短期経済展望

終わりの始まり?

世界経済は需要主導の成長のピークに近づきつつあるのでしょうか。それとも供給主導の新たな時代の初期段階にあるのでしょうか。本稿ではPIMCOの考え方とポートフォリオのポジションについてお伝えします。

融環境が良好で民間セクターの国内的な不均衡が見当たらない時には、景気後退は滅多に起きないものです。世界同時景気拡大は昨年一段とギアを上げ、この6月に10年目に入るのはほぼ確実な情勢です。向こう6ヶ月~12ヶ月という短期経済予測の期間内に失速するとはみていません。

しかし、2018年の堅調な成長の継続がほぼ確実な一方で、その力強い成長をもたらす要因については不確実性が増しています。現段階は、緩和的な金融環境、米国の財政拡大、多くのエマージング諸国の回復に後押しされて、循環的な活況を呈しているだけなのでしょうか。それとも、成長率のトレンドを押し上げる、供給側の新たな生産性向上時代の幕開けを示唆する段階にあり、限界税率の引き下げや規制緩和、アニマルスピリットがそれを後押ししているのでしょうか。言い換えれば、現段階は世界景気拡大の終わりの始まりなのでしょうか。それともニュー・ニュートラルの終わりの始まりなのでしょうか。

言うまでもなく、その2つのシナリオでは、2018年以降の世界景気拡大の持続性やインフレ率と金融政策、ひいては金融市場に及ぼす影響が大きく異なります。PIMCOの基本シナリオでは、現在の堅調な経済成長は供給主導というより需要主導の循環的なものであるとの見方を維持していますが、ポートフォリオの構築は、先の重要な問いに対する答えが相当に不確実であることを認識して、慎重に行うべきだと考えます。

ゴルディロックス経済環境は継続するも、成長のピークの兆しが見える

PIMCOが今月初旬に開催した四半期に1度の短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)では、世界各地から参集した投資プロフェッショナルが、マクロ経済チームの最新の予測を一通り確認し、トレンドを上回る世界経済の同時成長の継続と、インフレ率の緩やかな上昇という見方を程なく共有しました。景況感調査では、年末をまたいで、世界貿易と製造業サイクルのピークアウトの可能性を示す初期兆候がいくつか見られ、2月には資産価格のボラティリティが急上昇したものの、金融環境は依然として良好で、財政支援も見込まれることから、ゴルディロックス経済の終焉という見方は大袈裟過ぎると考えられます。

2017年12月と比べて今回の予測では、米国、ユーロ圏、英国、中国については2018年のGDP成長率を小幅に引き上げる一方、メキシコ、インドについては引き下げました。全体としては、昨年12月時点の予測から変わらず、2018年の世界経済は3.0%~3.5%の成長経路を辿り、同じレンジの半ばに落ち着いた2017年並みになるとみています。

インフレ予想については、原油価格の上昇基調を受けて小幅に引き上げていますが、目標にわずかに及ばない米国同様、ユーロ圏、日本も総合指数、コア指数ともに、当局の目標を下回る水準で年を終えるとの予想を継続しています。

留意すべき重要な点は、緩やかな成長とインフレというPIMCOの予測は概ねコンセンサスと同じであり(地域別の詳細については、地域別経済予測のセクションをご覧ください)、資産価格に織り込み済みであるとみられることです。これは、景気が予想外に下振れした場合やインフレ率が予想外に上振れした場合の間違いはほとんど許されないことを意味し、慎重なポートフォリオの構築が求められるもう1つの理由でもあります。

米国の政治はジキル博士かハイド氏か?

フォーラムでは、成長率とインフレ率の短期見通しにはほぼ異論がなかったことから、速やかに次の論題に移り、トランプ政権の現在の政策課題によるライト・テールリスクとレフト・テールリスク、すなわち確率は低いものの市場及び経済に重大な影響を及ぼしうるリスクについて検討しました。PIMCOの公共政策部門の責任者であるリビー・キャントリルと、PIMCOのアドバイザーで、クリントン、オバマの両政権で国家経済会議(NEC)の議長を務めたジーン・スパーリング氏が口火を切り、税制改革と予算交渉後の政策課題について、特にライト・テールになりうるインフラ投資と、レフト・テールになりうる通商政策について幅広く議論しました。

