PIMCOグローバル・アドバイザリー・ボード(GAB)は5月にニューポートビーチに集まり、世界経済のトレンドを分析するとともに、初めて年次の長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)に参加し、PIMCOの投資プロフェッショナルと経済見通しについて議論しました。このレポートでは、はじめにPIMCOのグローバル戦略アドバイザーのリチャード・クラリダが、GABの役割と、GABがセキュラー・フォーラムのプロセスにどのように関与するのかについて説明した上で、GAB会合の要旨をQ&A方式で報告します。GABの会議においては、公共政策問題を統括するPIMCOのリビー・キャントリルが司会を務めました。今回GABからは、ベン・バーナンキ博士(前米連邦準備制度理事会議長)、ゴードン・ブラウン博士(前英国首相および元英国財務大臣)、ウン・コクソン氏(シンガポール政府投資公社の前グループ最高投資責任者)が、GAB会合とセキュラー・フォーラムに参加しました。

グローバル・アドバイザリー・ボード(GAB)
PIMCOの投資プロセスでは、新しい考え方や異なる視点を積極的にとり入れています。その一環として外部から専門家を招待し、その知見を共有し、PIMCOの見解を検証していますが、世界的に著名なマクロ経済の専門家や政策当局の経験者から構成されるグローバル・アドバイザリー・ボード(GAB)のメンバーは、このような外部専門家としての役割を果たします。FRB前議長のベン・バーナンキ氏を議長とするGABは、年に数回PIMCOのニューポートビーチ本社において会合を開き、PIMCOの経済予測会議の議論に貢献しています。

クラリダ : PIMCOでは年に4回、経済予測会議を開催します。年3回の短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)に加えて、毎年5月には長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)を開催し、金融・財政政策、世界経済、金融市場に影響を与える、今後3~5年間の主要な長期的テーマに注目します。

セキュラー・フォーラムには、これまでもバーナンキ前議長や、ブラウン博士にはゲストスピーカーとして参加いただきましたが、今年は初めて正式にPIMCOグローバル・アドバイザリー・ボード(GAB)がそのプロセスに加わり、議論に大きく貢献しました。GABは世界的に著名なマクロ経済の専門家や政策当局の経験者から構成され、世界の経済や政治、戦略的な動向とそれらが金融市場に与える影響について、PIMCOにその見識を提供する役割を担います。

GABは、まず非公開で会合を行った後に、セキュラー・フォーラムの白熱した幅広い議論に全面的に参加しました。全てのメンバーが参加したわけではありませんが、前議長のバーナンキ氏、前首相のブラウン氏、ウン氏は世界経済の主要なテーマを取り上げ、マクロ経済の多岐にわたる重要な問題に関する議論に積極的に参加いただきました。GABの専門知識と見識は、PIMCOの全般的な長期見通しの形成に寄与するとともに、投資プロセスにおいて貴重な意見を提供しました。

2016 5 月の GAB 会合の要旨

キャントリル : はじめに、今後数年にわたって世界経済に重要な影響を及ぼし得る中国の動向を概観しましょう。向こう3~5年間の中国の見通しを教えてください。「ハードランディング」のリスクはどの程度あるのでしょうか。
GAB メンバー : 中国は引き続き、重工業、建設、輸出を基盤とする成長モデルから、個人消費やサービス業に依存する経済への移行という課題に直面しています。スムーズな移行が実現すれば、過去10年間を下回るとはいえ、持続可能性の高い、年率5.5~6.5%程度の実質GDP成長率を長期的に達成することは十分に可能でしょう。

中国政府は改革の必要性を認識しており、スムーズな改革を実行するために必要な資源を豊富に備えています。たとえば、中央政府の債務残高は対GDP比40%程度と比較的小さく、また、外貨準備高は高水準で推移しています。

とはいえ、中国は、改革推進に対する政治的サポートの確保、増加する債務残高の抑制、不透明な外部環境への対処などの重大な課題を抱えています。

ハードランディングはGABの基本シナリオではありませんが、改革プロセスが滞った場合に、内部対立の拡大や経済成長の大幅な落ち込みにつながり得るテールリスクと言えるでしょう。

必要な改革を実行することは技術的にも容易ではありませんが、最大のハードルは政治動向と考えられます。たとえば、重工業からサービス業に資源を移行する際に、国有企業(SOE)や、鉄や石炭の生産に依存する地域からの抵抗が強まり、社会不安が広がる可能性があります。一部の政府高官は、長期的なメリットをより重視した構造改革よりも、(財政刺激策の拡大などを通じた)短期的な安定の方が、優先順位が高いと考えています。

