経済見通し

経済成長、貿易、地政学上の進展

PIMCOのグローバル・アドバイザリー・ボード(GAB)が、主要な経済や地政学上の今後の見通しをご説明します。

界的に著名なマクロ経済の専門家や政策当局の経験者で構成されるPIMCOグローバル・アドバイザリー・ボード(GAB)の6人のメンバーが、最近行われたPIMCOの年次の長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)に参加し、向こう3~5年の世界経済を方向付ける主要な要因について議論しました。GABの見識は、PIMCOの投資プロセスにおいて貴重な判断材料となります。本資料では、多岐にわたる議論の概要をご紹介します。

問:向こう3~5年間の米国の経済成長、景況感、金融政策についての見通しをお聞かせください。

GAB:世界経済の同時成長、緩和的な金融環境、税制改革、規制環境、財政刺激政策など、少なくとも向こう1~2年は米国の経済成長にとっての追い風は続くでしょう。人口動態上のマイナス要因はありますが、生産性も次第に上向き始めるでしょう。

「もし引き締まりつつある金融環境がFRBの役割を少しでも果たせば、FRBは短期金利をそれほど積極的に引き上げる必要はありません」

ベン・バーナンキ

最近の税制改正とビジネス寄りの規制環境により、米国企業の景況感は大きく高まるでしょう。源泉地国課税への移行により、企業は資本配分の意思決定を、税制を意識したものだけではなく、効率性や戦略的な観点から行うことが可能になり、米国以外のライバル企業と同じ土俵で戦うことができると感じています。必ずしも規制強化の大きな巻き戻しが起こっているわけではありませんが、さらなる規制の強化の見込みが消えたことで、多くの企業にとっては大きな不確実性要因がなくなりました。しかし長期的に見ると、最近の政策変更によって今後予想される巨額の財政赤字の拡大は、新たな課題に対する米国財政の「余力」と政府の対応能力を削ぐものになるでしょう。

米国でインフレが起きているものの、緩やかなものに止まっています。米連邦準備制度理事会(FRB)は、フィリップス曲線がほぼフラットな状態であり、失業率の低下が必ずしもインフレ加速にはつながらないと考えています。さらにFRBは、インフレターゲットの多少の行き過ぎを許容する意向のようです。従って、一時的に中立金利を上回ることはあっても、FRBは緩やかに利上げを継続すると予想しています。FRBは、向こう3~5年の間に予想される景気後退がそれほど深刻なものでなければ、次期景気下降局面にそれなりに対処できる政策ツールは持ち合わせています。しかし、FRBの利下げの余地は限られており、財政も拡大余地が削減されたことから、より深刻な景気後退となれば、政策当事者は厳しい対応を迫られるでしょう。

問:権力集中が完了した今、中国の長期的な経済目標はどのようなものでしょう。また、中国の変化が世界経済と貿易関係にどのような影響を与えることが考えられますか。

GAB:習近平主席に率いられた中国の指導者達は、明確な方向性を持って目的を達成するでしょう。(中華人民共和国建国100周年にあたる)2049年までに中国は完全に先進国の仲間入りをし、一人当たりGDPが今日のドイツほどの豊かで強い国になるという目標を含め、習主席は30年を超えるスパンで、中国の経済力と影響力を強化する計画を掲げています。そのほか、今後数年間の3つの政策上の優先課題は、貧困の排除、環境基準を定めたうえでの公害の削減、金融システムのリスク・コントロールが挙げられます。

「中国は遠い将来を見据えて、十年単位で将来を計画しています」

ウン・コクソン

国内の優先事項のみならず、中国は世界経済成長の主要エンジンでもあります。世界の他の国の見通しが不透明になったとしても、中国は今後3年間、少なくとも年率5~6%のGDP成長率を達成する可能性が高いでしょう。貿易摩擦によって中国の長期的な経済成長の軌道が外れることはないでしょう。かつてと異なり、今では貿易よりも国内消費に依存した経済になっています。

GABでは、市場が想定しているよりも米中の貿易環境の悪化リスクは大きいと考えています。緊張関係は長期化し、予期しない急速な事態の悪化や紛争の可能性があると予想しています。また、米中双方に、貿易の分野において低レベルでの小競り合いと見せかけの対決姿勢を続けることへの政治的な配慮が働いていることも認識しています。

長期の基本シナリオとしては、米国と中国の関係は、世界の貿易システムを破綻させるまでには至らず、なんとか切り抜けるシナリオを想定しています。両者の間で貿易赤字や対外投資に関する問題に進展がみられる可能性もありますが、国家が産業計画の主な役割を担い研究開発を促進するという、中国の国家資本主義による経済成長モデルに対する挑戦は、根強い抵抗に直面するでしょう。 