トランプ政権のインフラ計画では連邦予算2,000億ドルを想定し、1兆3,000億ドルにのぼる州、地方自治体および民間のインフラ投資の喚起を目指しています。これは目を引く規模ですが、短期経済予測の対象となる期間内に、法案が議会を通過する確率は極めて低いとの結論に至りました。さらに、PIMCOの地方債チームの見方によると、たとえ法案が可決されたとしても、米国のインフラ支出の大半を負担するのは州であり、多くの州では財政に余裕がないことから、州による拠出分は当初の見込みよりも大幅に縮小するとみられます。

通商政策については、今月初旬にトランプ大統領が発表した鉄鋼とアルミニウムへの幅広い輸入関税は、さらに骨抜きになり、影響は軽微にとどまると予想しています。重要な貿易相手国であるカナダとメキシコは既に適用を除外されており、今後も数か国が、他の分野での譲歩と引き換えに除外されるものとみられます。欧州をはじめ各国が報復関税を実施する可能性はありますが、世界貿易機関(WTO)の指針内でのバランスの取れたものになるとみられ、鉄鋼やアルミニウムの輸入関税同様、その影響は貿易全体のごく一部にとどまるとみられます。

むしろ懸念されるのは、米通商法301条の下で知的財産権侵害を理由に、中国を標的とした幅広い保護主義的な措置が取られることであり、これは現在進行中です。しかしながら、PIMCOの中国アナリストは、中国が積極的に応酬して貿易戦争に火を点けるような展開にはならず、事態の沈静化と交渉を目指すとみています。

全体的には、米国の政治によるテールリスクは、ライト・テール、レフト・テールとも、慎重に見守る必要はあるものの、短期経済予測の基本シナリオを大幅に変えるほどの大きなサプライズを引き起こす可能性は低いとの結論となりました。

エマージング市場:どの程度の伸び代があるのか?

投資家にとってもう1つの重要なテーマは、エマージング市場の先行きです。現状、エマージング諸国は大幅な景気減速、ブラジルとロシアの場合は深刻な不況から回復し足場を固めていますが、今後はどうなるのでしょうか。PIMCOのエマージング市場ポートフォリオ・コミッティーのプラモル・ダワン、ルピン・ラーマンと、著名なアドバイザーでノーベル経済学賞受賞者であるマイケル・スペンス氏のリードで、エマージング諸国および資産市場について、楽観シナリオと悲観シナリオ両面を検討し、議論を重ねました。

エマージング市場のアウトパフォーム継続の主張の論拠には、エマージング諸国と先進国の成長格差の拡大、これまでのコモディティのスーパーサイクルに代わる新たな成長の源泉の台頭(とりわけ消費)、より構造的なインフレ低下要因、そして対外不均衡の大幅な低下があげられます。

これに対してPIMCOでは、エマージング諸国の循環的な回復局面がコンセンサスの見方よりも成熟している可能性に注目しています。人口動態が足枷となり潜在成長率は鈍化しつつあり、政策による刺激余地はいまや限定的です。メキシコやブラジルをはじめ主要なエマージング諸国が選挙を控える中、ポピュリスト的な候補者が支持を集めており、政治リスクが高まっています。さらに、先進国の金融政策が出口に向かい保護主義的ムードが高まっており、良好だった対外環境が悪化する可能性があります。

これらを総合すると、エマージング諸国のマクロの基本シナリオについては慎重ながらも楽観的な見方は変わらないものの、それらのリスクと、バリュエーション上の魅力は薄れつつあるという事実に細心の注意を払っています。

試されるPIMCOのニュー・ニュートラルのテーマ

以上の個別の注目点に関するセッションに続く、幅広い全体的なテーマに関するディスカッションでは、PIMCOが長らく掲げてきた「ニュー・ニュートラル」のテーマ、すなわち、生産性の伸び率低下、過去のトレンドを下回る信用拡大、(人口動態、格差拡大、資本節約的な新技術による)貯蓄と投資の不均衡の継続、債務水準の上昇の影響が相俟って、均衡利子率(r*)が低下したとする考え方は、運用の指針として引き続き有効なのか、というテーマに焦点を絞って議論しました。もちろん、これは長期的なテーマであり、今年5月の長期予測会議(セキュラー・フォーラム)でも詳しく検討するつもりです。しかしながら、世界経済の成長ペースが加速し、財政拡大へとシフトするなか、市場と潜在的には中央銀行までもがr*の上昇を想像している状況において、この長期的テーマが短期の見通しにとっても重要であることは明白です。