習近平国家主席は、「中所得国の罠(多くの発展途上国において国民1人当たり所得が高水準に達する前に頭打ちとなる傾向)」を回避する最善の方法として、改革路線継続に対する支持を表明しました。しかしながら、習主席が権力の集約を図ろうとする2017年10月の重要な党大会を控えて、一部の改革は当面の間棚上げされている可能性もあります。

キャントリル : 中国の債務残高拡大にはどのようなリスクが伴うのでしょうか。
GAB メンバー : ご指摘のとおり、中国では企業や地方政府を中心に債務残高が急速に拡大しています。その背景には、中国政府が、国家開発の手段として、また政府直接支出の代替として、信用の配分(特に銀行による与信)を主導してきたという側面もあります。

多くの国有企業が赤字に陥ったことや、一部の地域ではインフラや住宅が深刻なほど過剰に建設されたことを踏まえると、一部の債務の質に問題があっても不思議ではありません。債務問題に関しては、伝統的な成長モデルの限界が数字の上で明らかになったという側面が大きいと言えるでしょう。

しかし、中国の中央政府には財政的に余裕があり、債務拡大リスクを緩和できます。また、債務の大半が米ドルなどの外貨ではなく人民元建てであり、海外投資家の資金ではなく国内の貯蓄によって概ね裏付けられているため、ショックに対しては比較的強いと言えるでしょう。さらに、中国の経常黒字は高い水準で推移しています(つまり貯蓄の純輸出国ということです)。中国政府は銀行を支援すると想定されるため、近い将来にレバレッジに助長された金融危機が発生するリスクは限定的なようです。もっとも、潜在的な損失を整然と吸収していくためには、慎重な債務管理が必要になるでしょう。

キャントリル : 人民元と米中関係の見通しについてはいかがでしょう。
GAB メンバー : 人民元に関しては、GABの基本シナリオに沿う形で、改革路線が継続して経済成長が持続可能な水準まで減速すれば、大幅な切り下げや無秩序な変動を回避しつつ、管理変動相場制を維持することは可能でしょう。実際のところ、今年2月に上海で開催されたG20会合において、中国の政府高官が人民元の大幅な変動を避ける意向を明確にして以来、人民元や外貨準備に対する下押し圧力は後退しています。

長期的にみると、人民元の安定性は、中国政府が改革路線を継続し、中程度の経済成長を達成できるかどうかに強く依存することになるでしょう。改革の挫折というハードランディング、すなわちテールリスク・シナリオでは、国内の預金者や海外投資家の信認が失われる結果、大量の資本が流出するとともに、人民元に強い下落圧力がかかることも考えられます。

人民元の動向など中国の見通しを考える場合、この先数年間の米国の動向が重要になるでしょう。比較的近い将来については、FRBの金融引き締めペースが世界の金融情勢に影響を与え、それが中国政府による人民元相場のコントロールを困難にさせ、成長見通しにも影響を与える可能性があります。また、より重要な点は米国大統領選挙で、キャンペーンと最終的な結果次第では、保護主義や反中国の声が強まることもあるでしょう。

二つの大国の軍事・外交関係は、経済関係のレトリックに影響されるようになるでしょう。少なくとも短期的には、中国には世界規模で米国と軍事的に事を構える意向はないというのが、GABの見方です。実際に習主席は、軍事的対立に発展させることなく(中国のような)台頭勢力を世界システムに組み込むことの難しさを意味する、「トゥキディデスの罠」を解決する重要性に言及しています。また、中国は、現在議長国を務めるG20の枠組みに基づいて協力することを約束しています。しかし一方では、アジア地域で主導権を発揮する意向も持っており、政府が政治的支持を失うことになれば、国民の愛国心に訴えるという選択肢も視野に入るかもしれません。

キャントリル : 次に、中央銀行と金融政策の見通しに議論を移しましょう。まず米国について、FRBの政策は長期的にはどのように変化する可能性が高いでしょうか。
GAB メンバー : 言うまでもなく、FRBには米国経済の動向に合わせた政策運営が求められます。GABの基本シナリオでは、米国経済は、個人消費と住宅投資の拡大に支えられる一方で、世界経済の低迷や米ドル高が輸出に与える悪影響によっていくぶん下押しされる結果、緩やかに回復し続ける見通しです。今回の景気回復で惜しまれるのは、数百万人分の新規雇用が創出されたにもかかわらず、労働生産性の伸び率が低下したため、景気回復期の実質GDP成長率が平均で2%程度にとどまったことです。

