング通貨の大幅上昇、クレジット・スプレッドの縮小、債券利回りの上昇という形で市場は反応しました。米国での大きな改善は「ソフト」な景況感の指標に限定されていますが、今回のフォーラムを前に、米国経済はニュー・パラダイムに移行したという見方に市場が傾斜していることはほぼ確実です。

人によって想定する内容が異なるニュー・パラダイムという言葉は魅力的な概念です。総じていえば、米国では金融政策から財政政策への移行によって法人税改革、減税、適切なインフラ投資がプラスに作用した結果、企業投資、雇用、個人所得が押し上げられ、金融規制の緩和によって中小企業向けの貸し出しが拡大。新政権が優先的に規制緩和を進める見通しのエネルギー・セクターにも追い風が吹き、そして、堅調な民間投資とインフラ投資の拡大を背景に、生産性の見通しは改善し、経済成長の加速が「アニマル・スピリット」の浮揚を裏付ける、というものです。

しかしながら、PIMCOが昨年12月と今年3月の短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)において議論したように、トランプ政権による政策の方向転換にはレフトとライトの両テール・リスクを伴います。特に貿易政策については、米国が世界の貿易システムの中で自国の利益を前面に出した場合には、海外から報復を受けるリスクが生じます。従って、今回のフォーラムで議論すべき重要な命題のひとつは、アニマル・スピリットに裏付けられた需要の拡大と財政政策の方向転換という見通しが、保護主義の台頭によるマイナスを上回るかという点です。

フォーラムの重要な目的は、米国の経済と市場の見通しを形成することだけではありません。PIMCOではグローバルに運用を展開しているほか、米国のベンチマーク・インデックスを対象に運用するポートフォリオでさえもグローバルな影響は強く及びます。現在、国際通貨基金(IMF)では、予想されるエマージング諸国の成長に大きく依存しながら、世界の実質GDP成長率は2016年の3.1%から2020年までに3.7%に上昇すると予測しています(図表4)。

このシナリオの両側にリスクが伴うことは明らかです。向こう3~5年間に世界の経済と金融市場がどのように推移するのかは、以下の問いに対する最終的な答えによって決まるでしょう。

非伝統的な金融政策の結末はどうなるのか。これを終了させた場合に何が生じるのか。

政治の分極化、ポピュリズム、反グローバリゼーションの台頭は、経済と金融にどのような影響を及ぼすのか。

中国は、今年第4四半期に開催される重要な共産党第19回全国代表大会後、経済、貿易、政権指導部、地政学状況の変化をどのように乗り切るのか。

本レポートはフォーラム前のプレビューですので、上記に対するPIMCOの回答を予想することはしません。実際、フォーラムを目前にして、私自身もどのように答えるべきか決めかねています。しかしながら、お招きしたゲスト・スピーカーとグローバル・アドバイザリー・ボードの知見によって、議論が深まることは確実でしょう。

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著者

Richard Clarida

元グローバル戦略アドバイザー、2006~2018年

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