PIMCOでは、全体として、2008年以前のオールド・ノーマル時と比べて低水準の政策金利が続くとの予想には引き続き自信を持っていますが、短期見通しの不確実性が高まっていることと、危機後の回復と今後の生産性の伸び率上昇がr*の持続的な上昇につながるか否かを、長期的な見地から問うべきであることを確認しました。とはいえ、世界的金融危機の発生から10年経った現在、世界経済における公的セクターおよび民間セクターの債務残高は、依然として過去最高水準にあります。金融危機以降、経済は回復しているとはいえ、成長を維持するには、金利を危機前よりも低い水準に抑える必要があるとの見方は変わっていません。最後に、中立金利を抑えている人口動態要因が変化したわけではなく、それを踏まえると、米国の減税の効果は一時的で、経済に持続的な影響を与えるとはみられません。

したがって、見通しの不確実性は高まっており、これまでの見方については繰り返し検証を重ねる必要があるものの、「ニュー・ニュートラル」すなわち、米国の実質中立政策金利が0%~1%のレンジとする想定は、債券のバリュエーションを考えるうえで適切な枠組みであり、アンカー(錨)であるとの見方を継続します。これを踏まえると、最近の利回りの上昇は、景気サイクルの最終局面での財政拡大とそれに伴う米国債の供給ショックを概ね織り込んだものとみています。世界の金利についてはある程度の上振れリスクが残り、デュレーションのアンダーウエイトのポジションは維持していますが、債券の長期的な弱気相場が始まったとはみていません。フォーラムの参加者による投票では、ごく少数を除いてほぼ全員が、今年の米国債10年物の利回りは2.5%~3.5%のレンジにとどまると予想しており、「ニュー・ニュートラル」の枠組みと一致しています。

もちろん中立政策金利は錨であって、下限でも上限でもないことは言うまでもありません。その点で、景気サイクルがこれほど終盤に差し掛かった段階での米国の財政拡大は、見通しの不確実性を大幅に高めるとともに、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル新議長の任務を一段と難しくしています。失業率が既にきわめて低い水準にある状態での減税とハリケーン関連の政府支出で、米国経済の過熱するリスクは高まりました。FRBは中立を越えて、明らかな引き締め水準にまで政策金利の引き上げを迫られる可能性があり、市場はこうした予想を確実に織り込んでいくでしょう。PIMCOでは、米国のインフレ率はFRBが重視する個人消費支出(PCE)インフレ率で2%に近づきつつあると予想していますが、景気の最終局面における財政拡大で上振れリスクが高まっています。ただ繰り返しになりますが、現時点では大きな長期的変化ではなく、短期の循環的なオーバーシュートであるとみています。

PIMCOでは、この先3年から5年のうちに米国の景気は後退すると予想しており、財政拡大を受けてFRBが予想以上に引き締めを行うとすれば、その可能性はますます高まるでしょう。中立金利と最終金利は同じではありません。にもかかわらず、米国が次に景気後退入りする場合、伝統的な金融政策の手法は限られており、巨額の財政赤字を抱えた状況になっていると考えられます。

投資へのインプリケーション

PIMCOでは引き続き慎重な姿勢で、トップダウンのマクロリスクの大規模なポジションよりも、ボトムアップのポジションによるアルファの捻出を志向し、好機が到来した時にはリスク・バジェットを活用できる柔軟性を維持しておきたいと考えています。中央銀行による引き締めはボラティリティの上昇につながり、それは2月の株式市場のボラティリティ上昇時よりも長期にわたり、より幅広い分野で実感されるようになるとの見方を継続しています。

ボラティリティが上昇しつつあり、バリュエーションの魅力が低い状況において、PIMCOではポートフォリオ構築全般で慎重な姿勢を取っており、企業の信用リスクに直接依存することなく、幅広い源泉からキャリーの獲得を目指しています。態勢を整え、機動的に動く方針です。