このような経済状況を踏まえたFRBの対応は、2つの理論的な柱に基づいて解釈することができます。第1の柱は古典的な「フィリップス曲線」で、インフレ率は、国民のインフレ期待と、失業率などの労働稼働状況を示す指標に反映される経済の「スラック(需給の緩み)」によって決定される、という考え方です。この理論によると、インフレ期待が十分に安定的である限り、労働市場の持続的な改善によって賃金と物価には上昇圧力がかかり、インフレ率はFRBの目標(2%)に向かって押し上げられることが想定されます。そして最終的には、過度なインフレ上昇を避けるために利上げが必要となります。

第2の柱はFRBのリスク管理戦略、すなわちレフト・テール(ネガティブ)リスクとライト・テール(ポジティブ)リスクに備えた対策です。FRBの幹部は、金利がゼロ近辺まで低下している結果、景気減速時の対応能力が限定されているため、とりわけダウンサイド・リスク(景気が予想よりも弱含むリスク)を懸念してきました。米連邦公開市場委員会(FOMC)は、特に国外情勢に起因するダウンサイド・リスクを念頭に、昨年秋には予定されていた利上げを延期したほか、今年の前半にはハト派的なスタンスに転じています。しかしながら、FRBは、経済成長とインフレが予想を上振れし、後追い的な引き締めを余儀なくされるというアップサイド・リスクにも留意が必要です。長期的にみると、FRBの政策の大枠を規定するのは経済動向であり、リスク管理は政策実行のタイミングに限界的な影響を与えるに過ぎません。

総合的に判断して、米国経済が長期にわたって基本シナリオ通りに推移した場合、FRBは政策効果を毎回慎重に見極めながら、短期金利を非常に緩やかに引き上げると予想しています。その背景には、ダウンサイド・リスクの管理という側面と、PIMCOのニュー・ニュートラルの見方に沿ってフェデラル・ファンド(FF)金利の着地点が非常に低い水準にとどまるという見通しがあります。

FOMCは、バランスシートの規模(米国債とモーゲージ債の保有残高)を現在と同程度に据え置くのか、ある程度縮小するのか、最終的に決定していないように見受けられます。FOMCのこれまでの発言内容には反しますが、他のほとんどの主要な中央銀行同様、大規模なバランスシートを無期限に維持することが容認されている可能性もあるようです。FRBがバランスシートの縮小を決定した場合でも、短期金利の利上げプロセスを十分に進めることが優先され、縮小ペースは極めて緩やかになるでしょう。

キャントリル : 経済成長が再び減速した場合、FRBはどのように対応するのでしょうか。
GAB メンバー : GABでは基本シナリオとして、米国経済は緩やかに回復し続けるとみており、景気拡大を損なうような明確な不均衡は見当たりません。しかしながら、世界の経済、金融情勢の低迷に関連するものを含めて、ダウンサイド・リスクは確実に存在しています。米国経済が新たな向かい風に直面することや、景気回復が想定以上に超低金利政策の長期化に依存している状況が判明することも考えられます。

しかし、FRBは景気減速に対処するための政策手段をいくつも備えています。短期金利には引き下げ余地が残されているほか、フォワード・ガイダンス(定性的、定量的な方法によって低金利の一定期間の継続にコミットする政策)の再開、(「ツイスト・オペ」などの手段による)ポートフォリオのデュレーション長期化、量的緩和(資産買い入れ)の再開、場合によっては中期金利の固定化などが選択肢になるでしょう。一方で、マイナス金利政策やいわゆる「ヘリコプター・マネー」が導入される可能性は低いでしょう。

このように、FRBは政策手段を使い果たしているわけではありませんが、深刻な景気減速に対する備えは十分とは言えません。そのようなシナリオでは、金融政策と財政政策の併用が効果的でしょう。また、金融政策の効果は、生産性や人口構成などの長期的な経済成長の決定要因に対してはほとんど及びません。このため、米国を始めとする先進国では、長期的な成長促進を目的とした財政政策や構造的な経済政策を優先する必要があります。