問:欧州と英国経済の長期的な見通しを教えてください。

GAB:最近の欧州経済の成長は力強いものの、長期的には、非効率な労働市場、不十分な実物投資、そして主要国と周縁国の間での経済事情と競争力のレベルの違いなど、構造的な問題が立ちはだかっています。また、ポピュリズム政治が、貿易や移民やさらなる欧州統合への新たな障害になりつつあります。そのほかにも、貿易戦争、イランとロシアに対する経済制裁の可能性、ブレグジット(英国のEU離脱)の交渉の不透明な結末など、政治的な不確実性要素があります。このような環境下で、GABは財政統合に向けた進展は期待していません。しかし金融業務と資本市場の統合に向けての作業は続いています。

多くの国でポピュリズムの影響が高まっていますが、ユーロは広く人気を保っています。しかし、ユーロを使用する国々のインフレや経済状況が様々に異なることで、欧州中央銀行(ECB)の役割は複雑なものになっています。ECBは恐らく2018年9月以降も資産買い取りプログラムを延長し、早くても2019年後半まで最初の利上げを遅らせるなど、今後もハト派的な政策をとると予想しています。

英国では、移民の減少(EU諸国からの移民も含む)と、低い生産性の伸び、そして一部の財政緊縮政策により、経済は停滞し脆弱な状態が続くでしょう。失業率は低下しましたが、賃金上昇圧力は強くありません。

英国の長期的な見通しはブレグジットの結果に大きく依存しています。当初ブレグジットの国民投票を支持した人々の間では、自動車や医薬品などの産業に依存している北部など、最も大きな影響を受けると考えられる地域の人々でさえ、離脱が英国にとって好ましいものだとの信念が依然として根強く残っています。しかしこれまでのところ、ブレグジットの具体的な選択肢に対して、明確な意見の集約は見られていません。ブレグジットのタイムライン――現在のところ、正式離脱は2019年3月、2020年に移行期間終了――は、関税同盟や単一市場に残る場合、2021年さらには2022年まで再び延長されることが必要となるでしょう。これにより、企業にとっては準備期間が延長され、再考の余地も生じる一方で、投資と消費者信頼感の不確実性が重石となる期間が続くことになるでしょう。

「英国は(EU撤退に)さらに長期の移行期間を取る交渉を始める可能性が高いでしょう。不確実性が極めて高い時で、今後しばらくはこの状況が続くでしょう」

ゴードン・ブラウン

問:今後数年のうちに、大きな地政学的変化や紛争が生じる可能性はありますか。 

GAB:2018年という年を考えるフレームワークとしてこれまでの数十年を振り返ると、特に大きなイベントのなかった年の後には、良くも悪くも地殻変動のように大きな地政学的変革を遂げる場合があったことが分かります。たとえば大きな変化もなく過ぎた1978年を考えると、1979年には当時のソ連がアフガニスタンに侵攻し、イラン革命がおこり、冷戦が激しくなりました。あるいはもう一つ、穏やかだった1988年の例を考えると、翌年1989年にはベルリンの壁が崩壊し、その数年後にはオスロ合意、マーストリヒト条約、アパルトヘイト政策の撤廃が起こっています。

このようにみると、2018年は1978年と同じような暗黒の道への曲がり角なのでしょうか、それとも1988年のような明るい未来への前兆なのでしょうか。

悲観的な見方をすれば、数年のうちに北朝鮮による緊張感の高まりから、広くアジア全体の不安定化が増し、多くの国が中国を世界のリーダーとみるような状況が考えられます。中近東では、現在の「代理戦争」から「熱い戦争」の勃発も予想されます。ロシアはさらに東欧に近づき、サイバー攻撃を積極的に仕掛ける事も考えらえます。欧州では権威主義とポピュリズムの圧力が高まるかもしれません。

一方楽観的にみれば、朝鮮半島では純粋な意義ある平和交渉が行われ、イランではさらに展望が開け、場合によっては政権交代が起こり、シリアでは活発な闘争ではなく休戦や膠着状態となるかもしれません。 欧州はロシアや他の国々からのプレッシャーに反発し、共同防衛や移民政策など、統合強化に向けて努力するかもしれません。

向こう3~5年でみると、地政学的環境はやや悲観的な方向に傾いているように見えますが、実際には多くの重要な地域で、歴史的に前向きな突破口が生まれる可能性も期待できます。今後3-5年の間、市場参加者は純粋に経済の進展だけを見るのではなく、地政学的な状況も視野に入れた広い視点を持つことが必要となるでしょう。 

世界経済と市場環境を形成する長期的なトレンドについての詳細な議論に関しては、PIMCOの最近の「長期経済見通し:急変に備えて」をご覧ください。

「急変に備えて」を読む

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