デュレーション

デュレーションの小幅アンダーウェイトを継続します。米国の実質金利の上昇は米国債の大幅な供給増を概ね織り込んだとみています。しかし前述のとおり、見通しに不確実性が高まっていることに加え、PIMCOの基本シナリオではないとはいえ、更なるインフレ率上昇を市場が織り込んでくるリスクもあることから、デュレーションのアンダーウエイトを維持し、現在のバリュエーションではイールドカーブの長期ゾーンをアンダーウェイトし、小幅なスティープ化に備えたポジションを維持することは妥当だと考えられます。

米物価連動国債(TIPS)のバリュエーションは適正で、米国のインフレ上振れに対して有効なヘッジ手段になるとの見方から、小幅オーバーウエイトを維持します。

収益機会が非対称的とみられる日本のデュレーションのアンダーウエイトは継続します。今後、イールドカーブコントロールの調整が予想されることに加え、予想外に世界金利が大幅に上昇した場合、それは時間差を伴って日本にも反映されるだろうことに対するヘッジとなるためです。

欧州周縁国の国債については、経済の短期的な見通しは良好ですが、バリュエーション、イタリアの政治リスク、次の景気後退局面でのユーロ圏の存続に対する長期的な懸念を勘案すると、現在の価格水準で大規模なポジションを取ることは想定していません。

クレジット市場

一般的な投資適格債やハイイールド社債は避け、年限が短く元本毀損リスクが低い「曲がっても折れない」社債や仕組み商品に幅広く投資します。社債では、PIMCOの世界中のクレジット・ポートフォリオ・マネージャーやリサーチ・アナリストによる分析をもとに、魅力的なボトムアップの投資機会と新規発行債を見い出していきます。

非政府機関系モーゲージ債については、米住宅市場に対する前向きな見通しやディフェンシブな特性とともに、流動性や複雑性およびキャッシュフローのタイミングの不確実性に対するリスクプレミアムが魅力的であることから、確信度の高いスプレッドポジションとの位置づけを継続します。政府機関系モーゲージ債(MBS)についても、価格は妥当な水準であり、社債以外のキャリーの獲得手段として有望だと見ています。商業用不動産担保証券(CMBS)、ローン担保証券(CLO)についても、厳選された投資機会を捉えたいと考えています。

エマージング市場

エマージング市場については、現地通貨建て債、外貨建て債ともに有望な機会があると見ています。しかし、エマージング市場特化型戦略以外のポートフォリオでは、エマージング諸国のファンダメンタルズに対するPIMCOの評価を反映し、インカムを確保する手段として、幅広いエマージング通貨のバスケット保有が最善であるとの見方を継続します。

株式

より幅広いアセット・アロケーションに関しては、米国株式を中立としています。現在の株価水準は予想される税効果をほぼ織り込んでおり、1株あたり利益の伸びが18%前後の予測のもとでは、上乗せ余地がほとんど見込めないためです。日本株については、今年20%強の増益が見込まれ、バリュエーションが相対的に割安なことから前向きに評価しています。

コモディティ

アセットアロケーション・ポートフォリオではコモディティを小幅オーバーウェイトとします。コモディディ自体のリターンが期待できることに加え、世界経済が加速し、実際にインフレ率が上昇する場合には分散効果が見込めるためです。最も有望視しているのがエネルギーと卑金属で、世界的な成長のモメンタムが追い風になるとみています。

地域別の経済予測

米国

米国の2018年の実質GDP成長率は、トレンドを上回る2.25%~2.75%のレンジを予想しています。所得税と法人税の減税によって0.3パーセントポイント押し上げられると予想していますが、それに加えて2年間の連邦政府支出の拡大合意により、さらに0.3パーセントポイントほど成長率は上昇するでしょう。

PIMCOでは、失業率が4%未満に低下する見通しを踏まえ、賃金の伸びと消費者物価には上昇圧力がかかり、コア消費者物価指数(CPI)は年内に2%を超えると予想しています。FRBが選好する指標である個人消費支出(PCE)インフレ率のコア指数も、現在の1.5%から1.8%へと上昇し、2%の政策目標にある程度近づくでしょう。