キャントリル : 次に、米国以外の主要国の金融政策と経済の見通しを教えてください。金利は長期的にはどのように推移すると予想しているのでしょうか。
GAB メンバー : 欧州では経済成長がやや加速するなど、欧州中央銀行(ECB)の積極的な金融緩和政策に一定の成果が確認されています。しかし、中期的なインフレ期待は依然として2%を大きく下回り、マイナス金利に対する懸念が広がるなど、ECBの金融政策は限界に直面しています。

ECBと同じように、日本銀行もインフレ目標の達成が困難ななかで、金融政策の限界に挑戦している状態です。マイナス金利政策に対する評価は好ましいものではなく、日銀内部からも反対意見が聞かれます。ただし、政府の中央銀行に対する支援姿勢に関しては、欧州よりも日本の方が強いようです。

一方、英国経済は米国に匹敵する水準の回復を遂げてきましたが、イングランド銀行は極めて慎重な姿勢を維持しています。現在、6月23日に実施予定の英国の欧州連合(EU)離脱(「Brexit」)をめぐる国民投票を前に、イングランド銀行は様子見姿勢をとっています。「離脱」という結論となった場合、金融政策に与える影響は明確ではありませんが、英国の経済成長は一段と鈍化することが予想され、利下げ圧力が強まる公算が大きいでしょう。ただし、ポンド安に伴うインフレ圧力は金利を押し上げる方向に作用するとみられるため、イングランド銀行は「様子見」戦略を選択する可能性が高いでしょう。

長期的には、各国の中央銀行が採用してきた政策が十分かどうか、不足があるとすれば、その他の政策手段がどの程度期待できるのか、という点が重要です。

世界の金利見通しに関しては、長期的には低金利環境が続く可能性が高いでしょう。長期利回りが低下した要因としては、低水準のインフレ率、労働人口の高齢化と生産性の伸び悩みを背景とする経済成長率の低迷、世界的に高水準の貯蓄率、歴史的に低水準の国債のリスク・プレミアム、米国債のように流動性の高い「安全」資産に対する強い需要が挙げられます。

長期金利は歴史的に低い水準で推移する公算が大きいものの、長期的には利回りが緩やかに上昇するリスクとして、以下のような要因が考えられます。

第1に、米国では、景気後退に陥らない限りインフレ率は緩やかに上昇する見通しで、これに対しFRBの姿勢はハト派的であるため、中期的には金利低下ではなく上昇につながることが考えられます。

第2に、現状の米国の生産性の伸びは、最も悲観的な長期予想さえも下回る水準にありますが、とりわけ世界金融危機が設備投資や研究開発、起業活動に与えた悪影響が緩和されるため、今後は改善に向かう可能性が高いように見受けられます。

第3に、米国、カナダ、日本では、財政政策がいくぶん拡張的になる公算が大きいようです。さらに欧州においてでさえも、緊縮財政を厳格に追求する段階が終わり、一部の国では大量の難民受け入れに伴い、政府支出が拡大する見込みです。

第4に、中国の経常黒字が縮小し、原油生産国がエネルギー価格下落という現実に順応する過程で、世界的な過剰貯蓄の状況はいくぶん緩和されるようです。

最後に、歴史的に低い水準にある国債の期間プレミアムは、より正常な水準に戻る可能性があります。たとえばデフレ・リスクが後退する兆しが確認されれば、国債のヘッジ機能はいくぶん弱まり、利回りの上昇要因になるでしょう。

キャントリル : 次に、地政学要因は長期的にみると世界経済にどのような影響を及ぼす可能性が高いのでしょうか。また、Brexitの賛成派が多数を占めた場合には、どのような結果が予想されるのでしょうか。 GAB メンバー : 欧州、英国、米国を中心に、先進国ではポピュリズムが新たに台頭する傾向が鮮明です。最終的な結末は不明ですが、ポピュリスト的な政治が、特に経済統合やグローバリゼーション、国際貿易に悪影響を与え、長期的な経済成長と安定を損なうおそれがあります。

ポピュリズム的傾向の背景にある流れ(不平等の拡大、エリート層に対する不信、愛国主義など)は、それほどすぐには解消されないでしょう。まだポピュリスト的な政治家が主要国のリーダーになったわけでも、ポピュリスト的な政党が議会の過半数を獲得したわけでもありませんが(ただし、米国でトランプ氏が共和党の大統領候補に選ばれたことは注目すべき動きです)、ポピュリズムが政策や政治に重要な影響を及ぼす可能性は、依然として否定できません。

GABが会合を行った5月中旬時点では、英国の国民投票でEU残留派が多数を占める確率の方がわずかに高いようですが、「離脱」派が勝利した場合、英国経済には全般にマイナスの影響が及ぶ見通しです。国民投票をめぐる不透明感は、設備投資の減少や経済成長の鈍化、ポンドの下落という事態をすでに招いています。また、離脱派が多数を占める結果となれば、英国の他国との貿易関係や金融を始めとする主要産業の先行きにも悪影響が生じるでしょう。英国がEUと新しい協定を交渉する道は残っているものの、総じていえば、英国の立場は現在よりも不利になる公算が大きいでしょう。

また、英国が離脱した場合、EU側にも悪影響が及び、離脱の動きが他国に波及する懸念も高まる見通しです。少なくとも短期的には、「離脱」に伴うさまざまな不確実性が世界の金融市場に深刻な悪影響を与える可能性は高いでしょう。

一方、ユーロ圏はそのまま残るか、という質問には、向こう3~5年の期間であれば、答えはおそらく「Yes」です。ユーロ圏には、遠心力が作用しているとはいえ、欧州大陸の平和と協調を促進するために、結束維持を求める強い政治的な意思は明確に存在しています。

より大きな長期的リスクは、欧州経済が「足踏み」を続けるかさらに悪化することでしょう。ファンダメンタルズ面での悪材料が多く、人口構成の悪化や生産性の伸び悩み、構造的失業率の高止まり、政策の一貫性の欠如、グローバリゼーションや経済統合に対するポピュリスト的な抵抗などが、経済成長の阻害要因になるでしょう。また、移民流入の勢いが弱まることはないため、政治的にはポピュリズムや移民排斥主義、保護主義が強くなっていくでしょう。これに対して明るい材料としては、大規模な経常黒字を背景に追加的なマクロ経済政策の実行余地があること、ソブリン債務危機が一部の国では必要な構造改革に結び付いたこと、移民流入がいずれはさらなる経済成長に貢献し得ること、などが挙げられます。

キャントリル : 最後に、中国以外のエマージング市場の先行き、原油の価格、生産見通しについて説明してください。
GAB メンバー : ポピュリズムの動きはエマージング市場にも広がっています。エマージング諸国では、コミュニケーション技術の発達を背景に、先進諸国での暮らしぶりを目にすることが可能になったため、生活水準と同じように国民の期待値も高まっています。期待値の上昇に伴い、官僚の汚職問題や能力不足、適切な教育や公共サービスの欠如が、欲求不満につながっています。期待値の高さが政策改善につながるのであれば、経済的にプラス要因になり得ますが、一方で近視眼的な政策につながる可能性もあります。

エマージング市場では、国によって経済の実績や見通しが大きく異なります。また、政策や政治の違い、コモディティ生産国、消費国としての役割の違い、改革に対する姿勢の違いなどが見受けられます。なかでも、インド、韓国、台湾、メキシコ、そして意外なことにアルゼンチンの経済は比較的好調です。国によって無視できない相違点があるとは言え、共通のリスク要因も存在しており、なかには長期的にはプラスに作用し得る要因もあります。特に、中国経済の成長持続やコモディティ価格の小幅な上昇というGABの基本シナリオは、エマージング市場全体に好影響を及ぼすでしょう。昨年秋以降、米ドル相場が比較的安定していることも、エマージング諸国の財政に対する圧力緩和につながっています。

言うまでもなく、ロシアやブラジル、戦争状態かその懸念のある中東の一部の国のように、不安定な国が多いことも事実です。

原油相場に関しては、米国における生産縮小といった短期的な要因を背景に、原油価格は現在の水準から緩やかに上昇する見通しですが、長期的には低水準で推移する可能性が高いでしょう。サウジアラビアの生産量は高水準で推移する見通しであり、一方需要サイドでも、気候変動に対する懸念や新技術の開発を背景に、少なくとも先進国では原油の消費がいくぶん減少するとみられます。

また、中東で常に存在する政治的動乱や政権移行の可能性は、安定的なシナリオに対する大きなテールリスクと言えるでしょう。

キャントリル : 最後に、PIMCOの長期見通しの議論に参加し、見解をお聞かせいただいたGABの皆様に感謝したいと思います。 

著者

Richard Clarida

グローバル戦略アドバイザー

Libby Cantrill

エグゼクティブ・オフィス

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