経済のスラック(需給の緩み)が縮小するなか、FRBは新体制のもとでFF金利の段階的な引き上げを継続するものとみられます。PIMCOでは、年内に少なくとも3回の利上げを予想していますが、年間を通して経済・金融環境が良好な状態が続けば、4回目の利上げもありうるとみています。

ユーロ圏

足元の経済成長の勢いの強さと良好な金融環境を踏まえ、ユーロ圏の今年のGDP成長率は2017年並みの2.25%~2.75%のレンジを予想しています。加盟国間の成長率格差が以前よりもかなり小さく、景気回復の流れが地域全体に広がっていることが、現在の景気拡大局面の大きな特徴です。

また、コアインフレ率が、年末までに1%を辛うじて上回る水準への上昇にとどまるなど、今後もこれまで同様に非常に低い水準で推移する見通しであることも、重要な特徴と言えるでしょう。残存するスラック、過去の労働市場改革、加盟国間の競争力格差の存在によって、賃上げ圧力は抑制されています。さらに、2017年のユーロ高の影響によって、2018年中は消費者物価が押し下げられる可能性が高いでしょう。

欧州中央銀行(ECB)の政策は現在も引き続き自動操縦モードで、資産買い入れ額は9月まで月間300億ユーロとなっています。資産購入プログラムは9月か、或いはその後短期間購入額を減額し、12月までに終了すると予想していますが、償還を迎えた債券の再投資は長期にわたって続くでしょう。利上げの開始は、2019年半ば以降になるとみています。

英国

PIMCOでは、円滑な欧州連合(EU)離脱を目的とする経過措置が近々合意されるとの見通しに基づき、英国の今年の実質GDP成長率はコンセンサス予想を上回る1.5%~2%程度になると予想しています。この予想を前提にすると、企業景況感が改善するなかで保留中の設備投資が承認される結果、経済成長は再び加速すると予想しています。また、7年にわたって緊縮財政を続けた英国政府には、歳出を拡大する余地が生まれるとみています。

昨年の英ポンド安に伴う輸入品価格上昇の影響が解消される一方で、消費者物価には二次的影響が及ぶ兆しがほとんど確認されないため、インフレ率は2018年末までには政策目標の2%に戻ると予想しています。また、イングランド銀行は非常に緩やかなペースでの利上げを継続するとみており、基本シナリオとして、2018年末までに1~2回の利上げを想定しています。この予想は、EU離脱に関する英国とEUの間の交渉が比較的円滑に進むことを前提としています。PIMCOの想定とは異なりますが、離脱交渉が物別れとなった場合には、イングランド銀行が金利を据え置く可能性が残っています。

日本

日本については、基本シナリオとして、2018年中、1%~1.5%の底堅い経済成長が持続すると予想しています。予定される2019年秋の消費税率引き上げを前に、財政政策は引き続き経済を下支えすることになるでしょう。失業率が3%を下回り、(給与水準がより高い)正規雇用の伸びが加速するなかで、賃金の伸びがさらに強まる結果、コアインフレ率は年内に1%を若干下回る水準に向けて上昇する見通しです。

円高が進みディスインフレの逆風のなかで、新たな副総裁の任命で日銀の首脳陣がややハト派に傾いたことを踏まえれば、日銀がイールドカーブコントロールの微調整を開始するのは2019年以降となるでしょう。

中国

信用拡大やインフラ投資を後押しする政策が概ねピークを越えたため、2017年に6.8%を記録した中国の実質GDP成長率は、今年は6%~7%のレンジの半ばに誘導されるものとPIMCOでは予想しています。当局は、特に影の銀行システムに存在する余剰資金の管理や、主に地方政府の緊縮財政に注力する公算が大きいでしょう。

コアインフレ率と原油価格の上昇を背景に、インフレ率は加速すると予想しています。コンセンサス予想では利上げは想定されていませんが、インフレの上昇は、中国人民銀行が政策金利の引き上げによって金融政策を引き締める契機になるとみられます。PIMCOでは、人民元については概ね中立的にみており、当局は為替レートの変動を抑えるために資本フローの統制を継続すると予想しています。


著者

Andrew Balls

グローバル債券担当最高投資責任者(CIO)

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